第40話



ガイアセイバーズ基地にて、集合している一同。

「機龍さん、一体どうしたんですか?」

「今日は勤務日じゃないぞ」

非番に呼び出され、不満げなエヴァ。

「うむ、これを見てくれ」

と、機龍が言うと、巨大モニターに映像が映し出される。

それは、半分焼かれた式神の紙型が写っていた。

「!! これは!?」

刹那はその紙型に見覚えがあった。

「昨夜、侵入者が入り込み、迎撃に向かった警備員が返り討ちにあった。これは、その現場に残されていた物だ」

「超さんの調べによると、99%の確立で天ヶ崎千草が使っていた物と同じだそうです」

機龍の説明を補足するさよ。

「あの女のかよ!?」

「懲りない奴でござるなー」

驚くカモと呆れ気味の楓。

「奴が麻帆良に潜伏しているとすれば、狙いは近衛くんか我々、もしくは3−Aの生徒を狙う可能性が高い。各員、注意を怠るな」

「「「「了解!!」」」」

一同は気を引き締める。





その後、皆が解散すると、ネギは1人、トレーニングルームに向かい、マシーンエリアで特訓を始めていた。

「495………496………497………498………499………500!! っと………よし! 次だ!!」

さまざまな筋トレマシーンで特訓するネギ。

熱さで上着は脱ぎ捨てているので、10歳とは思えぬ、引き締まった上半身が姿を見せている。

元々人一倍努力家なネギは、他の皆が帰った後もよく1人で残って訓練を積んでいた。

機龍にも無理をしていないかと、注意されたほどだ。

「兄貴〜………あんまり無理しないでくだせぇ」

「大丈夫だよ、カモくん」

今度こそ自分が生徒を守らなければ………

ネギの胸中はそんな決意に満ちていた。

「ふふふ………頑張ってるね、ネギくん」

と、そんなネギに声を掛ける男がいた。

「ん?………あれ? タカミチじゃないか」

それは、ネギの親友であり、父の昔の仲間でもあった、アスナの憧れの人、広域指導員高畑・T・タカミチだった。

「どうしてここに?」

備え付けられていたタオルで、汗を拭いながらタカミチに近寄るネギ。

「この部隊のことは学園長から聞いているよ。ちょっと、様子を見に来ただけさ………それにしても………凄い身体になったね、ネギくん」

ネギの鍛えられた肉体を見て苦笑いを浮かべるタカミチ。

「鍛えてるからね!」

ヒ○キの敬礼ポーズで返すネギ。

「ハハハハ、確かにね………ところでネギくん。どうだい? 一つ、手合わせしないかい?」

「タカミチと!?」

ネギはやや驚いた顔をする。

「特訓には、スパーリング相手が必要だろ」

笑みを浮かべて言うタカミチ。

「じゃあ………お願いしようかな?」





スパーリングエリアへと移動した2人は、構えをとって睨み合う。

闘気がぶつかり合い、ビリビリと空気を震わせる。

そして………そんな空気に押し潰されそうになる傍観者カモ。

「とあっ!!」

先に仕掛けたのはネギ。

タカミチに向かい、浴びせ蹴りをお見舞いする。

「むっ!?」

それを左腕でガードするタカミチ。

(予想以上に重い蹴りだ………やるね、ネギくん)

だが、ネギの攻撃はこれで終わりではなかった。

ガードした左腕を掴むと、そのままタカミチを引き倒す。

「何!?」

そして、腕十字固めを決める。

(ぐう!! 浴びせ蹴りから腕十字固めに入るとは………何てコンボだ!!)

タカミチは力任せにそれを外す。

そして、居合い拳を放つ。

「ぐうっ!!」

両腕をクロスして防御するが、後方へ吹き飛ばされるネギ。

が、その後方の壁を蹴って、すぐさま距離を詰めた。

「何と!?」

「やぁーーー!!」

そのままレッグラ○アートを決める。

「がはっ!!」

ややよろけるも、笑みを浮かべるタカミチ。

「よっしゃ!! いいぞ、兄貴!!」

(凄いよ、ネギくん………こりゃ、僕も本気を出さなければいけないな………)





