午後五時のチャイムが鳴り響く校内は、ほとんどの生徒がいなくなった淋しげな空間。
私、白鳥静香はこの学園の生徒会長として毎日忙しく動き回っている。
生徒から上がってくる要望を組み上げ、生徒会で練り直し、先生方の承認を経て実現する。
言葉にすると簡単なようだけど、中身はとても苦労するものばかり。
そんな私を癒してくれるのが、この五時以降の生徒会室。私の世界……。
ガラッ――
「んーっ!……うぅっ、うー!!」
扉を開けると、暗闇の中で一人の男子生徒が呻いていた。
天井から吊るされたロープに手枷の金属フックが絡まって、少し痛そう。
スポーツタオルと運動会で使う鉢巻で口枷と目隠しをされた彼は、私の気配を感じて助けを求めている。
私はゆっくりと彼の背後に回ると、その目隠しを優しく解いてやった。
「急にお呼び立てして申し訳ありませんでした」
「はぁっ、ぷはっ、お前! 白鳥……」
「まぁ、私の名前をご存知なのですね。嬉しく思います。この度は手荒な真似をしてしまって……」
「悪いと思っているなら今すぐ俺を離せよ!」
「それはできませんわ……」
恨めしそうに私を睨む彼は、同級生の小林ケンタくん。私の想い人。
ここ一年で、彼ほど私を困らせた男子は他にいない。
自慢するわけではないけど、私はおそらくこの学園ではトップクラスの美少女に分類されると思う。
その証拠に、今まで私に迫られて心を許さなかった男子は存在しなかった。
小林くんを除いては。
「いいのか? お前、生徒会長なんだろう」
「いいえ、今の私はただの女子生徒に過ぎません」
私と二人きりになったというのに、このとおり彼は頑なに私を拒もうとしている。
やっぱり彼は少しおかしい。そしてこの2ヶ月間、生徒会の役員に命じてその原因を調べあげた。
今日はその結果を彼にぶつけるために、生徒会室にお招きした。
「時間がもったいないので、早速お尋ねしますけど……私の申し出を受け入れてもらうことはできませんか?」
「……あいにく俺はお前のことなんて好きじゃないんだ」
「それは嘘ですわ」
即座に彼の言葉を否定すると、予想通り私に向かって困惑した表情を返してきた。
「なぜそう言い切れる……ずいぶん自信家なんだな。ますます好みじゃなくなった」
「貴方の素直でないところ、私はとても好ましく思います」
「そうじゃないだろ! あのな、俺には心に決めた――」
「高野ユキという恋人がいる。そうですね?」
「ッ!!」
私の発した女性の名前に、彼は明らかに狼狽した。
高野ユキ……今の私にとって最大のライバル。
「とっくに調べはついてますわ。告白したのは貴方から。今日から34日ほど前ですね。まだまだ恋の始まりといったところでしょうか」
「なっ、なにを……」
私は彼の目を正面から見つめながら続ける。
「しかも彼女には遠距離恋愛中の彼氏がいたというのに……これっていわゆるNTRですよね。恋する乙女をたぶらかしてしまうなんて悪い人です……」
「いったいなんなんだよ、お前……」
彼の表情が怒りではなく少し怯えたような様子を見せる。
「お話の続きはあとにしましょう。貴方が彼女にしたことと、同じような感情を私も持っています」
「!!」
「私、とても欲深い女です。自分が気に入った男子は全部自分のものにしたいのです」
静かに語りかけながら、私は彼のワイシャツをゆっくりと脱がせ始める。
「な、なにをするっ!」
「貴方を私のものにする……そのためには手段を選びません。自分の欲に従うのが私の良心です」
両手と両足の自由を枷に奪われた彼が私の指先を拒めるはずもない。
あっという間にワイシャツのボタンは全て外され、ズボンのベルトも緩められてしまう。
思ったよりも白くて綺麗な彼の肌に、そっと指先を這わせてみる。
「や、やめろ……!」
