『魔女の封印』
(イメージイラストは久遠樹さんからお借りしました)
西の国の勇者・カインは敵陣の奥深くで傷ついた身体に回復魔法をかけ続けていた。
しかし黒魔術により疲弊した肉体は、即座に回復の兆しを見せない。
(とんでもなく強かったな…………)
カインは小さく溜息を吐いてから、自分の数メートル前方にある骸に目をやった。
そこに横たわっている女性こそ、大魔導師アリス……彼をここまで苦しめた相手に他ならない。
邪悪な魔力に比例して無限の輝きを放つ青い瞳と、ざわめくような金色の髪、そして人間ではありえない純白の肌と均整の取れた細身の身体。
しかも見た目の美しさとは裏腹に、アリスは攻撃魔法と回復魔法を同時に繰り出す恐るべき相手だった。
戦いの最中は不老不死ではないかとすら思えた強敵だったが、今は静かに目を閉じたまま動かない。
だが、アリスの最期の言葉が頭の中から離れない。
「今回はあなたの勝ちみたいね。でも私は必ず戻ってくる!」
それだけ言い残して、彼女は前のめりに倒れた。
そしてピクリとも動かない肉の塊になったわけだが……
「あれはどんな意味だったのだろう」
ただの捨て台詞であって欲しいと彼は願った。
正直、もう二度とアリスと戦いたくない。
アリスは数ヶ月前に、この東の国へやってきたと言われている。
彼女は膨大な魔力を使い、一夜にしてこの城を築いた。そして無数の魔物たちを召還した。
東の国王は即座に軍を動かし、魔女を国から排除しようとした。
屈強な兵士たちを集め、魔の巣窟へと送り出す。
国王は朗報を心待ちにしていた。
しかし届くものといえば、派遣した軍が全滅したという知らせばかり。
数週間で数千の兵士たちの魂が天に召された。
事態を重く見た国王は、周辺諸国に協力を要請した。
国王が集めた情報によると、忌まわしき魔女を駆逐するためには三つの聖なる力が必要だということだった。
一つ、伝説の武具。
二つ、精霊の祝福。
三つ、汚れなき魂と強靭な肉体。
そして派遣されたのが、西の国の勇者・カインだった。
世界には数多くの勇者達が存在する。
その中でも彼は「魔女狩り」の異名を持つ、若手随一の実力者だった。
国王は、馳せ参じたカインに各国から借り受けた伝説の武具を与えた。
さらに精霊の祝福を施した後にアリスの城へと向かわせた。
そして今、彼は見事に憎き魔女を打ち倒すことが出来たのだ。
一刻も早く国王に良い知らせを届けたい。
焦る気持ちを押さえこみ、カインは回復に集中した。
「これでよし……もう歩けるはずだ」
傷が全て塞がったのを確認してから、彼はゆっくりと立ち上がった。
治りたての傷口から軽い痛みを感じたが、勝利の余韻が打ち消してくれた。
カインは魔女の住処である城をあとにした。
城の外に出ると、辺りは一面の闇に包まれていた。
空には月が浮かび、星が瞬く静寂の世界。
城に潜入してからは戦いの連続で、時間の感覚も全く麻痺し続けていた。
穏やかな夜空を眺めていたら、急にガクンと膝が崩れそうになった。
「国王への報告は…………朝を待とう」
いかに回復魔法をかけた身体とは言え、疲労が蓄積していることに変わりはない。
カインは夜が明けるまでの数時間を自分の家で過ごすことに決めた。
東の国のお城へは、陽が昇ってから魔法で飛べばいい。
「ただいま……」
カインは家のドアを開けると、小さな声で呟いた。
この家にはもう一人の住人が居た。カインの幼馴染でルナという女性だ。
二人は将来を誓い合った仲ではあるが、いまだに純潔を貫いている。
それはルナが教会のシスターであることも理由の一つではあったが、カイン自身の身持ちの堅さもあった。
正式な夫婦となるまでは、女性を穢してはならないという優しさもあったのだが、一つ屋根の下で、同じベッドで身体を寄せ合って眠るだけでも充分幸せだった。
ふたりは今回の魔女討伐が終わったら、西の国の小さな教会でささやかな結婚式を挙げることになっている。
コンコンコン
「ルナ、起きてるかい?」
血なまぐさい武具を脱ぎさり、聖水で身を清めたカインはルナが待つ寝室のドアをノックした。
戦いが終わったあとは、愛しい彼女の顔を見ながら眠ることが何よりの癒しになる。
ほんの短い時間でもルナの寝顔を見れば、東の国王への報告も万全の態勢で臨めるだろう。
カチャッ
彼女からの返事がないので、カインはゆっくりとドアを開けた。
「なッ!」
あまりの驚きに、それ以上言葉を発することが出来なかった。
ルナの代わりに一人の女性がベッドに腰を掛けていた。
窓の外の星を眺めていたその女性は、カインの存在に気付くと振り向いてニッコリと微笑んだ。
「あら、遅かったわね……私を倒した勇者様」
目の前には、先ほど倒したはずの大魔導師アリスが不敵な笑みを浮かべていた。
(馬鹿な……! 確実に息の根を止めた筈なのに!!)
