ここは転職の神殿付近の小さな家。
早朝だというのに台所に一人の男が立っていた。
彼の名前はマルクという。

「スライムバスターになるためには色んなスキルが求められるとは聞いていたけど」

昨夜の雨が嘘のように上がり、今日はいい天気になりそうだ。
空が明るくなってきた。もうすぐ夜明け。

師匠であるウィルの恋人・ライムのいいつけでマルクは朝から紅茶ケーキを作らされていた。
弟子入りしてからというもの、彼は魔術よりも何よりも料理の腕前が上達した。
今ではこの家の総料理長である。

マルクは弟子入り初日にライムの手料理をたべて体調を崩してしまった。
(ライムに『なんて貧弱な男!』と逆切れされたらしい)

それ以来、炊事洗濯係りを命ぜられた。
もともと料理は得意であったこともあり、厨房を仕切るようになった。
ウィルもライムも食事に関してはマルクに頼りっきりである。

「いい香り。朝が寒いとなぜか紅茶がうまく出るよね。」


……ドタドタドタドタ!!

台所に向かって猛然とダッシュしてくる足音。




「マルクくん、たいへんだよー!」

足音の主はこの家のもう一人の住人。
名前をリィナという。
ちなみに彼女は人間ではない。
スライムの淫界からやってきたライムの妹分である。

「どうしたの?リィナさん」

「クリスマスの日に世界中の淫魔が集まってBF選手権をやるんだってさ!」

大きな目をくりくりさせてリィナは楽しそうにマルクに語った。
彼女の手のひらには何かが握り締められていた。
先ほど新聞を届けにきた郵便鳥がリィナに直接手渡したのかもしれない。

「それは大変だけどまだ時間ありますよね?なんでそんなに焦ってるの?」

「ウキー!もうすぐじゃないっ!!リィナもお祭りに参加したいのっ」

なるほど、BF選手権はおまつりだ。
クリスマスまであと二週間ある。

しかしお祭り大好きなリィナである。
今からきっと胸がはしゃいでいるのだろう。
とにかくBF選手権にリィナは参加する気満々だということはわかった。

「リィナ、今回もがんばって100人斬りしちゃうかもっ!!」

しかも参加者とBFする気満々である。
リィナは以前、ゴジョウ大橋という場所で開かれたイベントで100人の男たちを昇天させたことがある。
マルクは彼女に目をつけられるであろう参加者達に軽く同情した。

「お、お祭りですか……いってらっしゃいませ。」

「何いってるの!?マルクくんにも招待状がきてるよぉ?」

マルクの言葉をさえぎるかのようにリィナは握り締めたものを彼に突きつけた!
そこには大会主催者・ミマール氏の字で「リィナ殿、マルク殿」と書かれていた。

「な、なんで……!?」

よく見ると「ライム様、ウィル様」と書かれていたところに二重線が引かれている。
きっとどこからか圧力がかかってミマール氏も変更を余儀なくされたのだろう……

「マルクくん、何でもいいからリィナと一緒にきてぇ……ねっ♪」


(うっ……断れない……)

上目遣いで自分を覗き込むリィナを見て、マルクは思わずうなづいてしまった。
パジャマの中でふわふわ揺れる胸元と、愛らしい顔つきを朝から間近で見せ付けられて、軽く魅了されてしまったのだ。


後ろのオーブンから焦げ臭いにおいが流れてきた……







「ずいぶん香ばしいケーキね。」

楽しみにしていたマルク特製の紅茶ケーキ。
それはライムの予想とだいぶ違うワイルドな焼き上がりだった。
茶色というよりは黒に近いこげ茶色。
そんな焼き具合を見てライムが眉をひそめた。

「ねぇ、マルク。これ本当に食べられるの……?」

切れ長の目でにらまれたマルクの背中に
ドクドクと冷や汗が流れていた。

「きょ、今日はちょっと深い味わいを出そうと思いまして」


なかなか手をつけないライムの脇で、
ウィルとリィナは美味しそうにケーキを食べていた。

「おー、なかなか美味しいよ。マルク!」

「ホント、見た目以上のものがありますぅ」

この二人はよほどのことがない限り食べ物に難癖はつけない。
しかしライムはなかなかのグルメ。味や盛り付けにうるさい。

「……まずかったらタダじゃおかないわよ。」

「ははっ、ははは……」

力なく笑うマルク。
ライムはようやく紅茶ケーキを食べ始めた。

「と、ところで師匠?」

無理やり気まずいムードを払拭しようとするマルク。
口をもぐもぐさせながらウィルが視線を上げた。

「リィナさんと僕とでクリスマスBF選手権というのに招待されたのですがー」

「あ、そうなんだー!今年もライムと二人で行こうと思ってたけど、今回はマルクたちが誘われたんだね」

相変わらずのほのぼのムード全開で、ウィルが答える。
ぶすっとした表情でライムも会話に加わってきた。

「マルクにとってはいい修行になるんじゃない?」

どうやら黒紅茶ケーキの件は、クリアしたようだ。

しかしマルクは気がかりだった。
BF相手のことや開催場所などについての情報がまったくない。

「……去年は私が準優勝したわ。」

ポツリとライムがしゃべりだした。
隣のウィルはうんうんと頷いている。

「僕は残念ながらベスト8だったかな。最後の相手は強かったなぁ……」

「どんな人が師匠の相手だったのです?」

どうやら勝ち抜きトーナメント制らしい。
この二人でも優勝できなかったのか、とマルクは素直に驚いていた。
世の中にはずいぶん強い人たちがいるようだ。

「僕の相手はエミリアさんていうメイドさんだった。
 すごい身のこなしだった。結局彼女が優勝したんだよ。」

前年の優勝者は女性。
しかもメイド?

「へぇ、驚きですぅ。お姉さまの相手はどんな人だったのです?」




「そのエミリアよ。悔しいけど負けちゃったわ。」

リィナも楽しそうに聞いている。
しかしライムは複雑な表情だ。
今年はエミリアにリベンジするつもりだったのかもしれない。

「マルク、リィナ、どっちでもいいから今年はあんたたちが優勝しなさい。命令よ。」

紅茶ケーキを食べ終えたライムはさっさと自分のお皿を片付け始めた。
つられてリィナたちも動き出す。


「ところで、どうやって現地に行くのです?」

「ああ、それなんだけどね……」

行き方については思っていたより簡単だった。
BF選手権会場は絶海の孤島らしいので船もたどり着けない。
しかし高度な魔法で包まれているので生活に不自由はないらしい。

移動手段については全てゲートを使用するらしい。
それによって淫魔も人間もどこからでもBF選手権会場に入場できる。
入場のカギとなっているのは送られてきた招待状だ。

マルクとリィナの場合は招待状に記載された日時に、
転職の神殿裏側まで行くと期間限定のゲートが開いているそうだ。

そこをくぐれば招待主のミマール氏のお城に入れるようになっている。

「簡単ですね。」

「うん。でも身体チェックを兼ねた入場テストがあるよ。」

ぼんやりと思い出したようにウィルが答える。
すかさずリィナが質問した。

「なんですかぁ?それ」

「簡単なバトルだよ。でもまあ、リィナとマルクなら大丈夫さ!ははは」

この笑顔に何度騙されたことか、とマルクはため息をついた。

しかし何も始まってないのに不安がってもしょうがない。
若干の不安を残してマルクとリィナは当日までの時間を過ごすのだった。






「マルクくん、早くいこうよー」

いよいよBF選手権会場に向かう日がやってきた。
リィナはいつもどおり元気いっぱいだ。
しかしマルクは気が重かった。

(生きて帰ってこれるんだよね……僕たち)

昨夜もウィルからいくつかレクチャーを受けはしたが、不安であることには変わりなかった。
年に一度のお祭りとはいえBFである。
しかも人間も淫間も平等に扱われる特殊な空間、BF選手権では何が起こるかわからない。
マルクはいつも以上に気を引き締めて現地に向かう決意だ。


二人は招待状に記された場所へと足を運んだ。
神官たちに挨拶をしながら転職の神殿の裏道をゆっくりと歩く。
普段は何もない道路だが、今日は二人のためにBF選手権会場へのゲートが開かれていた。



「リィナさまとマルクさまですか?」

衛兵の姿をしたゲートキーパーが語りかけてきた。
二人は無言でうなづいた。

「お待ちしておりました。ささ、こちらへ」

一見、無骨な衛兵のようだがとても礼儀正しい。
マルクたちは言われたとおりに複雑な呪文が書かれた星型の陣の中に入る。
ゲートの魔力によって二人は亜空間へと飛ばされていった。


足元に大地の感触がよみがえる。
マルクたちは無事にゲートの先にたどり着いた。

「太陽がまぶしいね」

たどり着いた先は南国風の気持ちのよい草原だった。
海が近いのだろうか、波の音も聞こえる。

空間転移が始まったときと同じように二人は魔法陣の中にいた。
いや、性格にはゲートキーパーを含む三人だが。

「わぁ、キレイなお城ー!!」

リィナの目の前には壮麗な城と城壁が見えた。
言葉に反応してマルクもリィナの視線を追う。

これが主催者であるミマール氏の居城なのか。

「大きいお城だね、マルクくん!!」

「ほんとですね~。いったいどれだけの人たちが暮らしているのだろう?」

レンガ造りの城壁に囲まれた真っ白な建物。
真っ赤な装飾が施された尖塔がいくつか見える。
遠目にも入り口に衛兵がいるのがわかる。




「よくぞ参られた!でおじゃる!!」


声のするほうに目をやると、いかにも王様といった衣装に身を包んだ人物が立っていた。
ゲートキーパー氏が膝を屈して礼をとっている。

(おお、この方がきっとミマール氏に違いない。)

マルクはぺこりと頭を下げた。その脇をリィナが駆け抜けていった。


「私はミマール。BF選手権の……」

「おじゃる、おじゃる~!このひげは本物ですかぁ?」

リィナは初めて見る王様ルックの人物に興味津々のようだ。


「ぬひゃひゃ、くすぐったい!本物ですよ、おじょうさん。」


「ふみゅー」

近づいてきたリィナを軽く抱擁するミマール氏。
抱きつきながらも白いひげを触り続けるリィナ。

(こ、声が変わったような?)