「その言葉、逆さまに受け取りますわ」
私は彼の脇を通り過ぎて、生徒会室備え付けの戸棚から小瓶を2つ取り出した。
青い瓶には「A」の文字が、緑の瓶には「B」の文字がそれぞれ書かれている。
私は青い瓶の蓋を開け、中に入っているトロリとした液体を指先に取る。
そして彼の傍に寄り、指先についたものを首筋からゆっくりとしたに伸ばしてゆく。
「うあぁっ、な、なんだよこれ……」
「素敵な肌触りでしょう?」
私の指の温度で溶かされた液体は、思った以上によく伸びる。
瓶の中身にして3分の1程度、丁寧に彼の身体に塗りこんでゆく。
「健全な貴方には理解し難いものだと思いますけど、これは恋人を手に入れるための秘薬です」
「な……!?」
「いわゆる『媚薬』と呼ばれているものです」
私の言葉に彼の顔色が変わった。
浅薄な男子の知識でも、媚薬ぐらいは耳にしたことがあるのだろう。
そして彼の目に浮かんだ感情は……強い怯えと、少しの喜び。
すぐに怯えと喜びの比率を逆転させてあげる。
私は少しだけ笑みを浮かべる。
「ゆっくりと優しく塗りこんであげると、男の子の身体がとても敏感になってしまうのですよ。その証拠にもう、ほら……♪」
「こ、これは……ちが……う……」
首を横に振ろうとする彼に、そっと指先を伸ばしてトランクスの先端をクリクリといじってみせる。
「あううぅっ!」
「何が違うのですか?」
私の指一本で、彼の腰が砕けた。
すでにトランクス一枚にされていた彼は、ジワジワと蝕んでくる快楽に耐え切れず、布の表面に小さなシミを浮かべていた。
この状態での言い訳など、なんの意味もなさない。
「くううぅっ……やめろ! 俺に触るなああぁぁぁ!!」
顔を朱に染めながら抵抗する彼の手足が小さく揺れる。
しかし私の指一本で与えられた快楽の余韻は、まだまだ彼の身体をかけめぐっているはずだ。
「暴れてみてもその程度。きっちり拘束してしまいましたからね。存分にもがいて下さい。もしかしたら薬の効果を遮断できるかもしれませんよ?」
「やめ……ろおあぁっ、あっ、ああぁぁっ!」
私は彼の動きを無視して、ゆっくりと手のひらで薬を伸ばしてゆく。
トロトロの液体は乾くこともなく、彼の身体をすこしずつ覆い隠していく。
時々十本の指先を総動員して、悶える彼に追い打ちをかける。
涼し気な表情で彼を見つめると、即座に視線を逸らしてくる。
彼の作った小さなシミが徐々に広がってゆく……。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……くそっ、俺を離せ……ぇ」
顔だけでなく、身体にも少し赤みが差してきた。
それでも構わず私は彼を指先だけで責め続ける。
綺麗に爪を切りそろえた私の指が乳首をかすめると、彼は切ない溜息を漏らす。
男子でも触り方次第で乳首は感じるのだ。
しかもツボを抑えた女子の責めにたいして、男子の身体は絶対に逆らえない。
「はぁ、ああぁ、白鳥……たの、む……やめ……ええ、ああぁっ!」
「……却下です」
しかし私はそんな彼を冷たく突き放す。
涙混じりで懇願されると、思わず手足の拘束を解き放してしまいたくなるけど、これもきっと恋の醍醐味。
心を鬼にして、私は彼の局部には触れずに愛撫を重ねた。
更に数分間ほど彼を悶えさせてから、私は両手で優しく彼の顔を挟み込んだ。
すでに彼の目には抵抗する意思以上に、生殺しにされた疲労感がにじんでいた。
青い瓶の中身は、結局すべて使い果たしてしまった。
「素晴らしい精神力ですね」
ここまで健闘した彼に、私はそっと顔を寄せる。並の男子なら、すでに射精していてもおかしくない状態なのに。
そんな愛しさを込めて、彼の唇にそっとキスをしてあげた。
「んっ……」
チュッ♪
