『DIVA~歌い手さんの誘惑~』
きっかけはツイッターでのやり取りだった。
フォロワーさんにはいろんな人がいる。
基本的に俺は創作クラスタ(自称)なので、
声優さんとか絵描きさんとかが中心……その中に彼女はいた。
彼女の名前は「みちる」さん。
動画投稿サイトで見つけた歌い手さんだ。
妖精みたいにフワフワと可憐な印象を与える声なのに、比較的激しい曲調にも負けない声の持ち主だった。
投稿されている曲を全部聴いた後、俺は彼女をフォローした。
そして自分のサークル発の歌い手としてスカウトしたのだ。
しかし……
『申し訳ありません、「みちる」さん。こちらの都合で歌が入れられなくなりました』
『そうですか。残念ですね。ではまたの機会に』
優しい。可愛らしい声とは関係なく、彼女の対応はとても大人だった。
本当に申し訳なく思う。
既にサンプルまで収録済みだったのに、俺の都合で彼女を振り回してしまった。
だからと言って、急に気の利いたレスなど思いつかない。
『はぅぅ……ゴメンナサイ』
俺はとにかく素直に謝ることにした。
(なんかいい方法ないかな……)
彼女の声を活かす方法を模索する。
でも簡単には浮かばない。
すると一分後、彼女からこんなリプが。
『そんな可愛い声出しちゃって……(´?`)』
不謹慎だが、なぜか股間が反応してしまった。
このレスは、どうやらこちらの趣味に合わせてくれたらしい。
素直に嬉しく思う。そして今度は俺から……
『ま、まさか今のって言葉責めですか』
こんな照れ隠しの文章を返すのがやっとだった。
事前に彼女の歌をたっぷり聴いているせいもあって、ちょっと興奮してしまったのだ。
『そんなに動揺してるくせに……我慢しなくてもいいんだよー?』
(見抜かれてる……!)
思ったより、いい反応というか……この人少しSっぽいのか。
だとしたら僥倖。いや、もしかしてとんでもない逸材かも?
そのあと数回の応酬があった。
『やめて! 「みちる」さんに責められてるみたいで本当にヤバいですっ(ビクンビクン)』
『じゃあ止めてあげる~、うふふ』
『ほっ……(でもちょっと寂しいかも)』
『寂しいの……?でももういじめてあげないもんね!』
こちらからのおねだりを求めてる……
そして、おねだりしたら必ず応えてくれそうな予感を残してくる女王様気質。
――だめだ、もう我慢できない。
この人の声を充分知っているだけに頭の中で妄想がぐるぐる回る。
こうして出来上がったのが、このショートストーリーである。
――それから1週間後。
俺は「みちる」さんと打ち合わせをするために都内某所にいた。
先週のお断りメッセージのあと、彼女を起用するために新しい企画を考えたのだ。
ちょうど彼女もこちらに来る用事もあったので、適当に折り合いをつけて駅前で待ち合わせをした。
(アニメのカフェとかアイドルカフェとか次々と考えるよなぁ……)
駅の近くにある歩道橋の上で、俺は彼女からの連絡を待った。
打ち合わせの場所は、いつも俺が使ってる喫茶店にしよう。
プルルルルルルル……
ケータイが鳴ったので応答ボタンを押す。
彼女からだった。
「はい」
「あっ、『みちる』ですー! 今つきました!!」
元気のいい声だった。間違いなく彼女だ。
しかし俺と彼女は初対面だ。
お互いに顔を見た事もない。さて、どうするか。
「お疲れ様です。今どちらに…………」
――とんとん。
誰かに背中を叩かれたので俺が振り返るのと、「みちる」さんが回答するのが同時だった。
「「はじめましてッ」」
受話器の声と、目の前の少女が発した声がシンクロした。
「えっ?」
「私、歌い手の……『みちる』です!」
「あなたが?」
「はいっ」
俺の目の前にいる女性がにっこりと微笑んだ。
身長はおそらく150cm台後半だが、顔立ちが幼すぎる。
(じ、女子校生……いや、年齢が全く判らん!?)