とりあえず彼がミマール氏であることに間違いはないようだ。
リィナとの抱擁を終えたあと、ミマール氏はゲートキーパーを伴ってマルクたちを城壁の中へ案内した。



「とにかくよく来てくださった。感謝します。」

いきなり晩餐会でも開けそうな大きなテーブルにマルクとリィナは座っていた。
ミマール氏の横にはゲートキーパー氏と女の子が一人、それとリィナと同じくらいの背丈の少年兵が直立不動で控えていた。

「昨年度のお話は聞かれましたかな?」

出された紅茶をすすりながら二人はミマール氏の話に首を縦に振った。

「ウィル殿たちのおかげで大変盛り上がりました。なにせ開始前までは圧倒的に一番人気の女性がおりましてね」

きっと優勝したメイドさんのことだ、とマルクは直感的に理解した。
紅茶が出てくるまでの間にいろいろなことがわかった。
ここはいわゆる公営賭博場のような場所で、世界中のVIPがお金を出し合って対戦者にお金を掛けることができる。
BFに不正がないように対戦するもの達が誰なのかは当日まで不明。
そんな中、昨年は呼び寄せた淫魔のうちの一人が大変に強力で賭けが成立しない状況だったらしい。

「やはり戦いが一方的だと興ざめですな。」

ニコニコしながら話を続けるミマール氏。
今年もウィルとライムを呼ぶつもりだったが、ハンター協会からはマルクとリィナを薦められたらしい。
二人の活躍に期待しますよ、と前置きをしてから彼は続けた。

「さて、試合はトーナメント制なので、参加者の対戦相手を公平に決めねばなりません。そのためにお二人には抽選のかわりに簡単なBFテストを受けていただきます。」

ミマール氏が手を上げると、後ろで控えていた女の子がすばやく一歩前に出た。

「マルク殿のお相手はこの城の守備隊からリリリン副隊長。」

ミマール氏に紹介された女の子はリリリンというらしい。
マルクのほうを向いてペコリとおじぎをした。



ポニーテールにした黒髪がふわりと揺れた。
年齢は17歳くらいに見える。それでいて副隊長というのは驚きである。
大きな黒目とまだ幼さを残した顔立ちがとても可愛らしい。
グラマラスというよりはすらっとした体型なので、マルクにとってかなり好みの女性かもしれない。

「ひぎゃっ!」

激痛を感じたマルクが小さくうめいた。
マルクの鼻の下が一瞬伸びたことを察知したリィナは、思いっきり彼の足を踏みつけた。

「なにかあったのぉ? マ・ル・ク・く・ん」

「い、いいえ。なんでもないけど……足をどけてくれないかな」

テーブルの下で何が起こっているかを知らないミマール氏がさらに話しを続ける。

「リィナ殿にはこちらにいる新人兵卒ショウタロを」

「きゃーん、カワイイ!!……んみゅっ!!」

今度はマルクの人差し指がリィナのわき腹に突き刺さった。







(リィナさん!いくら新米さんとは言え相手に失礼ですよ!)

マルクは出来るだけ小さな声でリィナに警告しようとしたが、

「えええ~、だって可愛いんだもん!」

相方は頬をプクーと膨らませて不満げな表情をしている。
しかも受け答えがいつもの大声だからマルクの配慮もブチ壊しである。

「かっ、かわっ……」

言われたほうのショウタロは真っ赤になって照れている。
その様子を見たリィナは、ニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべた。

「ねーねーねー、ショウタロくんて好きな人いる?」

「じ、自分はそのっ、そういった質問にはおこた……」

「……コホン」

ミマール氏が咳払いをして二人の間に割って入った。
そして恨めしい顔でショウタロを一瞥する。

「とにかく二人でBFするでおじゃる。ちょっとうらやましいぞ、ショウタロ二等兵。」

「は、はいっ!」

ショウタロ二等兵は元気よく返事をした。
しかし、ミマール氏の前で緊張し続けている新人にとっては酷な展開かもしれない。
彼にしてみれば初めての大役。実力の半分も出せれば成功といえよう。

「リィナ殿とショウタロ二等兵では実力が違いすぎるかも知れんので、ハンデを考えてみた。」

「えー、なんかズルイ~」

「ズルくないでおじゃる。」

口を尖らせているリィナを無視してミマール氏は続ける。


「このショウタロ二等兵相手にリィナ殿は『口だけ』で勝利して見せてほしい。」

「フェラとか耳舐めとかしてもいいんですかぁ?」

「口だけなら何でもアリ、さらに10分間の時間限定でおじゃる。」

次々と言い渡されるハンデを聞いてリィナは不満そうだ。

「10分間だけじゃ、全然たのしめなーい!」

余裕とも取れる発言を受けて、ショウタロ二等兵はむっとした。
そしていそいそと衣服を脱ごうとしたところをリィナに制止された。


「タロタロくんはそのままでいいよ。じゃあ今からはじめよ?」

時間がもったいないとでも言わんばかりにリィナはミマール氏をジト目で睨んだ。

「うっ、そんな目で見ないで。」

「……おじゃ~るのことは許さないモン」

「むむ~。とにかく始めるでおじゃるー!」

こうしてリィナVSショウタロのBF(ハンデ戦)の幕が切って落とされた!



パサリ……

「じゃあタロタロくん、いくよぉ」

窮屈そうな旅の衣装を脱ぎ去ったリィナの身体を見て、ショウタロとミマール氏は息を呑んだ。
うっすらと桃色に染まるリィナの肉体はすでに臨戦態勢だ。

ふよんふよん♪

魅惑的な揺らめきを見せる大きめのバスト。
ミマール氏はハンター協会から彼女のことをスライム族と聞いていた。
しかし不自然な透明感はなく、むしろ人間の肌よりも素直に美しく感じる。

(やや、やばいですよ!僕じゃ相手にならないかも!!)

ショウタロはリィナの雰囲気に既に呑まれかけていた。
彼の初陣を飾る相手としてはリィナは少し荷が重い。

(落ち着くのだ、ショウタロ。おぬしは10分耐え切ればいいだけなのだ!)

ミマール氏もアイコンタクトで新米兵を励ますが、ショウタロはこれから始まるバトルへの期待と不安で小刻みに震えていた。
彼女のバストのふわふわ感は見ているだけで包まれたくなるほど。

実はショウタロの弱点は女性のおっぱい攻撃だった。
幼児体系だと思って安心していたのは大間違いで、リィナの身体は女性として申し分なかった。

「ひぃっ……」

思わず一歩下がってしまうショウタロ。

「逃げちゃダメ」

リィナの身体からにじみ出る淫らなオーラがショウタロの手足に絡みつく。
見えない糸で縛られたかのようにショウタロの動きが止まった!

「ふう~♪」

さらにリィナは一瞬で間合いを潰して、彼の顔に優しく息を吹きかけた。
桃のような甘い香りとともにショウタロの視界が一瞬ピンク色に染まった。

「タロタロくん、リィナみたいな女の子きらいですかぁ?」

「そ、そんなことは……ないです。」

すっかり脱力したショウタロの両肩に手をかけて、リィナは軽くキスをする。

「ふわあぁぁ……」

ショウタロは魅了されてしまった!
リィナの手が肩から腰にすべり、ショウタロを正面から抱きしめる。





「これでもう逃げられないよ、タロタロくん♪」

リィナは棒立ちになっている彼を抱きしめ、さらに身体を密着させる。
ほんのりとした温もりが衣類を通じてショウタロの肌を包み込む。
抱き付かれている時間に比例して股間がどんどん膨張してくる!

「あぁぁ、ふわああ……!」

直接素肌で触れていたら既にショウタロは敗北していたかもしれない。
しかしじれったさが逆に快感を増幅させ、彼の思考を快楽一色に染め上げていく。

んちゅっ……

リィナの優しいキス。
しばらく唇をやわやわと弄んだ後、ゆっくりとショウタロの耳に舌先を挿入した。

「はふぅっ!」

体をビクンと大きくのけぞらせるショウタロをいなしつつ、今度は口の中を犯す。
普通に責めるよりもゆっくりと丁寧にリィナは相手を舐めまわす。

対するショウタロも負けじと舌を絡めて応戦するがまったく歯が立たない。
しばらくして相手の抵抗する力が弱くなったのを見計らって、リィナはショウタロを解放した。




「ふふっ」

ツツーっと銀色の糸が二人の口の間に伸びた。

「はふぅ……」

「やっぱり可愛い~」

ショウタロの反応に気を良くしたリィナはますます責めを強くしようとした。
しかし……

「うっ、ううっ、ふわーん!!」

「えー!どうしちゃったの、タロタロくん」

突然ショウタロは泣き出してしまった!
思いもかけない展開に戸惑うリィナ。


「あわあわ……な、なんか痛くしちゃった!? それともリィナのことやっぱり嫌い?」

「そうじゃなくて、自分はボクっ子以外と触れ合ったことが……」

「ふぇ? ボ、ボクっこ……ってなぁに??」


泣きじゃくる子供をあやすように、優しく問いただすリィナ。

聞くところによると、ショウタロ二等兵は故郷に好きな女の子がいるらしい。
その女の子は自分のことを「ボク」と呼ぶ。

そういう女の子が大好きなショウタロは「ボクっ子」以外の女の子に感じている今の自分が許せない。
魅了され、快感におぼれながらも自身のプライドと葛藤しているうちに涙があふれた、ということか。


「うぅ~ん……でもリィナ、自分のこと『ボク』って言った事ないしなぁ。」

「む、無理して言わなくてもいいです。」

ショウタロは涙を拭きながら答えた。

「でもリィナ、タロタロくんみたいな男の子って好きだよ?」

「ぐすんぐすん……え、ええっ!!」

「素直で純粋な男の子ってステキだもん。それだけじゃダメかなぁ?」

にっこりと微笑むリィナを見て、少しずつショウタロの心が開いていく。

「べ、べつにダメじゃない……です…………」

「じゃあタロタロくん、今だけリィナのことを好きになって?」

自分のことを本気で心配してくれる女性がそばにいる……警戒心を解きほぐされ、無防備な心にリィナの優しい言葉が染み渡ってゆく。

ショウタロはさらに深く魅了されてしまった!

