とらいあんぐる! x 欲望の塔


イマコイ番外編『淫惑のペンダント』 イラスト:小林ちさと 文:11-47









クリスマス直前のある日――。

「ありがとうございました」

深々と頭を下げる女性店員に見送られ、その店から出てきた青年の手には小さな紙袋が握られていた。
彼の手の中にあるのは恋人へのプレゼント。
今年は少し特別なクリスマスにしたいから……と思い切って奮発したスターリングシルバーのペンダント。
水色の化粧箱に入った贈り物は、きっと彼の恋人を喜ばせるに違いない。


そんな浮かれ気分で帰路につく途中のことであった。
夕暮れの路地に長い影を落としながら歩いていると、不意に左手首に激痛が走った。

「痛っ……!」

袋をしっかり握っていたはずの手が鞭で打たれたように急にしびれ出す。
もしかしてスズメバチに刺されたのかと思って反射的に彼の手が開く。
当然ながらプレゼントの入った袋は地面に落ちるわけだが……。



「あれ? ないぞ……そんな馬鹿な!」

自分の真下に落ちたはずの袋が見つからない。
まだ痛みが残る手首をさすりながら彼はキョロキョロと周囲を見回した。

手放したものが音も立てずに何処かへ消え去ることなどありえない。


「探しものはこれですか?」

不意に青年の背中に声がかけられる。
それはとても透き通った上品な女性のものだった。
彼が慌てて振り返ると……自分の想像より数段上品で美しい女性が立っていた。


「あっ!」

彼女の手に握られていた袋が自分の探しものであることは間違いなかった。
だがそれよりも、その女性の容姿を見て彼は絶句したのだ。

ふわりとした金色の髪と雪のように白い肌を持つモデルのような体型をした女性がこちらを見つめていたのだから。


「いかがされたのです? 私(わたくし)の顔に何か?」

美女が彼に問いかける。不思議そうな表情を浮かべ、少し覗きこむように。
高いヒールのせいなのか青年との身長差はそれほどない。


「い、いいえ……!」

目のやり場に困る。これが彼の率直な心境だった。

女性は特に露出度の高い服を着ているわけでもない。
それなのに妙な色気がある。
印象的なのは、体の線は細いのに服の上からでもはっきりわかるほどの胸の膨らみ。

服装は淡いピンク色ののマフラーと、山吹色のコート、そしてミニスカートから伸びた長い脚。
紺色のタイツにダークブラウンのショートブーツ。
この季節にはありふれた格好だ……その女性が異常に美しいことを除けば何もおかしくはないのに。


