スライムバスター特別編 『レベッカとの邂逅 ~極淫魔の残滓~』





 夏が終わって涼しくなり始めた夜のことだった。
 ウィルはいつもと同じようにライムと枕を並べて寝ようとしていた。

 だがその日は明らかにいつもと違うことがあった。

(う……急に疲れが、それに全身が……しび、れ……)

 突然やってきた睡魔に襲われ、強制的にウィルは眠りにつく。ライムはまどろみながら彼の顔を眺め、やがて二人同時に夢の世界へと足を踏み入れた……。





 ウィルが目覚めると、そこは森の中だった。薄い桃色の靄がかかり、静寂が支配する幻想的な光景……彼はここが自分の夢の中なのだと理解する。

(うん、夢だとわかれば一旦目覚めてしまうけど仕方ないよね)

 じっと黙って目覚めを待つ。決して眠りが浅いわけではなく、彼はいつもこうした状況になると覚醒してしまうのだ。
 夢だと自覚してしまえばその場所にいられなくなる人は少なくない。
 彼もまたその一人だった。
 そう、いつもどおりの彼なら。

コツコツコツ……

 足音が響いてきた。石で出来た床をかかとの硬い靴で弾くような音。
 違和感を覚えたウィルが薄く目を開けると周囲の状況が一変していた。
 ここは森の中、土の上だったはず。
 それなのに彼は石牢の中に居た。床一面に魔法陣が光る妖しげな空間。

「お久しぶりです、兄様」

 足音がする方向から軽やかな声が鳴り響く。
 それはウィルより頭一つ低い身長の美少女だった。見覚えがある。


 上品な白いカチューシャで留めた金色の髪は闇を照らすように輝き、燃えるような赤い瞳が印象的な美少女。手足は細く、しなやかでエレガント……そして強気な表情がライムに似ていると思った瞬間、ウィルは彼女を思い出した。

「レベッカ!?」

 かつて転職の神殿を乗っ取ろうとしたスライム界屈指の実力を持つ存在。その力「紅の魔女」と恐れられたライムよりも上で、いくつもの奇跡が重ならなければ勝つことは出来なかった相手。
 自分に気づいたウィルを見て、彼女は軽く息を漏らす。

「最近思い出してくださらないなんてひどいですわ?」
「そんな事言われたって……」

 彼にして見れば思い出したくない相手の一人なのだ。もう一度戦って勝てる保証のある相手ではない。レベッカに組み敷かれ、性交を強制させられたトラウマは今でも忘れることができていない。彼女の体はあまりにも心地よく危険だ。

(だ、だめだ! 交わっちゃいけない)

 震えを必死で抑えるウィルの正面、吐息がかかる距離までレベッカは迫っている。
 彼は身動き一つ出来ずにそのままレベッカを見つめることしか出来ない!

「緊張してらっしゃるのね。まあいいですわ。半分は私のせいですから」

 ツウウゥゥ……と顎のラインをなぞられる。
 白い手袋に包まれた細い指先が触れた後に快感の疼きが残る。
 その心地よさに全身が泡立ち、筋肉がギュッと引き締まるほど。

(こんな、夢の中なのにどうして!)

 ウィルはうめきながら耐える。
 その間もずっとレベッカは指先で彼を弄んだ。
 片手だったはずの手のひらがいつしか両手になり、サワサワと顎先だけでなく顔全体を撫で回していた。
 もしも素手で彼女に触られたらこの程度では済まない。

「兄様、ライムに申し訳ないと思わないのですか?」
「えっ……」

 呆れたようにつぶやくレベッカの視線を追う。
 彼女はウィルの股間を見つめていた。

 すっかり膨らみきってヒクヒク震えている肉棒。
 衣類はいつの間にか脱がされており、レベッカもほとんど裸になっていた。
 身にまとっているのは白い手袋とニーソックスのみ。
 それがほっそりした長い手足となめらかな曲線を描く肉体を際立たせ、ますます彼女を淫らに見せている。