周りで聞いてるミマール氏もとろけるような甘い雰囲気をかもし出すリィナ。


(わしにも言ってホシイナー……)

と、密かにうらやましく思うミマール氏であった。




それからしばらくして10分間が経過した。

「ぶー!リィナの負けですぅ」

相手を魅了しつつ終始有利にBFを進めていたリィナではあったが、ショウタロを射精させるにはいたらなかった。

結局ショウタロは10分間イかされることなく耐え切った!

しかし彼は自分ひとりでは立てないほどにヘロヘロになっていた。
ドサリ、とその場に膝から崩れ落ちた。

チェリー同然の彼が耐え切れる許容量をはるかに超えた寸止めのせいで、ショウタロは悶え苦しんでいたのだ。

「ふわぁぁぁ……」

うわごとのように何かをつぶやきながら恍惚感に浸っているショウタロ。
しかしルール上では彼の勝利である。

「あっぱれ、よくやった!……といいたいところでおじゃるが」

ミマール氏は一呼吸おいて、

「おお、ショウタロ!なんということだ。ロクイチ、これをどうする?」

ミマール氏はリィナの魅了攻撃でヘロヘロにされてしまったショウタロを抱き起こし、背後に控える二人に目配せをした。

「いいえ、王様。ショウタロは善戦しました。しかし荷が重すぎたようですな。」

今まで静観していたゲートキーパー氏が口を開いた。
どうやら彼の名はロクイチというらしい。

「責任を取れとは言わぬが、どうじゃ? 守備隊長のおぬしがリベンジしてみては?」

「そうですな……では」

ずいっと一歩前に出るロクイチ。
重そうな装備を脱ぎ捨てると、鍛えこまれた男の体が服の上からでもうかがえた。

「手前、この城の守備隊長を勤めるロクイチと申す。リィナ殿、ショウタロを完全に魅了した技量には感服いたした。」

「ふふっ、ありがとぉ。でもショウタロくん、これからきっと強くなるよぉ」

自分の部下を褒め称えられ、ニヤリと笑うロクイチ。
しかしその目はすでにリィナに対する挑戦者としてぎらぎらと輝きを放っている!


「連戦で申し訳ないがあらためて、この私とBFしてくれないか?」

「いいよぉ。今度はどんな勝負にするの?」

「純粋にイカせっこで頼み申す。」

深々と頭を下げるロクイチからの挑戦を、リィナは二つ返事で受けた。


「じゃあリィナも手加減しないよ。それでもいい?」


「存分に。」

ロクイチの体からは気力があふれ出している。
これならリィナといい勝負ができるかもしれない、とその場にいた誰もが予感した。
そのかたわら、救護班の担架が到着して、幸せそうなショウタロを乗せて足早に去っていった。







「うああー!!」

正上位で激しくぶつかり合う二人。




「きゃはっ」

ほんの少しだけツボを外して大打撃を避けるリィナ。
ロクイチとリィナのバトルは熾烈を極めた。

(さすがは隊長さんだ……)

マルクはリィナ相手に奮闘するロクイチの動きに感心した。
タフネス、パワー、テクニック全てにおいてハイレベルな攻防。

リィナもおそらく本気モードだろう。
先ほどとは息の切れ方が比較にならない。

これはしばらく決着がつきそうにない。
ミマール氏も目を細めて戦いの行方を見守っている。

「はぁ、はぁ、さすが守備隊長さんですね」

息を切らせながらも自分に有利なポジションをキープしようとするリィナ。
さらにその動きを先読みしてカウンターを放つロクイチ。

「あっ、感じちゃいますぅー!!!」

「……まだまだイクわけにはゆかぬ」

お互いに決定打を与えることのないまま、しばらくの時間が過ぎた。



「両者ここまで!」

ミマール氏が戦いの中断を指示した。
戦っている二人の動きが止まる。

「リィナ殿、ロクイチ、共に譲らぬ見事なBFであった!」

「こらー、おじゃるー!またジャマしたー!!」

「うぐっ、そういうでない。リィナ殿の力量、とくと見極めましたぞ。」

ひげを撫でながらミマール氏は苦笑いした。
そしてクルリと身を翻してマルクのほうを向いた。

「次はマルク殿の番です。うちの副隊長はなかなか手ごわいでおじゃるよー!」

ロクイチとリィナに衣服を渡し終えたリリリン副隊長がこちらを向いた。
優しい目をしているがクールな雰囲気の彼女がどういったBFをするのか。
マルクには見当がつかなかった。






カチャカチャと装備をはずし、あらわになったリリリンの肢体にマルクは息を呑んだ。


「服……早く脱いで」

チラリと少し控えめな視線をマルクに送るリリリン。

おだやかなその声でマルクは我に返った。

ほんの少しの時間だが目の前の少女リリリンの艶やかな身体に心を奪われてしまった。

真っ白な陶器のような肉体がマルクの目の前にさらされる。
予想していた通り巨乳ではないが美しいバストライン。
少し頬を赤くして恥らうリリリンを見て、マルクは不思議な気持ちになった。

(な、なんだか……この人すごく色っぽいぞ)

リリリンは男を誘うような特別な仕草をしていない。
しかし確実にマルクの男としての本能に訴えかける何かを発している!

「手伝う……」

マルクに身を寄せるかのように寄り添い、リリリンが彼の服に手をかけた。
ゆっくりと脱がされる過程でも軽く感じさせられてしまうマルク。

「い、いいですっ」

彼女の手を払いのけようとして、逆にふんわりと手を握られてしまう。
しっとりとした質感がマルクの興奮をさらに高める!

「遠慮しないで。」

「うあっ、ああぁぁ!!」

「早く暖めてほしいな……」

この手は振り払わないとまずいことになる。
しかし目の前の華奢なリリリンをマルクは押しのけることはしなかった。
無言で思わず身を任せてしまう……

「そう、そのまま大人しくしてて」

ほんの少しリリリンが微笑んだ。
抱きしめようものなら自分の腕の中にすっぽりと収まりそうな彼女に、マルクは逆らえなかった。

カチャカチャ……パサッ

とうとうマルクは全裸にさせられてしまった!
リリリンは相変わらず優しい視線で彼の目を見つめている。

(は、恥ずかしい……!なんでだ!?)

まったく手を触れられていないのに、すでにマルクのペニスはかなり硬くなっていた。
リリリンの視線がゆっくりと舐めまわすように下りてゆく。
マルクの瞳から唇、耳から喉、鎖骨から胸板、乳首からおへそ……確実に彼女の目で犯されている!?

「はっ、ああっ、くそっ……」

そしてリリリンはその瞳にペニスを映した瞬間に、そっと彼のペニスを両手で包み込んだ!
彼女の細い指先がサラサラと這い回る。

「やだ……もうこんなに硬いよ。マルク」

リリリンが初めてマルクの名を呼んだ。
さらに息がかかるほどの距離でチラリと上目遣いを送る。
たったそれだけで彼はイく直前まで高められてしまった!


「んああっ!!」

大きく身体を弾ませるマルク。
リリリンの手はほんの少し触れている程度なのに、マルクにとっては数十分愛撫された後のように腰全体が甘くしびれてしまった!!


「あなたの弱いところ、私に教えて?」

リリリンはペニスに添えた指先を少しずつ震えさせた。
透明なマルクの我慢を少しずつ指先で広げてゆく。

「そんなの教えられるわけない……はあぁぁっ!」

細いリリリンの腰がマルクに密着する。
そそり立ったペニスが二人の間に包まれる。
しっとりと湿った指先がマルクの背中を這い回り、優しい愛撫を与えながら弱点をサーチしてくる!

「私あんまり胸は大きくないけど、身体の線はキレイだってみんな言ってくれるの……」

マルクはその言葉に黙ってうなずいた。





「マルクくん!どうしちゃったのー!!」

傍目には完全にリリリンのペースでBFが進んでいた。
リィナはこらえきれず大声でマルクに檄を飛ばしたが、彼の目はうつろなままリリリンを見つめているだけ。

「まったく不思議じゃろ?」

ミマール氏がリィナの脇で囁いた。
マルクに無視されたことでリィナの鼻息はとても荒い。

「わしもロクイチも始めはあんな感じだった。リリリンは生まれもって男を恥ずかしくさせる能力を持っているのじゃ。」

「恥ずかしくって、どーゆーことぉ?」

リィナはプンプンしながら聞き返した。

「魅惑能力と言い換えてもいい。リリリンは基本的に男性恐怖症なんじゃよ。」

「男の人が嫌いなんてリィナ信じられなーい!じゃあなんでBF強いのよっ、おじゃる!!」

「うぐっ……理屈はわからんが、きっとマルク殿の目にはリリリンは無垢な少女に映っていると思うぞ?」

ミマール氏は再び視線をBFしている二人に戻す。

リリリンがゆっくりとした手つきでマルクのペニスをしごいている。
受け手のマルクは膝をガクガクさせながらその刺激に耐えている!

