第49話


日本近海の海底………ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地。

「た、たた、大変ですわ!!」

大慌てで作戦室に千草が駆け込んでくる。

「………何事?」

「敵襲か!? なら、俺が爆破してやるぜ!!」

表情を変えずに聞くコンピューターをいじるヴェルと、懐からダイナマイトを取り出すビックボム。

「ハ、ハクヤはんの奴が、おらんのや!! シロヤシャまでなくなってはります!!」

早口で捲くし立てる千草。

「そう………」

「何でぇ!! つまらねぇ!!」

だが、ヴェルは一言だけ呟き、ビックボムはつまらなそうにダイナマイトをしまう。

「え? あの………探さなくてええんですか?」

「放っておきなさい………簡単にやられるようなら、所詮それまでだったってことよ………」

さも当然のように言い、邪悪な笑みを浮かべるヴェルに千草は悪寒を覚えるのだった。











麻帆良の森林地帯の一角………

ネットを張ったシロヤシャを木々でカモフラージュするハクヤ。

「まあ、こんなものか………」

それを終えると、パイロットスーツを脱ぎ、予め用意していた普通着を着る。

[ハクヤ少尉、今回の出撃は作戦行動ではありません。直ちに帰還されたほうが………]

「シェン、誰がお前の意見を求めた」

[………申し訳ございません]

ハクヤの行動を止めようとした機体AI・シェンは一喝の元に黙り込む。

「神薙………今日は俺の方から出向いてやる。存分に戦おうじゃないか」

そう呟くと、夕日が沈みかけた街の方へと歩き出す。

「それにしても………騒がしすぎる過ぎる街だな………」











一方、その頃………

超包子の屋台にて………

〈よし………今日も頑張ろう!〉

いつものように、料理の仕込みを始める五月。

〈それにしても………超さん達………最近、遅刻や早退が多いですね………〉

未だに姿を見せぬオーナーと従業員を不審に思う。

実のところ、ガイアセイバーズの仕事が増加の一方を辿っており、超包子まで手が廻らなくなってきていたのだ。

大半のことは機龍とセイバー小隊の2人が処理してくれるのだが、機体整備やコックピットの調整など、その人でなければならない仕事も多く、手が追いつかなくなることがあった。