18歳と言われても、26歳と言われても信じてしまいそうな外見だ。
童顔という言葉でまとめてしまってもいいのだが、顔立ち以上に服装が気になる。
小さなリボンがついた青いカチューシャに、綺麗に切りそろえた前髪。
明るめのブラウンの髪を胸ぐらいまで伸ばして、全体的に緩いパーマをかけてるみたいだ。
羽織っているグレーのふわふわしたコートはともかく、その下にはパステルピンクのメイド服とでも言おうか……。
胸元もスカートの裾もフリルだし、おそらく背中に大きなリボンがついている気がする。
そしておきまりの黒いニーソ……いや、紺色のタイツ? どっちでもいいか。
足元は髪と同じくライトブラウンのショートブーツ。
(この可愛らしいメイドさんみたいなのが「みちる」さんなのか!?)
他の都市ならともかく、アキバだったら絶対に目立たない服装ではある。
「…………」
それにしても似合いすぎている。
顔立ちと身長、体つきと雰囲気にマッチしている。
(自分を可愛く魅せる方法を知ってる女性って素敵だな)
俺はメイド服属性は無いのだが、普通に可愛らしいと感じた。
ついついジーっと見つめてしまう。
「えっと、あの……なにか?」
「あ、いえいえ……じゃあ打ち合わせしましょうか」
不思議そうに尋ねる彼女の声で我に返る。
気を取り直して打ち合わせの場所へと向った。
(さて困ったぞ……)
いつもの喫茶店が満員だ。そして第2、第3候補の店も全滅。
背後にいる彼女に悟られぬよう、俺は悩んだ。
「あの……場所はもう決めてました?」
「ええ、でも満員ですね……どうしよう」
「私に選ばせて貰っていいですか?」
苦笑いする俺に、彼女は優しく微笑んでくれた。
この場合、助け舟を出してくれたと言い換えてもいい。
「あ、はい。かまいませんよ」
この際どこでもいい。
彼女がケーキ屋で打ち合わせしたいならそれでも良いし、昼間から居酒屋でもかまわない。
「じゃあ、あそこで!」
「えっ」
彼女が指差したのは飲食店がたくさん入っているビルのカンバンだった。
しかもその中のカラオケスタジオ。
「ここなら実際に歌えるし、楽しいじゃないですか」
「なるほど。貴女がそれでいいなら」
特に異論はない。それに彼女は歌い手だ。
もしかしたら打ち合わせしながら一曲披露してくれるかも知れない。
そんな淡い期待を抱きつつ、俺は彼女のあとについてそのビルのエレベーターに乗り込んだ。
彼女の選んだカラオケスタジオは周囲の喧騒とは無関係に、快適だった。
室内も清潔で、タバコのヤニ臭さもない。
「慧眼ですね」
「なんとなく、ね……それに私、歌い手ですから!」
俺の方を向いた「みちる」さんは、アルコール消毒済みのマイクを握りながらおどけて見せた。
そして注文した飲み物が届くまでの間に、軽く一曲歌って見せた。
(さすがにうまいな……)
目の前にいるのがクリエイターなのだと再認識する。
このちっちゃい身体から溢れるパワーをそのまま声に乗せているような……
軽い感動を覚える俺に、彼女がマイクを差し出した。
「お、俺ですか?」
「はい、依頼主さんの歌も聞かせて欲しいなーって」
「じゃ、じゃあ……」
カラオケなんて久しぶりだぞ。
でもここは受けて立とうじゃないか!
俺が選んだ曲は、3年くらい前のヒット曲だった。
――その数分後。
「思ったより上手ですね……!」
「はは、カンベンしてください」
俺は激しく後悔した。
歌い手の前でカラオケなんて自殺行為……本当に悪い冗談だ。
「ううん、すごくいいです……!」
「ああ、もう本当に……忘れてください」
しかし彼女は、ほのかに頬を紅潮させて俺を見つめている。
これってまさか本気で褒められてるのか!?
(歌い手だからこそ、人の歌う姿に感動しやすいのかも……)
そんな事を考えていたら、対面に座っていた彼女がふらりと立ち上がった。
「ちょ、ちょっと…………『みちる』さんっ!!」
身の危険…………それに近い何かを感じた俺は、咄嗟に腰を上げようとした。
しかしそれより一手早く、彼女の両手が俺の肩を押さえつけた。
(これじゃあ立ちあがれないッ!!)