「マルクくん……」

「リィナ殿のように自分の意思で自在に引き出せる能力ではないがの。リリリンと初体験するBF相手は9割方その甘い雰囲気に呑まれる。」

不安そうな目でバトルを見守るリィナの背中を優しく叩くミマール氏。
リリリンが淫魔と戦うときも同じ効果が現れるので、相対した敵はことごとく無力化されてイかされるらしい。
淫魔と人間の戦いは一度きりが基本なので、一度イったら消滅してしまう淫魔にはリリリンの魅惑攻撃に耐性が出来ることはない。

「リリリンにしてみれば初めての相手に緊張しているだけなのだが、逆にその緊張感が男を魅惑するスパイスになっているのじゃ。」

「それじゃあ、リリリリンは無敵じゃないー!」

「そうじゃの。だからわしはマルク殿がリリリンに負けても責める気はない。問題はその後、闘志を保っているかどうかじゃ。」

勝負は立ち技から寝技に移ろうとしていた。
リリリンはマルクが魅了状態であることを確かめると、優しくベッドに横たえた。

「だめだよっ、マルクくん! 目覚めてー!! 負けちゃうよぉ!!」

「リリリン戦の後でも戦う気力があるなら合格。そうでなければお帰りいただく。」

リングサイドで檄を飛ばすリィナの声が、マルクにはとても遠くに感じていた……







(ああぁ……なんだか体に力が入らない……でも、気持ちいいんだ)

ベッドに横たえられたマルクはリリリンの甘い罠に捕らえられつつも、漠然と危機感を覚えていた。
養成学校などで今まで相手をしてきた女性とはリリリンはあまりにも違いすぎた。

「マルク、手をどけて。気持ちよくしてあげるから」

心地よく脳内に響く穏やかな声。
マルクは言われるがままに手足をリラックスさせた。

クチュッ……

敏感になったペニスに指が絡みつく。
ゆっくりと上下にしごかれ、時折指先でカリ首をくすぐられる。

「はっ、あ……」

「ここがいいの?」

相手の反応を見ながら、ゆるゆるとリリリンは責めるポイントを絞ってゆく。
決して痛みを感じさせることなく、延々と繰り返される優しい愛撫。
マルクは試合開始当初と違って無防備にその刺激を受け止めてしまう。

「もっとカチカチにしてあげる」

鼻先に軽くキスをされた。それがまた心地よい。
リリリンの責めは決して激しさはないが、全てマルクの急所にヒットしていた。
どちらかというと淫魔の魅了攻撃に近い。
しかしまったく回避することができなかった。

(このまま僕は負けてしまうのか……)

マルクの心が折れそうになったそのとき、遠くで何かが聞こえた。



「こ、これっ!騒ぐでない。リィナ殿」

ミマール氏がリングサイドでマルクに熱いエールを送っている相方を諌めた。
しかし彼女は必死に叫び続ける。

「マルクくん! まずいってば!! ライムお姉さまにお仕置きされちゃうよー!!!」

文字通りリィナは絶叫していた。
あまりの大声に部屋の外からもギャラリーが何人か駆けつけてきた。

(なんか聞こえる……リィナさんの声かな)

さすがに意識が飛びそうなマルクにも少しは響いていた。
特に、リィナの叫びの中でとてつもなく不吉な文字列が頭に残る。

「おし……おき?」

「えっ?」

マルクがポツリと口にした言葉でリリリンが反応した。

「ライ……ム……おしおき……」

「えっ、えっ??」

今までは夢うつつに横たわっていたマルクの意識が復活しかけている!
リリリンはあわてて指先に力をこめてしまった。


キュキュッ!!

「痛っ……」

手コキの速度を上げようとして、刺激を強くしすぎたことが逆効果になった。
マルクの瞳に光が戻った!


「やばいっ!!」

ガバッと飛び起きてマルクはリリリンと体勢を入れ替えた。

「きゃあっ!!」

あわてたリリリンが思わずマルクに背を向ける。
これが仇となった。

マルクは背を向けたリリリンの肩をつかみ、自分ともどもベッドに仰向けになった!
彼女を仰向けにして自分が下に潜った形をとることで、リリリンの顔を見なくてすむ。

(なんとなく……なんとなくだけど、リリリンと正対しちゃいけない気がする!)

彼の予感は正しかった。
戦う意思を取り戻したところで、再び正面からリリリンとに向き合ったら同じ繰り返しになっていただろう。
マルクの選択はベストに近かった。

「あっ、こんな格好……イヤッ!」

マルクの体の上でリリリンが軽く抵抗してみせる。
この機を逃すまいとマルクは自分の膝を彼女の閉じた両膝に差し込んだ!


「うわぁ……マルクくん、なかなか鬼畜ですぅ」

無理やり開脚させられたリリリンの姿を見て、リィナが思わず両手で顔を覆った。
しかし開いた指の隙間からちゃっかりその光景を見つめている。

「う……い、いやぁ……」

顔を真っ赤にして恥ずかしがるリリリン。
無理もない。
もともと照れ屋の彼女がこんな屈辱的な体勢を強いられているのだから。

マルクはひそかに右手をリリリンの股間に忍ばせて、器用に人差し指と薬指とで膣口を大きく広げた!


くぱぁ……


「イヤぁぁぁぁ……ああぁぁん!」

開かれた先には幸い誰もいなかったが、もはやパニック状態に近いリリリンには耐えられないほどの恥ずかしさに変わりはなかった。

(ほら、みんなに見てもらおうよ)

リリリンの耳元でマルクはささやいた。

「そんなこと言わないで……はぁあ!?」

彼女の羞恥をあおりつつ、マルクは中指でクリトリスを軽く撫でた。
激しい快感がリリリンの下半身をしびれさせる!

「こんなにしちゃって恥ずかしくないの?副隊長殿」

マルクは指先をねっとりと動かしながらクリトリスや膣口、さらには第一関節辺りまで指を挿入した。
その間も言葉責めは止まらない。

「だめっ、だめだよぉ……お願い、もう止めて。恥ずかしいの……」

リリリンが切ないあえぎ声を上げ始める。
快感と屈辱の狭間で揺れ動く彼女に、マルクは小さく囁いた。

(負けを認めるなら止めてあげてもいいよ。どうする?)

その言葉を聴いたリリリンはコクコクと何回か頷いた。
マルクは仰向けの体勢から彼女を解放して添い寝の状態になった。

「じゃあ、気持ちよくイカせてあげる。」

「っ!!も、もういいよ、マル……くうぅぅ!!!」

マルクはリリリンに腕枕をしながら手を握り締めた。
そして足を絡ませて彼女が足を閉じられないようにした上で、優しくクリトリスを撫で上げる。

はじめは拒絶していたリリリンがそのうち脱力してきた。


「あぁん!ダメ……これじゃダメだよぉ……」


「勝ち負けはもう関係ない。僕は君の事をイかせてあげたいんだ。」

マルクの指のすべりが急に良くなった。
おそらく彼の言葉をリリリンが素直に受け止めたのだろう。

クチュックチュクチュ……

きゅいっ……


「ひゃああん!!」

秘所をもてあそぶマルクの指がクリトリスをはさんで優しくひねった!
子宮を突き刺すような甘美な痺れにリリリンがひときわ高い声を出す。

「僕の指で感じて、リリリン」

マルクは陥落間際の美しい少女に優しく唇を合わせた。
それを合図に小刻みに震えていた彼女の体は大きく波打つようにベッドで跳ねた!!


「ひゃ、あぅっ、きゃあああああああああぁぁぁぁ!!!!!」

何度か大きな快感の波に揺らされたリリリンは、その後ぐったりとマルクの腕の中で気を失った。



目を覚ましたリリリンの前には穏やかな顔で彼女を見つめるマルクがいた。

「……大丈夫?」

コクンと頷くリリリン。
そしてマルクのほうを見てにっこりと笑顔を返した。
マルクも思わずドキッとするほどの美しい表情だった。

「私、男の人にイカされたの初めてなの。」

「そっか……それならとても光栄だよ。」

ちょっと照れながら話すマルクを見てリリリンは再び小さく笑った。



「はい、そこまでぇ~!!!」

「う、うわっ、なっ、あぼおおお!!!」

どすっ

グギッ……

リリリンとマルクの間にリィナが振ってきた。
正確にはフライングヒップアタックである。
とっさにリリリンは回避することができたが、彼女をかばったマルクはリィナの攻撃をもろに受けた!

「マルクくん、もういいでしょ!!テストは合格だってさー」

しかもあたったところは激戦を終えたばかりの腰周り。
ジンジンとした激痛でマルクは半泣きである。
痛恨の一撃を受けて身動きできないマルクをリィナはベッドから引き釣りおろした。
情けない格好でズルズル引っ張られていく。

「じゃあ、リィナたち休んでいいよね、おじゃるー?」

「も、もちろんでおじゃるよー」

あっけにとられるミマール氏の前を通り過ぎてリィナとマルクが服を着替え始めた。

「早く着替えなよ、マルクくん!」

なぜか機嫌が悪いリィナに逆らわないように、マルクはノロノロと動き出した。

「マルク……」

「うん? ああっ、リリリンさん。ありがとう」

「うぅん……」

なぜか頬が赤く染まったリリリンが、マルクの服をベッドの隅から取り出してきた。
彼女がマルクにそれを届けようとするのをリィナが阻止した。

「ムキー! あたしがマルクくんに持ってくからいいよっ!」

奪い取るようにリリリンの手から服を受け取ると、リィナはマルクに向かって服を丸めてぶつけた。
王に一礼するとリリリンは無言で自分の部屋へと戻っていった。
その様子を見てロクイチとミマール氏は顔を見合わせてニヤリとしていた。

……女同士の戦いは始まったばかりである。







「参加人数が多すぎる。まいったでおじゃるー」

ミマール王は悩んでいた。
この数日間、自分自身の発熱により大会開始を遅らせてしまった。
それ以上に飛び入り参加者が増えたようで、主催者としてはうれしい悲鳴なのだが。

