縁取り。


何かに誘われるようにゆっくりと意識が浮かび上がる。
瞼が重い。
しかし、もう一度意識を向こうへやるほど重くはない。

そのまま目だけを窓の外へやれば、かすかに窓枠の輪郭が浮かび上がっている。

(……朝か)

夜明け前の肌を刺すような寒さ。
静寂の霧に包まれて、冬は大将軍でなく天女がやってくるのではないかとそんなことをふと思った。
そんな戯言も、隣にまだいる静かな姿を見れば真実になりそうだ。
この暗闇でもわかる、白い肌。黒く、長い睫毛。美しいという言葉以上が浮かばないが、
その言葉さえ軽々しく紡いではならないと思う造形。

触れたい。
なんでもない。ただ、そう思っただけ。

伸ばした手の先にさらりと髪が伝う。
それさえも心地よく、孫堅はそっと頬を撫でた。

「…ん……文台さま……?」

気だるげな目と会う。
力を抜いたようにふっと笑い、少しくすぐったそうにしながら、
その大きな手へさらに頬を寄せる。心地よさそうにゆったりと。
こんな姿を誰が知っているだろうか。思わず頬が緩む。

「瑜の頬は柔らかいな」

そうつぶやくと、周瑜は静かに手を伸ばし、頬に触れた。

「あなたの頬は温かい…」

繊細で、儚く強い弦のような指が心地よい。
白磁のような手を取りゆっくりと握れば、その手に委ねるように周瑜から力が抜けていく。

「…お前の手が冷たいのだ」

そっと指先に口づけを落とす。
微かに睫毛が揺れる。その儚げで、強い生命力を持つ姿はまさに天女だ。
浮かび上がる白い曲線に目を奪われる。その曲線に沿って時間の流れよりも遅く、欲望を辿る。
孫堅にされるがまま。その腕も、その唇も静かに。
どちらがそうさせているのだろうか。
これは我の意思か。それとも…。


穏やかな朝を迎える。
あと何度、こうしていられるだろうか。


初めて書いた文字。天啓赤壁です。
冬に書きました。
瑜には女のような柔らかさを持ってないことをどこかでひっかかっていてほしい。
そんなことも関係ない、むしろそう思っている瑜を可愛く思いそのまま受け入れて欲しい。