風俗案内レポート 「セドリック」編 その3





「総額6万円とかありえない……」

 待合室で黒服さんに尋ねてびっくりした。
 ネットの情報では入浴料2万円と書かれていた。
 でも実際は指名料とか、その他いろいろあって金額は上がる。風俗では常識らしい。

 ここは高級ソープ「セドリック」。情報掲示板での評判を読んだ上で選んだお店。
 伝説の風俗嬢と言われてる麻衣さんという人は退店してしまったらしいけど、僕が目に止めたのは別の人だった。


『入れたら5秒でイかせます。入れたらですけど』

 星の数ほどある体験レポの中、その文字が頭に飛び込んできた。それが今回のお目当てである「ルキ」さんの記事だった。
 もちろん本名ではあるまい。でもそんなことは関係ない。
 どんな男性でもたいてい数秒で果ててしまうという名器。味わってみたい……。その一身だけで今僕はここにいるわけだ。



 僕は財布から紙幣を抜き出そうとすると、黒服さんに止められた。
 支払いは事後でいいらしい。しかも満足できなかったら半額でいいとまで言われた。

(そんなに自信あるのか……)

 逆に不安になる。しかしその数分後、用意が整ったらしく通路の奥まで行くように促された。

 薄暗いフロアを数メートル歩くと、先が左へ折れ曲がっていることに気づく。
 曲がり角に差し掛かった途端、突然左手をギュッと握りしめられた。

「っ!!」

 慌てる間もなくいい香りが僕を包み込み、続いて柔らかな感触が左腕全体に絡みついてきて――、


「いらっしゃいませ。セドリックへようこそ」

「あっ、き、キミは……んうううぅぅ!?」

 僕の質問が終わる直前に唇が塞がれて言葉が遮られる。

 花のような香りが薄暗い通路に充満して、細い体と通路の壁にサンドイッチされる。


「う……んぅ……」

 数秒間、呼吸を奪われた後に解放される。
 同時に今まで気づかなかったエレベーターのドアがゆっくりと開いて、僕達をぼんやりとした明かりで照らす。

(綺麗だ……)

 目の前にいる女性を見て最初に思ったのがそれだった。

 綺麗なブラウンのストレートヘア。きっと腰まで伸びていて、キラキラしてる。
 年齢は少し僕より上みたいだけどケバい化粧ではない上質なメイク。
 薄紅色のリップの色も魅力的だけど、何よりもその衣装が……黒いボンテージをあしらったようなロングドレス。
 胸元が開放されているけど下品な感じはない。
 細くくびれた腰つきはネット上のブログ日記でも確認していたけど、実物は本当に触れるのもためらうほど。

 これが本物の「ルキ」さんだ。

 ネット上では写真NGだった彼女は想像以上の大当たりと言っていい。

 僕はこれからこの人と交わるんだ……そう思うだけで股間が数回ビクンと打ち震えてしまった。



 エレベーターの扉が閉まると、僕達はこの店の最上階に降り立った。
 ここには彼女の部屋と、もうひとつしか部屋がないという。

 重い扉を開けて案内された部屋に入る。広い……予想の二倍程度の広さだった。さすが高級店。
 ふいにフワリと甘い香りがした。彼女の纏うものと同じだった。

「本日はご指名いただきありがとうございます」

 その声に振り返ると、ルキさんが三指を突いて深く頭を下げていた。
 僕がどうしていいかわからず固まっていると、ゆっくりと彼女が立ち上がって僕にしなだれかかってきた。


「抱いて……」

 たった一言。それだけで心臓が激しく高鳴る。
 色っぽいのを通り越して悩殺されてしまった。しかも瞬間的に。

 ヒールを履いている彼女との身長差はほとんど無い。
 こんな魅力的な女性に、店の中とはいえ迫られて正気を保てるはずもなかった。

 本能的に彼女の胸元に手を伸ばす。
 衣類を全部引きちぎって、裸の彼女を拝みたいと思った。

ぱしっ!