「たしかに今日中には終わりませんな。」

初老の側近が慰めるように声を掛けた。

コポコポコポコポ……

熱いコーヒーがカップに注がれる。

この瞬間だけは王はいつもリラックスできる。


側近が入れるこの一杯はなぜかうまいのだ。


「いっそのこと、年末年始BF大会に名称を改めては?」

「それではいいかげんというか、王としての威厳がっ!ふぎゃっ」


あわててコーヒーカップを置いた拍子で、跳ねたしずくが王の鼻先に直撃した。

忠実なる側近はそうなることを予見したいたかのように、冷たいおしぼりを王に手渡した。

「威厳も大事ですが、選手たちの戦う意思も大事でございますよ」

「そうじゃの……」

窓の外をのぞくと、明るい太陽が王に微笑みかけていた。

「それに先ほど前年度の準優勝者ライム殿から連絡がありました。」

「ほう……いかなる用件で?」

それからしばらくの間、王と側近は話し合いを続けた。

最後に王はトーナメント表をじっくり見てからポツリと一言……

「ライム殿の相手は彼にしてもらうことにしようかの。」

王の指差した場所を覗き込むイイヨナ。
その先には「ミィ」という選手の名前があった。


次の日。



どーん、どーん、どどーん

湧き上がる歓声と共にミマール王が観衆の前に姿を現した。

ここ3日間ほど流行疾患(淫フルエンザ)に倒れていたということで大会自体も見送られる可能性が強かった。

しかしこうしてみんなの前に顔を出せるまでに回復できたことは、ひとえに彼の絶倫さを物語っていた。

「おじゃる、元気になったんだー」

「よかったですね、リィナさん」

マルクたちもせっかく楽しみにしていたBF選手権がお流れになっては楽しくないと思っていた。

特にリィナは(個人的な理由で)ある女性選手とBFしたくてしょうがなかったのだから、その機会が無くなってしまったのでは面白くもなんともない。

そのほかの選手たちも彼ら同様に安堵の声を漏らしていた。


「開会に当たっての主催者からの挨拶です。」

司会の声にあわせてミマール王がペコリとお辞儀をする。
コホンと咳払いをしてからの第一声、


「えー、みなさんごきげんよう。わし、クリスマスに苦しみますた……なんつって」


往年のオヤジギャグに凍りつく空気。

ピタリと静まり返る観衆。


………………

…………

……


数秒の間を空けて、晴れ渡った冬空に祝砲が数回鳴り響いた。

「とにかくお集まりいただいた皆さん、今年もがんばるでおじゃる!」

それだけを言い残してミマール王は退席していった。



淫魔、人間を問わずこの一年間でBF界に影響を与えた戦士たちを集め、頂点を競わせる大会……それがクリスマスBF選手権だ。

この開会式が終わればいよいよ本選スタートである。

すでにウォーミングアップを始めようとする選手もちらほらいる。



「第一試合は15分後です。ルールは皆さんにお配りしたルールブックを参照していただきたい」

場内にあるスピーカーから大会進行役からの声が鳴り響いた。




「なんだか慌しい大会みたいですぅ」

「しょうがないよ、これだけの人数だもの」


ブツブツ言う相方をなだめながらマルクは苦笑いして見せた。

リィナとマルクは先刻手渡された冊子をめくってみた。

内容は大まかに言えばこんな感じだ。

・一試合60分一本勝負

・相手に「まいった」を言わせるか、失神させれば勝ち

・男性有利規定。60分後に勝負がつかないときは男性の勝ち

・相手を殺してはダメ

・試合時間厳守

・予選は一日目に3回戦行う。二日目が準々決勝と準決勝。三日目が決勝と特別戦。


「特別戦ってなんだろう?」

ボソっとマルクがつぶやくと、隣にいたきれいな青い髪の女性が教えてくれた。
今大会で特にすばらしいバトルを見せた選手たち8人を集めたオールスターゲームのことらしい。
それを選ぶのはここにいる参加者全員だということ。

「選ばれるだけでも名誉なことだし、莫大な賞金もいただけるの。」

それだけを言ってから、パチンとウィンクをして青い髪の女性は消えていった。

「ミマール王はいろんなお宝を持っているみたいだよ、リィナさん」

「じゃあ、リィナはおじゃーるに『食べても無くならない美味しいお菓子』もーらおっと♪」


……そんなもの無いって。






さて、こちらは大会の予選会場に続く通路。

クリスマスBF開催前日に滑り込みで、ある大物淫魔がエントリーしていた。
しかしそのことをしる大会関係者は少ない。

選手にいたってはまったく知らされていない。

そのVIPともいえる淫魔がゆっくりと通路を歩いている。



コツコツコツコツ……


ちょうど反対側、明るいほうから一人の男性騎士が歩いてきた。
彼の目には暗がりに二つの赤く光る点が見えた。
経験から淫魔が歩いてきた、とわかった。


「あら、あなた」

「はい?」

淫魔が声を掛けると男性は振り返った。

目が合った瞬間に背筋に何かが走る。

彼女から特に敵意を感じるわけではないがものすごいプレッシャーを与えられている。


「あなたたち二人で一組なの?」

「えっ?」

まさか見えるのか?……彼は真っ先にその言葉を疑った。


『逃げてっ』

突然、男性騎士の背後から漆黒の翼の少女が現れた!

少女は臨戦態勢だった。

翼を最大限に広げ、無言で彼を守るように大きく両手を開いて女性淫魔の前に立ちふさがった。


「別に何もしないわ。そんな目で見ないで。」

「ルカ!大丈夫だよ。退いて……」

それでもしばらくの間、少女は警戒体勢を崩さなかった。

彼がゆっくりと癒しの呪文を唱えると、少女は闇に溶けていった。


「すみません。気分を悪くさせたでしょう?」

「あなたたち、息の合ったいいコンビね。お名前を聞いてもいいかしら?」

「僕はサコといいます。でも僕と彼女は二人一組ではありません。」

青年はサコと名乗った。

彼自身の強さも相当なものを感じるが、使い間のレベルも尋常じゃない、と女性淫魔は感じた。


「私は…………フフッ、縁があればまた会えるわ。」


「えっ」

サコの目の前で女性淫魔が消えた!

そして突然背後に足音が聞こえた。


コツコツコツ……


空気の流れもまったく感じないままにサコは淫魔の姿を見失ってしまった!


「……敵としては当たりたくない、な。」

このときの彼は素直にそう感じていた。






ようやく始まったミマール王主催のBFグランプリ。
総勢130人あまりの淫魔と人間とがその淫らな技を競い合う祭典。

会場内は、人間ならばハンター協会認定Aクラス以上、淫魔ならば中ボス(大淫魔)クラスが普通に歩いている。

ここで行われる全ての試合を網羅することは不可能だが、いくつかの試合状況をかいつまんでお届けしよう。



BF選手権 第二会場 一回戦 

まずは王宮の北東に位置する第二会場から。



この冬、A級に昇格したばかりのハンター、トケィは戸惑っていた。
目の前にはまるで小枝のように細身の淫魔が立っている。

(口淫魔のカシユ……か。)

名前だけなら聞いたことはある。

あまりにも童顔で、あまりにも華奢な肢体。

しかしそれ以外に彼女のデータが少ないことから、その危険度はかなり高いといえる。

レフェリーの注意事項も上の空で、トケィはカシユを観察していた。


前髪パッツンでロングヘア。

肌は雪のように白い。

(やばいな……)

今のところ激しい淫気も感じない。

特につかみ所のないカシユを見ているとなぜか焦燥感に駆られる。

それは彼の戦闘経験の少なさのせいだけではなかった。


カシユの胸は……ほぼぺったんこである。

しかしトケィの身体は敏感に危機を察知していた。


(今のうちに弱点を探せ。全身全霊で相手の……ん?)

ふいにカシユの腕がそーっと伸びてきた。

戦う前の握手か。

音を立てて払いのけてやろうと思ったトケィの右手が止まった。

カシユは手のひらを上に向けていた。


「これは……!?」

その小さな手のひらの上には緑に輝く石が乗せられていた。


(こ、これは一度死んでも生き返れるアイテム「命の石」じゃねえか! 俺を舐めてるのか)

瞬間的にカーッとなり、小さな敵をにらむ。

しかしそれも気にせず彼の手のひらをキュッと握って石を手渡すカシユ。


「では、BFはじめっ!」

カシユが怒りに震えるトケィから一歩下がったとたん、レフェリーの手があがった。

戦闘開始である。

(……こっそり秘密をあげるわ)

不適な微笑みを浮かべるカシユを、トケィ猛然と押し倒した!

当然のように二人同時にマットに倒れこむ。


「マウントとったぜ! イかせてやる」

トケィは小さなカシユに馬乗りになって、カシユの両手を頭の上で交差させた。
身動きの出来ない敵を衣服の上から愛撫し始めた。

「はぁっ……」

カシユがきゅっと目を瞑り、切ない声を上げる。
なりたてとはいえ、A級ハンターの愛撫である。効かないわけがない。
しばらくの間トケィは残酷なまでにねちっこく服の上から愛撫を続けた。

「もう病みつきか、カシユ!」

「ずっと好きにしていいのよ」

「言われなくてもやらせてもらうぜ!!」


ブチブチブチッ……

いくつかのボタンが吹っ飛んでしまったが気にもしない。
フリル付きのワンピースを荒々しく脱がせると、はだけた服の奥に予想通りの華奢な身体が見えた。


すうっ……


(うっ?)

トケイの鼻腔に何かの香りがした。
続いて一瞬立ちくらみのような感覚に襲われた。

(なんだぁ…………?)

パァン!!!!

BFの最中、一瞬でも気をそらした自分を叱るようにトケィは自分に平手打ちをした。

手加減があるとはいえ、打った場所が焼けるように頬が熱い。

もう迷いはない。
香りもたちくらみも気のせいだ。
精神の荒ぶったトケィはそれを無視したが、不快なものではなかった。

「な、なにっ」

マウントが外され、カシユが正面に立っている。
トケィも立ち上がっていた。

何かがおかしい……!?


「きっとキミも気に入るよ」

「なんだと?カシユ、なにをした!!」

トケィの目の前には桃色の花畑が広がっていた。

たった一瞬。
自らに喝を入れただけの時間で、カシユは何かをしたらしい。

「これはいったいどうい……うはぁぁっ!?」

あっという間に自分の間合いに入られていた!
しかもカシユの細い指が乳首を弄り回している!!

ゆっくりゆっくりと円を描く指から目が離せない。

「感じたっていいじゃないの」

しかも感じ方がおかしい。
ほんの少し触られただけでこんなに感じるはずもないのに……感じてる!?