「その声、もっと近くで聴きたいな……?」
熱に浮かされたような表情のまま、彼女が真正面から俺に身を寄せてきた。
カラオケスタジオのソファに、俺は背中を押さえつけられていた。
しかも自分より全然小柄な女性に。
(動けない……彼女、俺なんかより全然体重は軽い筈なのに)
両肩には女性の手の温もりと、のしかかられている確かな重みを感じる。
「えへへー、押し倒されちゃいましたね?」
「こ、困ります! 『みちる』さん!!」
「うふ、ここからは呼び捨てでいいですよ……」
慌てふためく俺とは対照的に、彼女は冷静だった。
まるで初めからこうするつもりだったかのように……
「さっき、私の服をじっと見てましたよね……気に入ってくれたのかな」
「え……あ、いや……」
「ちゃんと答えて?」
思いがけず低めの声。
そして有無を言わさぬ口調に、俺は素直に頷いてしまった。
「かわいいな……って、思いました……」
「よかった♪ ここにくるまでの電車の中、ちょっと恥ずかしかったんです」
彼女は俺の答えに満足そうに微笑む。
そして胸元のフリルをピラッとめくって見せた。
「でもなんでメイド服を……?」
「メイド服じゃないですよぉ……それに、こういう服装がお好きだって言ってたじゃないですか」
「あっ…………」
もしかしたらツイッターでそんなことを呟いていたかもしれない。
いや、言ってないかも……わからん。自分の記憶が曖昧すぎる。
「それに、いつもはこんな髪型じゃないんですよ?」
そうか、これは俺の趣味に合わせてくれたってことか。
聞けば彼女、普段はもっと落ち着いた服装をしているらしい。
それに髪も今日のためにパーマをあててくれたとか。
「でも、私もこういう格好するのは楽しいです」
チラリとこちらの顔色を覗かれるたび、不覚にもドキドキしてしまう。
なんだか彼女には全て見透かされているような気がする。
「あの続き、しましょうよ……」
「えっ!?」
「わかってるくせに♪」
つつつ……
(ああぁぁ……!)
背筋がゾクゾクする。
みちるの小さな手が俺の頬を撫でた。
少しひんやりと感じるのは、きっと俺の体温があがっているせいかもしれない。
「ツイッターの続き。いっぱいいじめて欲しいんでしょ?」
「い、いや! あれは話の流れで……」
「私もいっぱい……いじめたい……」
「……っ!」
心臓を一瞬で握りつぶされたような気がした。
なぜこの娘はここまで的確に、俺が求めている言葉を口に出来るんだ!?
「年上の男の人が一生懸命我慢するのって、可愛いんですもの」
頬に触れていた指先が降りて、顎の辺りをくすぐる。
心地よい声だけでなく、細い指先による責めも強烈だ。
「みちる……」
俺に呼び捨てにされたことで、彼女の表情が変わった。
さっきまで控えめに俺に触れていた指がそっと離れる。
代わりに彼女は、上半身全てを俺に預けてきた。
「嬉しい……優しく可愛がってあげる」
左肩に彼女の顔が乗せられる。
みちるはさらに左耳をついばみながら、両腕を俺の首に回した。
「しっかりつかまえちゃう……♪」
(エロいぞ、この子! あっという間に雰囲気が……)
彼女に支配される。細い身体が俺の心を拘束する。
首筋から背中にかけて、彼女の指先がなまめかしく這い回るたびに抵抗する気力が薄れていく。
(やばい、みちる……すごすぎる!)