その頃、図書館島にて………

のどかが図書委員の仕事として、返却された本を本棚に戻す作業をしていた。

「え〜と、この本はここで………これはこっちと………」

奥の方にて作業しているのどか。

と、のどかは返却された本の中に見慣れない本を発見する。

「あ、あれ? こんな本、あったかな?」

不審に思ってのどかはその本を開いてみる。

途端に、開いたページから、のどかの顔を目掛けて白い煙が噴出する。

「キャアっ!! こ、これ………は………」

そこでのどかの意識は途絶えた。

そして、倒れたのどかの傍に1人の人影が現れる。

「フフフ………上手くいきましたな〜。次は、この子のオモチャを用意しますか………」





場面は再び、ガイアセイバーズ基地のトレーニングルーム、スパーリングエリアに戻る。

ネギは体格差でタカミチを撹乱し、ついにタワー・ブ○ッジを決めていた。

「ぐうぅぅぅ〜〜〜〜!!」

足を踏ん張り、腕に力を込めるネギ。

タカミチは脱出しようともがくが完璧に決まっているので外せない。

「タ、タカミチ………大丈夫?」

流石に心配になったのか、ネギはタカミチに声を掛ける。

と、タカミチは右手と左手に光を宿し、それを組み合わせる。

すると、凄まじいまでの光が溢れ、タカミチの力が強まる。

(な、なんだ!? ありゃ!?)

未知の力を見せるタカミチに驚くカモ。

そして、さっきまで外せなかったタワー・ブ○ッジをいとも簡単に外す。

「うわっ!?」

技を外されてよろけるネギに、豪殺居合い拳が炸裂する。

「がはっ!!」

まともにくらい、吹き飛んだ後、壁に打ち付けられる。

ズルズルと滑り落ち、その場にへたり込む。

「あ、兄貴!!」

「だ、大丈夫かい、ネギくん!? すまない、つい本気になってしまって………」

慌てて駆け寄るカモとタカミチ。

だが、ヨロヨロとだが立ち上がる。

「負けたよ………やっぱりタカミチは強いね」

「いや、君こそ大したもんだよ。まさか豪殺居合い拳を受けて立ち上がるなんてね………」

「ところでタカミチ。さっきのアレは?」

ネギはタカミチが使った技について聞く。

「ああ、アレは咸卦法と言ってね………本来は相反するものである魔力と気を融合し、巨大な力にする技さ」

「へぇー、すごいなー、タカミチは。そんな技が使えるなんて………」

尊敬の目でタカミチを見るネギ。

それにやや困った笑顔を浮かべるタカミチ。

「ははは、そうでもないさ。この技には真の攻撃方法があるんだけど、僕はまだそっちは使えないし………」

「真の攻撃方法?」

「ああ………それはね………」





また舞台は変わって、図書館島では………

「のどかーーーー!! どこにいるですかーーーー!!」

「宮崎くーーーん!! 返事をしろーーーー!!」

「のどかちゃーーーん!!」

閉館した図書館島に夕映と機龍とサクラの声が響き渡る。(図書館では静かに、という張り紙があったが、誰もいないので無視した)

閉館時間をだいぶすぎたのに、のどかが戻ってこない。

通信にも応答しない。

夕映からそう報告を受けて、機龍はジンとサクラを連れ、閉館した図書館島の中を捜索していた。(ジンは本棚の上を跳躍しながら探している)

