第四十八話『さくらと地獄別荘ネギの修行』





突然だが桜は今エヴァの別荘内にいる。
エヴァの別荘とはエヴァ宅内にあるエヴァが自ら作り出した魔法アイテムの一つであり、中での一日は外では一時間しか経過しない言ってみれば『浦島太郎の竜宮城の逆』の大きな瓶の中に入った浅瀬に立つ塔状の建物のミニチュアである。

なぜ桜がこのような場所にいるかと言うとその日のお昼の事であった。

「ほぇ、私がネギ君の修行のお手伝いを?」
「そうだ、修行だと言って私が稽古をつけてやってるのだが、いつも私相手だと修行になれが生じてしまう。 私が良く見ている漫画本の師匠も言っていた事だ『いつも新鮮な修行こそが弟子を育てる』とな」
「だから私がネギ君の相手をするの?」
「そうだ、特に桜は異世界の魔法使いで53枚ものカードを扱えるからよりいっそう修行のバリエーションが増えると言う事だ」

それを聞いて断る理由も無しにネギの為になるならとその後あっさりOKした桜、そして早速今日エヴァ宅にある別荘まで連れてこられ、今その別荘内にいた。
桜が今いるのはその別荘内にある、海の見えるちょっと広めの建物の屋上と考えられる場所、桜以外にはネギ・エヴァ・茶々丸・ゼロ・カモがいる。

「さて、来てもらって早速だが桜、ちょっと坊やと実践さながらの戦闘訓練をしてやってくれ」
「私が?」

桜は自分に指をさしながら答える。

「そうだ、その為に桜を呼んだのだからな。 今の桜の実力なら・・・そうだな今の所は目標は一分、その時間桜との戦闘を耐えしのげ」
「はい、よろしくお願いします桜さん!」
「え・・・あ・・・うん」

桜は戦闘に関してはOKしていない、しかしネギの熱意に押し負けすぐに陥落、即座にOKしてしまった。

「ああ それと桜、あまりにも坊やが不甲斐なかったら別に殺してしまっても構わんからな」
「ええ!?」
「ってエヴァちゃん私そんな事しないよ!」
「ハハハ・・・冗談だ冗談、桜の性格上そこまでせん事ぐらいは分かっている」
(しかし、桜嬢ちゃんの実力ならその気になりゃ兄貴はすぐ天国行きだからな〜・・・)

そんな冗談を交えつつ桜とネギは一対一で退治する。
ネギがAAA+の桜に勝てるわけがない事は始めから分っているので初めの目標は一分耐えしのぐ事、それがネギに科せられた目標値であった。

「さて、それでは初め!」

エヴァは二人が対峙したのを見るや戦闘開始の合図を送る。

「それでは桜さん行きます!」

エヴァが手を下ろした瞬間桜に向って走り出すネギ、このネギのとった判断は正解、桜は言わゆる『魔法使い』型なので接近戦が不得意なのである。
しかし桜の方も自分の弱点を分っている。

「『闘』(ファイト)+『力』(パワー)!」【拳豪】

だからすぐに呪文を唱えずにこのカード三枚を上空へと掲げた。
するといつもは水色のファイトであるが、今度は『力』のカードと融合したみたいに赤色の格好をしていた。

「ええ!?」

これにはビックリするネギ、一対一だと思っていたものがイキナリ一対二に、しかも相手は自分がボコボコにやられた『闘』の強化版、闘が出てくるなりネギは足を止めてしまった。

「ちょ・・・桜さんそれ反そうひぃ!」

そして一方出てくるなりネギにとび蹴りを食らわそうとする闘、ネギはそのとび蹴りを何とか避けるのであったが、ネギが避けると闘の蹴りは地面へとあたり、まるで凄まじい衝撃があったかの様に地面は爆発し、半径50cm位のクレーターができてしまった。

「あ・・・あぶね〜只の蹴り一発であの威力か?」
「アタッテタラヤバカッタナー」

外野にいるカモ自身そのクレーターを見てぞっとする。
もしネギがあの蹴りを食らっていたらネギは一発で戦闘不能になっていたからだ。

「戒めの鎖と慣り彼の者を捕らえよ『樹』(ウッド)『風』(ウィンディー)!」

だがそんな時でもネギは怯んでいる暇はない、すぐに桜はネギを捕らえる為の『樹』と『風』のカードを使用し、今度は余裕を持って呪文まで唱えて使っていた。

「ええ嘘!」

ネギよそんな事言っている暇はない早く防御に徹せよ、目の前には『闘』+『力』、名づけてファワーとしておこうそれが桜の前衛に周りまた前の様に中国武術の劈掛拳を手を振りながら繰り出してきている。

(防御って無理だよ〜!)

