第68話


ガイアセイバーズ基地、作戦室………

「………以上で、報告を終わるっと。よし、終わった」

学園長に提出する報告書を纏め終わる機龍。

「お疲れ様です、リーダー」

「後の処理は私達がしますから、先に帰っててください」

ジンとサクラに、帰宅を促がされる。

「良いのかい?」

「お前、ここのところ働き詰めだったじゃないか」

「少しは休んでくださいよ」

レイとレッディーが代わって答える。

「しかし………」

「機龍、休める時に休んでおくのも指揮官の勤めだぞ」

「そうだな。指揮官が過労で倒れたなんて事になったら洒落にもならんからな」

アーノルドとゼラルドも、機龍に休むように言う。

「………分かった、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「お疲れ様でした、リーダー」

去り際に敬礼してきたシリウスに敬礼し返しながら、機龍は作戦室を後にした。

「………とは言ったものの、1人だけ休むのはやはり気が引けるな………トレーニングでもしていくか………」

そのまま機龍は、トレーニングルームへと足を向けるのだった。











トレーニングルーム………

「ん? 先客か?」

トレーニングルームを訪れた機龍は、スパーリングエリアに先客がいるのを見つける。

ネギと小太郎だった。

「やあ、2人もトレーニング………」

エリアに入りながら話しかけようとして、機龍は固まった。

何故なら、ネギが槍術用の練習槍を両手に1本づつ構えた二刀流、小太郎が木刀を片手に3本づつ計6本構えているという異様な光景を目にしたからだ。

「待たせたな………」

心なしか保○総一朗ボイスになっているネギ。

「随分遅かったじゃねーか」

対する小太郎の声も中○和哉ボイスになっている。

そして、2人は戦闘態勢を取った。

「参るっ!!」

「Comeon!!」

掛け声と共に突撃する2人。

すると!!