「くすっ♪」

言葉を詰まらせる青年を見て女性が小さく笑った。
無意識のうちに彼は、マフラーと顎の間にわずかに見え隠れする白い肌に見とれていた。


「貴方が落としたこれは大切なモノなのですか?」

「は、はい……あの、そろそろ返してもらえますか?」

恐る恐る手を伸ばしてみるが、彼女は何故か微笑むだけだった。


「そうですね……もちろん返して差し上げるべきなのですが……」

「あ、あの?」

彼に向かって女性の指先がそっと伸ばされる。
マフラーと同じく淡いピンク色をした爪の先が彼の頬に触れそうになる……。


「ちょっとだけ意地悪したくなってきちゃいました。私の悪い癖ですね」

「ぅあっ…………」

中指、人差し指、と順番に指先が触れる。
たったそれだけの行為で彼の心臓が早鐘を打つ。

何かがおかしい――本能的に危険を察知しているのに拒めない。そして美しい5本の指全てが彼に触れた瞬間のことだった。

パリッという何かが割れるような音と共に、彼はその場に膝から崩れ落ちてしまった。







それからしばらくして青年は目覚めた。
真っ暗闇の中、遠くにぼんやりと赤い光が見える。
そして自分の体が全く動かせないことに彼は気づいた。

「あ、あれ……ここはどこだ……それに……このっ!」

指先の感覚はある。手足には力も入ってる。
それなのに体中を針金で締めつけられてるみたいに動かせない。

周囲の暗さに慣れてきた頃、自分の手足が赤く細い鎖のようなもので縛られていることを彼は理解した。

とにかく不気味な場所だ……。
強いていうならば「夢の中」という表現が一番しっくり来る。


「私の世界へようこそ」

「ひっ……!」

突然背中に浴びせられた聞き覚えのある美しい声。
そして暗闇の中を自分に向かってコツコツと歩いてくる誰かの気配を彼は感じ取る。

ほんのりと淡い光を放ちながら彼の目の前にやってきたのは先程の美女……いや、さっきと何かが違う!

ふわふわした金色の髪の上にツノがある。
大胆に胸元を開いた扇情的な衣装と、背中に見える翼のようなもの……そして蛇のように動いているのは尻尾!?


「悪魔……」

ポロリと呟いた彼の言葉を聞いて女性が表情を緩める。


「間違いではないですが正解でもありませんわ」




「私は誇り高きサキュバス。エマ・フロマージュと申します」

「サ、サキュ……バス!」

突然の出来事に青年は言葉をつまらせた。
いくら何でも悪い夢だ……一秒でも早く醒めて欲しい。

サキュバスという単語は知っている。ゲームやファンタジーの世界のみ存在を許される種族。
そして何よりも好色で、男を誘惑して堕落させる生き物……。


「あぁ……その怯えた表情の奥に潜む淫らな炎。期待と欲望に満ちた目が素敵です……」

夢だ。これは単なる夢にすぎないのだと青年は自分に言い聞かせた。

「僕をどうするつもりだ!」

「さぁ……どうしましょうか……フフフ」

決意を込めた彼の言葉をせせら笑うエマ。


「先ほどのお話ですが……条件付きで返してあげてもいいですわ?」

「えっ……」

彼を見つめていたサキュバスが、すぅっと虚空を指さす。
すると見覚えのある水色の衣装箱が浮かび上がった。

「それは――!」


「こちらの品……大切な贈り物なのでしょう。あなたの思考を読ませていただきました」

「……」


「ふふっ、どうやらすっかり忘れていたご様子。そんなに私が気になりますか?」

「そんなことは……ないけど……」

青年が思わず視線を落とす。エマの言うとおり、落とし物のことについては実はすっかり忘れていた。
しかしこの状況では落としたプレゼントのことよりも自分の身の安全を優先してしまうのは仕方のない事かもしれない。

「こちらをご覧なさい」

「うっ……!」

ほっそりとした指先が彼の顎を持ち上げた。
そしてついに彼は真正面からサキュバス・エマを見つめてしまった。

「フフフ……」

しっとりと潤んだ瞳、ミルクを流したようなきめ細やかな肌と、小さな微笑みをたたえた口元……全てが美しかった。
エマにじっと見つめられているのだけで心が溶かされてしまいそうになることに恐れを抱いた青年が視線をそらす。