〈でも、最近、何か忙しそうにしていたし………きっと大事な用なんですよね〉

そう自分を納得させると、五月は仕込みを続ける。

と、そこへ………

「おい、嬢ちゃん」

いかにもチンピラといった感じの男数人がカウンター越しに五月に話しかけてきた。

〈はい? 何ですか?〉

「テメェー、いつもここで店やっとるが、一体誰に断ってやっとるんじゃい!!」

今時そんな言い掛かり使うか? と言われそうな言い掛かりをつける兄貴格のチンピラ。

「ここで店やるんならな………ワイ等に断り金を払うてもらおうか? アアン!!」

〈そ、そんな! 言い掛かりです!!〉

当然、反論する五月。

「ほお〜〜、そうかい、そうかい。だったら! とっとと店畳んでもらおうか!!………オイ!! オメェー等!! やっちまえ!!」

「「「「「「うおぉーーーっ!!」」」」」」

そう言うがいなや、店のテーブル、椅子を破壊し始めるチンピラ達。

〈や、やめてくだい!!〉

「やめて欲しかったら、断り金を払わんかい!!」











同刻………

麻帆良学園都市内をうろつくハクヤ。

「チッ! 無駄に広い街だ………神薙は一体どこにいる?」

規格外の広さを誇る麻帆良学園都市に苛立ちを覚える。

唯でさえ迫力を持っている男が苛立ち気に歩いているので、通行人が無意識にハクヤの傍から離れる。

「ん?」

と、何やら集まっている人垣を発見するハクヤ。

近寄って最後尾から人垣の先を覘く。

見ると、柄の悪い男数人が、屋台のテーブルや椅子を破壊しているところだった。

店の料理人と思われる女の子が必死に止めようとしていた。

「ああ!! さっちゃんの店が!!」

「おい!! 誰か止めろよ!!」

「でも、相手はヤクザだぜ!!」

ギャラリーの人達は助けたいと思ってはいても、ヤクザが相手ということに尻込みしていた。

「そうだ!! 警察に!!」

と、1人が警察に連絡しようと、携帯を取り出した時………

「退け………」

ハクヤがその人を強引に押しのけて人垣の前に出た。

「うわっ!! な、何すんだよ!?」

文句を言う人に目もくれず、右手の鎖を解き、手に握る。

「ちょうどいい………鬱憤を晴らさせてもらおう!!」











「オラオラオラ!!」

手当たり次第に、店の物を破壊するチンピラ達。

〈やめて!! お願いだからやめて!!〉

チンピラの1人に組み付く五月。

「邪魔じゃい!!」

しかし、あっさりと蹴り飛ばされてしまう。

〈キャアッ!!〉

「こんのガキーーーッ!!」

倒れた五月に、さらにチンピラが足を蹴り降ろそうとした時………

突然!! チンピラの後ろから鎖が伸びてきて、チンピラの首を絞めた!!

