深い森を抜けた小高い丘の上に小さめの家が建っていた。

ここは冒険者達が訪れる「転職の神殿」付近の森。

一人の熟練ハンターが住む森にはいつも相談事が絶えない。


ハンターの名前はノキアという。



「ノキアさん、またスライムです! レザンの町が壊滅状態です!!」


今日も彼の家に息を切らせて誰かが駆け込んできた。

森から彼の家までは一本道である。

ノキアはすでにかなり前から今日の来訪者を予測していた。



「やれやれ……」


ここ最近のことだが、スライムが強くなった。

ハンター協会でもその話題で持ちきりだ。

通常攻撃は利かず、あれこれと攻めあぐねているうちに旅人たちはスライムたちの虜になってしまうのだ。

淫魔とスライムの融合がここまでやっかいなものだとは……嫌な世の中になったものだ。

ノキアは重い腰を上げて、駆け込んできた男が示す町(レザン)へと向かっていった。



さて、この世界には二種類の英雄がいる。

それは勇者とハンターだ。


勇者は化け物退治全般を引き受ける。

場合によっては悪事を働く人間までも駆逐する。

いわば無差別の正義を実行する役割だ。


ハンターは少し違う。

勇者が手におえない部分のみを引き受ける。

つまり状況に応じて多種多様のハンター職が存在するのだ。

そんな中でもノキアは淫魔……それもスライムのみを討伐することに長けている。

最近の彼は人々から「スライムバスター」と呼ばれている。

…………なんとなく恥ずかしい呼び名だ、とノキアは密かに思っている。


しかし彼自身が考案した独特の戦闘スタイルを真似できるハンターは少ない。

たとえ敵の個体数が少なくてもこちらが対応できなければ敵は無限と同じ。

スライムはもはや雑魚ではない。

危険な敵なのだ……



場所は変わってこちらはレザンの町。

ところどころに男達が倒れている。

しかし誰一人死んでいるものはいない。

ただ動けないような状態。

全身に力が入らず、崩れ落ちているかのように。


町の中央の噴水付近では一人の少女が大柄の男達を相手にしていた。

少女の年のころは12歳くらい。

太陽の光をキラキラと跳ね返すような美しい金髪。

そして華奢な体つきだが、少女は全身から白く透き通るような美しさを放っていた。

その可愛らしい顔に無邪気な笑みを浮かべ、男達を順番に見比べている。


逆に男達は真剣そのものといった表情で、それぞれが屈強な戦士や歴戦の魔術師といった風貌だった。

しかも全員なぜか半裸……特に上半身は完全に露出していた。


「わざと下半身には触れないであげているのに……この程度ですか」


多勢に無勢……ではなかった。

本当の意味でピンチに立たされているのは男達だった。


男達の体には少女につけられたであろうキスマークや指先でなぞられた跡などが刻まれていた。

それらの「傷」はピンクや紫で染まっており、男達に絶えず快感を流し込んでいるのだ。


「ぐうっ……くそっ、動けない……」

男達の中で、特に少女から受けた傷の多い戦士が恨めしそうにつぶやく。

彼の傷はほとんどが紫から赤に変わろうとしていた。


「あら、すごい。まだ敵意を保っていられるなんて……」


フワリ……

少女の金色の髪が風に揺れる。


「でもつまらない。動けないならもういいですわ」


手足をしびれさせるような快感のせいで身動きの取れない男達。

その股間や胸、首筋などを少女はそっと撫でる。

その指はしっとりと粘液がにじんでいた。


「ひぃ……ふああぁぁ……」

最初に音をあげたのは先程の戦士だった。

すでに刻まれた甘い毒傷をさらに撫でられると、ヌルヌルとした感触と共に今まで以上の快感が沸き起こる。


「私がすりこんであげますからじっとなさって?」

ヌリュッ、ヌリュウウゥ


少女は優雅な足取りで男達の間を縫うように歩く。

そしてゆっくりと快感で男達を蝕んでいく……


「あぎぃぃぃひぃぃ……」


男達は悲鳴とも歓喜とも取れる雄叫びを上げたあと、その場に崩れ落ちた。

快楽に屈して、直接下半身に触れられることもないまま失神してしまうものもいた。



「この街にも大した男がいませんでしたわね……ライム?」

つまらなそうに噴水の向こう側を除く少女。

耳を澄ますと若い男の喘ぎ声が聞こえてくる。


「……そちらももうすぐ終わりそうですね?」