身体に触れているフワフワの彼女の服も心地よい。
そして、俺に頬ずりしてくる彼女の肌はさらに素晴らしい感触だった。
「嬉しいな。なんだかすごく気持ち良さそうなお顔してる……」
甘い吐息を耳の穴に吹き込まれると、思考が全て中断されてしまうのだ。
「うううぅっ……ああっ!!」
みちるの指が、俺の耳に挿入された。
突然やってきた快感に顎を跳ね上げてしまう。
その時天井を見た俺は思わず声を上げた。
「あ……あの監視カメラ! あれで従業員に見られてるんだよ!?」
天井にある丸いレンズを指差した。
これで彼女が思いとどまってくれれば、今ならまだ俺自身の制御が効くんだが……
「ふみゅ…………じゃあ、店員さんが止めに来るまで楽しみましょう?」
ダメだ、彼女には自分を止める意思はないらしい。
そして俺自身も彼女に堕ちていく……
既に呼吸が荒くなった俺を、みちるは優しく抱きしめた。
「男の人のニオイ……好きぃ♪」
みちるはそう言いながら、俺の耳たぶをパクンと咥えた。
「ふあぁ! 」
思わず身体がビクンと跳ねてしまう。
舐められた快感もあるが、柔らかい髪が耳や首筋を掠めたのが原因だ。
「あんっ! くすぐったいの、嫌いですかぁ?」
俺の反応に彼女も驚いている。
「う、ううん……気持ちよすぎて……こういうの慣れてないから」
「うふ、よかった。もっとも、嫌いでも好きに変えちゃうけどね!」
それからみちるは、自分の右手を俺の左手に、左手を俺の右手に合わせて、指先を絡めてきた。
「こういうの、興奮しちゃうでしょう?」
彼女は絡ませた指先に軽く力を入れてきた。
「クスッ……いい? みちるに乗られたら勝手に動いちゃダメですよぉ……」
逆に俺は、彼女に力を吸い取られてしまったような気分になった。
(なぜこんなことを知ってる……?)
俺に限らず、少しでもMッ気のある男がこれをされると参ってしまう。
実際に俺はもう、崖っぷちだ。
少しでも股間に直接的な刺激が来たら、耐え切る自信はない。
だが彼女もその辺の事をわかっているらしく、俺のペニス周辺には圧力をかけて来ないのだ。
「今日は、私の声だけでいじめてあげる」
俺の両手を拘束したまま、みちるが顔面を寄せてきた。
(声だけ……か……)
無意識に俺は彼女に期待していたのかもしれない。
いや、今のこの状況だけでも予想外に刺激的だと言うのに。
「あはっ、残念そうなお顔…………ちゅっ♪」
「んうっ!?」
一瞬気を抜いた瞬間、彼女に唇を奪われてしまった。
「声だけじゃなくて、唇も使いますねぇ……」
みちるは悪びれずに再びキスしようと顔を寄せてきた。
「ん~~~♪」
彼女は眼を閉じないで、そのまま唇を求めてくる。
あまりの恥ずかしさに、俺は身動きが取れない。
そしてまた、唇が触れ合った……
「うふふふ……」
今度はさっきと違って、唇が一瞬で離れなかった。
彼女のほうが俺をじっくりと味わうように、舌先を入れたり出したりしてきたのだ。
(このキスはやばいぞ……これだけで股間がもう限界だ)
下手すればこのままイかされてしまうかもしれない。
そう思った瞬間、彼女がそっと顔を離した。
「もっと可愛いお顔見せてくれたら、もう少しサービスしちゃうかもヨ?」
「サービスって……?」
まだこの先があるというのか。
「まだナイショ。全部教えたらつまらないでしょ?」
みちるは俺の目の前で指を一本立てて見せた。
そしてゆっくりと俺の唇を指先でなぞりながら問いかけてきた。
「私の歌声、好き?」
「あ、ああ……好きだよ」
「えへへ、ありがとー…………私もね、嬉しかったんですよ」
みちるは俺に身体を預けながら無邪気に笑って見せた。
「私の歌声を好きっていってくれるだけで嬉しいのに、こんな風に気を使ってくれるんだもん」
「俺は何もしてないよ?」
「ううん、私のために詞を書いてくれて、オリジナル曲も探してくれたじゃないですか」
そう言われても、俺にはうまく返す言葉が無かった。
曲探しについては俺自身の都合だった。
しかし彼女には、それが好印象を与えたのかもしれない。
「だから今日はそのお礼に、私の声も、顔もにおいも……全部焼き付けてあげる。そのためにここを選んだの」
みちるは、俺の両手を握っていた手をほどいた。
しかし俺の手にはもう力が入らない。
彼女に包まれて、長い時間拘束されたせいで意識もぼんやりとしはじめている。
「いいことしてあげますネ……」
そして彼女が俺の眼を見つめながら歌い始めた。
「このままtouch me, hold me, kiss me……♪」
「……あっ!」
突然アカペラで歌い出したこの曲は、俺のお気に入りだった!
「……これ、好きでしたよね?」
「う、うん……」
「私も好きです。触って、抱きしめて、キスして……切ないですよね?」
みちるは軽く微笑んでから、また続きを歌い始める。
さっきよりも甘く、俺だけに囁くように。
(この子の声はまるで……!)