「ぐおっ!!」

〈え!?………〉

驚いた五月が鎖が伸びてきた方を見ると、鎖は人垣から前に出た白髪の男が握っていた。

「な、何だテメェーは!?」

兄貴格のチンピラが叫ぶ。

「………少し苛立っているんでな、鬱憤を晴らしをさせてもらおうか!!」

そう言って、鎖で首を絞めたチンピラを垂直に上に投げ飛ばし、続いて頭からゴミ箱に落下させる。

「ギャアァァァーーーーーッ!!」

チンピラはゴミ箱から足だけ生えた状態となった。

「「「「なっ!!」」」」

チンピラ、ギャラリー、五月が揃って驚愕する。

鎖を再び右腕に巻くと、固まっているチンピラ達に向かってハクヤは言った。

「………さて、次は誰だ?」

「………ハッ!! コイツ〜〜〜〜ッ!! やっちまえ!!」

「「「「いてもうたれ〜〜〜っ!!」」」」

ハクヤへと襲い掛かるチンピラ達。

「フ………」

最初に殴りかかってきたチンピラの脳天にエルボーをお見舞いすると、後ろから殴りかかってきたチンピラの肩にバック宙して跨り、フランケンシュタイナーで地に沈める。

「ぐべっ!!………」

続いて近くにいたチンピラに、鎖の巻きついた右手でラリアットを決める。

「あべっ!!………」

4回転半して、頭を地面に打ち付けて気絶するチンピラ。

「おんどりゃ〜〜〜っ!!」

続いて掛かってきたチンピラから繰り出された右ストレートを左手であっさり受け止める。

「!? うおぉぉぉーーーーっ!!」

すかさず繰り出された左ストレートも右手であっさりと受け止める。

「むおっ!?」

「どうした………?」

そのまま脅威的な握力で、チンピラの手の骨を砕く。

「うぎゃあぁぁぁーーーーーーっ!!」

「むん!!」

そして、顔面に頭突きを喰らわす。

「がばっ!!………」

手を離すと、チンピラは鼻血を噴いて倒れた。

あっ、と言う間にチンピラは兄貴格のチンピラ1人になっていた。

「さて………お前はどうする?」

「テ、テメェーーーーッ!!」

すると、兄貴格のチンピラは懐からドスを取り出し鞘から抜いた。

〈!! 危ない!!〉

「死にさらせーーーっ!!」

ドスを突きの体制で構えて、ハクヤに突進する兄貴格のチンピラ。

しかし………

「フッ………」

「え? なっ!?」

何とハクヤは、ドスを親指と人差し指で摘んで止めたのだった。

そのまま、ぺキッと音を発ててドスを圧し折る。

「ぬおっ!?」

そして、アイアンクローで兄貴格のチンピラを持ち上げる。

顔面の骨が軋んでミシミシと音を発てる。

「あががががが………!!」

「くたばれ………」

パッと手を放すと、ローリングソバットでぶっ飛ばす。

「アギャーーーーッ!!」

兄貴格のチンピラは、そのまま建物の壁にぶつかり、壁画と化した。

「フン………鬱憤晴らしどころか暇潰しにもならなかったか………」

〈あ、あの!!〉

「ん?」

いつの間にか近づいた五月が、ハクヤに声を掛ける。

〈ありがとうございました! 助けていただいて!〉

「………何か勘違いしているようだな。俺が奴等をぶちのめしたのは単なる暇潰しだ、お前を助けたつもりなどない」

お礼を言われたと言うのに、冷たい態度を取るハクヤ。

〈あの………お礼にご馳走させてください!!〉

「無用だ、俺は探している奴がいる」

〈そんなこと言わずに、ささ、どうぞ!!〉

「おい! やめろ!! 引っ張るな!!」

五月は立ち去ろうとするハクヤを強引に引き止めるのだった。











同時刻、ガイアセイバーズ基地………

「「「「「「侵入者?」」」」」」

作戦室で夕映の報告を聞くガイアセイバーズメンバー。

「見間違えかもしれませんが………先程、レーダーに反応がありました。反応からすると、PF1機だと思うんですが………」

「一瞬でしたし、学園都市防衛結界にも異常はありません」

「う〜〜〜ん………」

どうしたものかと頭を捻る機龍。

「1機だけだなんて、おかしくない?」

「いつもは、100から400機ぐらいで纏まって来てますし………」

アスナ達は懐疑的な声を挙げる。

「………とりあえず、警戒装置だけはフルにして、全員武装を。無人PFを各所に出撃できるように配備。ああ、それから、学園の警備員達にも警戒を強めるよう言ってくれ」

「「「「「了解!!」」」」」

てきぱきと作業に入るオペレーター組。

「いいんですか?」

ネギが不安げに言う。

「はっきりしない以上、向こうから動くのを待つしかないでしょう。ここのところ、連続の出撃で皆の疲労も溜まっていますし。それに………」

「「「「「「「それに?」」」」」」」

全員が、機龍に注目する。

「テストも近いですしね」

「ああ〜〜〜っ!! そうだった!!」

途端に大声を挙げるアスナ。

「すっかり忘れていたでござるよ………」

「アイヤー、マズイアルな………」

青い顔をする楓とクー。

「君達は、ガイアセイバーズの隊員である前に学生だ。勉学を疎かにさせる理由にはイカン」

「だ、大丈夫ですよ!! 2年の期末テストは1位をとったじゃないですか!!」

不安を振り払うように言うネギ。

「それじゃ、今日は全員解散とする………そう言えば、今日は給料日だったな………よし!! 今日の晩飯は俺が奢ってやる!! 中間テスト1位の前祝代わりだ!! 超包子に行くぞ!!」

「「「「「「「やった〜〜〜〜〜っ!!」」」」」」」

途端にはしゃぐアスナ達。

現金なものである。











「ったく………何をやっているんだ、俺は………」

結局、あの後………

さっちゃんファンの人達に店を修繕してもらい、ハクヤを強引にカウンター席に座らせ、五月は調理に取り掛かっていた。

〈そういえば、まだ名前をお伺いしてませんでしたね。私は四葉五月と言います。あなたは?〉

「………ハクヤ・ロウ」

〈ハクヤさんですか。いいお名前ですね〉

「フン………」

無愛想な表情を浮かべるハクヤ。

〈お待たせしました、どうぞ!〉

そんなハクヤの前にズラッと料理を並べる五月。

「フン………食うだけ食ったら、とっとと行かせてもらうぞ」

そう言って、ハクヤは無表情に料理に箸を付け始める。

しかし、一口食べて、表情を変える。

「!! 美味い!!」

思わずそう叫ぶと、ガツガツとがっつきだす。

あっ、という間に、出された料理は皿だけとなる。

「ふう〜〜〜………!!」

食い終わってから、ハッとするハクヤ。

(何やってるんだ!! メシなんかに気をとられて!! 俺は神薙を………)

〈あ、おかわりいかがですか?〉

「む………貰おう」

(………って!! そうじゃないだろ!!)