「俺に何をした、カシユ、あひぃっ」

知らぬ間にそそり立ったペニスを丁寧に手コキされていた。
今度はコマ送りのようにゆっくりと……トケィの目にははっきり見えるのに振り払うことももがくことも出来ない!

小さなカシユの身体がまるで分身をしているかのようにすばやく動き回って捕らえられない。

快感でトケィの膝がカクッと折れた。

まったく身動きも出来ず愛撫されまくっている現実。
これがやつの書いたシナリオなのか。しかもまだその先が見えない。
カシユを捕まえるために伸ばしたトケィの指先がわなわな震えている。

(うふっ、まだあきらめないで)

もはや射精寸前のペニスをなで上げながら、カシユは囁いた。
それほど刺激的な言葉ではないが、トケィの闘志を再び燃え上がらせた。

「まだ、まだだぁ!!」

トケィは思い切って体勢を立て直そうと立ち上がった。

しかし……彼は天井を見つめていた。

「ほらステキ♪」

その視界にカシユの顔が入り込んできた。

「な、なんで!?」

トケィはもう訳がわからなかった。
立ち上がったのに寝ている。
かわしたはずなのに食らっている。

これがカシユの能力なのか……!?

しかし手探りで相手と戦うトケィにも少しわかる気がしてきた。

(こ、こいつの能力は、きっと……くそ、勝てねえ)

やわらかい手がトケィの亀頭を握り締める!

さらにカシユの小さな顔がトケィにゆっくり接近する!!

「このタイミング、ずるいでしょ?」

チュッ チュッ チュッ♪


「あうっ、ぐああああああ!!!!!」

どぴゅどぴゅどぴゅぴゅぴゅぴゅ~~~~~~~

白い飛沫が上がり、勝負が決した。
圧倒的な快感の中でトケィはカシユの呟きを聞いた。

「私の能力『ラブ・ザ・ワールド』があれば優勝できるかしら?」

「くそ……てめぇ、やはり時間を止めてたのか…………きたねぇ……」


パシュッ……!

ガクンと気絶するトケィの手元で「命の石」が砕け散った。

カシユはトケィを一瞥すると、にっこりとした表情で控え室へと消えていった。



× トケィ VS  カシユ ◎ 








BF選手権 第四会場 一回戦 

王宮の南西に位置する第二会場では予想外の事態が起こっていた。


「な、なんであなたが……!」

驚きの声を発しているのは人間界からの選手だった。

彼は「速討ちのミィ」と呼ばれるAクラス退魔師である。

その異名は、彼と対峙した淫魔があっという間に昇天させられるところから来ているのだが。


「あら、私じゃ不満みたいね。ミィくん。」

対する淫魔はムッとしていた。
赤みがかったブラウンの髪がふわりと揺れた。
7頭身近い均整の取れたボディと、相手の情欲を掻き立てる眼光。
赤いタンクトップの戦闘服と、相手の四肢を拘束する魔力を持った腕輪。

彼女の名前はライム。
昨年度の準優勝者である。

「いえいえいえいえいえいえ、不満なんて!
 ただ、なんでシードじゃないのかなぁって……」

「ああ、それは……昨日の夜、ミマール王にお願いしたの。『ミィくんとBFさせてください』ってね。」

「そんなの嘘だあああぁぁぁっ!!」


取り乱すミィに向かって、ライムは小さく舌を出す。

「フフッ、もちろん う・そ・よ」



そして無情にも試合開始のベルが鳴り響いた。

「あっ! あれ?」

「リップスのライムがいる!」

「対戦相手は誰だ? おお、『はやうち』だ!こりゃ見ものだぞ」


ざわざわ


今回は参加しないはずだったライムの姿を見た観客たちがどんどん集まってくる。


いきなり注目のカードのひとつになってしまった。



「ギャラリーは多ければ多いほどいいわ」

「さ、さすがの人気ですね……」

ミィにしてみてもいきなりの対戦相手変更にとまどっていたが、自分の力をみんなに見てもらうには都合がいい。

ここでライムに勝つことができれば今後の仕事も増えること間違いない。

(先手必勝!!)

気持ちを切り替えた彼は、まだ身構えてないライムの背後に回りこんだ!
ギャラリーから小さく上がる歓声。

「なかなか切れのある動きをするね。んんっ!」

ライムの目の前で残像が出来るほどの鋭いサイドステップ。
そこからの回り込みで、ミィは先制攻撃に出た。

ちゅっ、プチュ……

ライムを背中から抱きしめ、左手を握りながらの立ち技。
相手の首をひねりつつ、ミィは舌先をライムの口にねじ込んだ!
彼女の甘い淫気をいっぱいに感じながら慎重に責め始める。

(よし!いい感じ……僕だってキスには自信があるんだ!)

ライムも特に抵抗してこない。うっとりしている様子だ。
ミィは彼女の左手を拘束したままで、右手で形の整ったバストをもてあそび始めた。

ぷりゅん……

(す、すごい。感触がとんでもなくいい!!)

服の上から見た印象よりも豊かなバストが彼の右手の中で弾けた。

その手触りに酔わないように気を引き締めつつ、それを優しく何度も揉み続ける。

傍目に見ていてもミィのキスや指先の動きはハイレベルなものに見えた。


「はぁんっ」

丁寧なバスト責めにとうとう声を上げるライム。
さすがに「速討ち」の名は伊達じゃない。
即効性のあるすばらしい愛撫。


(効いてる!?よ、よしっ)

確実な手ごたえを返す胸の弾力とライムの嬌声にミィは気を良くして責め続けた。

立ったままの攻防。
背後からのキスと胸揉みは地味にライムの耐久力を削っていく。

長いキスの途中で、ライムの右手がミィのほほに触れた。
そして指先が彼の耳の位置を探り、人差し指が耳穴にツプッと突き刺された!

(ふあっ!?)

ライムの口内でうごめく ミィの舌先が一瞬だけ止まる。

「んふふっ」

さらに突き刺した指先以外で彼の耳を愛撫するライム。

指先からはスライムのローションが薄くにじんでいる。

ニュルニュルとした妖しい刺激がミィの耳から離れない!!


(耳をなでられただけなのに、体の中から愛撫されているような……)

ここでミィはいったんライムを開放して距離を置けばよかった。

だが、せっかくの好期を逃さないことで精一杯の彼にはその勇気はなかった。



トロトロトロ……



ライムは人差し指の先からローションを耳の中に少しずつ流し込んだ。

流し込まれた淫らな「しずく」は、ゆっくりと震えながらミィをくすぐり始めた!

「ひゃああああぁぁ!!!」

ミィの耳の中が突然ゾワゾワし始めた。

不慣れな刺激は容易に隙を作り出す。


ちゅぽっ……

むさぼりあうようなキスがとまり、唇が離れる。


「いい責めね。でも、そんなに不用意に私のエリアに入っちゃだめよ。」

振り向いたライムがにっこりと微笑んだ。

ミィは右耳の違和感を振り払おうと必死だが、ざわめきはどんどん大きくなる。

当然である。「ライムのしずく」はゆっくりと確実に彼の鼓膜に近づいているのだから。



「それにしてもいきなりこんなに熱いキスをしてくれるなんて。」


目の前で微笑む敵と自分の体内の違和感……先制攻撃の優位などすでにない。

力が入らなくなったミィは、とうとう両膝を地に着いてしまった。


「だ、誰か止めてぇ!」


「フフッ」

余裕たっぷりにライムは彼に近づき、そのあごをクイッと持ち上げた。

整ったライムの顔がゆっくりと近づき、軽く息を吹きかけるとミィの視界が桃色に染まった。


「あっ……」

右ほほの辺りを押さえていたミィの腕がダランと脱力した。


ミィはライムと視線をそらすことができない!


「さっきのキス、御礼をしなくっちゃね。」

今度はライムからのキス。

上品な指先が彼のほほを挟み込み、逃げられないように固定する。


「んー!んんっ……」

彼の責めを受け続けていただけのさっきとはぜんぜん違う舌の動き。


(こんなキスされたら……ふあっ、何も考えられ……)

キスされた刺激が体の中を駆け巡り、股間にどんどん積もってゆく。

もしも手コキをしながらのキスだったら、今頃ミィは昇天していただろう。

ほぼ真上から彼の頭部を拘束し、唇をむさぼり続けるライム。

力なく垂れ下がるミィの手のひらが必死に抵抗しようとしている。


(逃がさないわ。イっちゃいなさい。)

甘いキスにおぼれた獲物を見ながら、そーっとライムは左足を動かした。

彼女のほっそりとした足先が、ふるふると悶えている彼のペニスをチョンチョンと刺激した。


「ふっ、ぐっ、んんっ!!!!!!!!」


ほんの少しの外部からの刺激がさざなみのようにミィの体に広がり、内部で反発しあう。

そして積み重なった快感がとうとう彼の意思では抑えられなくなった。


どぴゅっ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……


直接的な刺激をほとんど受けないまま、じわりじわりとペニスから射精させられてしまう。

まるで夢精にも似た甘美で長い刺激が彼の体を蝕んでいく。


(もっとゆっくり狂いなさい。くすっ)