「あっ……」


「ふふふ、待って?」

 僕の手首を掴みながら彼女が微笑む。
 無造作に伸ばした指先に自分の指を絡ませながら、彼女はゆっくりとこちらに体重を預けてきた。

 そして耐え切れなくなった僕は、ドサっとベッドに腰を下ろす。その上、彼女が僕に覆いかぶさるように抱きついてきた。


「なぜ私を選んでくれたの?」

 囁くような甘ったるい声に頭がしびれる。
 そして自白剤でも飲まされたように僕は頭の中にあることを全て吐き出してしまった。


 五秒でイかせる名器を体験してみたこと。

 マットやイスは無視して、何度でも射精させて欲しいということ。

 自分が少し特殊な性癖を持っていること。ドМの一種であること。


 それら全てを彼女は笑顔とともに頷いてくれた。

「じゃあこのまま始めちゃってもいいんだよね?」

 僕の意思を確認してくる彼女。答えはもちろんイエスだ。


「お客さんみたいな男の人、けっこういるんだよ。だから任せて」

 ゆらりと体を起こした彼女が長い髪を一つに束ねる。
 両サイドの髪がアップになると、さっきとはまた違った美しさを感じた。

 さらにゆっくりと焦らすようにドレスを脱ぐ。豪華なランジェリー姿……ガーターストッキングまで装着している!
 ルキさんは僕の視線を感じながら、恥ずかしそうに背中を向けた。


「じゃあ、さっそく味見してあげるね」

 シュルッという音がして、彼女の履いていたショーツの紐が解けた。
 形の良い上向きのお尻が目の前で揺れている。

 続いて振り返った彼女が僕のズボンを器用に脱がせながらペニスを露出させてきた。


「いただきます……ジュリュウウッ!」

「んあああああああっ!!!」

 突然のことに思わず喘いでしまう。
 すっかり反り返っていた僕自身をためらいなく口に含む彼女。
 しかもこれはディープスロート! こんなによどみなく奥まで咥えられた事なんて今まで一度もない。


(やばい、こ、これっ……フェラじゃない! もう本番、犯されてるのと同じいいいいぃぃぃ!!!)

 これまで僕は風俗のフェラで果てたことなどなかった。
 しかし今回だけは例外だった。

 すでに睾丸がヒクついて、射精に備えているのがわかる。
 フェラなんて女性を征服したい気持ちを満たすだけの行為だと思っていたのに、今までとぜんぜん違う。

(あああああ、イくっ! これだけでもうイくっ、イ……)

 ベッドの上で下半身をガクガク揺らされながら僕は観念した。

 しかし、次の瞬間ペニスにひんやりとした風が当たって少しだけ落ち着きを取り戻す。

「えっ」

 解放された?


「硬さも大きさも申し分ないわ。楽しめそう♪」

 ルキさんは口元を拭いながらそういった。
 その妖艶な表情と彼女の唾液まみれにされてヌルヌルのペニスを見ているだけで、僕はもうイきそうだというのに。


「じゃあ本番ね。いくよ……」

 すでに身動きの取れなくなっている僕の上に彼女がまたがる。

 うっすらとした陰毛の奥にある真っ赤に見えた秘所が淫らにヌラついている亀頭にキスをした。



クチュッ……

 思い切り歯を食いしばった。
 とろけるような熱さを感じ取った僕はそれだけで正直、イキかけたのだ。

「ふふふ♪」

 彼女は一切手を使わない。
 硬くなったままのペニスの位置を確かめながら、腰の動きだけで挿入を果たそうというのか。

リュプッ、チュクッ……

「あああぁぁ!」

 先端が少しだけ埋没する。まだ挿入感はない。でも熱い!


クプゥ……

 そのままゆっくりと腰が捻られた。

 今度はわかる。先っぽが彼女の膣内に埋め込まれた。


『ようこそ、ボウヤ。たっぷり味わってね』

 頭の中にそんな声が響く。ルキさんの顔を見ると彼女はそんなことを言っていなかった。

 でも妖しげなほほ笑みがだんだんSッぽさを帯びてきてる気がする。

 考えて見ればそれは当然のことなのかもしれない。
 入室直後の尋問によって僕は全てを晒しだしてしまった。

 甘い誘惑に乗せられて自分の性癖を語ってしまったのだから。


クププププ……

 そうしている間にも、ゆっくりゆっくりと僕は彼女に包み込まれていく。

 もうすでに半分以上ペニスは見えなくなっている。

(ザワッ……!)

 突然彼女の中で撫でられた。
 締め付けられたというべきなのだろうけど、本当に見えなくなった部分が強く擦られた気がしたのだ。


「なっ……」

「ふふ、どうかな?」

 ルキさんは僕の戸惑いを見越したように聞いてきた。
 そして残り半分になったペニスを飲み込まんとするように、一気に体重をかけてきた。

ジュプウウウウウウウッ!!


「あっ、あああ、あああああああ~~~~~~~~!!!」

ドピュンッ、ドピュッ、ドピュウッ!!