「相変わらずのロリマゾ。節操のないおちんちん……これは特訓が必要なのでは?」

ぱちん。

 彼女が指を鳴らすと同時にウィルの体にピリッと電気が流れた。

「うっ、動けな……ぃ……!」
「夢の中ですもの。私の思うままですわ♪」

 クスクス笑いながらレベッカが指先を回し、宙に円を描く。
 ゆっくりと筋肉が操られる感覚。
 ウィルは跪き、手を後ろに回したまま彼女を見上げる。

「せっかくだから私の体液も使いましょう」

 レベッカはウィルを見下しながら手のひらを前に出す。
 そして軽くこすり合わせ、金色がかった粘液をゆっくり垂らしていく。

トロ~リ……

 ペニスの先端に落ちたそれは、意思を持つように彼自身へまとわりついて包み込む。

「余った分は乳首へ塗ってあげますね」

ヌリュヌリュ……

 ペニスを覆ったのと同じ感覚で乳首も弄ばれる。
 あっという間に整えられた三点責めにウィルは喘ぐ。

「どこが気持ちいいですか?」
「く、くっ、あ、あああああ! 勝手に、動いてるッ」
「このまま踏んだらどうなるかしら」

クニュ。

「うああああああっ!!」

 細い右足が優しく真上からペニスを踏み抜いた。
 足の裏でくりくりと亀頭を刺激してからゆっくり落とされる。
 反り返った肉棒がもだえるように抵抗して刺激が強まる。

「まさか、私の足を見て興奮してるなんて言わないですよね」

 足の裏がゆっくりと彼をすりおろす。親指の付け根から土踏まずを経由してかかとで裏筋を蹴り上げる。正面からウィルを見つめ、反応を見極めながらレベッカはその愛撫を繰り返していた。

「しかも踏みにじられて……」
「んあっ、あはああああーーーーっ!」

ギュリッ。

「感じてしまうなんて汚らわしい」

 ウィルが腰を前に付きだそうとするタイミングで、レベッカは彼の肩に手を置きながら顔を寄せてくる。冷たく微笑む真っ赤な瞳に吸いこまれそうになりながらウィルは必死で抵抗するのだが、

(こ、こんなの耐えきれない、くそっ、このままじゃイくッ……!)

 ペニスへ足を置いたままでの軽い言葉責め。
 それだけでウィルは屈してしまいそうになる。
 片足立ちのままで微笑むレベッカの顔と、淫気香りたつ白い肉体。
 華奢な肉体がまとう妖艶なオーラに当てられ、体の芯が溶かされていく。

(アソコも、見える……)

 剃毛済みというよりも、元から無毛であるかのような清らかな秘所。そそり立つ肉棒があの場所へ収められたらどれほどの快感が押し寄せてくるのだろう。無防備に彼女を求めてしまったらどれほどまでに犯されてしまうのだろうか。

「ねえ、どうなんです。兄様」
「な、なにが?」
「私に犯されたいですか?」
「ぼ、僕は、キミの兄じゃ」
「そうではなく」

くにゅんっ!

「ぐああああああああっ、きもち、いいいぃぃ」
「やっぱり犯されたいんだ……♪」

 思わずこぼれた彼の本音を耳にして笑うレベッカ。
 ウィルは一瞬よぎった考えを否定するように左右に首を振った。

「それにしても、消滅させられる前に分体を指輪に忍び込ませておいて正解でした。こんなふうに楽しめるなんて思ってませんでしたけど」

 レベッカは両手をウィルの顎に添え、正面からウィンクしてみせた。

ドクンッ

「あ……」

 真正面から極淫魔である彼女に誘惑され、ウィルの瞳に淫呪が刻印された。

「や、やめっ、ふあっ、ああああーーーーっ!」

 そして彼の意思に関わらず、淫らな刻印は意識の底まで浸透していく。
 ウィルの心のなかをかき乱すレベッカへの思い。
 それはライムへの思いと混じり合う。

「ふふっ、ごめんなさい。何か言おうとしてました?」

 うっとりした表情で自分を見上げるウィルを見て彼女は笑う。夢の中でのみ活動を可能としたレベッカの分体を活性化させるにはライムとの融合が必要だった。そのための紐付け作業を毎晩行う。着実に、一歩ずつ。

「私が決めたのですから。あなたは兄様です」
「僕はレベッカの兄……」
「嬉しいでしょう」
「うん、すごく嬉しいよ……」
「くすっ、かわいい兄様♪ 私に操られて身動きできず、私に踏まれて愛されて、勝手に興奮してしまう恥ずかしい兄様」

ちゅ……

 そっと触れ合うだけの口づけだが効果は絶大。ウィルはライムとキスする事もあるが、大抵は彼女のほうから(照れ隠しするように)一方的に奪うようなキスだった。
 ゆえに恋心よりも犯されるイメージが先行する。