「今、私の目をそらしたでしょう。それは当然の反応……」

「えっ!?」


「サキュバスを目の前にして魅了されない人間などいるはずありませんわ。貴方の身体に『勇者の血』が流れていない限り」

「勇者の……?」

その言葉を理解できず、不安そうな表情を浮かべる青年の顔を、エマが両手でふわりと包み込んだ。


「話を戻しましょう。私に抱かれたいですか? それともこの空間から抜け出したいですか?」

「!?」

エマの言葉を聞いて青年は自分が囚われの身であることを知った。
同時にこの世界が夢などというおぼろげなものではなく、今自分に起こっている現実だということも。

「ぼ、僕を……解放してくれ! なんでもするから!!」

「クスッ、そんなにここから出たいのですか? そうですか……なんでもすると言いましたね」

青年の目の前でエマは上品に笑い続けた。
目の前の獲物が怯えれば怯えるほど、彼女にとっては美味しい展開となることを青年は知らない。


「ではゲームをしましょう。私が与える快感に溺れず、大事な女性のことを考え続けることができたのなら……貴方の勝ちということで全てお返ししますわ」

「か、快感って…………」

その言葉に答えるように、エマは両手を彼の肩に置いた。
ひんやりとした感触に青年の体が小さく震えた。

「可愛い貴方にはハンディキャップを差し上げます。私は本気を出しません」

「えっ……」


「それでもおそらく貴方は悶え狂うことになりますわ。では……はじめますね?」

優しい言葉使いと同時に彼女の背後で揺れていた尻尾が二人の間に割り込んできた。
青年の目の前でくるりと先端を踊らせてから、エマは彼の股間に尻尾を絡みつかせてゆく。


「あっ……」

「巻きつけてあげますわ」

エマはしっかりと彼の顔を見つめながら、唇の端を歪めた。
尻尾がペニスに絡みつく度に、青年の体にじんわりとした快感がほとばしる。
しっとりとしたビロードの様な肌触りが異様な快感を紡ぎだす。

「ひっ……あ、ああぁぁ!」

ゆるやかに巻きつけられた尻尾は、彼自身をできるだけ刺激しないように気遣いながらウネウネと耐えず伸縮を繰り返している。
時々感じやすい場所を探るように強めに締めあげたり、ペニスの形を覚えるようにねっとりと這いまわる。

「や、やめ……てえええ!」

「いいえ、駄目ですわ。このままゆっくり上下運動します……ほら心地良いでしょう?」

青年のペニスから我慢汁があっけなく搾り出される。
透明な粘液がエマの尻尾の隙間に染み渡り、ますます強い快感をもたらすことになる。

「もう少し追い詰めてから、今度は尻尾の先端を使ってあげますわ」

「先端……って、ふああぁっ!」

問いかけに対してエマは行動で答えた。
自らの尻尾の先を、彼の尿道にツンツンと突き刺してみせた。

「甘い甘い毒がたっぷり詰まっている私の尻尾の先が……貴方のペニスにほらぁ♪」

「んあああぁぁっ!」

ツプッ……という小さな音がして、尻尾の先がほんの数ミリだけペニスに突き刺さった。

「キスされちゃいましたね? そしてどんどん染みこんでいきますわ……」

柔らかなゴムで出来たような尻尾の先から、じわりとピンク色の粘液が溢れ出す。
その正体は即効性の媚薬……人間の男にとっては狂おしいほどの刺激を誘発する液体。


「貴方は動けないまま体が毒に侵されていくのを感じるだけ……いかがですか? サキュバスの尻尾に翻弄される屈辱は」

「あああ、なんでこんな、し、尻尾なのにいいいぃぃぃ!」

体を抑えこまれたまま、青年は泣き出さんばかりの勢いで顔を横に振る。

駄々っ子に言い聞かせるようにエマは彼の耳元でささやく。


「クスクス♪ ねえ……貴方は今、淫魔に犯されているのですよ?」

顔のすぐそばでエマを感じながら、青年は呼吸を止めて刺激に耐えようとしたが――

クニュクニュクニュ♪

「うあっ、あああぁぁ~~~!!」

「体の隅々まで調べつくされて、感じやすいポイントをいたぶられてしまう……」

「い、嫌だ! こんなの……絶対いいぃぃぃ…………ああああぁぁっ!」

嫌がる彼をねじ伏せるかのごとく、エマの先端が裏筋をしつこくなぶる。
お互いの柔らかい部分をこすりつけながらも、一方的に彼の性感だけを高めていく。

「ほらほらほらぁ~♪」

止めどなく流れる我慢汁を尻尾全体で絡めとって、ドロドロとした快感を容赦なく青年に流し込む。
すっかり張り詰めてしまったペニスをからかうように、エマの尻尾は何度も彼に淫毒を注入してゆく……。

「絶対に逃がしませんわ? 体を動かせないまま、心も絡めとってアゲル……」

再び蠢きだす淫魔の尻尾。
今度は肉棒に絡みついたまま、その先端が彼の肛門をなぶるようにくすぐり始めた。

「こちらも体験してみますか? フフフフ……」

無防備な部分を責め嫐られる直前、青年が叫んだ。


「これのどこがハンデなんだあああぁぁっ!」

「うん? 私は尻尾しか使っていませんわ」

「!!」


突然喚きだした青年に対して、エマは冷静に回答する。


「手のひらはこの通り貴方の肩に置いたままですし、体も密着させておりません。もちろんキスも……まだしておりませんわ?」

彼女が何気なく口にした言葉に青年は反応してしまう。

(まだ……?)