 包み込まれた瞬間、もう僕は何もできなかった。
 ペニスが麻痺して射精を強いられた。


「あはっ、三秒くらいは持ったかな」

 ドクンドクンと跳ねる心臓音とともに彼女の声が聞こえる。

 挿入が済むまでの彼女の膣内は確かに気持ちよかったけど、我慢できないほどではないと思っていた。
 だが完全にペニスをとらえた瞬間に全てが変わってしまった。

 膣内に閉じ込められたペニスはまず先端が押しつぶされ、敏感な包皮部分がくまなく刺激された。
 慌てて腰をよじって逃げようとしても無駄。
 今度は膣の入口が巾着のように閉まって退路を断つ。

 行き場の無くなった快感が渦巻く根本からカリ首までの中間部分を、柔らかな彼女の膣内の突起が舐め尽くす。
 そして押し出されるように断続的な射精……

 全て彼女の思惑通りだったのだ。


「じゃあここからが本気モードね」

「っ!?」

 射精直後で呆けている僕の両肩に彼女は手を置いた。
 そしてビクビクしているはずの膣内に閉じ込めたペニスを優しく揺らし始める。

(あああぁぁ……な、なにこれ……体がふわふわして)

 まさに夢見心地の、絶妙な刺激だった。
 敏感すぎるペニスをいたわるような優しい愛撫は連続絶頂を奏でるための前奏曲。


「イった直後に強く締め付けるとね、またすぐにイかせることは出来るんだけどその後が駄目なのよ」

「えっ」


「私に何度もイかされたいんでしょう? そういう人にはこうやって……」

クニュクニュクニュクニュ……


「ひ、いいいぃぃっ!」

 膣内で回されてる。ほんの少しだけ腰を揺らめかせてるだけなのに、彼女の内部でペニスが全身愛撫をされてるううううぅぅ!!


「ね? 抵抗できないでしょ。このまま硬くされちゃうの。そしてまた私に食べられちゃうんだよ♪」

 今度は前後のグラインド。まるでアダルトビデオを見ているように、腰から下だけを小刻みに動かすテクニック。
 これがまた最高の微振動となって、僕の体中を快楽の羽根でくすぐり始める。

「う、あ、あっ、ああぁぁ!」


「ほぉら、硬くなった……これでもう一回イっちゃうね?」

 復活したペニスを確かめるように彼女は腰振りをやめて内部を何度か締め付けた。
 その連続締め付けだけでもイってしまいそうになるのだが、

「さっきまでは本気で締めてなかったから」

「えええええ!?」


「でもここからは全開でいいの。もうおちんちんニュルニュルでしょ? だからね……」

 ルキさんは大きく深呼吸してから、太ももに力を込めて僕の腰を挟み込む。


「いくよ。我慢して」

クチュクチュクチュクチュ、ズチュズチュズチュッ!

「ふああああっ、ま、まっ!! あ、ああああああああああああああああ!!!」


ビュクビュクッ!!

 突然の高速グラインドに為す術もなく白旗を上げてしまう。
 それでも彼女の腰振りは止まらない。

ヌチュウウッ、ヌリュッ!! パチュパチュパチュパチュッ!!!

 吐き出した精液が潤滑剤となっているせいで快感しかわからないけど、こんなヌルヌル状態なのにきっちり締め付けられているのがわかる。
 自分から腰を引いても絶対に逃げられない。
 ガッチリと腰を固定されたまま、下半身だけくねらせる彼女を見上げる僕。


「あああああああっ! ルキさん、るきさんっ、るきさああああぁぁぁ!」

 ビュルルルルッ!!

 暴れ狂うペニスをしっかりと捕まえたまま、容赦なく何度も快感をすり込んでくるルキさん。
 時々思い出したかのように悶える僕の唇を奪いながら、髪をかきあげるしぐさが最高にセクシーだった。

(あああぁ、キスされると心が緩んで……またイきたくなっちゃうよおおおお!!)

 膣内での愛撫のみならず、ベッドに僕を貼り付けた状態で彼女の指先が乳首を転がしてきたり、脇腹をくすぐってきたり……数日間は消えないようなキスマークを何箇所もつけられてしまう。



 情報どおり、いやそれ以上に凶悪な名器を持つ彼女に対して僕は事もあろうに「何度もイかせてほしい」というリクエストをしてしまった。

 恍惚とした状態での告白だったからセーフワードは用意していない。

 このまま残り約90分間、僕は徹底的に彼女に蹂躙されてしまうのだった……。








 見送られながら階段を降りて待合室のソファに座ると、黒服さんがお茶とおしぼりを持ってきてくれた。

 いかがでしたか、と彼に笑顔で尋ねられた僕は、軽く頷いてから財布に手をかけた。

 この店と彼女には、きっと裏を返すと思いながら。




(了)






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