金髪の少女の視線の先に、ライムと呼ばれた赤い髪の美女が17歳くらいの少年を弄んでいた。

ライムにあごの辺りをそっと撫であげられた少年がブルブルと震えて快感に抗っている。


「もう終わらせますか?」


今度はその美しい指先で少年の乳首をコリコリと転がしながら、ライムは振り返った。

遊び半分で体に触れられているように見えるが、少年にしてみればたまったものではない。

ライムは自らの淫気を少年の手足に絡ませて拘束しているのだから。


「レベッカ様がそう言うのなら……終わりにしましょ? 坊や」


今までわざと触れなかった少年のペニスを片手で優しく包み込むライム。


「あぁぁっ! イ、イく、イく~~~!!!」

ドクッ、ドクッ……ドクンッ!!


その瞬間、少年は今までの人生で一番であろう量の精液をあっけなく放出してしまう!

いき過ぎた快感に顔をゆがませ、下半身がガックリと脱力してしまう。

しかし淫気に縛られた少年は身動きすら出来ない!!


「フフフッ……」


その様子を見ながらライムは意地悪に微笑むと、少年のペニスの真上から粘液を滴らせ、粘液にオーラを絡める。

チュル……ッ

かりそめの命を吹き込まれた粘液がまるで小さな蛇のようにペニスに撒きついた!


「んひぃ……離れない、なにこれぇ!!!」


ねっとりと緩慢に這い回る淫蛇は、ライムの指先と同じような質感を与えられている。

少年はいつまでも終わりを告げない魔の刺激に対してブンブンと首を振って抗議する。


「あなたが快楽に堕ちるまで何度もそのままイかせてあげる」


少年の二度目の絶頂はもうすぐだった。

自分ではどうにもならない……絶望感でいっぱいの少年の顔を見て、ライムは軽くイきそうになってしまった。


(あん、かわいい! もう少し遊んじゃおうかしら……)


ライムは再び少年の股間に手を伸ばそうとした。

……が、彼女は不意に手を止めた。



ライムと少年の間に、突然一本の銀色の矢が突き刺さったのだ。


「その手を離せ、スライムどもめ」


遠くで男の声がした。

この矢の持ち主なのか……

それ以上にライムは場の空気の変化に気づいていた。


今までで一番強い男がきた ―― 直感的にライムは理解した。

やってきた男は強烈な殺意をみなぎらせた目でレベッカとライムを睨みつけた。









ノキアがレザンの町からの伝令を聞いてそれほど時間は経っていない。

しかし彼の目にはありえない惨状が写っていた。


町に、人に精気が感じられない……

形だけは綺麗に残っているが、レザンの町は廃墟に等しかった。


しかも驚くべきことに、ここには淫魔の大群はいない。

目の前には二人の美女と美少女……どうせスライムだろうが、それしかいない。



「一体どれだけの人間を弄んだ? お前がここのボスか」


まっすぐにレベッカの目を見つめるノキア。

しかしレベッカは相変わらずにこやかな表情を崩さない。


(やはりこの男、できる……!!)


その様子を見ていたライムは内心舌を巻いていた。

一瞬でライムよりレベッカのほうが力量が上であることを見抜いた。

それは戦いなれている証拠だ。


「くすっ、もし……そうだと言ったら?」


ノキアの力強いオーラを感じながら、レベッカは嬉しそうに答える。

その余裕っぷりが気に入らないノキアは怒りをこらえた低い声で宣言した。


「お前達は二度と淫界に戻れない!!」


今にも飛び掛りそうな勢いのノキアであったが、体は冷静さを保っていた。

彼はいきなり突撃するようなことはしない。じっくりと気を整えてからレベッカを倒すに行くつもりだ。

ノキアの両手にうっすらと青いオーラが積み重なっていく……


その様子はライムにもレベッカにも見て取ることが出来た。

実際にレベッカの強烈な淫気に対して無策で飛び込むことは自殺行為だ。


彼女の淫気は別格だった……普通の男なら、触れただけで射精してしまうほど。

そのことをわかっているからこそ、ノキアも万全を期す必要があった。


「ライム、下がっておいでなさい。この男は私一人でお相手いたします」


久しぶりの強敵が目の前に現れたことでレベッカの目の色が変わった。

今までのにこやかな顔から、自信に満ちた淫らな女の顔に変わる瞬間をライムは見逃さなかった。


(おやおや……レベッカ様、いきなり本気モードなの?)