が、かれこれ1時間近く捜索しているにも関わらず、のどかの姿は発見できていない。

「おかしいです。中学生が入れるエリアはもうここまでのはずです。なのに全然姿が見えないなんて………」

「宮崎くんの性格から考えて、1人でこれ以上先に行くとは考えにくいし………」

「ホント………どうしちゃったんだろう?」

頭を捻る3人。

「リーダー!! ちょっと来て下さい!!」

そこへ、ジンの声が聞こえてきた。

「ジン?」

「何かあったのか?」

すぐさま声がした方向に向かう3人。

少し移動すると、通路にしゃがんでいたジンを発見する。

「ジン、どうしたの?」

サクラがジンに聞く。

「これがここに………」

ジンは立ち上がると、右手を機龍達の方へ差し出す。

そこには、のどかの仮契約カードと通信機があった。

「!! これ、のどかの………」

「リーダー、まさか!!………」

機龍は通信機のスイッチを入れる。

「………各員に通達………非常事態発生………宮崎くんが………敵の手に落ちた!!」





のどか拉致の報告を受けて、ガイアセイバーズは基地へと集合。

いつでも出動できる態勢をとった。

「何て事なの………」

「のどかさんが………敵の手に………」

のどか誘拐の報告を受けて、愕然するアスナとネギ。

「スミマセン………私がもっと早く気づいていれば………」

「綾瀬くんの所為じゃない………我々が天ヶ崎を発見してさえいれば………」

「過ぎた事は変えらんねーだろ。それより、宮崎を探すことが先だろ!」

責任を感じている夕映と機龍に千雨が叱咤する。

「現在、警備員、魔法関係者達が総出で探してくれています」

「完全に魔法関係事件だから警察が使えないのがイタイね………」

と、さよと和美が話していると………

警報が鳴り響いた。

「!! オペレーター!! どうした!!」

「大声だすなつーの! 山岳部にヴァリムのやつと思われるPFが出現!! 数は1!! 機種はキシン!!」

「1機だけアルか?」

「ワナか?」

1機だけの出現にワナの可能性を考える一同。

「ともかく、出撃するぞ! 宮崎くんのことについても、何かわかるかもしれない」

「「「「「「了解!!」」」」」」





山岳部のやや開けた場所に陣取る1機のキシン。

まるで何かを待つように立っている。

そこへ、ガイアセイバーズが到着する。

それを見て、カメラアイを光らせるキシン。

[少尉。キシンのコックピット内に生命反応あり]

「何? 有人機か?」

「どうします? リーダー」

ジンが指示を仰ぐ。

「戦力差は明らかだ、投降を呼びかけてみよう」

キシンを囲むように展開するガイアセイバーズ。

「そこのヴァリム軍のPF。こちらは機甲兵団ガイアセイバーズだ。君は完全に包囲されている。無駄な抵抗はやめ、投降せよ」

機龍が外部スピーカーで投降を呼びかける。

だが、キシンはそれを無視し、周りを囲むガイアセイバーズのPFを見回す。

そして、Gウィザードを見つけると視線を止める。

「!?」

身構えるネギとGウィザード。

その瞬間!!

