第10話



「鍛えてほしい?」

「はい!」

昼休み、広場でベンチに座り、北○の拳を読んでいた機龍にネギが話し掛けてきた。

「なんでまた?」

「この前のことで僕は自分の力不足さを知りました。だから、鍛えてもっと強くなりたいんです!!」

「しかし、そういうことだったら魔法関係者に頼んだほうが………」

「いえ、僕は肉体的、そして精神的に強くなりたいんです」

「だが、俺も人に教えるほどは………」

「お願いします!!」

深々と頭を下げるネギ。

機龍は漫画を閉じると言った。

「わかりました、そこまでおっしゃるのなら………」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「それでは放課後に第2グラウンドまで来てください」

「はい、では午後から授業があるんで失礼します」

立ち去るネギ。

うれしかったのかスキップ気味だ。

その後ろ姿を見て笑いながら再び漫画を読み始める機龍。


放課後。

ジャージに着替え、第2グラウンドに立つ機龍。(愛刀とマグナムを携帯している)

同じく、ジャージ姿で準備運動するネギ。

それを見守るカモとなぜかいるアスナ。

「なんで神楽坂くんまで?」

「あ、いや、その………」

「へへ、なんだかんだ言って姐さんやっぱ兄貴のこと………ゴフッ!!」

「馬鹿なこと言わないで!!」

なにか言いかけたカモを踏み潰すアスナ。

「まあ、いいさ。それでは、これより訓練開始します。準備はいいですか?」

「はい! いつでもいいです、機龍さん」

「訓練中は俺のことは教官と呼んでもらいます」

「は、はい、機龍教官!!」

「『はい』ではない! 私への返答は、『ラジャー』、もしくは『了解』だ!!」

「ラ、ラジャー!!」

神○明ボイスで言う機龍に敬礼するネギ。

「なによそれ………」

呆れ気味のアスナ。

「では、まず、体力測定を行ないます」

「ラジャー、機龍教官!!」

「わかってると思いますが、魔法の力は使ってはいけませんよ」

「おいおい、そりゃきついぜダンナ!」

機龍の訓練に異議を唱えるカモ。

「魔法を使ったら測定にならないだろ」

「しかしよ〜………」

「大丈夫だよ、カモくん。では、行きます!!」

「じゃ、ついでに俺も………」

グラウンドを走り始めるネギと機龍。

「兄貴………」

「ネギ………」


夕方。

「ゼエ………ハア………ゼエ………ハア………」

疲労困憊しているネギ。

「うん、10歳の体力としてはかなり優秀ですね」

「いえ………ゼエ………まだまだですよ………ハア」

同じ運動をこなして汗1つ掻いていない機龍を見て言うネギ。

「とりあえず、しばらくは基礎トレーニングをやって、それから本格的な訓練に入ります」

「わかり………ゼエ………ました………ハア」

「では、今日はこれくらいにしましょう。神楽坂くん、すまないがネギ先生を頼む」

「は、はい!」

慌ててネギに駆け寄るアスナとカモ。

「兄貴、大丈夫か?」

「うん………ゼエ……大丈夫………ハア………だよ」

「どこがよ、まったく。ほら、肩貸してあげるから掴まって」

「ゼエ………すみません………ハア」

アスナに支えられて帰路につくネギ。

それを見送りながら機龍は物思いにふける。

(まるで昔の俺だな………ただ単に強くなりたい………その一心で修行に打ち込んだっけ)

「俺も、もう少しやってくか………」


「いや〜、すっかり遅くなっちまったな」

結局、機龍はトレーニングに打ち込みすぎて、すっかり日が暮れ、月が出てしまっていた。

「どっかで飯でも食ってくかな………ん!?」

不穏な気配を感じ、足を止める。

「裏の森の方か………」

しばし考えた後、森へと向かった。

「一応、警備員兼任だし見過ごすわけにもいかんか」

機龍は森の奥へと入っていった。


しばらく歩いていくと、気配が殺気に変わった。

歩みを止め、辺りに気を配る機龍。

と、周りの木の上から影が3つ、機龍の前に降り立つ。

それは、大型犬位はある巨大な蜘蛛だった。

機龍は焦らず、左腰の二刀を抜く。

キシャアァァァーーーー!!

奇声とともに襲い掛かる蜘蛛たち。

飛び掛ってきた1匹目を右の刀で横一文字に斬り捨て、その影からきた2匹目を左の刀で袈裟懸けに斬り捨てる。

3匹目は距離をとり、口から緑色の液体を吐き掛けてくる。

木の盾にしてかわす機龍。

液体の当たった木が、ジュゥーと音をたてへし折れた。

「!! 酸か!?」

驚きながらも、別の木の陰に隠れる機龍。

じりじりと距離を詰めてくる化け蜘蛛。

機龍は刀を納めると、右腰のマグナムを抜き、飛び出す。

それと、同時に化け蜘蛛が酸を吐く。

側転をするように飛んでかわすとマグナムを全弾発射した。

全身6ヶ所に風穴を開けられ、化け蜘蛛は絶命した。

着地するとシリンダーから排莢する。

薬莢が地面に落ち、乾いた音をたてる。

「ふ〜〜、終わったか………む!?」

立ち上がりながら言った機龍は後ろに気配を感じ振り返る。

「フフ………やるじゃないか、機龍先生」

そこにいたのは、黒いロングストレートヘアに褐色の肌のスナイパーライフルを持ったの少女………龍宮真名だった。

「君は………龍宮くんか!?」

(そういえば彼女は退魔師の仕事をしていると聞いたな………)

と思い出す機龍。

と、次の瞬間、殺気を感じた機龍は咄嗟に横に飛んだ。

さっきまで自分がいた場所を銃弾が通り過ぎていく。

「かわしたか………」

真名の右手には硝煙を上げているデザートイーグルが握られていた。

「なんのつもりだ!! 龍宮くん!!」

警戒しながら、問いただす機龍。

「機龍先生………私と戦ってもらおう!」

「何!?」


神薙機龍対龍宮真名。

二人の戦いは唐突に始まった。


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