服を着たままで始まったBFである。外見では彼の射精はわかりにくい。

しかし観客には圧倒的な舌技でねじ伏せられたミィがガクガク震えながら射精地獄に落とされたことは目に見て取れた。

中には股間を抑えている観客もいた。


どぴゅっ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ、ぴゅ……ぴゅっ


「うぶぅっ!うっ、はぁっ、んんんんんー!!!!」

ゆっくりと長く続く快感。
精が漏れるたびに、声にならないあえぎ声がミィの口から漏れる。

ライムは震える彼を優しく抱き続けた。

快感に犯され、じんわりと生殺しのように射精させられている間も唇はふさがれたままである。

ミィは声を出すこともできないまま、ライムのキスの海にゆっくりと沈んでいった。





それから30分くらいたった。


ふいにライムがレフェリーを手招きした。


「ようやく堕ちたみたい。」

徹底的に搾り取られたミィの幸せそうな顔を見て、レフェリーがライムの勝利を宣言した。


ワアアアアァッと沸きあがるギャラリー。

勝利した後のこの歓声、高揚感がたまらない。

この感覚を味わうためにライムは再びBF選手権に参加したのだ。



「私にキス勝負を挑むには、ちょっと修行不足かしら?ふふっ」


飛び入り参加したライムではあったが、前年度のファイナリストとしての格の違いを緒戦から見せ付けたのだった。



× ミィ「はやうち」 VS  ライム ◎ 






試合は進み、準々決勝第一試合。

もはや予選のように一度に何試合も行われることもない。

一試合ごとの間隔も長くなり、実況解説も丁寧に行われる。

ここまで来るとさすがにギャラリーの数も半端ではない。


「やっと会えたー!」

「…………?」


この会場は特に男子のギャラリーが多い。

それもそのはず、まもなくここで行われる試合は美少女vs美少女。

王宮を背にしている寡黙でスレンダーな美少女は、この大会主催者の秘蔵っ子として有名な近衛兵。

名前はリリリン。役職は副隊長。


対するもう一人の美少女は、人間界でも有名なスライム淫界のエリート集団出身。

その名をリィナ。ふわふわした胸や優しげな瞳が印象的な巨乳美少女。

彼女はリリリンとは対照的な闘志むき出しタイプだ。


「リィナ、あなたとBFしたくてしょうがなかったんですー!」

ギャラリーの目にもリィナの背後に燃え上がる敵意が見て取れる。

すでに身体から淫気と闘志が入り混じったオーラを発散しまくりのリィナを見て、リリリンはため息をついた。

「なぜ?」

「悔しいからですぅ!マルクくんをあれだけ魅了した女の子は、きっとリィナ以外いないはずです。」

ほっぺを膨らませながらリリリンを威嚇するリィナ。

その様子もどこかかわいらしい。

「それってヤキモチ?」

「むむぅぅっ! わかってて聞いたでしょー!!」

煽る気などまったくないのだが、リィナはリリリンの言葉に過敏に反応する。

どうも彼女を前にすると冷静でいられないようだ。


「残念だけど、私は彼に興味ないわ。だから安心して?」

両手を広げてにっこりと微笑むリリリン。

その穏やかで静かな表情を見たギャラリーからもため息が漏れる。

「なんか癒される~~」

「メチャかわいいよな!おれ、応援するぞー!!」

「うおぉ、リーリーリン♪ リーリーリン♪ リーリーリン♪」

早くもリリリンに魅了された観客がラブコールを送っている。

その男たちをキッと睨みつけるリィナ。


「リリリンのファンたち、黙るです!」

「もう、困ったコね……私はどうすればいいの?」

怒りが収まらない対戦相手を見て、困った顔をするリリリン。
年齢は間違いなくリリリンのほうが下なのだが、リィナに比べて非常に落ち着いて見える。

「おとなしいリリリンをいじめんなよー」

「かわいそーだろー」

周りからも同情の声が上がる。

「ムキー! みんな黙ってみてるですぅ! 今からリリリンをひーひー言わせて見せます!」

「…………それは飲めない提案ね。」

「さあ、早くファイティングポーズをとるです!」


リリリンは、すぅっと目を閉じて、精神統一をした。

静かなる美少女の瞳に闘志が宿る。

身構えるリリリンの背中に試合開始のベルが鳴り響いた。



「あの娘、なんだか強そうだなぁ」

「いやいや、きっと副隊長の勝ちだよ」

「わからないぞ。リィナの気合はハンパじゃない……」


ギャラリーがざわめく中、いよいよ(一方的な)因縁のBFが始まろうとしていた。

女性用の革の胸当てを脱ぎ去り、軽装になったリリリンが静かに闘志を燃やしている。

向かい合うリィナは腕をぶんぶん振り回して体を温めている。

リリリンの迎撃体勢も整って、あからさまにやる気満々だ。


「なんだか失礼な数字ですぅ」

会場に掲げられた掛け率表を見たリィナはご機嫌斜めだ。

準々決勝からは各選手のリアルタイムオッズが公開される。

この会場ではリィナが2.6倍。リリリンが1.5倍。

リィナがわずかに数値が低いのは、初出場のためだ。

逆にリリリンはシード枠からの出場。いやがおうにも注目される。

しかし二人の間には数字ほどの実力差はない。

見ている誰もが好勝負を期待していた。



(子供っぽいしゃべり方はともかく……)

正面からリィナを観察したリリリンは素直に関心した。

目の前の敵はBFの場数を踏んでいるせいか、予想していたほど隙がない。

チャラチャラしてるように見えても、うかつに飛び掛ったらヤバイ気がする。


(リィナさん…………不思議な人……)

なんとも責めにくい相手に焦りを感じはじめていた。



「こっちからいくよぉ……!」

なかなか間合いに踏み込んでこない相手に対して先に動いたのはリィナだった。

遠慮無しにリィナがリリリンの間合いに踏み込む。

そこへ相手より素早く、カウンター気味に懐にもぐりこむリリリン。


「ちっ!!」

腕を広げ、やわらかそうなリィナの体にタックルしようとする。

「やんっ」

うなぎのように身をくねらせてリィナが逃れた。

リリリンは思うようにベストポジションが取れない!



「じゃあこれなら?」

なかなか敵の懐に入り込めないリリリンが一歩後退した。

「もう逃げる気ですかぁ?」

「違うわ。ほら、きて……」

リリリンが黙ってリィナの大きな瞳をじーっと見つめる。


ふるふるふるッ……カクン!!

「あっ……あれれっ!?」

なぜかリィナの膝が落ちた。
それだけでなく、イク直前のように呼吸が乱れて瞳もウルウルしはじめている!?

淫魔である彼女には見えなかったが、マルクをも虜にしたリリリンの必殺の香気が手足に絡みついたのだ。


「はぁ、はぁっ……急に体が熱いのぉ……」

「リィナの洋服、かわいいね。」

リリリンは膝を屈したリィナの淡い桃色のキャミソールに触れ、続いてあごから頬にかけて滑らかに愛撫した。

その刺激は受けたリィナはクリトリスを弄ばれたかのように打ち震えた!

「ひゃぁぁん!! な、なにをしたのですか!?」

ほっそりとした指先がリィナのキャミソールの裾に滑り込んだ。

拒むことも出来ず、リィナはかすかに身をよじって抵抗した。


「脱がせてあげる。心も体も無防備にしてあげる。」

焦らすそぶりもなく、するするとリィナを裸にしていく。

一方的な脱衣シーンをみて、ギャラリーも徐々に興奮させられていく。

特にリィナの豊かな胸が露出したときは、軽いため息が周囲にこぼれた。


ふよんふよんっ♪

「大きな胸ね…………でも……」

誇らしげにゆれるリィナのバスト。

ちょっとした嫉妬を覚えつつ、そっと手を這わせて指先で弄ぶリリリン。

ピンク色の乳首をじっとりと指で押しつぶしたり、ふわふわとバスト全体をもみまわす。


「ああぁぁ! んうっ、あん!!」

「気持ちいい?」

その指の動きは、リィナだけではなく見ているもの全員の意識を釘付けにした。


「だめぇ!! あん、あっ、あはぁぁん!」

「こんなわかりやすい弱点……責めやすくて嬉しくなっちゃう。」


くにくにくにっ……


リリリンの手の中でムニムニと形を変えながら快感を紡ぎだす双丘。

その様子があまりにもエロすぎて、ギャラリーの一人、レイという男淫魔が前かがみになってうずくまった。

「うぅっ、……なんでこんなに上手なのぉ!?」

喘ぎながらリリリンの腕を弱々しく掴むリィナ。

リリリンはその手をやんわりと払いのけながら、リィナを抱きしめた。

さらに相手のダメージを探りながら耳元に口を寄せる。


(私、本当は女の子のほうが好きなの。あんまり人には言えないけど。)

ほんのり頬を赤く染めるリリリン。

リィナのような美少女が相手だと、彼女も気合が入るようだ。


「ずっるいよぉ……こんなの……リィナよりも上手なんて!」

身悶えしながらリィナはリリリンの腕の中から逃れようとする。

しかし快感で動きが鈍くなったリィナの動きを先読みして、リリリンは次第にリィナの動きを封じていく。


「先回りされちゃうと悔しいよね?」

余裕たっぷりに穏やかな微笑を浮かべるリリリン。

身動きのままならないリィナを華麗な指裁きで翻弄していく……



(そろそろ頃合ね)

それからしばらく愛撫を続けたリリリンがリィナの背後に回った。

リィナを抱きかかえるように支えつつ背後から胸を揉みまわす。

優しく滑らかに這い回る指技が、ますますリィナの精力を削っていく。


「あぁん……んうっ、くふん……」


「ふわふわのキレイな胸……」


女性同士でも嫉妬を覚えるほどに美しい造形のバスト。

ピンク色のかわいらしい乳首を指で挟む。

心の中に再び湧き上がる軽い憎悪。


「…………。」


きゅいぃぃっ!!


リリリンは両手の親指と人差し指に少し力を加える。

夢見心地のリィナに襲い掛かる軽い痛み。

その刺激も今のリィナには更なる快感を呼び起こすスパイスになってしまう。


「きゃふっ、ダメェ!先っぽをつねっちゃダメぇ~!!」


ビクンビクンッと大きく体を跳ね上げるリィナ。

その拍子に両足が少し開いた。

そこにすかさずリリリンの魔手が忍び込む!


クチュクチュ、プチュ、クッチュ……


柔らかい体をガッチリと抱きしめたまま、リリリンは無防備なクリトリスに追撃を加えた!


