『不滅の赤』のうわぬりさんからいただきました!
曹操劉備(求心桃園)です。


様々な雑事に解放されるのは夜も更けたころ。
自室でくつろいでいた曹操は扉の向こうの気配に気がついて顔をあげた。
「入れ」
一瞬の躊躇の沈黙のあと、観念したかのように入室してきたのは、劉備その人。
「このような時間に失礼します」
「ああ、かまわん。むしろ俺が招いたわけだしな…どうした、そんな所に突っ立って」
どうしたものかと途方に暮れた子供のような表情で立ち尽くす劉備に曹操は笑う。
緊張とも畏怖とも違う、その怖々とした態度が珍しかったのだ。
「こっちにきて掛けろ」
「はい」
それから問答無用で注がれる酒に、躊躇いながらも劉備は口をつける。
「美味い…」
意外なその反応に、ぴくりと曹操は眉を跳ね上げた。劉備に渡した酒は決して弱いものではない。むしろ女や酒の弱いものはとても飲めないような強い酒だった。
それをもって顔色一つ変えることなく美味いと言ってのけるあたり、見かけによらないといったところか。知らず笑いがこみ上げてくる。
「曹操殿?」
訝しげな劉備の声もそのギャップを高めるだけで、曹操は滅多にないほどに笑った。
しまいには劉備が怒ってむくれてしまうほど。
「くく…」
「ひどいです曹操殿」
「まあそう拗ねるな。ほら、甘いものもあるぞ」
甘いもので機嫌をとろうなどと、そうはうまくいくものかと意地を張る劉備も、これ見よがしに菓子を口に運ぶ曹操に観念して前を向いた。
「甘いもので機嫌がなおるのか?」
お手軽なものだという揶揄にも、甘いものにご機嫌な劉備には右から左。見ている曹操が感心するほど幸せそうに菓子を頬張っている。
「いつまでも機嫌を損ねていても仕様がないでしょう?せっかく曹操殿と一緒にいるのに」
「…そうか」
無邪気な劉備の何気ない一言に、曹操はぐっと言葉をのんだ。
これが人徳のうちに入るというのなら、なるほど大した誑しであるものだ。
「西国の菓子もあるぞ」
「本当ですか!?」
「今度手に入れたら食べさせてやる」
次の約束をとりつけて、曹操はやるとはなしににこにことご機嫌な劉備を肴に酒を一気に煽った。

 

-終-


うわぬりさんが目の前で作ってくれました!
ふふふふふ。やっぱ曹操は劉備のこと大好きですよねー。甘いです。
白井式の「孟くん」「玄ちゃん」と呼び合う仲も好きですが。
この二人は敵同士になること、お互い自分の傘下に相手が入らないことを感じ取ってるし、
上に立つ者のつらさをお互いに理解し合っているんですよね。
その良さを教えてくれたのはうわぬりさんです。もう、どうしてくれるんですか!
ありがとうございました!