心の中で自分にツッコミを入れる。

ハクヤ・ロウは戦災孤児だった。

ヴァリム軍に拾われるまで、貧困と隣り合わせに生きてきていた。

満足に物が食えないことや、普通なら絶対口にしない物を食べたりして生きてきた。

そのため、本人に自覚はないが、おいしい料理という物にめっぽう弱くなっていたのだ。

〈………さっきの人達、大丈夫かな?〉

「何だ、あんな奴等の心配もするのか?」

不機嫌そうに言うハクヤ。

〈だって、血が出てたし………〉

「戦えば血ぐらい流す」

〈………冷たいんですね〉

悲しそうに言う五月。

「当たり前だ。戦いとはそういうものだ。敵は高みへ登るための足場に過ぎん」

〈高みに登って、それからどうするんですか?〉

「何?」

思いがけない質問に、虚をつかれる。

〈人を踏み台にして、高みに登ったとして、その後に何が残るんですか?〉

「…………」

閉口するハクヤ。

〈私の先生が言っていました。真の強さとは………自分のためでなく、他人のために力を揮えることだ! 守るための力は、何よりも強い! って〉

(守るための力? 分からん………一体、その力がどのように強いと言うんだ………)

相容れない考えに頭を悩ませる。

「………その先生と言うのは、相当な甘ちゃんなんだろうな」

〈そんなことないですよ。結構、規律とかに厳しくて、酷いことをすれば指導もされますし………まるで、軍人みたいな人ですよ〉

「!! 軍人だと!?」

ハクヤはその言葉に反応する。

「そいつの名は!?」

と、そこへ………

「おーい! 四葉くん!!」

ガイアセイバーズ一同を引き連れた機龍が現れた。

〈あ! 機龍先生〉

「給料が出たんでな。皆に奢ろうと思って来たんだが、席空いてるかい?………って!! お前は!?」

「見つけたぞ………神薙!!」

座っていた椅子を倒しながら立ち上がり、機龍に向かって言い放つハクヤ。

何事かと、他の客が注目する。

「………そう言えば、教師をしているという話を聞いたが………まさか本当だったとはな」

「ハクヤ・ロウ………何をしに来た!!」

油断なく構えを取って言う機龍。

後ろにいたジンとサクラも、その後ろのネギ達を庇うように立つ。

〈え? あの………どういうことですか?〉

「………こういうことだ!!」

瞬時に右手の鎖を解き、機龍に伸ばすハクヤ。

「くっ!!」

左腕を巻き取られる機龍。

「「リーダー!!」」

「「「「「機龍(さん)(先生)!!」」」」」

それぞれに得物を構えるジン達とネギ達。

「あの時の決着………今着けようじゃないか!!」

「………いいだろう! ただし、場所は変えさせてもらうぞ!!」

そう言って、機龍は開いた右手で鎖を掴むと、ハクヤを引っ張って、その場を後にする。

「何だ何だ!?」

「何かの宣伝か?」

幸い、客は映画の宣伝とでも思ってくれたらしい。

「ど、どうしましょう!? ジンさん、サクラさん!!」

「落ち着け………とりあえず、俺とサクラが後を追う。君達は他に敵がいた場合に備えて、基地で待機していてくれ」

「「「「「了解!!」」」」」

ジンとサクラは機龍の後を追い、ネギ達は来た道を戻っていった。

その時、誰も気づかなかった………

五月が店から消えていたことに………











日が落ちて、人気がすっかりなくなったダヴィデ像の広場まで移動した機龍とハクヤ。

「ここなら、思いっきり戦えるな………」

左腕に絡まった鎖を外すと、二刀を抜く機龍。

「ああ………雌雄を決しようじゃないか!」

外れた鎖を構え直すハクヤ。

ジリジリと距離を詰める。

「チェェェストォォォォォォォーーーーー!!」

先に仕掛けたのは機龍。

腕を交差させて刀を脇に構え、一気に距離を詰めて斬り掛かる。

「ふっ!!」

それをジャンプしてかわすと機龍の頭に逆立ちするハクヤ。

