休日を利用して都内某所にたどり着いた。

この街にはたくさんのメイド喫茶がある。
僕もその中のあるお店を目指している。

道行く間にも客引きのメイドさんがたくさん立っていて、熱心に僕を勧誘してくる。
それらを無視してとにかく目的の店を目指す。
僕が向かっているのは……


「お帰りなさい、ご主人様。今月6回目のご帰宅ですね?」

にこやかに迎えるメイドさん。
僕が入店すると、いつも必ずこの娘が出迎えてくれる。

「こちらへどうぞ。お荷物はお預かりします」

鮮やかなブラウンの髪が今日もきれいに整えられている。
顔立ちはクールな感じ……目は大きくて少し釣り目。色白の美少女だ。
一見すると地味な紺色のメイド服と白いストッキングが彼女の体の線の細さを強調する。



彼女の胸元の小さな名札には「綾奈 美玲」と書いてある。
もちろん源氏名だろうけど。

この店は全てカウンター席で、お客一人に対してメイドさんが一人専属で付く。
最高で30人までは入店できるが、完全予約制だ。
僕はこの店の常連で、ここ数ヶ月間通い続けている。

その理由はここがメイドロボ喫茶だからだ。

相手が人間でないから客は自分の望むように好きなことをしてもらえる。
ロボット相手に風俗規正法も関係ない。

彼女は僕を座らせると、自分も隣にちょこんと座った。
膝と膝が軽く触れ合うほどの距離で、彼女がにこりと微笑む。

「ご主人様は…………アイスコーヒーがお好みでしたね」

「あ、綾奈さん…………」

大きな瞳が僕を写したままゆっくり近づいてくる。
まっすぐに結ばれていた小さな唇が薄笑いを浮かべてちょこっとだけ開く。

「では……」

ひんやりとした彼女の手のひらが僕の顔をはさんで・・・

チュウウゥ♪

「んん~!! 」

コクン…………

小さな唇が僕を解放する。
僕の口元を持っていたナプキンでぬぐってから、自分の口に押し当てる。

「本日のブレンドのテイスティングをお願いします」

ほんの一口分だけ、僕は彼女を通じてアイスコーヒーを飲まされた。
適温に冷えていてとてもおいしい。綾奈さんの目が一瞬だけ緑色に染まる。
僕の表情をサーチして、彼女がにっこりと微笑む。

「お気に召したようですね。光栄です」

この娘がロボットだなんて……僕には信じられない。
何回近くで見ても肌や間接につなぎ目など見えないし、モーターの音なども聞こえない。
店側の説明によると、最新の技術で人間と同じような人工皮膚と静音モーターや人工知能を駆使したロボットに違いないという。

ロボットとわかっていても男心をくすぐる造形美。細かい表情も工夫されている。
キスだけだというのに、僕はアイスコーヒーの味よりも彼女のキスの味に魅了されてしまった。
今度は一瞬だけ綾奈さんの目が真っ赤に染まる。

「体温が一部上昇中。いけないご主人様ですね……」

僕の股間の変化に気付いて、そっとなで上げてくる。
その巧みな手つきにため息が漏れてしまう。

「くすっ」

続いて魅惑的な微笑み。
どこかさりげなく男を嘲笑しているようなムード作り。

このロボットはまだ試験運転中で、この店限定のものと聞いている。
そして世間には正式発表されていないらしい。
僕はあるサイトでこのメイドロボの存在を知って、モニターとして抽選で選ばれた。

日本のロボット工学もここまで来たかと思わされる精密な作り。
これを発明した人にはノーベル平和賞をあげてもいいんじゃないかと思っている。



「あ、綾奈さん」

「はい? ご主人様」

僕が呼びかけるとすぐさま反応する綾奈さん。
その間もずっとゆるゆると股間の愛撫は続けられている。

メイドロボのテスターをやっている都合上、毎回新しい試みをすることが僕には義務付けられている。
持参してきたバッグの中からあるものを取り出して、彼女に手渡す。

「あら、これは?」

彼女は僕が手渡した立方体を興味深げに眺めている。
僕への愛撫の手が止まる。

「そ、それをさ……ちょっといじってみてよ」

「はい、ご主人様」

綾奈さんは少し微笑みながらプラスチック製の立方体をいじり始めた。
各面が3x3のマトリクスで自由に動く。あの色合わせのパズルゲームだ。

「それを6面全部同じ色にそろえてみてよ」

ロボットに対する挑戦状。
手渡す前に僕がガチャガチャといじくりまわして色はバラバラにしてある。
できるもんならやってみろ、という気分で僕はニヤニヤと彼女を眺めていた。

しばらく手を止めて立方体の各面を眺めていた綾奈さんだったが、突然すごい勢いでキューブをまわし始めた!

「う……うそだろ…………」

ほんの数秒だった。
僕が何回か瞬きしている間に、まるで購入直後のようにキューブは綺麗に色分けされてしまった!