 だがレベッカのそれは違う。支配するようであり、慈しむようであり、ゆっくりお互いの存在を染み込ませていくような暖かさがあった。ややもすれば冷徹なイメージの彼女とのギャップが有り、ウィルにとってたまらなく心地よかった。

「もうそろそろ射精してしまうのでは?」

 フフッと笑うレベッカ。
 少し意地悪な表情に戻り、ぱちんと指を鳴らす。

 すると急に意識が覚醒したウィルが反射的に口走った。

「だ、出すものか……ッ!」
「ふふっ、そうこなくては」

 このまま射精してはまずいとスライムバスターの本能が囁いたのだろう。
 そしてそれは間違いではない。
 バトルではいかなる状況でも相手を求めてはいけない。
 相手がいかに魅力的であろうとも、

くちゅっ、くちゅ、くにゅうううっ!

「う、うああああっ、そこ……!」
「どうされましたぁ?」

 しかし、レベッカはそれすら見越して愛撫を重ねている。
 負けたくない気持ちを利用して獲物を自分好みに美味しく味付けしていく。

(兄様、私はあなたを利用します。そしてライムと同様に愛を重ね、いつかあなたの想い人になってみせますから)

 彼に見えない角度でレベッカが笑う。

 片方の手のひらに顎を乗せ、幾度も口づけを与える。
 そっとおろしたもう片方の手のひらで、指先で亀頭を弄び、竿に指を這わせる。
 うめき声すら残さず奪い、口づけで呼吸を乱す。

 やがて彼女も膝立ちになって目線を合わせて求めあう。
 手のひらで肉棒を操り、なめらかな素肌へ導いて肌にこすりつけた。

「もうニュルニュルじゃないですか」
「んうっ、んーーーーーーーーーーっ♪」
「私のお肌にスリスリするの好き?」

 問いかけられて全身を震わせ、首を縦に振るウィル。
 そんな彼を抱き寄せ、手コキと同時に裏筋を自らの臍あたりに押し付ける。

「じゃあこっちでもキスしてあげます。私の淫紋の上にすりつけて……」

ポワァ……

 白い素肌に浮かび上がる淫紋は極小の魔法陣。
 夢の中とはいえ弱体化した精神を蝕むには十分な力を持つ。

「ほら、あったかくなりますよ~」
「んうっ、んんんっ、あっ、ああああああああああああーーーー!!」
「我慢してもこみ上げてくる衝動に抗えるわけがないでしょう。さあ、イキなさい」

 レベッカは手袋を脱ぎ去り、指先全てで肉棒を強めに握りしめ、パッと離した。

ドピュウウウウウウウウウウウウウウッ!!

 それだけでウィルは盛大に射精してしまう。射精直後の肉棒からさらに精液を搾るように、コチョコチョとレベッカは先端に弄んだ。

ビュッ、ビュルル……

 指先で弄ばれた甘すぎる刺激、すぐにやってきた追撃にペニスは耐えきれず、一滴残らず彼女の淫紋へ吸収されていった。

「クスッ、すごい射精でしたね。この調子ならそのうち本当に復活できるかも」

 レベッカは抱き寄せた彼に記憶封印の操作を施してから、ゆっくりと意識を覚醒させてゆく。タイムリミットいっぱいまで愛した獲物の額にキスをしながら。









「あれ……朝なのか……」

 目覚めると隣にライムは居なかった。
 よく眠れたと思う。でも妙に体が重い。

「ウィル、いつまで寝てるのよ。早くごはんを作りなさい」

 少し離れた隣部屋から不機嫌そうな彼女の声がした。
 それでウィルは現実なのだと判断する。
 夢を見ていた気がするけど思い出せなかった。

「ライムってさ、他人の夢に忍び込むとか出来るんだっけ?」

 朝食を整え、互いに並んで食べながら彼は問いかけた。

「は? できるわけないでしょ。純粋な淫魔じゃあるまいし」

 ライムは少し驚いた顔をしてから、すぐに呆れ顔で彼に返した。
 まあそうだろうなとおもいつつウィルはスープを口にする。

(ふむ、そうか。でも淫魔寄りのスライムなら出来るってことだよね)

 一人だけ心当たりがいる。
 しかしそれが誰なのかを思い出すことは出来なかった。
 思い出そうとすればするほど頭の中に霞がかかったように曖昧になる。

 明らかに魔力で阻害されている。だがそれまでだった。

 いろいろ悩んだ結果、ウィルは何も考えないことにした。





『レベッカとの邂逅 ~極淫魔の残滓~』(了)














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