ジュルジュルジュル……


レベッカの体の表面がかすかに輝きを増した。

それはスライムローションであり、攻撃力と防御力を同時に高める彼女たちの基本スキル。


しかし今までレベッカがローションをにじませるところをライムは見たことがなかった。

スライムとしての力を出すまでもなく、レベッカの指技だけであっさりと人間達は射精した。

仮に相手が人間の女だとしてもレベッカの淫気に包まれただけでイきまくってしまう。


(とにかくこれは見ものだわね……)


ライムはこれから始まる激戦を予感して、妖しげに微笑んだ。



「どこからでも……どうぞ?」


レベッカがノキアに向かって語りかけた瞬間、ノキアは弾かれたように前に出た。

そしてレベッカの目の前に素早く滑り込むと彼女を優しく抱きしめた。


(えっ……!?)


レベッカは戸惑いを隠せなかった。

強く優しく抱きしめられながら、身動きできない自分に満足してしまいそうだった。

ノキアの行動があまりにも意外だったからだ。


普通なら人間の敵として乱暴に扱おうとしたり、いきなり衣類を全て破ろうとしたり……

レイプまがいの攻撃がほとんどだからそれを予測していたのだが、見事に裏切られた。

想像以上にノキアの責めは優しかった。

それだけでレベッカは少し感じてしまった!


「むっ、力が少し抜けたな」


鮮やかな先制攻撃を放ったノキアはレベッカの変化を敏感に感じ取った。

バトルファックというと、キスやクンニやバスト責めなどの激しいものを想像しがちだ。

しかし序盤は優しく相手をリードすることが勝利につながるとノキアは経験から学んでいた。



「それに体を覆う淫気も乱れている……」


ノキアの読みどおりだった。

レベッカにとって優しい抱擁は熱いキスよりも有効だった。

勢いに乗った彼はそっと優しくレベッカのバストに手を伸ばした……しかし、


プリュウウウゥゥゥ

(な、なんだこの感触……)

バストに触れた手が、瞬間的にとろけてしまったかのように思えた。

ノキアの指先が、手のひらが、関節がレベッカに優しくペロペロされているようだった。

触れているだけで感じさせられてしまう! こんなスライムの体は初めてだった。


(は、離せない……吸い付いてる。いや、溶け合っている!?)

密着している敵との距離をとろうとしたノキアだったが、今度は逆にレベッカが彼の脇の下に手を通してきた。

ノキアの背中に回されたレベッカの腕……それはノキアの体に触れている部分全てを感じさせた。


「おああぁぁ……くっ……うくぅ」

腕の中にいるレベッカは顔を上げずにノキアの胸に頬擦りしていた。

スリスリと少女の艶やかな肌が擦れるたびに、なぜか今まで以上に感じさせられてしまう。


「もっと……」

ポツリとつぶやくレベッカ。


「もっとひとつになりましょう? うふふっ」


ノキアの方に向かって満面の笑みを浮かべると、レベッカは腕から粘液を滴らせてノキアの下半身の服を溶かしてしまった!

そして自らのほっそりとした内腿にビンビンになったノキアのペニスを挟み込んだ!


クプチュッ


「はあああぁぁぁっ!!!」


途端に硬直するノキアの体を優しく包み込むレベッカ。

ギンギンのペニスをやわやわと弄びながらノキアを圧倒する!

少女の素股にペニスを揺らされながら、彼は静かに絶頂へと向かっていた……



(な、なんでこんなに感じる!?)


背中に回されたレベッカの細い腕は外れそうにない。

それどころかさらに密着度が増して……まるで皮膚が溶かされたかのように離れない!


(しかも俺だけ……すでに達してしまいそうだ。あっ、ああああぁぁぁ……)


わけもわからぬまま敗北への道を突き進んでいる。

そのことだけはノキアにもわかっていた。

自分に何が足りない!?