キシンはブースターを一気に吹かし、Gウィザードを肉薄する。

「!! くっ!!」

振られた右手のカタナを杖で受け止め、反撃にキックを叩き込む。

後方へと吹き飛んだ後、体制を立て直すキシン。

「いきなり何すんのよ! アンタ!!」

そこへ、アスナのGヴァルキューレがハマノツルギ(PFサイズ)で斬り掛かる。

が、キシンはそれをジャンプしてかわすと、再びGウィザードに斬り掛かる。

「また!?」

「コイツ、兄貴を狙ってるのか!?」

繰り出される剣撃を杖で受け流すGウィザード。

そして、一瞬の隙を付き、キシンの背後に廻ると杖で突きを繰り出す。

またも吹き飛ばされ、うつ伏せ倒れるキシン。

そこへ攻撃を浴びせようと、呪文詠唱に入るネギ。

「光の精霊11柱! 集い来たりて 敵を討て!! 魔法の………」

「おおっと、待ちなはれ!」

そこへ、聞き覚えのある声と共に、1機のロキが現れる。

「!! その声は………天ヶ崎か!?」

「その通りや、お元気そうやな〜、正義の味方はん達」

皮肉を込めて言う千草。

「宮崎くんを攫ったのはお前か!?」

「フフフ、そうでっせ。それが何か?」

「宮崎くんを何処へやった!!」

ショットガンを抜き、千草のロキに向けるJフェニックス。

「おやおや、何を言うんや? そのお嬢ちゃんなら、さっきからあんさん方の目の前におるやないか」

「何!?」

「どういうこと!?」

理由がわからない一同。

「!! まさか!?」

「そのまさか、や」

千草がそう言うと、キシンが起き上がり、機龍達の方を向き、コックピットハッチを開いた。

「「「「「!!」」」」」

機龍達は驚愕した。

「ネ、ネギせんせー………皆さん………ゴメン………なさい………」

キシンのコックピットには、手足と身体をシートに拘束されたのどかの姿があった。

「の、のどかさん!!」

「ヒドイ!!」

「人質か!!」

「卑怯な真似を!!」

口々に千草に非難を浴びせるネギ達。

「フフフ、卑怯………それは悪にとっては最高の誉め言葉やわ」

涼しげに言い放つ千草。

「さあ、どうしますか? このキシンの脱出装置は取り外しとる。撃墜すれば、即ちそれは、このお嬢ちゃんの死を意味しますで」

「貴様!!」

千草に怒声を放つ機龍。

「ホホホホホホ、怒れ、怒れ、ウチの受けた屈辱はまだこんなもんじゃおまへんで!!」

そう言って、千草が指を鳴らすと、今度はヴァリムPF軍団が出現する。

「くっ!! またか!!」

身構える機龍達。

「フフフフ、それじゃ、お嬢ちゃんも遊んできなはれ」

そう言って、千草のロキがやや離れたところへ離脱すると、のどかが乗せられたキシンはコックピットハッチを閉め、再びネギへと襲い掛かる。

「くっ!! のどかさん!!」

「ネギ!! 援護す………キャア!!」

ネギの援護に廻ろうとしたアスナをヴァリムPF軍団が阻止する。

孤立するネギ。

キシンはそんなネギに執拗の攻撃を加える。

後から現れたヴァリムPF軍団はそれを知ってか、ネギには構わず、機龍達の方を攻撃する。

「むう! 仕方が無い! 各機、各個に敵を迎撃!! キシンはネギくんに任せろ!!」

「そんな!! 無理よ!!」

「あいつを信じろ!!」

食い下がるアスナを一喝し、ヴァリムPF軍団を迎撃する機龍達。

(ネギくん………頼みましたよ!)





キシンの両肩から放たれるキャノンを、杖を回転させて防ぎながら、ネギはのどか救出の方法を思案する。

(キシンの脱出装置は外されている………撃墜はできない………だったら………)

「兄貴!! 来るぞ!!」

キシンは再び距離を詰め、カタナで斬り掛かる。

「撃墜せずに動きを停める!!」

ネギはそれを横っ飛びでかわすと、呪文詠唱する。

「風の精霊17人 縛鎖となりて 敵を捕まえろ 魔法の射手・戒めの風矢!!」

捕縛属性の風の矢で、動きを停めようとする。

「よっしゃ!! 決まった!!」

しかし、風の矢はキシンの装甲に当たると掻き消された。

「え!?」

「何!? 風の矢が!?」

「アハハハ、無駄や! そのキシンの装甲には、ウチの呪術とヴァリムはんの科学で造り出された錬金護符合金の強化版が使われとるんやで!!」

驚愕するネギ(+カモ)に勝ち誇ったように言う千草。

キシンは左手のマシンガンをGウィザードに発砲する。

「うわぁ!!」

杖を弾き飛ばされ、弾丸を数発くらい仰向けに倒れるGウィザード。

「ネギ先生!! お願い!! もうやめてー!!」

キシンのコックピットで、ネギが痛めつけられるのを見て、悲痛な叫びを挙げ、拘束を解こうと身を捩るのどか。

しかし、拘束具はビクともしない。

「の、のどかさん………」

機体を奮い立たせるネギ。

「カモくん! 損傷は!?」

「左カメラアイ破損! サブに切り替える! 右肩アーマー大破!! マジックスティックロスト!! 全体損傷は20%だが、武器を失くしたのが痛いぜ!!」

カモの報告に苦い顔をするネギ。

「ネギくん! これを!!」

そこへ、上空で空中戦をしていた機龍がJフェニックスの二刀の片方を抜くと、Gウィザードに投げる。

それを受け止めるGウィザード。

「手足を狙え!! 少し乱暴だが、そうすれば行動不能にできる!!」

「はい!!」

ブースターを一気に吹かし、キシンに詰め寄る。

マシンガンとキャノンで迎え撃つキシンだが、Gウィザードは構わず突進する。

「のどかさん!! 少しだけ我慢してください!!」

上段から一気に刀を振り下ろすGウィザード。

キシンの左腕がマシンガンを持ったまま、肘から斬り落とされた。

「キャア!!」

コックピットを襲う振動に身を強張らせるのどか。

「うっし、兄貴!! 次は右腕と足だ!!」

「うん!!」

刀を構え直すGウィザード。

だが、

「ああ、言い忘れてましたが、そのキシンは手足を2本以上失うと、自爆するようになっとりますわ」

「「「「「なっ!?」」」」」

またも驚愕する一同。

「貴様〜〜〜!! どこまでも汚いんだ!!」

「勝ってなんぼ………それが悪の美学ですわ、アーッハハハハ!!」

バカにしたかのような高笑いを挙げる千草。

「う! うう!!………」

構えを解くと、キシンと距離をとるGウィザード。

最早手も足も出せないかと思われた。

「ネ、ネギせんせー………皆さん………私に構わず………ヴァリムを………倒してください!!」

「の、のどかさん!!」

「宮崎くん!!」

「本屋ちゃん!!」

「のどか!!」

隊員達の悲痛な叫びが響く。

そんな叫びを聞いて、ネギは頭をフル回転させる。

(どうすればいいんだ!! 撃墜せず、手足を破壊しないで、のどかさんを助ける方法はないのか………待てよ!? あの技なら!?)