舌先を挿入しない、まるで中学生みたいな甘いキス。唇が触れ合った瞬間、彼の体が小さく跳ねる。
そして目を開けて顔色を見ると、激しく瞬きをしている彼の顔があった。
やっと自分の身に何が起こったのかを悟ったようだ。
「うっ、ああぁぁ……い、今……」
「さすがは私の見初めた男性、といったところでしょうか」
軽く手の甲で口元を拭いながら、私はニヤけそうになる自分を必死でこらえる。
「あら、もしかして……初めてのキス、奪っちゃいました?」
「っ~~~!!」
わかっている。彼がまだ高野ユキだけでなく、他の女性とも性交渉をしていないということは調査済みだ。
そんな彼が大事に守っていたものの一つを、私は手に入れたのだ。
「もう手遅れですわ。貴方のファーストキスは私のもの……」
「うっ……ううぅぅ……」
言葉をつまらせる彼に追い打ちをかける。
できるだけ優しく、できるだけ優雅に。
「今、貴方が考えていることを当ててあげましょうか」
「えっ……」
「ふふっ、『こんな事だったら、一昨日のデートの時にもう少しだけ勇気を出していればよかった』といったところでしょうか」
「なっ……なにを……!!」
私の言葉で、再び彼は泣きそうな表情をする。
「あの時、高野さんだって目を閉じていたのに……なにもしないで別れてしまうなんて、とんだ意気地なしです……」
「やめろ……ユキのことを言うな! やめろおおおおお!!」
「あはっ♪ そんなにムキになるなんて、純情ですね。もっと心の傷を撫でてあげましょう……」
私は彼から少し離れると、壁に備えてあったリモコンのボタンを押した。
すると天井からスクリーンが降りてきて、ビデオプロジェクターのスイッチが入った。
白い画面に映し出されたのは、彼と同じように拘束され、身体中を愛撫されている女子生徒だった。
「これが誰だかわかりますか?」
「ま、まさか……!」
「すごく綺麗な体ですよね。貴方が選ぶのも無理もないほどに」
この女子生徒こそ、彼の現在の恋人・高野ユキ。学園内でもかなり人気の高い美少女だと聞いている。
その彼女が、他の二人の女子に挟まれて4本の腕で絶え間なく愛撫されている。
映しだされているのは映像だけで、音声は遮断してある。
「別室で彼女は、貴方が私に受けているのと同じ責を味わっているのですよ」
「う、うそだろ……!!」
「いいえ、事実です。責めの担当は私のお友達です。高野さんは目隠しをされて、耳はイヤフォンで塞がれていますから、誰に責められているのか知る由もありません」
「なぜこんなことをするんだ……」
「言ったでしょう? 私も貴方と同じような感情を持っていると」
私はコツコツと靴を鳴らしながら、彼の背後に回る。
そして耳元に顔を寄せ、吐息で彼を愛撫するようにささやく。
「ただし、私にはあなたを傷つけることはできません。ですから、無理やり貴方を奪うと言うよりは、貴方の愛する対象を壊してしまうほうが気楽なので……」
更に背中に胸を押し付け、両手の指で彼の乳首やおへそを撫でさする。
もちろん彼は悶えるけれど、絶対に逃げることはできない。
「ほら、御覧なさい……ほんの少しの時間差で、高野さんも同じ事をされてしまうのです」
スクリーン上では、私の友人が高野ユキの背中と乳首を優しく撫で回していた。
二人がかりの分だけ、彼女のほうが快感が大きいかもしれない。
こちらの様子もスクリーンの無効には筒抜けになっている。
「うっ、ううぅ……ユキをどうするつもりだ!?」
「別にどうもしませんわ。ただ戯れに快楽責めをしているだけです。彼女も喜んでますから」
「嘘だっ!」
「そうでしょうか。ではここに呼んでみることにしましょう」
私の言葉は数秒間遅れでスクリーンの向こう側に伝わる。
高野ユキの責めが中断され、足かせが外された。