俺はギリシア神話のセイレーンを頭に思い浮かべていた。
それは上半身が人間の女性で、下半身が鳥の姿をしているという海の魔物。
海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる。
歌声に魅惑されて殺された船人たちの死体は、島に山をなしたという。
俺は既にみちるの歌声に魅了された船乗りのようだった。
恍惚とした表情の俺を抱きしめながら、彼女がそっと囁いた。
(この歌みたいに、美味しく私に食べられちゃって下さいね)
そして曲が終わる頃には、俺はすっかり身体が火照っていた。
彼女の歌声に合わせて、身体中に媚薬のような何かが刷り込まれてしまったように……
「う、くぅ……」
「きゃは、モジモジしてるぅ……」
考えてみれば無理もない。
自分が気に入ってスカウトした歌姫が、俺を抱きしめながら誘惑してくるのだから。
「ここ、ちょっと苦しくなってきたかな?」
知らないうちにベルトが外されている!?
彼女の手が俺のズボンの中に忍び込んできた。
さわさわさわ……
「んあっ!」
「エッチなことばかり考えてるからですよ? 頭の中では、私の膣内におちんちんを入れたり出したりしてるんでしょう? バレバレですよぉ……」
ほっそりした指先は、即座にペニスの位置を探り当てた。
そして人差し指、中指、親指の3本がピアノを弾くような手つきで敏感な亀頭を弾く。
(や、やめて……ヌルヌルになっちゃう……!)
遠慮がちだった指先は、時を追うごとに自由奔放に俺自身を嬲り始める。
人差し指がカリ首を撫で回し、親指と中指が輪を作って棹を上下する。
「ほらぁ、しこしこしこしこ……♪」
巧みな指使いに我慢汁が根こそぎ搾り取られていく。
そしてますます彼女の手が滑らかに動くようになる。
「このまま私の中に入れちゃいますよ? ほらほらぁ~~」
指で作ったリングを小刻みに振動させながら、淫語を囁かれる。
亀頭をなで続ける人差し指の動きに、俺の腰がガクガクと波を打った。
必死で我慢しようにも、それすら許さない快感の連続責めだった。
「みちるっ! あ、あっ……それぇ! すご……い!」
小柄な彼女にすがりつきながら、俺は与えられる刺激に身震いした。
喜ぶ俺を見ながら、みちるは淡々と責めを続ける。
「ぜ~んぶ、判ります。だって、目も耳も鼻も……それに身体全部の感覚を『「みちる」』が抑えてるんですから」
快感に震える俺の身体を、彼女はしっかりと抱きしめてくれる。
そして思い出したように、左手を後頭部に添えた。
「あっ、ここがまだでしたね……」
「え……あ、あうぅぅぅっ!!」
彼女の唇が俺の声を遮る。
それは今までで一番長くて、熱いキスだった。
唇全体にバイブレーションをかけながら、舌先で激しく俺の口内をかき混ぜるテクニック。
そして今回は彼女も瞳を閉じて、キスに専念していた。
ちゅ…………ぷっ……
数分後、やっと唇が解放された。
キスの間、股間への責めは穏やかだったけれど、それを補って余りある激しい責めだった。
「あ……うぅぅ…………」
「くすっ、これで全部…………頭の中まで全部『みちる』になっちゃったでしょ?」
顎に全く力が入らなくなった。
それだけでなく、みちるが言うように何も考えられない。
彼女にイかされたいという思いしか湧き上がってこない……
その気持ちを見越したのか、みちるがポツリとつぶやいた。
「もうラクになりたいんでしょ? うふっ、じゃあ可愛くおねだりして? 大事なところをクリクリして~って」
聞きなれない言葉に怪訝な表情をする俺を見て、みちるは続けた。
「クリクリっていうのはぁ……こういう風にするの!」
すっかりビンビンになったペニスを、彼女が優しく握った。
「あっ、んうぅぅ……!」
刺激が優しすぎてじれったい、と感じたその時だった。
みちるは指先に力をこめて、二本の指で亀頭をこすり始めた。
「ここをね、マウスみたいにカチカチカチって…………くすくすっ♪」
「あっ、なにこれ……さっきまでと違うッ!」
まるで敏感な部分を柔らかな布でくすぐられるような指捌きだった。