ネギの脳裏にタカミチが使った咸卦法の本来の攻撃方法が過ぎる。

(でも………あの技は………)

ネギはタカミチの話を思い出す。





ネギの回想。

「咸卦法の真の攻撃方法………それは両腕を組み合わせた時、魔力と気の融合エネルギーを敵へと向けて放出し、融合エネルギーの渦で敵を拘束する」

「そして次に、組み合わせた両腕に融合エネルギーを集中させ、敵へと突進し、両腕を敵の弱点………核へと振り下ろし、それを摘出すると同時に両腕に集中させた融合エネルギーを敵の体内で解放、敵を内部から完全に破壊する………というものだ」

「すごいね!! 僕にもそんな技が使えたらなー」

「兄貴が使えりゃ、まさに無敵だぜ!!」

タカミチの話に聞き入るネギ(+カモ)。

「ハハハ、ネギくんもだいぶ鍛えてるみたいだからね。僕が使っている方法の咸卦法なら使えるかもしれないよ………でも、真の攻撃方法だけは決して使ってはいけない」

前半は笑顔だったが、後半は厳しい顔で言うタカミチ。

「えっ!? どうして?」

「咸卦法の真の攻撃方法はかなりのリスクを伴うからだ」

?顔のネギにタカミチは厳しい顔のまま言う。

「リスク?」

「そう、精神的、身体的負担が大き過ぎる。下手をすれば………」

「下手をすれば………?」


「………死ぬ」





(そう………下手をすれば、僕は死ぬかもしれない………)

「兄貴!! 危ねーー!!」

ハッと気づくと、ブースターを吹かして、一気に迫ってくるキシンの姿がモニターに広がっていた。

「くっ!!」

ジャンプしてかわすGウィザード。

キシンは反転し、Gウィザードを睨みつけるように立つ。

Gウィザードもそれを見据える。

「ハア………ハア………ネギ………せんせー………私の………ことは………気にしないで………この機体を………撃墜………してください………」

「マズイぜ、兄貴!! 宮崎の嬢ちゃんはもう限界だ!!」

PFに乗る訓練を受けていないのどかの身体では、これ以上、PFに乗り続けることは非常に危険だ。

最悪、命を落としかねない。

それを見て、ネギはついに決意した!!

機龍から貰った刀を地面に突き立てる。

「お、おい、兄貴!! どうしたんだよ!!」

「のどかさんを救う方法が………1つだけある」

「な、何だって!?」

驚くカモ。

「本当か!? ネギくん!!」

「どうするの!!」

機龍達もネギに詰め寄る。

「………咸卦法です」

「「「「「咸卦法?」」」」」

聞きなれない言葉に首を傾げる機龍達。

「おいおい、兄貴!! 咸卦法ってのは身体能力強化の技だろ!! そんなんでどうやって………って、まさか、兄貴!?」

「そう………咸卦法の真の攻撃方法を使います!!」

「な、何!?」

その言葉にいち早く反応したのはエヴァだった。

タカミチはエヴァの別荘を使い、咸卦法の身体能力強化バージョンを完成させたのだ。

その際に、咸卦法の真の攻撃方法について、エヴァにも話していた。

「バカ!! やめんか!! そんな技を使ったらお前は!!」

「ちょ、どうしたのよ、エヴァちゃん?」

大慌てでネギを止めようとするエヴァに驚くアスナ。

「お前は………死ぬかもしれないんだぞ!!」

「「「「「な!!」」」」」

愕然とする機龍達。

「それしか方法はありません!!」

だが、ネギの決意は揺るがない!!