「惜しかったですわね……フフッ」


レベッカはもはや身動きもままならないノキアの体に押し倒して、ゆったりと覆いかぶさった。

丹念に彼の全身を自分の粘液でヌルヌルにしてしまう。

優しい手つきで体中を撫で回されて悶絶するノキア……もはや勝敗は明らかだった。

体中をコーティングされて、逃げ場のない快感が体中を駆け巡る。


「あなたの初めの攻撃……最高でした」

ほんのりと頬を染めるレベッカを見たノキアは、瞬間的に恋心に似たものを敵の中に見出した。

あってはならないことなのに……ノキアはレベッカの表情に見とれてしまった。



「ですからあなた以上に、私はあなたを愛することにしたのです……」


そうか! このときになってノキアは気づいた。

自分は……自分は敵に対する愛情が足りなかった。

途中で相手が敵であることを思い出して、相手の心を溶かすことを止めてしまった。


「ち、ちくしょう……!」

すでに勝敗は決していた。

もはや手遅れだった……体から力が逃げていく。


スリュッ……スリスリスリスリ…………


「ほら、もうすぐイってしまいますね?」


優しくペニスをすりおろすレベッカの素股。

その規則的な動きに反応して、加速度的に下半身に快楽の痺れが広がっていく!

レベッカの言うとおりだった。

じわじわと与えられた快感に比例して玉袋がどんどんせり上がって行く。


「もはやここまでか。俺を倒したことを誇りに思うがいい。しかし、俺の弟子が必ずお前達を倒す!!」

ノキアは観念した。

今までにないほどペニスが膨れ上がり、まるでビキビキと音を立てているようだ。

しかしもう……うごけない。


「では、私の指先に淫気を乗せて……とどめですわ」


レベッカが気を集中すると、指先の輝きが一瞬だけ増した。



「お、お前達がいくら強くても、新世代のスライムバスターにはかなわない……」


ノキアの言葉に関係なくレベッカの魔性の手のひらがペニスを優しく包み……

緩急をつけながらシコシコとしごき始める。


「ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

プッ……ドピュドピュドピュドピュ~~~~~~~!!!!!!!

ノキアは全身の神経を一気にくすぐられたかのようにビクビクと震え……盛大に射精した!

(ウィル……こいつらは危険だ。必ずお前が倒せ…………頼む)


その言葉を口にすることなく、ノキアの意識は闇に消えていった。





「ねえ、ライム? この方が言ってるような強い人間がいるとしたら会ってみたいと思わない?」

戦いを終えたレベッカは、先程までよりも気力がみなぎっていた。

久しぶりの強敵、久しぶりの極上の精……レベッカは大満足といった様子だった。

そして一瞬なにかを考えるようなしぐさをした後、ライムに命令した。


「うん、しばらくは自由行動にしましょう。あなたは……そうね、あちらの方を探索してきて」


レベッカはライムの背後の山のほうを指差した。

遠くにレザンとはまた別の町が見えた。


「わかりました。もしも強敵と出会えたなら報告させていただきますわ」

ライムはにっこりと微笑んでから軽く一礼すると、レベッカに背を向けて歩き出した。

その姿が消えた後、レベッカはポツリとつぶやいた。


「……ライムと戦って生き残れる猛者がいたら、ぜひ私自身で味わってみたいですわ」


レベッカはしばらく休息を取ってからライムとは反対方面に行くことにした。




ノキアの戦死は養成学校の生徒たちに大きな影響を与えた。

中には卒業をあきらめて郷里に帰るものもいたほどだ。


その生徒の中に、もうすぐ卒業予定のウィルという青年がいた。

彼はノキアの一番弟子だったので、遺品整理の手伝いを申し出た。

一通りの葬儀が終わると、ノキアの遺族から手渡されたものがあった。

なんと直筆の手紙だった!



『ウィルへ……お前がこれを読むときは、俺が戦死したときだ。

 ひとつだけお前に伝えたいことがある。

 スライムバスターを目指すなら、敵討ちなどと考えぬことだ。

 敵を愛せ。

 お前の優しさで敵を包め。

 それがいつかお前の力になる……』



「ノキア師匠……」

今の自分には理解できない師匠の最期の教え。

ウィルはその言葉を抱きしめて、一流のハンターを目指すことを誓うのだった。






END