俺の股間でヌルついた彼女の指がペチャペチャと音を立て始め、次第に大きくなっていく。
「ダブルクリックしちゃう? 連続で……うふふふふ」
「あっ、ああぁぁ~~~~!!」
彼女の小さな身体にしがみつく。
それでもみちるの手のひらは俺自身を握ったまま、責めつづけている。
「ほらぁ、カチカチって……感じちゃう?」
「感じるッ、こんなの無理だ……我慢なんてもう……ああぁぁっ!」
「このまま私の手のひらに負けちゃえば?」
「えっ、ええ……!?」
「男の人が出した後の、クタクタになったお顔がすごく好きなの…………」
その言葉を聞いて、俺は自分の予感が正しかったことを確信した。
やっぱり彼女はSだった。
しかも俺好みの、ソフトに男をいたぶるのが好きなS女だったのだ。
こんなに可愛らしい声と容姿なのに、あっさりと男を手玉に取ってしまうみちるに俺は心を溶かされそうになっていた。
「みちるの手、どうですか? ヌルヌルでエッチ?」
「う、うん……エロすぎて、もう俺……!」
「そうなんだ……うふふ、私の手をこんなに濡らしちゃって可愛いです……」
プルルルルルルルルルルルルルルル~~~
突然、部屋に設置されているインターホンが鳴った。
快感で縛られて動けない俺に代わって、彼女が受話器をとる。
『お時間10分前となりましたが……』
カラオケスタジオの従業員からの連絡だった。
「残念ね、もう時間みたい。延長します?」
みちるがチラリと俺の顔色を伺う。
本当は延長したいのでしょう……と言わんばかりの表情だ。
「い、いや。やめておこう」
「そうですか。では……」
彼女は俺の言葉どおり、フロントに10分以内に部屋を出る旨を申し出た。
「本当はしたいのに、我慢強いんですね」
「そんなこと……」
立ち上がろうとしたが、身体に力が入らない。
精神力も消耗したけど、それ以上にスタミナをごっそり持っていかれてしまったようだ。
「ちゃんとおねだりしてくれれば、私は受けますよ?」
「くっ……」
これ以上彼女の言葉に甘えれば、俺は絶対に最後まで求めてしまう。
男の意地として、初対面の女性に全てを見せたくは無かった。
魅力的なみちるの声と身体に、どっぷり溺れてしまうことだけは避けたかった。
(何とかして誘惑を振り切らなきゃならない)
素早く会計を済ませて、とにかく俺は店を出た。
(危なかった。本当に…………って、うん?)
しかし俺に休息は与えられなかった。
「これで終わりってわけじゃないでしょう?」
「えっ」
「二次会……いきません?」
ほっと一息つこうとした俺に、みちるが腕を絡ませてきた。
「うわあぁっ!」
さっきは感じなかった柔らかな胸の感触に、思わず声を上げてしまった。
「えへへ、ブラ取っちゃった。今度は私から『おねだり』しちゃう!」
腕を絡めたままで、みちるが俺の正面に回る。
そして俺の懐に入って、少し背伸びをするように両手を首に回してきた。
「もっと魅了してあげないとダメかな?」
見上げる瞳に吸い込まれそうになりながら、俺は答える。
「ううぅっ、こんなの……耐えられるわけないッ」
「きゃっ♪」
俺の腕がみちるの身体をきつく抱きしめる。
まるでずっと付き合っている恋人同士のように。
――そして彼女の宿泊先。
こじんまりとしたツインルームで、俺達は「二次会」を始めた。
薄暗い部屋の中、彼女が俺の上に乗る。
「ああぁ、みちる……!」
「反対側のお耳にも、私の声を吹き込んであげる」
騎乗位の体勢から上体を倒して、満は俺の耳元に口付けた。
小さな舌先が、まだ責められていないほうの耳を舐め上げる。
「そんなことされたら、俺はもう……!」
「お別れした後も、ずっとあなたのオカズにしていいんだよ……」
みちるが俺の腕の中で淫らに微笑む。
しかし俺は予感していた。
きっと、俺はもうこの子から離れられないだろう、と。
『DIVA~歌い手さんの誘惑~』 (了)
イラスト:みかみ沙更さん
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