これは本当にアリスなのだろうか?
その疑問に答えるように、彼女が口を開いた。
「……さっきは酷い目にあわせてくれたわね」
静かな口調ではあるが、明らかに敵意がこもっている。
金色の髪がフワリと揺らめき、青い瞳に邪悪な輝きがみなぎっていく。
(やはり奴だ……! くそっ、仕留めたと思っていたのに!!)
歯軋りするカインに向けて、魔女が冷ややかに微笑む。
「残念そうね? ふふふ……いい表情だわ」
「貴様、一体どうやって……」
カインの問いかけに、アリスは軽く鼻を鳴らした。
「魔女はね、そんなに簡単に死ねないの。あなたが倒したのは私の器だけ」
「くっ……!」
「そんなことより、あなたの大事な彼女……心配ね?」
「!!」
カインの表情が凍りつくのを見て、アリスは満足そうに笑みを浮かべた。
「こんな夜中にどこに行っちゃったのかしらねぇ?」
「貴様の仕業か!」
「……だとしたらどうするの?」
「今すぐ叩き切る!」
カインは護身用のナイフを腰から抜き出そうとした。
「あわてないで。今、主導権を握っているのはどちらかしら?」
「ぐっ……卑怯な…………!」
「あらぁ、褒められちゃった。あはははははは!」
高笑いするアリスを見ながら、カインは怒りで身を震わせた。
握り締めた拳からは血が滲み出した。
暫くの間、アリスはカインを見つめながら笑い続けた。
「うふふふ、ねえ? 気分が良いから、あなたの大事な人を解放してあげても良いわ」
高慢な態度に、歯を食いしばって耐え忍ぶ。全ては愛するルナのためだ。
「……お前からの条件はなんだ」
「思ったより物分りがいいのね」
カインの言葉を受けて、アリスが立ち上がった。
大理石のような白い肌が月明かりを反射している。
「私を満足させられたら、あの子を返してあげる」
そして静かにカインの首に腕を回し、柔らかそうな胸を押し付けてきた。
「!?」
さらにコツンとおでこをぶつけてきた。
突然の展開に、彼の思考が一瞬停止した。
(満足させる? 何を……こいつを? どうやって)
「どうしたの? 女の子と交わるのは初めて?」
魔女の挑発的な言葉で我に返る。
「まさか……ふざけるな!」
「そうよね、ふふっ。童貞の勇者なんてありえないですもの」
カインは内心穏やかではなかったが、できるだけアリスに悟られぬよう平静を装う。
彼女はしばらくして、彼の首に回していた腕を解いてから自らベッドに横たわった。
アリスは彼を見つめながら、ゆっくりと片足を持ち上げて見せた。
白い足の付け根は、うっすらとした繁みで覆われている。
「私はじっとしているから、好きにしなさい。大サービスよ」
「しかし……」
カインは戸惑っていた。この魔女の意図が読めない。
このまま言いなりになって彼女を抱いて良いものか……それ以前に女性を抱くということ自体が初めてなのだ。
「夜明けまでに私が満足できなければ、あの子を殺すわ」
迷いを見せる彼に向って、アリスが冷たい声で続ける。
「もう一度言うわ。あなたに選択の余地はないの。私の言うとおりになさい?」
突き刺すような言葉と視線に押され、カインは覚悟を決めた。
(くそっ……なんてことだ……!)