ネギは必死に防御に徹しようとしていたのだがファワーの劈掛拳はファイト時のレベルではない、受ける事も許されず唯逃げるしかない。

(ええぃこの程度か・・・)

そんな不甲斐ないネギを見てイラっとくるエヴァ、次の瞬間やはり桜の先程出した『樹』と『風』のカードに捕らえられていた。




「なんだこの不甲斐なさは、桜はこれでもまだ本気を出していないんだぞ、本気を出していたらあの時『地』と『火』のカードを使って坊やはあの世行きだ」
「はうあう・・・ふぇもヒキハヒ二対一ひゃんて・・・」

時間にして二十秒位の出来事、ネギは『樹』のカードに捕まって張り付け状態みたいな形になっている。
そこへエバァが右手でネギの顎を持ち力を少し入れながら罵声を浴びせている。

「だれが一対一での対決だと言った! しかもあれは桜自身の魔法だ、今日はあののぬいぐるみやユエを連れてきていないだろ、だから二人と言っても一人と変わらん!」

エヴァの言っている事は正論である。
敵がもし召還士だったら今みたいに一対一が一対二、それ以上となってくる。
修学旅行でも天草千草が前衛に式神を用いてきたと言う事例だってあったのだからそう言うのも想定して戦う、それを今回ネギは肌で感じ取った。

「まっ・・・明日は桜の方にあのぬいぐるみとユエも交えて戦ってもらう、言ってしまえばあの二人は桜の使い魔だからな、あの二人が居てこそ桜が本気と言う事だ」
「ええー!」
「兄貴の寿命は今日までの様だな・・・」
「ケケケ・・・ジカイハナンビョウモツカナ?」

一人一人相手でも足下にすら及んでいない桜達を明日三人いっぺんに相手をしろという無茶な指令をだすエヴァ、それはまるでカモやネギから見たら魔王みたいで明日ネギが地獄を見る事自体明らかな事だった。

「ククク・・・せいぜい特にあのユエが手加減してくれる様願っておくのだな」
「・・・はい」
「大丈夫だよネギ君、ユエさんやケロちゃんには私のほうから手加減するように「言うなよ桜」・・・はい」

でもやっぱり甘い性格の桜は「手を抜く様に言っておく」と言おうとしてエヴァに釘を刺される。

「さて、少し休憩の後にファワーも含め茶々丸・チャチャゼロ達との実戦訓練3時間だ、その後もう一つ考えてあるのだが、夜になってからでしか使えん代物らしいからそれまでは普通に訓練だな」
「ハイマスター!」

そしてネギはまたファワー達を相手に実戦訓練へと入っていく。

「さて桜、私達は下に降りて久々のバカンスでも楽しむとしようか」
「ええー!?」

・・・と実戦訓練が行われ始めた矢先エヴァは桜の背中を押しながら城の中へと入っていく。

「エヴァちゃん、ネギ君の指導はいいの?」
「大丈夫だ、ちゃんと映像は下で水晶でみられる。指導だって念話を使えば良い事だしさっさと行くぞ」
「ちょとー桜さん・マスター!」

ネギの呼びかけを無視してエヴァは桜を連れて城の中へ入って行き、下にある砂浜でトロピカルみたいな感じでサングラスを掛けて椅子に寝転がり桜共々水着まで着てパラソルやジュースまで用意して南国気分を味わい始めたのであった。

「エヴァちゃん、本当にこっちに着て良かったの?」
「ああ、今は実戦訓練だけだからな、しかし本番は夜・・・楽し・いやちょっとした地獄の修行を考えているからな」
「いったい何を考えているのエヴァちゃん?」

何を考えているのやらエヴァはそのまま夜まで殆ど上にも上がろうとせず桜との南国気分を満喫しつくした。

そしてエヴァの言う地獄の修行と言う時間帯がやってきた。
別荘内も夜になりアイテム内だと言うのに満月まで見えて桜とエヴァはすでにさっきネギ達が実戦訓練をしていた屋上へと着ている。
そんな時ネギはエヴァがどんな修行を考えているのかドキドキものであった。