ネギの槍の先端が燃え上がり、小太郎の木刀の刀身には稲妻が迸った。

「うおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!! 烈火っ!!」

ネギが、両手の燃え盛る槍で連続突きを繰り出す。

「Ha! MAGNUM STEP!!」

それに小太郎は、右の稲妻を纏った木刀3本で突きで繰り出して応戦する。

炎と雷がぶつかり合って飛び散る。

「うおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

「ハアァァァァァーーーーーーーーっ!!」

そのまま2人は激しく得物をぶつけ合う。

ますます炎と雷が飛び散る。

「うわっ!! オイ、2人供!! ちょっと、ストップ!! ストップ!!」

流石に呆然としていられなくなったのか、機龍が2人に静止を求める。

「あれ? 機龍さん?」

「あん? 何時の間に来たんや?」

機龍の存在に気づいて、得物を納める2人。

「さっきからだけど………2人供、妙な武術を使うな」

「ああ、実はコレ………」

「ゲームなキャラの真似なんや」

「ゲームのキャラ?」

「これです」

そう言ってネギが何処からともなく取り出したのはP○2用のゲームソフトだった。

「これは?」

そこには、戦国絵巻のようなイラストと共にタイトルが描かれていた。

「勇輝さんが進めてくれたんです」

「面白いからやってみろってな」

「アイツが?」

不安げに、ソフトのタイトルを見てみる機龍。

そこには『戦国BAS○RA2』と書かれていた。

「戦国歴史ものかい?」

「そうだと言えば、そうですし………」

「そうじゃないと言えば、そうじゃないし………」

「何だ? ハッキリしないな?」

要領を得ない2人の答えに怪訝な顔をする機龍。

「まあ、1回プレイして貰えば分かるかなと」

「面白いで、機龍の兄ちゃん」

機龍にプレイしてみることを進めるネギと小太郎。

「う〜〜ん………じゃあ、借りても良いかな?」

「はい、どうぞ」

ネギは機龍に『戦国BAS○RA2』を手渡した。

「ありがとう。早速プレイしてみるよ」

機龍はそう言って、スパーリングエリアを後にした。











翌日の朝………

通学路にて登校途中のネギ、アスナ、このか、刹那の何時ものカルテット………に宮崎のどか。

最近、のどかはネギ達と一緒に登校するようになっていた。

理由は………言わずもがなだ。

と、その途中、

「おはよう、元気か?」

「あ、機龍さん!」

「「「「おはようございます、機龍先生!」」」」

同じく登校中だった機龍が合流した。

「ネギくん。昨日借りたあのゲームだけど………」

機龍は昨日借りた『戦国BAS○RA2』の話をしだす。

「ああ、どうでした?」

「いや〜、どうもこうも、すっかりハマッちゃったよ」

「そうですか」

そのまま『戦国BAS○RA2』の話題に没頭しだす2人。

アスナ、このか、刹那、のどかの4人はわけが分からず首を捻るのだった。











その日の放課後………

アスナ、このか、刹那、のどかは、ネギを誘って一緒に帰ろうとしたが、迎えに行った先の職員室にネギの姿はなかった。

「おかしいわね………」

「機龍先生もおらへんかったからな〜」

「何かあったんでしょうか?」

怪訝な顔を浮かべるアスナ、このか、刹那。

「アレ?」

と、のどかが何かに気づいたような顔をする。

「ん? どうしたの、本屋ちゃん?」

「今、屋上の方からネギせんせーの声がしたような………」

「屋上?」

「行ってみましょう」

4人は上の方へと登って行った。

そして、屋上へ出る扉の前に辿り着く。

すると、扉の外から微かだが、確かにネギと機龍の声が聞こえてきた。

「あ、やっぱり、ネギせんせーの声です」

「機龍先生もおるみたいやなー」

「何をしているんでしょう?」

「ネギー、機龍先生。いるのー?」

アスナは、そう言いながら屋上への扉を開いた。

そして、最初に目にしたものは………

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「ふげぼっ!!」

機龍の左ストレートを喰らって、ブッ飛ばされ地面をバウンドするネギの姿だった。

「「「「へっ?」」」」

思わず呆然となる4人。

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

と、ネギは素早く立ち上がり、機龍にドロップキック!!

「のおっ!!」

よろける機龍だったが、こちらも素早くネギの両足を掴んでジャイアントスウィングを掛ける。

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

2人はしばらくそう叫びながらドガッバキッと殴り合う。

「「「「……………………」」」」

その光景に4人は言葉を失い、ただ呆然とするのだった。











そして、日が暮れかけた頃………

機龍とネギは………

「幸村ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

「お館様ぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

まだやっていた!!

「………ハッ!! ちょ、ちょっと!! なにやってんのよ、2人供!!」

ここで、やっと我に返ったアスナが、2人に声を掛けた。

「む? 神楽坂くん?」

「あれ? アスナさん。どうしたんですか?」

「「「「それはこっちの台詞よ(や、です)」」」」

4人全員が声を揃えて叫んだ。

「一体全体何をやってたのよ!!」

「いや、ちょっと………」

「ゲームの再現を………」

「「「「????」」」」

4人は首を捻るのだった。











その日の夜、ガイアセイバーズ基地、作戦室………

夜間なので、3−A関係者はおらず、ジンとサクラとパトロール、レイとアーノルド、シリウスは機体整備のため格納庫にいるので、作戦室には機龍、レッディー、ゼラルドだけが残っていた。

「そう言えば………機龍くん」

「ん? 何ですか、レッディーさん?」

「アスナちゃん達が話してるのを聞いたんだが………君が今日の放課後、屋上でネギくんとわけの分からないこと叫びながら殴り合ってたって………」

「何だ、もう噂になってるんですか?」

「オイオイ、ホントか? その話?」

ゼラルドも寄って来る。

「いや、実は………」











それから暫くたった、ある日曜日のこと………

チュドォォォォォーーーーーンッ!!

「な! 何よ!?」

「一体何ですの!?」

突然、響いてきた爆発音に女子寮にいた3−A生徒達は大慌てで窓を開け、外の様子を窺った。

見ると、麻帆良大学工学部研究所の辺りから黒煙が上がっていた。

「麻帆良大学工学部研究所が………」

「事故か!? テロか!?」

「確か、超とハカセが今朝からあそこに!!」

「行ってみよう!!」

誰が言ったかは知らないが、元よりお祭り騒ぎが好きな3−A。

全員が、野次馬根性全開で現場へと向かった。











麻帆良大学工学部研究所………

燃え盛る炎が黒煙を上げ、まだまだ各所で小爆発が起こっていた。

「うわ〜〜〜っ!! 凄い!!」

「超さんとハカセちゃん、無事やろか!?」

このかが、そう言った時………

「み、皆さん………」

「早く逃げるヨ………」

ボロボロになったハカセと超が、炎の中から這い出てきた。

「超りん!!」

「ハカセ!!」

慌てて駆け寄る3−A生徒達。

「大丈夫!?」

「一体全体どうしたっていうの!?」

「そ、それが………」

ハカセが事情の説明をしようとしたところ………

ガシャン、ガシャンという音が、炎の中より聞こえてきて、黒い影が揺らめいた。

「な、何!?」

そして、炎の中から現れたのは………

[コウゲキ………コウゲキ………コウゲキ………コウゲキ………]

田中さんの軍団だった!!