いつかは彼女とキスが出来る、という甘い期待感が彼の心を駆け抜けた。
その些細な変化をエマは見逃さない。

「サキュバスの甘いキス……耐える覚悟はございますか? クスクスッ」

妖しく微笑むエマを見ながら青年は思う。
もちろんキスだけで降参してしまうほど経験不足ではない。

しかし今までの流れを見ているだけで、サキュバスというのはセックスについての技能は尋常でないとわかる。
それよりも注入された媚薬の効果なのか、この美しいサキュバスと口づけを交わしてみたいという気持ちが少なからず膨らんできている……。

「尻尾だけの愛撫でもこの通りのご様子ですから、例えば手のひらでペニスをしごいたり、口の中で優しくとろけさせたり、体を密着させての全身愛撫などは貴方にとっては良い結果になりませんわ?」

わざと青年に想像させるような言い回しでエマが言う。確かにこれはハンデ戦なのかもしれない。


「ああぁぁ……」

エマの言葉がきっかけとなり、彼の心にピンク色の靄がかかってしまった。

サキュバスの手コキ、サキュバスのフェラ、そしてサキュバスとの……本番……どれも魅力的で危険な誘惑。

青年が妄想しているその間もずっと尻尾による愛撫は続いている……。

「別に射精してしまっても構いませんよ。心さえ折れなければ……」

「えっ…………」

いつの間にか顔を寄せてきたエマが優しくささやいた。

「射精させられても強く彼女を思い続けることができるなら大丈夫ですわ?」

「で、でも……」

青年はためらいながらも自分の心が剥がされてゆくのを感じていた。

言葉巧みに自分を誘惑するサキュバス……その意図することがわかっていても抗えない。

彼女の尻尾によって感じさせられた体を解放してやりたい……たった一度だけなら気持ちを立て直せる。


「さあ、どうぞ……最近ずっと我慢していたのでしょう? 」

誘惑の瀬戸際で踏ん張っている彼の背中を、エマはたった一言で谷底へたたき落とした。

青年の体中から力が抜けていく……そして淫らに蠢く尻尾の先が彼のアナルを軽く弄んだ瞬間……



「うあっ、ああ、ああああ~~~~~~~~~~!!」


ビュルッ、ドピュウウウウウ~~~~!


人間では到底ありえない快感が彼の体を焼きつくした。



「まずは一度目……」

ビクビクと体を震わせて息を切らせる彼を見ながら、エマはゆっくりとしゃがみこむ。そして口を大きく開けてヒクついたペニスの先端を優しく口内に迎え入れた。

「ああっ、待って! まだ駄目っ、うああぁぁっ!」

くわえられた……ただそれだけなのに、精液を搾り出された時と同等の幸福感が彼を包み込む。
亀頭の先をゆっくりと這いまわる舌先は決して射精を強要するものではない。

「なかなかいい味ですね……もしかして恋人のために我慢していたのですか?」

問いかけに対して青年は何も答えられない。
彼の思考を支配していたのはただ一つだけ…………これがサキュバスのフェラ! あまりにも甘美なエマの口技に一切の思考が停止してしまった。

丁寧に味を確かめるようにチロチロと鈴口を舐めたり、棹にこびりついた精液を清めるような舌さばき……それなのに、青年は先程以上に興奮させられてしまう。

ゆっくりと前後に揺れ動くエマの頭を彼は熱に浮かされたように眺めていた。
魅惑のサキュバスがペニスから優しく精液を抜き取ってゆく……このまましゃぶられ続けたらいずれまた放出してしまうのは目に見えている。


ちゅぽんっ……!