人質のためとは言え、敵の命令に従う屈辱にカインは身悶えした。
「ふふっ、いい子ね……」
アリスは目の前で全裸になったカインを見て、恍惚とした表情を浮かべた。
そして両手を大きく広げ、彼に向ってウインクをする。
「抱きしめてあげる」
そして立ち尽くす彼の手をとり、ベッドに向って二人で倒れこんだ。
「あああぁっ!」
二人分の重さに、ベッドが大きく揺れる。
カインの引き締まった身体にアリスの柔らかい肌が絡みつく。
「気持ちいい?」
軽く鼻にかかったような声でアリスが尋ねてきた。
(う……これは気持ちいい……)
自らの意思ではないとは言え、女の身体を知らないカインにとってはアリスの肌の感触は心地良すぎた。
緊張し続けていた筋肉が緩む。
そして彼が口に出さずとも、アリスは彼の思考をある程度読むことが出来た。
「私も……う、うぅん…………くっ!」
蜜のように甘い喘ぎ声に、身体だけではなくカインの心も少しだけ緩む。
思わずアリスの細い身体を力強く抱いてしまった。
「抱きしめられただけで、すごい……わ……」
彼の心に芽生えた罪悪感を、腕の中のアリスの喘ぎ声が塗りつぶす。
男の本能が敵の身体に溺れていく危険を麻痺させていく……。
暫くの間、カインは熱心にアリスの身体を弄んだ。
手のひらには収まりきらぬほどのバストや、細い首筋に舌を這わせる。
アリスは逆らうこともなく、素直に快感を受け入れている。
カイン自身にも女性を征服する満足感が溢れてくる。
「本気か?」
「えっ?」
「本当に感じているのかと聞いている!」
カインはじっと彼女を見つめながら、指先で乳首をつまみあげた。
「な、なにを言わせるのよ…………本気よ」
「……」
アリスを観察する。
どこかわざとらしさがないものかと粗を探してみたものの、カインの目にはアリスが心底感じているように見えた。
「あなたに抱きしめられてるだけでも熱くなってきちゃう……本当よ……」
薄く涙を浮かべながら見つめ返す瞳に魅入られ、カインの責めはますます激しくなった。
夢中になってアリスを責め続けるうちに、カインの心中に変化が現れた。
自分の拙い愛撫にアリスは応えてくれる。
しかも本気の涙まで浮かべて、いじらしくて、まるで恋人みたいな……
(違うっ! こいつはルナじゃないっ)
カインは大きく首を横に数回振った。
一瞬でもアリスに愛情を感じた自分を責めた。
(俺は自分の大事な人をこいつに人質にとられてるんだ……憎しみを思い出せ!)
アリスの豊かなバストを掴む指先に力がこもる。
その直後、美乳が激しく歪んだ。
「あっ……今の愛撫、すごく優しい……」
「なっ!?」
しかし、アリスの口から上がったのは悲鳴ではなく、とびきり甘い喘ぎ声だった。
「愛してくれてるんだ?」
「馬鹿な……俺は思い切り!」
間違いなく全力で、引きちぎらんばかりにバストを掴んだはずなのに……。
しかしアリスの目が嘘をついている気配もなかった。
「敵なのに思い切り愛してくれるの? 勇者様」
「ちがう! 違うんだっ!!」
「本当に? でもそのわりには…………」
アリスは叫ぶ彼の頭を片手でなでながら、もう片方の手を下腹部に潜り込ませた。
クチュ……♪
「ふああぁぁっ!」
カインの顔が跳ね上がる。
突然柔らかな手のひらに亀頭が包み込まれたのだ。
「すごく気持ち良さそうに聞こえたけど?」
快感に震える彼の顔を撫で回し、アリスはそっといたわるように指先をすぼめた。
「素直に言っちゃえば? 気持ちいいって」
「ううぅ…………」
「アリスの身体に触れてるだけで感じちゃうとかいって欲しいな……」
その言葉は、カインの心を大きく揺らした。
「ねえ、どうなの?」
「――ッ!」
必死の思いで首を横に振る。
「本当に?」
「うぐ……」
再度アリスに念押しをされると、彼はいよいよ自分の心がわからなくなってきた。
ここでアリスの身体を、快楽を認めることに何か危険なものを感じる。
しかし今は魔女の手からルナを救い出さねばならない。
そのためには彼女をいい気分にさせる必要がある。
「感じる……すごく気持ちいい…………」
考え抜いた末の結論だった。
素直に応えることがアリスを満足させることになる。
それに実際……彼女の身体は心地良い。
迷いながらも彼は愛撫を続けた。
そしてアリスの身体に少しずつ溺れていくのを感じ始めていた。
(身体が熱い……)
愛撫している側である自分の身体が火照っている。