「はぁぁん!!」


「勝手に足を閉じちゃだめでしょ……」


クリ責めをされて、あわてて閉じようとする足を外側から無理やり開かせるリリリン。

先日リリリンが御前試合でマルクにされた羞恥責めを、今はリィナが味わっているのだ。


「やんっ、こんな格好恥ずかしいよぉ……」


「あら、でもヌルヌルが増えてるよ?」


「そ、そんなことないもんっ」


「じゃあ確かめてあげる」


瞳を潤ませて恥ずかしさに耐えているリィナに容赦なく言葉責めと指責めを続ける。

リリリンは中指を第二間接までリィナの膣内に沈めた。

そしてそのまま内部を指先で満遍なく撫で上げた。


「ひゃうっ、はン……かき回さないで!」


「こんなにビチョビチョだよ……」


「ご、ごめんなさい……」


消え入るような声で思わずリィナは謝ってしまった。

リリリンは中指をいったん抜き取り、指についた粘液を今度はクリトリスに擦り付ける!


「ああああぁぁっ!! そこをクリクリしちゃダメッ、ダメェ!!!」


「とことん素直じゃないのね……」


その後、指先が少し乾くとリリリンは再びリィナの膣に指を沈めて愛液をすくい取った。

何度も何度も膣内とクリトリスを念入りに責め抜くと、だんだんリィナの抵抗する力が弱弱しくなっていった。



「そろそろ降参する?」


耳元でそっと囁くリリリン。

これでリィナが首を縦に振れば試合終了である。


「み、認める……」


「負けを認めるのね?」


「違ぅ……リリリンが強いってこと、認めるのぉ……」


リィナの答えに内心舌打ちをするリリリン。



「……それで?」


「隊長さんにも使わなかったリィナの奥の手……出すよぉ。」


快感で震える右手を前に出して、リィナは手のひらをキュッと握った。

そして小さな声で何かをつぶやき始めた。


「いまさら何をするつもり?」


不思議そうな目で握られた手を見つめるリリリン。

次の瞬間、信じられないことが起こった!


「えいっ」


プッシュウウゥゥ……!!


リィナの体全体がリリリンの腕の中で崩れ落ちた。

いや、溶け出したというほうが適切かもしれない。

今までしっかりとした手ごたえだったものが、一瞬で液体に変わってしまったのだ。


「これは……!?」



ぷにょぷにょんっ!!



戸惑うリリリンが目の前の事態を理解するより早く、腕の中の液体が彼女の背後に集まった。

そして瞬く間に元通りのリィナの姿になった!


「リィナがスライムだってこと、忘れてたでしょう?」


リリリンの四肢に自分の体をあわせ、リィナはそのまま後ろに倒れこんだ!

ちょうど二人とも仰向けになっている感じだ。


「……驚いた。」

「もうっ! もっといいリアクションできないのぉ!?」

「でもこの体勢ならあなたも私を責められない……」

「なぁ~に言ってるの、リリリン!」


にゅー……



「っ!!!」


「うふふ~、リィナの尻尾でいっぱい辱めてあげる♪」


リリリンの目の前に透き通った桃色の尻尾が現れた!






リリリンの目の前でふりふりと楽しそうに揺れるリィナの尻尾。

先端の形はハート型をしているが、どんな形にも変化してきそうだ。


「さっきまで恥ずかしかったんだから!! た~~~~~ぷりお返ししてあげる!」


「なにをっ……きゃあぁぁぁ!!」


ヌプッ……


遠慮なく尻尾の先端がリリリンの膣内に侵入してきた!


ヌプププププ……

尻尾はどんどん奥に入っていく。
リリリンはこの後、尻尾の先端から淫毒が注入されることを覚悟した!


「…………?」

しかし痛みはまったく感じない。

体が内部から毒に汚された様子もない。

むしろそのことがリリリンをますます不安にさせた。


「ふふふっ、じゃあ解放してあげるネ。」


リリリンの手足をがっちりと拘束していたリィナが、あっさりと体を離した。

手足にしびれはなく、リリリンはゆっくりと立ち上がることができた。

だが何かおかしい……!?


「あっ、尻尾がなくなってる…………どうしたの!?」


すぐに違和感に気づいたリリリンがリィナに問いかける。


「あなたのアソコにちゃんと残してきたよぉ」


「えっ……」

淫らな微笑を浮かべたリィナがリリリンの股間を指差した。

恐る恐る視線を下げると、そこには切り離されたリィナの尻尾が深々と刺さっていた!


「これは……」


「リリリンには『スライムローター』をプレゼントしちゃう」



パチンっ


リィナが指を鳴らすと、リリリンの股間がムズムズし始めた!


「この『スライムローター』はね、相手の膣の形に合わせて自在に変化するのよぉ」


「ふっ、くうぅぅ……」


「フフッ、かわいい~」


今まで感じたことのない刺激に震える相手を楽しそうに見つめるリィナ。

指を鳴らした瞬間に、一気にリリリンの膣内でリィナの置き土産が膨張したのだ。

しかも痛みを感じるぎりぎりの大きさで膣の内部を突き上げ、舐め上げ、回転する。


「ああぁっ、今度は硬くなって……」


「これ気持ちいいでしょ~。もっと良くしてあげる。」


快感に抗い、股間を押さえているリリリンの背後に回り込むリィナ。

先ほどまでのお返しとばかりに相手の胸をゆっくりと揉み始めた。


「きゃうっ」


「あはっ、可愛い声。リリリンのおっぱい、コンパクトだけど柔らかくて気持ちいい~」


手のひらのくぼみですっぽりと乳首を覆い隠し、ゆるゆると胸全体を愛撫するリィナ。

股間のガードで手一杯のリリリンは無防備にその刺激を受け続けることになる。


「ま、負けない……」


「さすがですぅ。でもいつまで持つかなぁ~」


もう一度パチンと指を鳴らすリィナ。


「くああぁぁぁ……!!!」


顔を真っ赤にして耐え続けるリリリンの顔が跳ね上がった!

今迄で一番恥ずかしそうな表情……


リィナはリリリンの体内に忍ばせた分身に「指令」を出したのだ。

その「指令」に従ってスライムローターは一番敏感なクリトリスと子宮をねっとりと愛撫し始めた。

膣の最深部に到達したリィナの尻尾が子宮口をツンツン刺激するたびにリリリンの細い体が跳ね上がる。

また、クリトリスを粘液が撫で回すたびに体が「くの字」に折れる。


「だ、だめ……こんなの……」

とうとうリリリンはその場にへたりこんでしまった!


「そろそろ降参しますかぁ?」

リィナの降伏勧告に首を横に振るリリリン。

絶対に軍門に下るまいとする意思をこめてリィナを見つめ返す……が、


「その目つきはいけませんですぅ」


パチン


リィナの合図で内部のローターが淫らな動きを加速する……



「ふああああああああああああぁぁぁぁ!!!」


うずくまるようにして刺激に耐えるリリリン。

今まで刺激されていなかったGスポットが集中責めされ始めたのだ。

ひときわ大きなリリリンの嬌声に、ギャラリーもざわついた。


「このままリィナの勝ちかー?」


「やっぱり人間とスライムじゃ勝負にならないよ」


そんなギャラリーたちの声を忸怩(じくじ)たる思いで聞いていた男たちがいた。

彼らはリリリンが戦う姿を静観していたが、もはや黙っていることはできなかった。


「リリリン師匠ー!!」

「負けちゃダメです、がんばってください」

「いつもの気合を僕らに見せてください。お願いしますー!!」


まっすぐな声援。
彼らの声は陥落寸前のリリリンの意識に鋭く切り込んできた。

声の主を探してリリリンが周囲を見回す。


(あの声……あの子達が見ているの……!?)


そこにはショウタロ二等兵、アサマ一等兵、ケロリン二等兵の姿があった。

彼らはリリリンの部下であり、弟子たちだ。

泣きそうな表情でリリリンのことを必死で応援している。


(私はまだ負けられない……!!)

快楽の沼に堕ちかけていたリリリンの瞳に闘志が戻った。


「リィナ……」


「なんですか?降参しますかぁ??」


「使う……私も」


「はぃ???」


リィナが顔を寄せるとリリリンは素早く腰袋から白い粉の入った小瓶を取り出した。

そして中身を手に取り、リィナに投げつけた!


ばふっ


「こほこほこほ、なんですかぁ? これ…………!?」


「あなたが粘体術を封印していたのと同じ。これが私の奥の手……」


リリリンが自らの股間に手を当てた。

そして小さくうめくと、スライムローターを一息に引き抜いた!!


「ええぇっ!? なんで触れるのですかぁ!?」


リィナは驚きを隠せなかった。

スライムの粘液はスライム以外は自由に触ることができない。

ましてリィナレベルのスライムが作り出したものとなれば尚更である。


「これはスライムを固める粉末……」


リリリンが手を離すと地面にポトリとスライムローターが転がった。


「この粉があれば、あなたのことをもっと深く愛撫できる……」


リィナの体にはたっぷりと粉がついている。

息を整えながらリリリンは間合いを縮めていった。

その一歩一歩には部下たちからの声援を背負った不退転の決意が感じられた。


それでも蓄積されたダメージから推し量ると、リィナのほうが圧倒的に優勢だった。


「……まだやる気ですかぁ?」


「ええ。私は負けられない。あの子達のためにも、無様でもあなたに勝つわ。」


リリリンの瞳の奥に揺るがない何かを感じたリィナがフッと笑った。





「降参です。リィナの負け~~~!」


右手を上げて自ら負けを認めるリィナ。

肩透かしを食らったリリリンは目をぱちぱちしている。



「えええええええええええええええええええぇぇぇぇ!!!」

「嘘だろ、おれ全財産かけてたんだぜ!?」

「なんだよ、八百長かよー!!!」


悲鳴を上げるギャラリーの一部をにらみつけるリィナ。


「黙るです!この試合はリィナの負けですー!!」


レフェリーが正式にリリリンの勝利を宣言すると、周囲からパチパチと拍手が沸き起こった。

不思議そうな顔でリィナに近づくリリリン。


「……どうして?」


「先に禁じ手を使わされたリィナの負けです。本当はライムお姉さまとの約束でこの大会では使わないはずでした。」


「だからって……」


「リィナの修行不足です。次にやるときは負けませんよ~~」



そういって、リィナはリリリンに向かってウィンクした。




× リィナ VS  リリリン ◎ 




To be continued......