「こんな昔のおもちゃで私の性能を試そうとでも?」

綾奈さんは驚いている僕の手から再びキューブを取り上げると、今度はすごいスピードでシャッフルし始めた。

そして数秒後に彼女から僕にキューブが手渡された。

僕が彼女に手渡したときよりも各面がめちゃくちゃな模様になっていた……

「今度はご主人様の番ですよ?」

「ぼ、僕はいいよ!」

あわてて拒否する僕に綾奈さんはそっとキスをしてきた。



ねっとりとしたキスのせいで僕の両腕はだらんと脱力してしまう。

「だ・め・で・す~♪」

にっこりと笑いかける綾奈さん。
だめだ……この子には逆らえない。

「10分間あげますから、ご主人様は2面そろえてください」

もはや主従逆転である。
僕はしぶしぶ古(いにしえ)の立方体をカチャカチャといじくりはじめた。



(なんだこれ、全然うまくいかないじゃないか!!)

僕はあせっていた。

メイドロボである綾奈さんがシャッフルしたキューブパズルは想像以上に難易度が高くなっていた。

一面の色をそろえることはできても、なかなか二面はそろわない。


「結構大変そうですね?」


彼女は僕の横にチョコンと座り、そーっと股間に手を伸ばしてきた。

くにっ


「ふあっ、何を」


「ヒントを差し上げます。そのまま続けてください、ご主人様」


するするとズボンが脱がされ、少し膨らみかけた僕のテントの中に綾奈さんの指先が忍び込む。

キメ細やかな手触りの手袋越しにペニスがしっかりと握られた。


「私の手の動きと同じようにパズルを動かしてください」

僕を覗き込みながら亀頭部分を手のひらのくぼみでクリクリしてくる。

ガマン汁がペニス全体に伸ばされてヌチュヌチュ音がした。


「そ、そんなことっ……」

「いいえ、こうですよ」


快感で手元が狂ってしまった僕を見て冷静にアドバイスを続ける綾奈さん。

可愛いメイドさんに手コキをされながらパズルなんてうまくできない。


「そんなに激しくしないで! ……うああああっぁぁ」


どぴゅどぴゅどぴゅぴゅ~~~!!!

メイドロボの妖しい指先テクで僕は絶頂してしまった。

手足がだらんと脱力してしまう。


「ふふっ、やっと揃いました。さすがです、ご主人様♪」

しかし僕の手元のパズルは彼女のアドバイスどおりにうまく2面揃っていた







「あれっ、なんで揃ってるの!?」


手元のキューブを見ながら驚いている僕の手をふわりと包み込む綾奈さんの手。

(あっ……)

すでに何度もこの店に通っているというのに、触れられるたびに普通に照れてしまう。

むしろ回を重ねたせいで僕はすっかり綾奈さんが好きになっていた。

まるでロボットであることなど忘れてしまうほどに。


実際に彼女の皮膚に当たる特殊シリコンのせいで普通の女性に触れられているのとそれほど変わりない。

健康な男子なら確実に気に入る感触。

このメイドロボ喫茶のコンセプトである「メイドへの軽い恋愛感情」という点は大幅にクリアしているといえよう。


「さすがはご主人様です。私から何かご褒美を差し上げたいのですけど……いかがいたしましょう?」


僕は少し考えてから綾奈さんに一枚のリクエストカードを手渡した。

それを見た彼女がいそいそと店の奥から何かを取り出してきた。

何か小さな箱のようなものを自分の首筋に押し当て、スイッチを押した。




ぴっ!


「こんな色でいいのですか?」

小さな電子音と共に彼女の髪が一瞬だけザワザワと波打った。

そしてデフォルトのブラウンから明るいブルーに髪の色が変化した。


「う、うんうん! 最高だよ!!」

髪の色に続いて服も変化する。

ぴったりとした衣装……これも望みどおりのヴィジュアルだ。

僕が望んだ通りの髪の色。あのコスチューム、

さらに僕のリクエストは続く。


「ご主人様にほめられるとうれしいです……」


「ねえ、そのまま無表情になって」




綾奈さんは言われるがままに表情を作る。

僕はあまりの感動に目を丸くして彼女を見つめる。


(おおおっ、たまらない……そっくりだ!!)

しばらくの間彼女は僕に向かってクール視線を送っていた。



「ご主人様、先ほど私のせいで汚れてしまったところを洗浄させていただきます」




「えっ? あああっ!!」

突然動き出す綾奈さん。

僕に跪いて精液でヌルヌルになっているペニスをやわらかく摘み上げた。


「はむっ、じゅる……」


そしてそのまま濃厚なフェラチオ。

ぺろぺろと舐めあげる動作とジュブジュブと奥までくわえ込む動作を交互に繰り返してくる。

ちょうど一段落して落ち着きを取り戻していたペニスはその刺激に素直に反応する。


「ひゃ、あああ! 気持ち良過ぎる~~~」


すぐにカチカチにさせられてしまった僕に容赦なく浴びせられる快感。


「まあ、また汚されてしまわれたのですか。では……ちゅるっ」

繰り返される亀頭愛撫。

自分好みの衣装に身を包んだ彼女を見ているだけで僕は何度も達してしまう。



こうして僕は彼女の「洗浄」が終わるまで耐え切るしかなかった。

足腰がふらふらになったまま店を後にする僕に、綾奈さんはにこやかに言葉を述べた。


「いってらっしゃいませ、ご主人様♪」








(了)