突然ペニスがエマの口から解放された。
もっとフェラを続けて欲しかったという気持ちと、解放されてよかったという気持ちが青年の中でせめぎ合っている。

「んふふっ、もう降参ですか?」

「ぅあ……」

しかしこのままでは元の世界に戻れない。
戻れなくされてしまうという思いが彼の精神の堕落を食い止めた。

気を取り直してエマを睨みつける青年を見て、彼女もクスクスと笑う。

「その健気なところも魅力的ですわ。とても愚かですけど」

青年の目に希望の光が宿ったのを見たエマは嬉しそうに言う。
そして震える彼の下半身を両手で固定してから再び大きく口を開いた。

そして――

「少しだけ本気を出してあげますわ。もう一度味見しますね…………ん~、あむっ……♪」

チュルッという音とともに、サキュバスの口内に閉じ込められた

「うっ…………あ! うわああああぁぁっ!!」

なめらかにエマの口の中に滑り込んだペニスは、そのまま彼女の喉の奥にまで迎え入れられた。
そこはまるで女性の膣内のように熱く、ヒクヒクと彼自身を締めあげてきた。

いわゆるディープスロートをさらに強化したようなサキュバスのフェラに、たっぷり精を搾られて萎えかけていたペニスがあっという間に復活を遂げた。

ジュルルル…………

「……あああぁぁっ!」

ゆっくりと喉元から引きぬかれただけで、青年は再び射精しそうになった。

そんな彼を見つめながら、エマは次の責めに移ろうとしていた。

「ここからは少しハードに参りましょう。貴方がずっと見つめていたバストでの愛撫です」



「っ!!」

「クスッ、視線に気づかないとでも思っていましたか? そして心が乱れましたね……貴方の恋人がしてくれないようなことでも、私ならしてくれるかもしれない……そう思っているのでしょう?」

エマの言うとおりだった。
青年は彼女の胸が気になって仕方なかった。
先ほどまでの尻尾やフェラも厳しい責めではあったが、あの胸に挟まれたら今まで以上に我慢できない気がする。

黙りこむ彼をじっと見つめながら、エマが再び顔を寄せてきた。

「してあげる……立ったままで犯して差し上げますわ」

エマの指先が空中で円を描く。
すると青年の体がふわりと数十センチほど浮き上がった。

エマはペニスを硬さを確かめることもなく、柔らかそうなバストをそのまま彼に押し当てた。

ふにゅんっ!

「あはああああぁぁっ!」

彼の口から情けない声が飛び出す。

「谷間に吸い込まれちゃいましたね? うふふふ……」

いきり立ったペニスをすっぽりと覆い隠すエマのバスト。わずかに彼の先端だけが谷間から見え隠れしている。

(い、いいいよおおぉぉ! この胸、すごいいいいぃぃ!!)

自分では意識できないほどだらしない表情で彼は顎を跳ね上げて快感をこらえている。
包み込まれた青年は意識をつなぎとめるのがやっとの様子だった。
むっちりと自分を圧迫するバストの感触に気が狂いそうになる。
快楽中枢を直接刺激してくるサキュバスの肉体。
しかもエマのほうから体を擦りつけてきたことで暴力的な刺激が無防備なペニスに注ぎ込まれたのだ。

「このまま抜き差ししましょう。それだけで貴方の魂を崩すことができそうな気がします」

ゆっくりと彼女の体が上下に蠢く。

ズチュ……

「うううぅっ……」

「ほら、まだ一往復ですよ。もっと我慢できますわ?」

ズニュ……プチュ……

「あふああぁっ!」

「やっと二往復……どんどん激しくしていきますね」

ニュグッ、クチュクチュクチュッ!