「「「「た、田中さん!?」」」」

「正確には、T−ANK−α3改。改良型田中ネ。改造実験中に手違いで暴走したヨ」

「早く逃げてください………暴走中の田中さんは、見境なしに攻撃を加えます」

しかし、時既に遅し!!

田中さん軍団は、3−Aの姿を認めると、一斉に口部ビーム砲を開放した。

「「「「「へっ!?」」」」」

そして、一斉に発射した!!

「「「「「キャアァァァーーーーーーーッ!!」」」」」

一直線に3−Aへ向かうビーム。

だが、着弾寸前!!

突如、黒い影が割って入り、大剣の横腹でビームを跳ね返した。

「大丈夫か?」

「「「「「ジンさん!!」」」」

さらに、そこへ、軍用カラーリングのハマーが乗りつけ、サクラ、レイ、アーノルド、シリウスが飛び降りてきた。

「皆、大丈夫!?」

「通報を受けて来てみれば………」

「どうしてこう中々………」

「大変な状況ですね………」

半分驚き、半分呆れながら全員が得物を構える。

「あれ? 機龍さんやネギは?」

「レッディーさんにゼラルドさんもいないよ?」

「小太郎君も」

「何か、準備したらすぐ来るって言ってたんだが………」

[コウゲキ………コウゲキ………コウゲキ………コウゲキ………]

話す時間も与えず、田中さん軍団は攻撃に出る。

「くっ!! 私が代わって指揮を取る。全員各個に撃破せよ!!」

「「「「了解!!」」」」

アーノルドの号令に従い、分散して田中さん軍団を撃破に掛かる。

しかし、田中さん軍団は次から次へと湧いて出てきて、キリがなかった。

「ええい!! コイツ等、一体何体いるんだ!!」

「………2500体ほど………造ったネ」

「造りすぎだ!! 馬鹿ヤロウ!!」

思わず怒鳴ったシリウスだったが、その瞬間隙が生まれ、1機の田中さんが肉薄する。

「!! やべっ!!」

口部ビーム砲が展開される。

だが!!

閃光が煌いたかと思うと、シリウスに襲い掛かろうとした田中さんが真っ二つに斬られた。

「えっ!?」

「またせましたね………」

「その声は、レッディー………さん?」

駆けつけてくれたレッディーの姿を見て、思わず固まるシリウス。

何故ならレッディーは、『戦国BAS○RA2』の上○謙信になっていた。

「れ、レッディーさん?………」

「びしゃもんてんのごかごは、われにあり………しんざんっ!!」

そう言いながら、レッディーは瞬動で田中さん軍団の一角を通り抜けると、いつの間にか抜刀していた刀を頭上に掲げ納める。

すると、通り抜けた一角の田中さん軍団が凍りついたかと思うと細切れになった。

「ふふふ………おいでなさい」

周りに薔薇を咲かせながら挑発するレッディー。

[ピーガガガガ!!]

挑発に乗った田中さん数機が突撃する。

「しんえんっ!!」

しかし、今度は居合い抜きで衝撃波を放ち、胴から分断した。

ただいまの攻撃………上○謙信、638Hit!!

思わぬ強敵の出現に浮き足立ち始める田中さん軍団。

と!!

今度は、軍団の中心に、突如土煙が上がる。

驚いた田中さん軍団が注目すると、そこには同じく『戦国BAS○RA2』の伊○政宗と片○小十郎になっている小太郎とゼラルドが立っていた。

「Ha! 派手なPartyだな!!」

「政宗さま………ここは慎重に………」

「フン! つまんないこと言ってんじゃねーぜ、小十郎………Let’s Show Time!!」

そう叫んで、小太郎は六爪流に構え、田中軍団へと突撃して行った。

「まったく………しょうのないお方だ………」

そう言いながらも、フォローに入るゼラルド。

「うりゃっ!! おりゃっ!!」

次々と田中さん達をスクラップにしていく小太郎。

と、1機の田中さんが背後から奇襲を仕掛けようとする。

だが!! 