しかし彼女はもはや一人で立つことはできず、私の友人たちに支えられるようにして画面の外へ消えていった。
――そして数分後。
「ユキッ! 俺だ、ユキイイイ!!」
生徒会室に渦中の美少女、高野ユキが姿を現した。
必死で呼びかける彼の声が部屋中に響く。
「無駄ですわ。高性能ノイズキャンセリングイヤフォンですから。絶対外の音は聞こえません」
「ユキ……」
そして彼の真正面に高野ユキを同じ姿勢で天井吊りにする。
距離にすれば2m足らずだが、完璧に目隠しと耳栓をされている彼女には、彼氏の存在は感じることができない。
「ここからはライブですね。リアルタイムで彼女の興奮状態を見ることができます」
「白鳥! お、お前……こんなことをして……」
「嬉しいでしょう? 高野さんの身体が目の前にあるのですよ。興奮しないわけがないですよね……」
「ッ!!」
そして私は空になった青い瓶の隣にある、緑の瓶に手を伸ばした。
高野ユキに脇に控えている二人も同じようにした。
「それは……」
「今度は、さっき塗ったお薬とは別バージョンです」
緑の瓶に沈んでいた「B」の薬を指先に乗せる。それはさっきの「A」よりも粘度が高く、ドロドロとしていた。
香りを嗅いでみると、ハッカのように爽やかな刺激臭がした。
両手によく伸ばしてから、彼の身体をゆるゆると撫で始める。
「んっ、ううあああぁぁぁっ!?」
私の手の動きに合わせて彼が激しく悶え始める。
もちろん同じように愛撫されている高野ユキも、甘い声をあげて反応する。
「ユキッ、ユキイイィィィ!! ああ、なんだこれっ……身体がああああぁ」
薬を塗りつけられた彼の背中、首筋、脇腹などが激しく波打つ。
乳首やおへそ、脇の下のくぼみなどは念入りに指先をすぼめてこね回すように擦り込んでいく……。
「堪えようとしても、今度は無理ですわ。さっきのお薬と混ぜ合わせると、すごい効果を発揮するように調合されてますから」
先ほどの媚薬「A」を身体の表面に塗布したあと、「B」で身体の芯を刺激する。
この薬の効用は、すでに何人もの男女で実験済みだ。
少量だけの使用でも、男子も女子も狂ったように理性を失い、数時間は確実に快楽の虜になってしまう。
私も自分の身体で試してみたけど、気絶するまでオナニーしてしまったことがある。
私でさえ虜になりかけた薬を、童貞の彼が我慢できるはずがない。
もしもここでペニスを軽くしごいたら、おそらく彼は気絶するまで精液を吐き続けるだろう。
だから一切下半身には触れていない。
「お、俺達はこれからどうなるんだ……」
「高野さんの姿を見ていればわかりますわ?」
彼の質問に答えながら、私は目の前の高野ユキを指さす。
「あっ、あっ、あっ……ひ、ふあぁ……」
私の友人たち4本の腕によって、全身に薬を塗布された彼女は、まるで小鹿のように両足を震わせ、わなないている。
放っておいても絶頂してしまいそうな彼女の体を、優しく手のひらが這い回る。
背後から伸びた腕が彼女を抱きしめ、豊かなバストを揉み、乳首をこすり、腹部も柔らかく撫で回す。
正面からは下半身に伸びた指先が秘所をえぐり、クリトリスをつまみ、もう片方の手のひらが膣口とアナルを何度も往復している。
「だ、駄目ぇ……も、もうわたし……おかしくなって……壊れ、ちゃ、うっ、あぁぁ!……すごいの……」
「ああっ、ユキ……!」
「いかがですか。彼女はもう快楽の夢の中……恋人の事など頭の隅にもありませんわ」
「そんなはずはないっ!」
「いいえ、これが真実です。目隠しも耳栓も外してしまいましょう」
私が軽く指を鳴らすと、高野ユキの目と耳をふさいでいたものが取り払われた。
すっかり身体中が火照った彼女は、目の前に恋人がいることすら構わず腰をガクガクと振り続けている。