「あがあぁっ、も、もうダメエエエ!!」

「情けないこと……」

三往復もしないうちに青年の体が波を打った。

弓なりに反った体を見つめながら、エマは残酷な笑みを浮かべてバストに埋めたペニスをグニュグニュと弄ぶ。

「ああああああぁぁぁ~~~!」


「イきなさい」

ドピュウウウウウッ!

青年の叫び声を刈り取るように自らのバストで彼をもみくちゃにするエマ。
真っ白な飛沫が胸の中で弾けるのを感じながら、精液を肌から吸収してゆく。

「まだまだ足りませんよ? さあ……」

飛び散った精液が吸収された後に残されたペニスを、再び優しく揉みしだく。

「だ、駄目だよ! 無理、もう無理だからああああぁぁぁ」

「嘘はよくありませんわ。私の胸に抱かれているのですから、もっともっと…………ほら、登ってきましたよ?」

そしてエマが彼の先端だけを何度も胸の中でこすり上げると、再び快感の波が青年に襲いかかった。

ビュルルッ、ビチュッ!

「あ……がぁ……」

「これがドレインバスト……貴方を狂わせる魅惑の乳搾精」

サキュバスのテクニックによって、自分の意志に関係なく射精させられた青年は既に疲労で身動きがとれない状態にされていた。

短時間での複数回の射精は気力と体力を根こそぎ奪い取る。

しかしエマはそんな彼に対してさらに追い打ちを掛ける。

「ゥア……アアアァァァァ~~~!

彼を見上げながら、そっと自らの胸に手を添えて柔肉を動かす。傍目にはただそれだけの行為。
それなのに青年の喘ぎは回数を増すごとに大きくなってゆく。
サキュバスの肉体によって辱められた人間の体は、彼女たちの虜にされてしまう。
体を重ねる時間が長引くほど、サキュバスに抵抗できなくされてゆく……。

「この硬さ……、まだまだ搾れそうですね」

「やめ……や……ああああぁぁぁっ!」

ドビュッ、ビュルルルッ、プシャアアアア……

「あら、潮吹きまで……ふふふ、ごちそうさま。一瞬で3回分の射精……サキュバスの淫技はお気に召しましたか?」

「ふあ……ああぁぁ……」

もはや喘ぎ声すらまともに出せない彼の顔を見てエマが続ける。

「すっかり目の光が失せてますわ……愚かな青年。ではこれで終わりにしましょう」


エマは静かに目を瞑って、小さな声で何かを唱え始めた。


「この空間を支配しているのは私……」

それは青年には聞き取れない程度の声で唱えた呪文。
サキュバスの中でも高位に位置する彼女に許された時間停止の魔法だった。

「……時は止まる」

青年の体は石像のように固まった。そしてこの空間で動けるのはエマのみとなった。

彼女は身動きの取れない彼の体を抱きしめながら、数カ所に優しくキスをした。


「眼と耳と鼻だけは感覚を戻してあげますわ。今から自分の身に起こることをしっかり味わいなさい」

エマの唇に込められた魔力が彼の体を一部だけ覚醒させる。
時が止まった世界の中で、青年は彼女の姿と音と匂いを認識できるようになった。
しかし体は動かせない!

「貴方の好きなバストだけで何回もイかせてあげますわ」

「……」


「まずは先端から……」

エマは亀頭に顔を寄せて、トロトロの唾液で彼をたっぷりと濡らす。
その上で余裕たっぷりにバストの中に先端を差し込み、何度もピストン運動を繰り返した。

「今は何も感じないでしょう? 今はね……うふふ、感覚がないからわからない? 亀頭だけをたっぷりパイズリしたのですよ」

片方の乳に集中的に擦りつけたり、乳首で裏筋をクリクリとこねまわしたり……
先ほどまでの青年ならとっくに射精してしまうほどの快感をエマは容赦なく叩くこんでゆく。

「時が動き出した瞬間、蓄積されたものが一気にあなたに襲いかかりますわ?」

「……!」

身動きも取れない状態のままで青年は戦慄した。
時間停止の状態でたっぷり愛撫された後、どうなるのかは容易に想像がつく。

しかし彼にはどうすることもできない……それをわかっていてエマは彼の感覚を一部だけ覚醒させたのだ。


「次は棒の部分を……」

今度は中指と人差し指でカリ首を挟み込んでから、一気に根本まで急降下してみせた。
唾液でヌルついた肉棒を丁寧に手でしごく。普段ならこの手コキだけでも間違いなく射精してしまうだろう。