「何!?」

「ハッ!!」

そこから勢いをつけて、顔面に膝蹴りをお見舞いする。

「ぶっ!!」

よろけて2、3歩下がる機龍。

だが、すぐに体勢を立て直し、二刀の峰でハクヤの首を挟み込む。

「ごっ!?」

「おりゃあ!!」

そして、その状態でハクヤを投げ飛ばす。

「ぐあっ!!」

背中から地面に落ちるハクヤ。

しかし、ばっと起き上がり、鎖を鞭のように振る。

「フッ!! ハッ!!」

二刀で巧みに弾く機龍。

「甘い!!」

そう言うと、ハクヤは機龍の刀に鎖を絡ませ、一気に鎖を引っ張る。

意表を衝かれた機龍の手から刀が離れ、空中を数回転した後、地面に突き刺さる。

「あ!! しまった!!」

「貰った!!」

透かさず、今度は鎖を機龍の首に巻き付け、自分の方に引き寄せる。

「のわっ!?」

「むんっ!!」

引き寄せた機龍に左ボディブローを叩き込む。

「ごふっ!!」

身体がエビのように仰け反り、仰向けに倒れる機龍。

ハクヤはそんな機龍の胸部を足で踏み付け、右手の鎖を引く。

鎖が締まり、ギチギチと音を発てる。

「ぐっ!!………あ………が………」

機龍の顔が徐々に青くなっていく。

段々と意識も遠退く。

「終わりだな………神薙!!」

トドメを刺そうと右腕に力を入れようとしたその時!!

〈やめて!!〉

突然、叫び声が響いた。

「!? 何!!」

驚いてハクヤが声のした方向を見ると、調理服姿のままの五月が走って来ていた。

「………火事場のク○力ーーーー!!」

その隙を衝いて、機龍はド根性でハクヤの足を掴んで、持ち上げながら一気に起き上がる。

「何!? 馬鹿な!!」

そのまま、ジャイアントスイングのように回転して真上へと放り投げ、それに追従するように飛ぶとハクヤを肩車するように捕まえる。

「九○城落地!!(ガ○ロンセンドロップ)」

そして、逆さまになると、ハクヤを脳天から地面に叩きつける。

「ぐわっ!!」

素早く離れると、刀を回収して起き上がろうとしたハクヤの眼前に突き付ける。

「終わりだ………」

「チッ!!………とっととトドメを刺せ………」

「いい覚悟だ………」

機龍は右手の龍虎を振りかぶる。

と………

〈やめて!! 先生!!〉

「!? 四葉くん!!」

「お前!?」

五月がハクヤを守るように、2人の間に立って両手を広げて、機龍を静止する。

「どけ!! 戦いに敗れた者には、死あるのみだ!!」

〈どうして負けたら、死ななきゃならないんですか!?〉

「四葉くん………それが戦士と言う者だ………さあ! どくんだ!!」

〈そんなの分かりません!!〉

あくまで2人の間に立つ五月。

〈お願いです! 先生!! この人は私を助けてくれたんです!!〉

「え?」

「まだそんなことを………言ったはずだ!! お前を助けた覚えはない!!」

〈例えそうでも………助けてくれたのは本当です!!〉

「…………」

それを聞いて機龍は、少し考えるような素振りをすると、二刀を納めた。

「!? 何の積もりだ!!」

「………今日のところは、四葉くんに免じて見逃してやる………行け!!」

「くっ………後悔するなよ!!」

バッとその場から走り去るハクヤ。

〈………ハクヤさん〉

その背中を見ながら呟く五月。

………その表情は、とても悲しそうだった。











シロヤシャに乗り、急速に麻帆良を離脱するハクヤ。

頭の中を五月の言葉が反復する。

(人を踏み台にして、高みに登ったとして、その後に何が残るんですか?)

「くっ………俺は………俺は!!」

苛立ち気にバーニアを全開にする。










戦いに餓えた男に、一時の安息を与えた少女………

果たして、その思いは通じるのか?










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