「さて、日も落ちたしそろそろあのカードが使える頃合だな」
「・・・でエヴァちゃん、やっぱり夜になったら使えるってあのカードを使うの?」
「そうだ」

あのカード、それは夜にしか使えないカードで桜も知世のビデオ撮影の為に何度も使っているカードである。

「桜さん、あのカードとは?」
「あ、このカードだよ」

ネギは「あの」等と言われてもまったく分らない。
だから桜に尋ねると見せられたカードは『創』(クリエイト)のカード、このカードは表紙に星の模様があり何も書かれていない題名のない本、しかしこのカードの能力は書き込めばその内容が実体化する反則すれすれの能力を持っている。
そのカードの説明をすればカモは『アーキファクトかよ!』と三●風のツッコミを桜にしてきたり、ネギはその反則じみたサクラカードの能力に驚愕するしかなかった。

「それじゃあエヴァちゃん『創』のカード使うけど、どんな事を書くの?」
「何を言っている桜、どんな事を書くか言ってしまったら修行にならないではないか」
「あ・・・そうだねじゃあ・・・」

すると桜は『創』のカードを使い一冊の表紙に星の模様があり何も題名も書かれていない本を出す。
そこへペンを取り出したエヴァ、するとエヴァは喋りながら色々書き始めた。

「まずはちょっと広々としている場所が必要だな」



何もない大海原の空間、そこへ海の変わりに現れたのは広々とした見渡す限りの広大な原っぱであった



エヴァがそう書くと下に現れた広大な原っぱ、本当に現れてみるとネギやカモの目は丸くなった。

「す・・・すげぇと言うしかねぇな兄貴」
「うん、本当に原っぱが現れちゃったよ・・・」
「コラ坊やボケッとしとらんと早く下に降りんか!「はいぃ!!」」

しかしネギには驚いている暇はなく、早速エヴァに下に降りるようにと言われる。
それからネギとその肩に乗ったカモだけなぜか下に降りていき他の桜やエヴァ達は上に残った。

「な・・・なんか嫌な予感がするな兄貴?」
「うん、桜さんやマスターが上に残ったと言う事は下で何かと闘わされるんじゃないかな?・・・・恐竜とか?」
「兄貴そんな怖い事言わねぇでくだせぇ」

階段で下に降りながら会話する二人、ネギとカモには嫌な予感が過ぎりもう身体はビクビク震えている。
そしてこの時ネギがした予想、それは本当に唯の予想でしかなかったがその予想は

「いぎゃ〜兄貴逃げろー踏み潰されるぞ〜!!!」
「分ってるよカモ君!!!」

当たってしまっていた。

広大な野原に現れたのは一匹の空腹で正気の失った凶暴なティラノサウルス、そのティラノサウルスの大きさは全長20m位で口は子供数人位余裕で入りそうな位空いていた。
そんな恐竜であるから獲物を見かけると涎を垂らしながらその目標物へともう突進、獲物を諦めると言う事は一切しそうになかった。

「ハハハ! 本当に書いた内容が実体化するぞこの本」
「エヴァちゃん、もうちょっと手加減して書いてあげて。 ネギ君本当に食べられちゃうから」

一心不乱に逃げ惑うネギを上から見ながら楽しそうに笑っているエヴァ、その手には『創』とペンが握られていて後ろで見ている桜はちょっと汗を流しながらエヴァを説得する。

「いやあはは、面白いものだなそれ次だ!」
「エヴァちゃん〜」



ティラノサウルスは一心不乱に走っていると体力を使い果たし倒れてしまう。
しかしその後安心しているのもつかの間実弾のライフル銃を持ったハンターや戦車がティラノサウルス出現を聞きつけてやってきた。



「あ これなら何とかなりそうだ、ラス・テル・マ・スキル・マギステル・・・」

しかし今回はティラノサウルスより相手がしやすいのかネギは呪文を唱えだす。

「ウヌース・フルゴル・コンキデンス・ノクテム・イン・メアー・マヌー・エンス・イニミークム・エダット(闇夜切り裂く一条の光、我が手に宿りて敵を喰らえ)」
「フルグラティオー・アルビカンス(白き雷)!」

戦車はネギの繰り出した魔法によりひっくり返り白き雷の余波を食らったハンター達はポンっと消えていく。

「くっ これは失敗か、なら今度はこうだ!」



消えてしまった兵士達、するとなぜだか分らないが槍の雨が降ってくる。



「って今度は槍の雨ですか〜!」
「死んじまう死んじまうって俺っち達!―――ぐさーっと―――」

マジでこれはヤバイ、槍が雨の様に降ってきて地面に突き刺さったと思ったら消えていく。
死にもの狂いで逃げていくカモとネギ、カモの方はすでにHELPの旗を上げている位だ。