「ふふふ……こんなに硬くしたままで私の胸で揉みほぐされたら、時間停止してなければ瞬殺ですわ」

トロトロの唾液を肉棒全体に塗り込めてから、再びバストで覆い隠す。
さらに体全体を使って数十秒もの間、彼を愛撫するエマ。

「これでおしまい。貴方はきっと数回は連続射精してしまいます」

物言わぬ彼の首に腕を回し、エマは吐息を吹きかけながら甘くささやく。

「でも念には念を入れて……ん……チュッ……♪」

エマは少しだけ開いたままの状態である彼の口元に、ピンク色の舌先を滑りこませた。

ピチュッ、プチュ……レル……

「サキュバスのディープキス、それもたっぷりと……これもきっとあなたに壮絶な快感を与えると思いますわ」

彼女の言うとおり、それは時間停止していなければ気が狂ってしまうほどの刺激だった。
サキュバスの唾液は極上の媚薬。
為すがままにキスされるということは、それを無防備な状態で何度も飲まされるのと同じことだ。

約二分間ほどキスを続けてから、エマがそっと彼から離れた。


「ではそろそろ……」

そしてまた先程と同じように静かに呪文を唱え始める。
青年は身動きできぬまま、この後自分に起こるであろう責めに耐えようとした。



「時は動き出す……」

エマの呪文が終わると同時に、青年の五感も復活した。

「かはっ! あ、ああぁ……」

「さあ、一気にきますわ。快感の波が――」

彼女が全てを言い終える前に、青年の体がビクンと大きく跳ねた。


「おっ、おあああああぁぁっ! うあっ、ああ、ああぁぁ~~~~~!!」

今は何もされていないのに亀頭がもみくちゃにされ、裏筋がくすぐられている感覚が彼を襲う。
あまりの刺激に股間を抑えても無駄だった。
内部から壊されていくように快感の濁流がとめどなく流しこまれてゆく。
しかもそれを止めるすべがないままに、今度は棹から睾丸、アナルまでもが全て飲み込まれてゆく!

「あっ、あああぁぁぁ、これっ、ええええっ!」

「クスクス♪ 次はキス責めのフラッシュバックですわ?」


「ふぐぅぅぅぅっ!」

股間を抑えこんでいた青年の手が、今度は顔の前あたりに伸ばされる。
まるで目の前にいる誰かを追い払うような動きを見せるが、すぐに両手がダランと垂れ下がった。

「あっ……あ……エマ、エマァ……ぁ、もっとぉ……!」

「ふふっ、もう目の前が桃色ですわね?」

時間停止の状態での二分間のキスは、現実の時の流れでは数時間以上継続される。
もちろんエマのディープキスだけではなく、パイズリも手コキも全てが繰り返される。

青年の魂がエマの色に染まってしまうのは時間の問題だった。

「アハハハハハッ! 糸が切れた人形みたいになってしまいましたわ。そして……貴方の魂は汚れきったまま」

嘲笑を含んだその言葉すらもう彼の耳には届かない。
青年は体中をビクビクさせたままで何度もエマの名をつぶやいている。

「嬉しい……私の事を愛してくださるのですね。ではこのペンダントは私が頂きましょう」

エマは青年の魂がこもったペンダントを箱から取り出し、優雅な仕草で身につける。

「もう貴方の時は止まったままですわ。永遠にこのまま……ね?」

自分によって壊れ果てた青年をしばらく眺めた後、エマは闇の中に消えてゆくのだった。



(了)













★エマさんに搾り取られちゃうゲームあります!

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