「ネギくん!! 死に急ぐつもりか!?」

機龍が最後の説得を試みる。

「死に急ぐ? そんなつもりはありません」

「何!?」

返ってきた答えに驚く機龍。

「僕はのどかさんを助けますが、死ぬつもりはありません。だって、僕は………先生であり………立派な魔法使いを目指す者であり………サウザンドマスターの息子です!!」

キッパリと言い放つネギ。

その目に燃える決意の炎はエヴァのえいえんのひょうがでも消せそうになかった。

「………わかった、やってみろ!!」

「「リーダー!?」」

「ちょ、何言ってんのよ、機龍さん!?」

「ネギ先生を見殺しにする気か!?」

咸卦法の真の攻撃方法を承認した機龍に非難が飛ぶ。

「黙れ!!」

だが、機龍はそれを一喝する。

「漢が決意を見せているんだ………黙って見守ってやれ」

そう言った機龍の目は完全にネギを信じていた。

(ありがとう………機龍さん)

Jフェニックスを一瞥し、キシンへと向き直るネギ。

「ネ………ネギ………せんせー………」

「のどかさん………修学旅行の時、言ってくれましたよね。僕のことが大好きだって………」

「な!? アイツ〜〜、こんな時に何言っ………」

「黙っていろ!!」

ツッコミを入れようとしたアスナを黙らせる機龍。

「正直に言って………僕にはその気持ちにどう答えればいいのか、まだよく分かりません………」

「「「「「……………」」」」」

全員がネギの言葉に聞き入っていた。

「でも、僕は………先生として………立派な魔法使いを目指す者として………そして、1人の漢として!! あなたを命懸けで助けてみせます!!」

「………せ………せんせー………」

「ハアァァァァァーーーーーー!!」

ネギの身体から一気に魔力と気が溢れ、Gウィザードへと伝わる。

「兄貴!! こうなりゃ俺も漢だ!! 最後まで就き合うぜ!!」

「ありがとう、カモくん!!………いきます!!」

掛け声と共に両腕を胸の前でクロスさせるGウィザード。

「オーラ(気)・アンド・マジック(魔力)!!」

そして、斜め下へと振り下ろすと、右手に赤、左手に黄色のエネルギーが発生する。

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・」

呪文詠唱をしながら両腕を組み合わせようとするネギ。

それだけで、ネギの身体中に激痛が走る。

「ぐっ………あっ………ぐうぅぅ………はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

しかし、強引に両腕を組み合わせ、融合エネルギーをキシンへと向けて放出させてキシンを拘束する!

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

そして、ブースターを全開にしてキシンへと突撃する。

「な、何や、あの技は!? ええい、止めるんや!!」

千草の命令に従い、突進中のGウィザードへと襲い掛かろうとするヴァリムPF軍団。

「邪魔はさせん!!」

「必殺技中の攻撃は御法度でしょう!!」

しかし、機龍達がそれを防ぐ。

その間にもGウィザードはキシンへと迫る。

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!! 僕達、魔法使いの最大にして最後の武器!! 見せてあげます!! それは………勇気だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ついにGウィザードの両腕がキシンの胸に突き刺さった!!

「うわぁぁぁぁぁっ!! ふんっ!!」

そこからコックピットを丸ごと取り出すGウィザード。

キシンは流し込まれた融合エネルギーによって爆散した。

「バ、バカな!!」

驚愕する千草。

「さて………残ったのはお前だけだな」

と、後ろから聞こえた声に恐る恐る振り向くと、いつの間にかヴァリムPF軍団は全滅させた機龍達が立っていた。

かなり怒気が伝わってくる。

「………ほな、さいなら〜〜〜」

そそくさと退散しようとする千草。

「「「「「「ああ!! さようなら!!(怒)」」」」」」

機龍達の怒りの一斉攻撃が千草に炸裂する!!

「ぎゃあーーーーっ!!」

煙の尾を引いて、空の彼方へ消える千草のロキ。

「バイバイキン〜〜〜〜!!」

………お約束の台詞も忘れていない。

「思い知ったか!!」

「………典型的な小悪党だったわね」

一息吐く機龍達。

「ダ、ダンナ!! 姐さん!!」

そこへ、カモが慌てた声で通信を入れてくる。

「どうした!? カモ」

「あ、兄貴が!! 兄貴が!!」

それを聞いて、全員がサブモニターにGウィザードのコックピットを映す。

サブモニターに映ったのは、血を吐いて気絶しているネギの姿だった。

「!! ネギ!!」

[ネギ先生!! しっかりしてください!!]

