第41話



今日も訓練に励む機甲兵団ガイアセイバーズ隊員達。

「よし! 今日の訓練はこれまで!! 解散とする!!」

「「「「「お疲れ様でしたーーー!!」」」」」

挨拶を交わして、解散する一同。

と、ただ1人、ネギだけが訓練を続けていた。

それに気づいて声を掛ける機龍。

「ネギくん、今日はもう解散ですよ」

「スミマセン、僕はもう少しやっていきます」

「そうですか、分かりました。でも、病み上がりなんですから、無理はしないでください」

「分かってますよ」

にこやかにいうネギ。

それを見て、トレーニングルームを後にする機龍。

「さてと………今日の報告書を纏めておかないとな」

そう言って、作戦室へと向かうのであった。





3時間後………

「ふ〜〜………思ったより時間が掛かったな」

報告書作成を終え、腕時計を見て言う機龍。

「後は学園長に提出するだけだな………」

報告書を持って、作戦室を後にする。

途中、トレーニングルームを通りかかった時、中から音が聞こえた。

「まさか?」

と思って覘いて見ると、思ったとおり、ネギが訓練を続けていた。

「ネギくん!」

「あ、機龍さん!」

驚くネギ。

「まったく………無理はしないでと言ったでしょうに………」

「すみません………つい夢中になってて………」

ネギは頭を掻きながら言った。

「やれやれ………なあ、ネギくん?」

「はい? 何ですか?」

「前から気になっていたんだが………君は確か、父親に憧れて強くなりたいと思っているだよな?」

「はい、そうですけど?」

「君の父親ってそんなに強いのかい?」

サウザンドマスターの話は聞いている機龍だが、実際に見たことがないので、どれぐらい強いのか、ピンとこなかった。

「もちろんですよ!! とってもとっても強いんです!!」

「………会ったことがあるのかい?」

機龍がそう聞くと、ネギはやや表情を曇らせる。

「ああ、すまない………聞いちゃ悪かったかい?」

「いえ………この際ですし、機龍さんには話しておこうと思います………どうして僕が、父さんに憧れているのか………」

ネギはゆっくり、静かに語りだした。





今から6年前………ネギの住んでいた村が、悪魔の軍団に襲われた。

建物は焼かれ、人々は石へと変えられた。

ネギは泣きながら、燃え盛る村の中に立ち竦んでいた。

そんなネギを、悪魔達は囲い込み、無情にも襲い掛からんとした。

だがその時!!

突如現れた1人の男が、圧倒的なまでの力で、悪魔達を蹴散らした。

その男こそ、ネギの父、サウザンドマスターことナギ・スプリングフィールドだった。

ナギは唯一の生存者、ネギの姉・ネカネとネギを村の近くの丘に運ぶと、ネギに自分の杖を授け、空へと消え去った。





「その日以来、僕は父さんに強い憧れを抱くようになったんです」

「……………」

ネギの凄まじい過去にさすがの機龍も閉口した。

だが、ふと疑問に感じたことがあった。

「ネギ………ひょっとして、強くなりたいって思ってるのは、父親のことだけじゃなくて………その悪魔達に………復讐したいと思っているからじゃないだろうな?」

「えっ!?」

「どうなんだ?」

ネギの目を見据えて言う機龍。

ネギは少しの間黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「確かに………そういう気持ちもあります………でも、僕は!」

と言い掛けた時、

「「「「「「わあぁぁぁーーーーーーっ!!」」」」」」

不意にトレーニングルームの扉が開いて、多数の人影が傾れ込んだ。

「うわっ!?」

「何だ!?」

慌てて身構えるネギと機龍。

「お、重いです〜〜〜〜」

「ちょっと、速く退いてよ!!」

「だから押すなって言ったアルよ!」

「一番押してたのはくーふぇさんですよ………」

それは、帰ったはずのアスナ達だった。

「み、皆さん!?」

「ア、アハハハハ………いや、その………ネギがなかなか帰ってこないから、心配になって、つい………」

「………で、聞き耳を立てていたと?」

「「「「「……………ごめんなさい」」」」」

平謝りになるアスナ達なのであった。





その頃、麻帆良女子寮・665号室(雪広あやか、那波千鶴、村上夏美)にて………

「あらあら………」

「こ、これはどういうことですの!?」

「さ、さあ〜〜〜?」

帰り道で傷ついた1匹の犬を見つけ、千鶴が保護していたのだが………

突然、犬の身体がピカッと光ったかと思うと、犬の姿は消え、代わりにに中学生ぐらいの少年が裸で横たわっていた。

「さっきのワンちゃんがこの子になっちゃったのかしらねぇ?」

「何をバカなことを………そんなことあるわけないじゃありませんか」

「ねえ? 何か様子がおかしいよ、この子?」

見ると少年の顔は赤く染まり、息を荒立てていた。

少年の額に手を当てる千鶴。

「まあ大変! スゴイ熱よ? お医者さんに電話しないと………」

そう言って、電話のところへ向かおうとした千鶴の手を少年が掴んだ。

「ま、待ってくれ………それよりも………アイツに………アイツに会わせてくれ………」

「アイツ?」

「「??」」

理由が分からず、?を浮かべる3人。

「アイツに………ネギに………」

その少年はかつて、京都でネギと激戦を繰り広げた犬上小太郎だった。





同時刻、学園都市の一角にて………

その日、麻帆良は雨が降っていた。

地面には、多数の水溜りができていた。

その中の1つの水溜りから、何かが顔を迫り出す。

丸い目玉を光らせ、呟く人外の者。

「ネギ…スプリングフィールド………カグラザカ・アスナ………」

その後、再び水溜りの中へと消えるのであった。





少しして………

女子寮へと戻ってきたネギ達。

盗み聞きとは言え、ネギの過去を知ったアスナ達は父親探しに協力を買って出ると言ってきた。

最初は危険だと言って止めるネギだったが、機龍の説得と彼女達の熱意に負け、渋々ながらもそれを承諾するのであった。

様々な思いを胸に部屋へと帰っていく一同。

誰一人として、これから起こることを予想だにしていなかった………





そしてその頃、機龍は………

「酷い雨だな………雷まで鳴り出したぞ」

学園長へと報告書を提出し、雨の中をホロを付けたジープに乗って走っていた。

と、その時、

腕時計が音を立てた。

「おっと、本部の超達からか………こちら、機龍」

ジープを路肩に停めると、腕時計の液晶画面に映し出された送信者名を確認しながらスイッチを入れる機龍。

「ウム、機龍か?」

「超、何かあったのか?」

「先ほど学園都市防衛結界に僅かに揺らぎがあったネ」

「!! 侵入者か!?」

それを聞いて、機龍は顔を強張らせた。

「まだ、分かりません。ですが、何らかの異常があったのは確かです」

今度はハカセが捕捉説明する。

「了解した、全員に警戒命令を発令する。そちらからも呼びかけてくれ」

「「了解ネ(しました)!」」

機龍は一旦通信機を切ると、最初にジンとサクラに警戒命令を飛ばし、続いて、3−Aメンバーに連絡を入れようとしたが、どういう理由か、そちらは繋がらなかった。

せめて真名にだけでもと思って、原版仮契約カードで、カモが言っていたテレパシー通信を試みたが、それも繋がらなかった。

(まさか!? 敵の狙いは………3−Aメンバーか!?)

機龍は、ジンとサクラに女子寮に向かうよう再び連絡すると、素早くギアチェンジを行い、ジープを走らせる。

(クソッ!! また嫌な予感がする………皆!! 無事でいてくれ!!)


NEXT


前へ 戻る 次へ