下半身を這いまわる指先がとろけきった膣口に挿入されると、背筋を反らせて快感を味わおうとしていた。
「美しい恋愛感情が、私の指使いとお薬で少しずつ溶かされてゆくのを感じて下さい」
私は彼への愛撫を再開した。
今まで触れなかった下半身に指先を伸ばすと、彼の身体が嬉しそうに跳ねた。
「ああぁ、白鳥……やめ……はぅぅっ!」
「高野さんと同じ天国に、貴方を連れて行ってあげます。もっとも、そこには私しかいませんけどね……♪」
トランクスの隙間に手首を入れ、足の付根とアナルの間を何度も指先で往復する。
男子にしては少し細い太ももを両手で優しく撫で回す。
もちろん私の指先には、あの薬がタップリと塗られている。
「……ペニスには触れずに、このまま一度イかせてあげます」
「ひっ……!」
軽くアナルをひっかきながら、睾丸を弄ぶ。
「二本の指でじらしてあげます」
人差指と中指で袋の中にある玉を優しく揺らすと、彼の口から熱い息が漏れた。
快楽を求め、モジモジと動き出す腰を押さえつけながら、しつこく彼を焦らし続ける。
「ああぁ、しら……とり……いいぃぃ」
「どうです? 女の子の指だけで狂ってしまいそうでしょう? でもそれすらできません」
「な、なんで……」
「貴方が私を受け入れるまで、ゆっくり時間をかけることに決めましたから」
「うくっ! うああぁぁ……くそっ、負けない……からな!」
「でもその前に、彼女がもう限界みたいですね」
「えっ……」
私のたった一言が、彼の必死な決意を打ち砕く。しかし嘘ではない。
歯を食いしばる彼の目の前で、高野ユキは体を震わせ、絶頂への最後の坂を上り詰めようとしていた。
「一つ言い忘れてましたけど、このお薬を使うと絶頂した直後にそばにいる人を好きになってしまうようです。極上の媚薬であり、惚れ薬……最高ですよね」
私は彼を責める指をいったん休め、ゆっくりと高野ユキの正面へと回った。
「そして、高野さんはそろそろ絶頂してしまいますね」
「なにをするつもりだ……おい、白鳥……」
私の背中に彼の視線が注がれているのを感じながら、ライバルである高野ユキの頬に、そっと手のひらを添える。
「彼女がイク瞬間、私があの唇を奪うことにしますわ」
「や、やめろっ! 白鳥、まってくれ……なんでもするからッ」
「なんでもする? ではそのままじっとしていなさい」
この期に及んで恋人を守ろうとする決意を見せる彼に、私は冷たく言い放つ。
そして高野ユキの顎が快感で跳ね上がった瞬間、私は予告通り彼女の唇を奪った。
舌先を挿入して、彼女の口の中を犯しまくる。唾液を飲ませ、何度も舌先を吸い尽くす。
高野ユキの可愛らしく整った顔が快感でゆるみ、大きな瞳が私の姿だけを映す。
これで今日からこの子は私のもの……。
しばらくして、脱力しきった彼女を開放すると、私は彼の方へと向き直った。
恋人を骨抜きにされ、呆然とする彼の股間は、私が離れる直前よりも腫れ上がり、今にも射精してしまいそうに見えた。
「高野さんがイク瞬間を見て、貴方も感じてしまったのですね」
「ち、ちがうっ……」
「高野さんと触れ合った温もりが残っている私の唇、欲しくないですか?」
「……っ!!」
右手の人差指で、私は自分の唇をなぞってみせた。
彼の目には欲望の炎が見え隠れしている。この揺さぶりは大成功。
「実は、彼女に使った薬とあなたに使った薬は別物です。貴方に塗布したのは、温熱効果のある軟膏です。血行が良くなって、とても体に良いのですよ?」
「な、なぜ……?」
「だって、私には貴方を壊すことはできませんから。もっとも、高野さんはもう私無しではいられないでしょう。これから毎日生徒会が可愛がって差し上げますわ」
薬の効果を目の当たりにした彼には、私の言葉がひどく現実的なものに聞こえたことだろう。