さっき軽く触れられただけのペニスがズキズキと脈を打ってきた。
「くすっ……敵の魔女を抱いて感じてるなんて、ありえない勇者様だわ」
アリスがポツリと言った。
「うっ、うるさいっ!」
「自分から快楽に溺れるなんて信じられない」
カインの愛撫に身を委ねつつ、アリスは彼の葛藤を弄ぶ。
もう一息で快感の虜になりそうな無垢な心を、淫らな手でそっと撫で回してやる。
「黙れ! うるさいっ!」
アリスの言葉に動揺したカインが、下半身を強く押し付けた。
「あああぁぁんっ!」
硬くいきり立ったペニスがクリトリスをなぞる。
しかしまだ挿入したわけではなかった。
「くふ……」
甘い刺激にカインも喘ぐ。
やはりペニスへの直接的な刺激は強烈だ。
「そんな、急にアソコを……こすり付けてくるなんて!」
しかし彼以上にアリスは感じていた。
先ほどまで冷ややかに彼の心を弄んでいた口からは、再び熱い吐息しか溢れてこない。
アリスの瞳はウサギのように怯え、身体中を快感で小刻みに震わせている。
白い肌は桃色に染まりつつあった。
その様子がカインにはたまらなく愛おしく思えた。
「ね、ねえ……さっきはごめんなさい」
「あ、いや…………」
「だからちゃんと入れて? 脚……開いてあげるから」
彼女の長い脚がゆっくりと折れていく。
その付け根にある宝珠は、しっとりと濡れたまま肉棒を待ちわびているように見える。
(挿入したい……)
ひそやかなアリスの繁みに心を奪われ、カインは無意識にペニスの先を膣口に当てた。
「そのまま差し込んで? お願い…………」
すっかり逞しくなった肉棒に、アリスの白い指が絡みついた。
自らの愛液に馴染ませるように、彼女は亀頭をヌルついた泉の中で軽く犯した。
「くううっ!」
激しくしごかれたわけでもないのに、カインは急に果ててしまいそうになる。
そして慌てて腰を前に突き出してしまった。
クプウウウゥゥッ!
「あ、あああぁぁぁ! 一気に入れちゃだめえええええ!!」
アリスの言葉も虚しく、ペニスは膣の奥まで突き刺さってしまった。
そして彼女の意思とは無関係に、すっかり潤みきった膣内はカインの剛直を熱く歓迎した。
(こんなに……熱いのか……!)
膣内に包み込まれた瞬間から、彼は身動きが取れなくなっていた。
不規則に蠕動する膣壁がカインの身体を甘く痺れさせ、快楽に顔をゆがめるアリスの端正な顔立ちが彼の思考を停止させた。
(動きたいけど、動いたらすぐにイってしまいそうで!!)
心は熱いままなのに、背中に流れる汗が妙に冷たく感じる。
このまま放出してしまったら、この魔女に心を奪われてしまうような気がした。
「ああぁ、あの……あのね……名前、呼んでいい?」
しかしカインの下で快感に震える魔女は、更なる攻撃を仕掛けてきた。
泣き出しそうな表情で誘惑する姿に、思わずカインは首を縦に振ってしまう。
「カイン……ああ、カイン! もっと!!」
許しを得たアリスは、彼の名を呼びながら緩慢に腰を動かし始めた。
クニュッ、チュプッ、クチュッ……
突き刺さったペニスを暴発させない程度にゆっくりと刺激を積み重ねていく。
「やさしい……すごく優しいの、あなたの手……!」
さらにアリスは彼の手を握り、自らの胸へと導く。
(ああ、こんなことをされたら……!)
だが、時既に遅し。
左手と右手をやんわりと握られたまま、カインは両手でアリスのバストを味わうことになった。
膣内でペニスを抱きしめられている強烈な快感に加えて、手のひらを通じて感じる極上の柔らかさ……。
「もっと触って? もっと感じさせて……!!」
アリスもすっかり身体中で彼を求め、彼を感じ続けている。
恐らくもうすぐ彼女は絶頂してしまうのだろう。
クニュウウッ
「ああああぁぁぁっ!」
彼がバストを揉み回すと、アリスは恥ずかしそうに首を横に振る。
(アリスを感じさせている……とは思うのだが……)
しかし彼は漠然とした不安を感じていた。全てがうまく行き過ぎているように思えた。
「くっ!」
雑念を振り払うように愛撫を続ける。
「きゃふっ、あああぁぁ、何度も同じところを……! 意地悪しないでぇ……」
そしてまた観察する。
やはり演技には見えない……。
「じっと見つめられると嬉しくなっちゃう」
少女のように瞳を潤ませ、自分を見つめるアリスに、彼は一瞬だけ心を奪われた。
このまま彼女と添い遂げたい。
出来れば一緒に……イきたい!