「さてこれだけではないぞ〜!」
「エヴァちゃんやめてあげて本当にネギ君死んじゃうから!」

・・・と桜の静止も聞かずに暴走一直線面白そうにさらさらとエヴァは文字を書きなぐっていく。



それは槍だけでは、地表には毒サソリ・タランチュラの大群、何十メートルもある大蛇、そして目の前には巨大なファンタジーにでも出てきそうな位のゴ●ラ級の怪獣がどっしりと立っている。



「うぎゃー! 俺っち食われる〜! 食われるって目の前に大蛇が!」
「カモ君目の前には怪獣がいるよ〜!」
「俺達もう死んだか〜!」

ネギとカモにとってはもうすでに地獄絵図そのもの、エヴァはすでに暴走状態で桜の言葉に耳を貸そうともしないし桜自身ネギを助けに行きたいが自分でもいくらあの大蛇・タランチュラ・サソリの大群の中に入っていきたくもないから助けには行けない。

だから桜ができる事は一つだけ、桜はあるカード一枚を手に持つとエヴァに気づかれないよう使った。

「『小』(リトル)!」
「わ 桜イキナリなにを わわわわ わぁ〜!」

使ったカードはリトルのカード、桜がカードを使うとエヴァの身体はみるみる内に小さくなっていった。

「エヴァちゃんやりすぎ、『創』のカードさんは没収するね」
「それよりも桜私の身体を元通りにしろ! ってこの身体では魔法も使えないではないか!」
「だって小さくなると魔力まで小さくなるから、少しそのままで反省しててね」
「桜謝る、謝るから今すぐ身体を元に戻してくれ〜!」
「ダーメ、今日の所はネギ君の修行これにて終了、今からはエヴァちゃんの反省のお時間だね」

そして『創』の本を持ちながらニコッと笑った桜ちょっと内心怒っているようで、エヴァはそれに言いようのない寒気を感じその後すぐネギとカモは桜の手によって救出、その代わりエヴァが

「わーなんだこの大群は! 私は大蒜や葱と言った物が大嫌いなんだ!」
「ほらエヴァちゃん逃げちゃだめ、苦手な食べ物位克服しなくちゃ」
「吸血鬼に無茶言うでない!」
「すみませんマスター、私達では助けられそうにありません」
「ケケケ・・・オレノバアイハアエテタスケナイダケダガナ」

小さいままで葱や大蒜の大群に追いかけられている。
なんだか食べる事と違う様な気もしますがこれがエヴァにとっては地獄絵図、これを機会に苦手な食べ物を克服しましょう。

「エヴァンジェリンより桜嬢ちゃんの方が怒らせたら怖いな・・・」
「うん、でも桜さんめったに怒る事ないから大丈夫かな?」

桜に怒られた経験のあるカモと経験のないネギ、カモは自分の体験を振り返りながら震え上がり、ネギは経験がないものの今のエヴァを見ていてぞっとしている。
しかし、本当に桜がこう言う怒り方をするのはむちゃくちゃな事をした時、だから真面目なネギは怒られる事がこの先もないだろう。

そしてこの日の夜、別荘内ではエヴァの叫び声が1時間に渡ってこだましていたのは言うまでもなかった。


<第四十八話終>

『桜&ネギによる次回予告コーナー』


「ネギ君号外号外〜!」

「なんでしょうか桜さん?」

「この小説の作者さんの就職の内定が出たそうだよ!」

「そうですか、それは良かったですね」

「うん、これでこの小説のスピードもアップだしバンバンザイだよ」

「そうですね、作者さん勝手に内定決まるまでこの『魔術×魔法』を書かないぞーって決めていたらしいですし」

「うんうん、だから前回の投稿から一週間経たずにこの小説を完成させてくれたんだよ」

「・・・とそろそろ次回予告の時間ですね」

「それじゃあ私が言うね」

「次回のタイトルは『桜と小太郎とネギの過去』です」

「へ〜次回から小太郎君再登場してくるんだ」

「そうみたいだね、関西育ちの作者さんにとっても扱いやすい関西弁のキャラクターだし」

「これではますます僕の出番が少なく・・・少なくなってきますね・・・」

「わ〜ネギ君落ちこんじゃだめ〜!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「え〜っとそれでは次回の司会者は小太郎君とネギ君だね」

「それでは今回もそろそろ終了のお時間ですので最後の挨拶に行きましょう」

「それでは皆もネギ君も一緒に〜!」

「桜と一緒に〜「レリーズ!」!」

<終>


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