割って入ったゼラルドに斬り捨てられた。

「ご油断めされるな! 政宗さま!!」

「あん? 俺の背中はお前がもつんじゃなかったのか?」

「勿論です! この小十郎、政宗様を守って死ぬと既に決めている!!」

「よく言った! 小十郎!! 着いて来い! 怪我するんじゃねーぞ!!」

2人が構えを取ると、刀に稲妻が帯電する。

「HELL DRAGON!!」

「失せろ!!」

小太郎は巨大な雷球を撃ち出し、ゼラルドは稲妻を纏った高速突きを繰り出した。

ただいまの攻撃………伊○政宗、654Hit!! 片○小十郎、612Hit!!

遂に、田中さん軍団は半分にまで減った。

形勢不利と判断したのか、残った田中さん達は撤退し始める。

「あ! イカン、逃がすな!!」

レッディー達の戦いに思わず呆然としていたアーノルド達が慌てて追撃に入ろうとする。

と、さらにそこへ………

「最強! 最強! 俺様、最強!!」

またも『戦国BAS○RA2』の宮本○蔵の格好をした勇輝が現れた!!

「な!? 狛牙!?」

「おりゃ! おりゃ! おりゃ〜〜〜〜!!」

勇輝は、右手の櫂と左手の木刀で田中さん軍団を袋叩きにする。

そしてトドメには、自らが頭から突っ込んで行った。

またも大量に撃破される田中さん。

接近戦は不利と思った田中さん軍団は、距離を取って口部ビーム砲を展開する。

しかし!!

「おりゃ! おりゃ! おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

何と勇輝は、投石攻撃をし始めた!!

投石が当たって、頭が砕け散ったり、身体に穴が空いたりしていく田中さん軍団。

「へっ! ばーか!!」

やや卑怯だが、効果的な戦い方だ。

ただいまの攻撃………宮本○蔵、697Hit!!

既に3分の2が撃破されてしまった田中さん軍団。

そこへ追い討ちを掛けるように現れたのは………

馬の上にしゃがみ込んで乗っているやっぱり『戦国BAS○RA2』の真○幸村の格好をしたネギと、2頭並んだ馬に片足ずつ乗せて仁王立ちして乗っている同じく『戦国BAS○RA2』武○信玄の格好をした機龍だった。

「お館様!! 参りましょう!!」

「うむ! 行くぞ、幸村!!」

「「とあっ!!」」

2人は同時に馬から飛び降り、ネギは両手に槍を構えて地に降り立ち、機龍は背負っていた軍配斧を地面に突き立て、その上にさらに仁王立ちした。

「うおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!! これ以上はやらせん!! 天!! 覇!! 絶槍!! 真○幸村………参る!!」

槍の刃を燃え上がらせながら振り回し、ポーズを取って雄雄しく名乗りを挙げるネギ。

「わしの前に出るとは、良い度胸だ!! おりゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

気合の掛け声と共に軍配斧の上から飛び降り、土煙を上げながら着地する機龍。

「わしが甲斐の虎…………武○信玄よ! おりゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!………来い!!」

そして、軍配斧を手に取って一振りし、バッと構えて名乗りを挙げる。

田中さん軍団は、残り総勢でネギと機龍に襲い掛かる。

「紅蓮脚!! うおおおぉぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

それに対してネギは、槍を地面に突き刺し、横大車輪蹴りで次々に田中さんを破壊していく。

「疾きこと風の如く!!」

そして機龍は、自らを独楽の様に回転させながら軍配斧を振り回し、田中さんをブッタ切っていく。

「うおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」

「おりゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」

そのまま雄雄しく………というか暑苦しく敵を倒して行く。

ただいまの攻撃………真○幸村、731Hit!! 武○信玄、758Hit!!

「「「「「「「…………………」」」」」」」

最早何も言えなくなる3−Aとジン達。

結局………田中さん軍団は、婆娑羅(バサラ)大名と化した機龍達によって鎮圧されたのだった。










因みに………

機龍達が元に戻ったのは、1ヶ月後だった………










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