「あ、あっ、ああぁっ! おちんちん、太くなった! いっぱい暴れてッ」
その思いは股間に敏感に伝わったようだ。
膣内でさらにペニスが一回り膨らむ。
「ねえ、ねえカイン! 私を……好きだって言って!」
「……っ!」
「嘘でもいいの。雰囲気が欲しいの……」
アリスの腕が彼の首に回った。
ゆっくりと小さな唇が近づいてくる。
その口元から、熱い吐息が彼の顔にかかる。
暖かくて甘い香りに包まれながら、カインは彼女を抱きしめた。
「好きだ……アリス……」
それは魔法を伴わない魅了状態だった。
この瞬間だけは、カインはアリスの全てを受け入れてしまったのだ。
そして彼には見えないタイミングで、アリスが小さく微笑んだ。
「キス……しよ?」
長いキスが終わると、カインは陶然とした表情でアリスを見つめた。
彼女も優しく微笑み返す。
「遠慮なく精を注いで……あなただってもう…………ね?」
アリスは手のひらでそっと彼の背中を撫でさすった。
その刺激に反応して、カインの身体がビクビクと震えだした。
「ああぁ、出るよ……アリス……!」
「いいのよ。さあ、魔女の身体にたっぷりと欲望を!!」
アリスは長い脚を彼の腰に絡めたまま、激しく腰を引き寄せた。
そして細い身体には似合わぬ力で、彼のペニスに何度も強烈なバイブレーションをかける。
「イって! イって! イってえええええええ!!」
「あ、ああっ、ああああぁぁ~~~~~!!」
ドビュッ、ドピュピュピュピュウウウウ!
カインの絶叫と共に、ベッドが大きな音を立ててきしむ。
一度や二度の放出では収まらない激しい射精に、アリスの表情も快感でとろける。
二人の結合部からはドクドクと真っ白な液体が噴出した。
力尽きたカインは、そのままアリスの身体に身を任せた。
――数分後。
「満足したわ」
ツヤツヤとした表情で、アリスが身体を起こした。
カインはまだ動けない。
自分から責めていた筈なのに、体力を使い切ってしまったのだ。
「約束どおり、あの子を返してあげる…………」
アリスはそう口にすると、右手の指をぱちんと鳴らした。
すると、不意に彼女の身体が白く輝き始めた。
今まで目にしていた彼女の背中から、半透明のゴーストのような、もう一人のアリスが現れた。
「うわああぁ!」
「驚かないで。こっちが私の本体よ、勇者くん」
半透明のアリスが微笑む。
「そしてもう一人の私はね……ウフフフ」
白い輝きが収まると、アリスの身体が別途にドサッと転がった。
そしてカインが見ている前でその姿が変化していく。
「あ……ああぁ……!」
「途中で気付かなかった? すごく可愛い表情とか、感じやすい体とか、本気で好きになりかけたんじゃなぁい?」
ベッドの横たわるアリスの身体が徐々に見慣れた姿に変化していく。
カインは古くからの言い伝えを思い出していた。
――魔女は死なない。
優秀な「器」さえあれば永遠に生き続けるという。
その「器」を壊したのがカインであり、アリスが「器」を再生するためには強靭な精が必要だった。
再生には自分の天敵となる種族の精が一番良い。
それが自分を倒した勇者なら最高だ。
入手が難しいと判っていても、欲しくなるのが魔女の強欲。
カインの精に心惹かれたアリスは、一時的に敗北して霊体となった。
そして彼に先回りして、恋人である純潔のシスターに憑依した。
二人の恋心を利用しつつ、カインから大量の精を抜き取ることに成功した。
それにしてもこの純度……あの「器」を再生するだけでなく、以前よりも強くすることが出来るだろう。
「貴様……最初からそのつもりで!!」
全てを理解したカインは激怒した。
しかし身体は動かない。
「ああ、そうそう……あなたはもう私に勝てないわよ」
「なにっ!?」
「さっきのキスと同時に、魅了の魔法をかけさせてもらったから。私が死ぬまで解けない魔法をね」
「おのれ……!」
「あとはそうね、魔女と交わったあなたには『精霊の祝福』も『汚れなき魂』も失ったことになるわ。いろいろご馳走さま♪」
それだけを言い残すと、アリスは自分の城へと飛び去っていった。
「そんな……」
謀られたとは言え、魔女と交わりを持ってしまった事は事実だ。
そして純潔を貫いていたルナの身体を犯してしまった事も……変えられない事実だ。
――勇者は穢された。
もっとも穢したくなかった相手に身体を穢され、あまつさえ心を魔女に奪われた。
二重の罠にかけられ、呆然とするカインの傍らで、アリスからの魔法が解けたルナの身体が小さく震えた。
(了)
(イメージイラストは久遠樹さんからお借りしました)