「サクラ!! 応急処置だ!!」

「う、うん!!」

「せっちゃん!! ウチも!!」

「分かりました、お嬢様!!」

「本部!! 聞こえるか!? 至急、病院に連絡を!!」

騒然となる一同。





魔法病院の個室病棟の1室。

そこのベッドには、身体中に包帯を巻いたミイラ男状態のネギが横たわっていた。

「まったく、アンタって奴は!! 散々人に心配かけさせてーーー!!」

「うう!! イタ、イタ、イタイです〜〜〜〜!!」

唯一包帯で巻かれていない顔部分の頬を引っ張りグニグニとするアスナと、それに傷が悪化するのを感じるネギ。

「ア、アスナさん!! ネギ先生は病人ですよ!!」

それを羽交い締めして止める刹那。

「後、病院では静かにな」

それをやや離れて見ながら言う真名。

「ネギ坊主!! これ食うアル!! いっぱい食べればすぐに元気になるアルよ!!」

「いやいや!! ここは私が作った秘伝の漢方薬で!!」

「いえ!! それより、私の作ったナオール君2号で!!」

「………1号はどうしたんですか?」

肉まんを差し出すクーと、怪しげな薬を飲まそうとする超と、新発明の実験台にしようとするハカセと、それにツッコム夕映。

「ったく!! バカかお前は!! こんな怪我しやがって!!」

悪態を吐きながらも、見舞いの品はやけに豪華だった千雨。

「怪奇、ミイラ少年現る!! ってか。 記念に1枚!」

「ネギ先生………大丈夫ですか?」

面白半分にネギの姿をデジカメに納めようとする和美と、ネギを心配するさよ。

「ニンニン、世話が焼けるでござるな」

何故か天井に足を付けた逆立ち状態でいる楓。

「フン………まったく、バカも休み休みやれ」

[ネギ先生が血を吐いて気絶した時、一番慌ててらしたのはマスターでしたが?]

「余計なことを言うな!!」

一言多い茶々丸と、そんな茶々丸の首を掴んでガクガク揺するエヴァ。

「……………大丈夫?」

訳:あんまり無理しないで、ネギ先生。傷、大丈夫?………と言っているザジ。

「ふえ〜〜ん、良かったわ〜〜、ネギくん、助かって〜〜〜」

「うわ〜〜ん、ホント、良かったよ〜〜〜」

泣きながらネギの命に別状がないことを喜ぶこのかとサクラ。

「………って言うか、この病室、人多すぎ………」

「我々を含め、現在の人数、20人です」

見舞い人の多さに呆れる機龍と、人数を冷静に報告するジン。

そして………

「ネギせんせー………早く良くなってくださいね………」

「ありがとうございます………のどかさん」

ネギの包帯だらけの手を握りながら、涙目になりそうなのどか。

「まあ、とりあえず、ゆっくり休むことだ。怪我が完治するまで、特訓や仕事は禁止だ」

「はい、分かりました」

「うむ………それから、宮崎くん」

「は、はい!」

機龍に話しかけられ、思わずビシッと背筋を伸ばしたきょうつけ体制になるのどか。

「君に、ネギくんが完治するまでの付き添いを命じる」

「は、はい!!………って、えぇ〜〜〜!!」

「えぇ〜〜〜!!」

これにはのどかだけでなく、ネギも慌てた。

「「ああ、あの、機龍さん!!」」

ハモって話しかけるネギとのどか。

「これは命令だ、拒否は許さん」

しかし、意地の悪い笑みで意見を却下する機龍。

「「……………」」

最早、口をパクパクさせるだけのネギとのどか。

「さて、そろそろ帰るぞ! 事後処理が残ってる」

「そうね! それじゃ、ネギ! お大事に!」

「宮崎さん、後は頼みましたよ」

そう言ってゾロゾロと出て行く機龍達。

「「あ、あの!!」」

「当分、事後処理で忙しいからお見舞いにはこれないと思うよ。ゴメンネ〜〜!」

そう言って、最後のサクラが笑顔で手を振ってドアを閉めるのであった。

「「……………」」

ネギとのどかは呆然とした後、視線を合わせてはお互いに顔を真っ赤にして俯くと行為を繰り返すのであった。


余談だが………

ネギの退院後………

休日にネギとのどかが手を繋いで、街を仲良く散歩している光景が度々目撃されるようになったということを付け加えておこう。


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