実際に私にとって邪魔な存在は、こうして淘汰されてゆく。
そして彼にとってトドメとなる一言を、私はそっと囁く。
「……貴方の恋人が私のものになっちゃいました。そして貴方も、私のものになってしまうでしょうね」
彼に語りかけながら手足の枷を外してゆく。
ここまで来れば、もう暴れだす心配もない。
だって、もう彼には守るものも、抵抗する理由もないのだから。
「……貴方のここ、すっかり硬くなってますね」
無抵抗な彼をゆっくりと横たえてから、私は下着を脱ぎ去った。
「この中に、高野さんへの思いが詰まっているのでしょう?」
天井に向かって反り返っている彼自身に、そっち指先を絡める。
小さなうめき声とともに、ペニスがビクンと震え出す。
「全部奪ってあげる……」
騎乗位の体勢。私は彼を見下しながら、ゆっくりと腰を沈めてゆく。
結合部はスカートに隠され、私にも彼にも見えない角度。
しかし、これまでの責めで私もすっかり高まっている。
ペニスを求め、刺激を求め、そして充たされない恋心を満足させるために、私は彼を犯す。
「あっ……!」
膣口にペニスが触れた瞬間、彼は目を閉じた。
「ちゃんと見てなきゃ駄目ですよ。男の子でしょう? フフフ……」
クプッ……
私の言葉に彼が目を開くと同時に、硬すぎる亀頭を膣に中に収めた。
「うああぁっ、白鳥!」
「……静香と読んで下さい」
グプウゥゥゥ
更に腰を沈める。甘い声が漏れないように、左手で自分の口元を抑える。
数秒後、私よりも彼のほうが快感にこらえ切れず、ピクピクともがき始める。
「あ、あったかい……」
「ええ、そうです。貴方はずっとこのまま私の中で……」
「白鳥!……しら……」
「静香、でしょう?」
ズジュウウウゥゥゥ!
「んっ……!」
「あああああぁぁっ、しずかあああっぁ~~~!!!」
戒めるように彼を見つめながら、私は一番奥まで彼を招いた。
そしてクールな表情は崩さぬまま、彼の目を見たままでゆっくりと腰を上下させる。
今度は左右に揺らして、膣内でペニスをしゃぶる。
普段は当たらない壁にペニスが当たると、それだけでも気持ちいい。
それ以上に男子にとっては極上の快感が染みこんでゆく。
最後は前後にグラインド。私の下にいる彼は、もう我慢の限界のようだ。
そしてこの腰使いをすると、男子は必ず目を瞑る。
これで射精しない男の子はいない。
「しず……かああぁぁっ、もう、俺……!」
「いいですよ、このまま私の中に……ね……?」
彼が無意識に伸ばした手のひらをやんわりと掴んで指を絡ませる。
そして指に力を入れ、コリコリと弄ぶ。
私に支配されている感覚をタップリと植えつけてあげる……この先ずっと、貴方は……。
「ああああああぁぁぁっ、イイイ、イくぅっ~~~~~!」
ドッピュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!
「あんっ♪」
大量の精液が私に流れ込んできた。
そしてこの瞬間、彼は私のものになった……。
少し落ち着いてから、彼の身体に倒れこむ。
「クスッ、さっきのファーストキスに続いて、童貞も頂いちゃいました……」
「ぐぅ……ううぅ……」
正面から抱きつかれ、私に手足を絡みつかれたまま彼は悔しそうな顔をした。
「絶望に満ちた素敵な表情……たまらない……」
灰色に沈んだ瞳に映る自分の姿を見て、私の体の芯が熱くなる。
今の彼の眼の色こそ、私が望んでいたすべて……。
「これから私の色に染めてあげます。ゆっくり時間をかけて、髪の毛の先まで愛してあげます……」
優しく口付けをすると、彼の身体がクタクタと崩れ落ちた。
「静寂の中で、ゆっくり融け合いましょう? 貴方が愛した恋人が、私そのものに摩り替わってしまうまで……ずっと……」
(了)