「…………」
「…………」
沈黙の中、少女と少年が向き合っていた。
少女は腰を掛けて座った姿勢で、少年はその目の前で正座している。
高校の制服を着ていなければ、小学生と間違えてしまいそうな華奢で小柄な少女と、痩身ながらも日に焼けて、半そでのYシャツから引き締まった腕を覗かせている少年。
「…………」
「…………」
息が詰まるような狭い空間で、二人は黙ったまま向かい合っていた。
その沈黙を破ったのは、少女の方だった。
「景行(かげゆき)君」
凛とした声をほんの少しだけ震わせながら、小柄な少女が目の前で正座をしている少年を見据えた。
「……な、なに? 命(みこと)ちゃん」
景行と呼ばれた少年が、日に焼けた顔を上げた。その表情は緊張で固まっており、声は命と呼ばれた少女よりも遥かに震えている。
そんな彼を見据え、搾り出すように命が言った。
「本当に、するのか?」
「……ごめんなさい」
景行は思わず頭を下げた。
「ああ、いや、怒っているわけじゃない」
彼のその様子に命が弁解する。
一時間ほど前に彼に言われた“お願い”が、あまりにあまりな内容だったので、つい責めるような口調になってしまった。
「別に、怒っているわけじゃないんだ。ただ、こんなの普通じゃないから、つい、な」
「……うっ」
頭を下げたまま、景行が呻いた。普通じゃないのは本人が一番良く分かっている。
「ご、ごめん。……そうだよね、普通じゃないよね……」
「うん。はっきり言って、普通じゃないな。あぶのーまるだ」
「う……」
自分の“お願い”が普通じゃないのは分かっているが、面と向かってはっきり“特殊”と言われると、結構凹む。
……やはりこんな“お願い”は撤回したほうが良いのだろうか?
「ごめん、その……命ちゃんが嫌なら止めても……」
「…………」
顔を伏せたままの景行に、上から沈黙が返ってきた。迷っているような雰囲気を感じる。いつも即断即決の彼女にしては、珍しいことだと言えた。
「…………」
「…………」
再び場を沈黙が支配する。
狭い所に二人でいるため、余計に圧迫感を感じ、息苦しいほど空気が重い。
しばしの沈黙のあと、命が口を開いた。
「景行君」
「……はい」
思わず敬語で返事をしてしまう景行だった。
「顔を上げてくれ」
「……はい」
まるでいたずらが見つかった子供のような心境で、景行が目の前に座っている命を見上げた。
彼女は若干頬を紅く染めているが、表情は真剣そのものだった。このまえの剣道の試合の時よりも真剣な表情かもしれない。
「景行君は、見たいんだな?」
「え? えっと、その……」
真剣な顔で問いつめる命に、景行は気圧され思わず口ごもってしまう。
「正直に答えてくれ。見たいんだな?」
「……見たいです」
「ハァ……」
正直に答えると、途端にでっかい溜め息が降ってきた。
世の中の全てを悲観したようなその溜め息に、景行は反射的に「ご、ごめん」と謝ってしまう。
責めるような視線を向け、ため息混じりに命が言った。
「なんでそんなに見たいんだ、きみは……。私がおしっこしてる所なんか……」
言いながら、命は現在のこの状況の原因となった出来事を思い出していた。
* * * * *
「誕生日のプレゼントは何が望みだ? なんなら私を丸ごと自由にしてくれてもいいんだぞ?」
付き合い始めて半年になり、自分はもっと深い関係になるのを望んでいるのに、未だにキス以上のことをしてくれない彼に焦れて、そんなことを言ったのがそもそもの始まりだった。
「いや、命ちゃん。丸ごとって……」
「うん、丸ごとだ。きみが望むことをなんでもしてあげよう。いや、させてくれ」
学校の帰り道、景行の腕を抱きしめて下から見上げながら命が言った。
言い方はオーバーだが、本心だった。
半年の交際期間を経て、自分はより一層彼に惹かれていったし、彼の方も自分に惹かれていっているのを命ははっきりと感じていた。お互いにより強く惹かれて行く道程は、とても幸せな日々で、命は心がどんどん満たされていくのを感じていた。
心が満たされた恋人たちは、当然、肉体的にも満たされようとするだろう。命が彼ともっと親密な関係を築くために、肉体的な繋がりを求めるようになるまでさして時間は掛からなかった。だが、彼はそんな命の誘いには応じてくれず、誘う度に顔を真っ赤にして「まだ俺たちには早いと思う」とか「俺は命ちゃんの身体が目当てじゃ無いから」とかなんだかんだと逃げられてしまっていた。
だから、こういう風に直球を投げたら、彼は顔を真っ赤にして慌てるだろうな、と予想していた。
しかし、景行の反応は命の予想とは少し違ったものだった。
「……本当に、なんでもいいの?」
顔を真っ赤にしているのは予想通りだったが、逡巡するように黙り込んだ後、景行が命の顔色を伺いながら真面目な顔で聞いてきた。
「うん。なんでもだ」
その反応に少し驚きながらも命が頷いた。
「……本当に?」
「うん」
「ほんっとーに、なんでもいいの?」
「くどいな、きみらしくない。なんでも、どんとこいだ」
「…………」
「…………」
不安げな、探るような景行の視線を、命が受け止める。
しばし見つめあった後、おずおずと景行が口を開いた。
「じゃあ……」
* * * * *
「確かになんでもするとは言ったが、まさか、おしっこしてる所が見たいと言われるとは思いもしなかったな」
命が便器の蓋に座り、その前に景行が正座している。
「や、その……ごめん」
さっきから何回目になるか分からない「ごめん」を繰り返す景行に、命がかぶりを振った。
「いや。なんでもすると言ったのは自分だ、気にしないでくれ。ただ、生徒会会長で陸上部キャプテンのきみが、まさかこんなあぶのーまるな性癖の持ち主だったとは思わなかっただけだ」
「うっ」
ぐさっと、胸に矢が突き立てられた。
こんな言い草だが、命に悪気は無い。思ったことをそのまま正直に口にするタイプなのだ。景行は命がそういう性格なのは分かっているが、やはりぐさっと来るものは来るわけで。
背中にどんよりとした縦線を背負っている景行を知ってか知らずか、命がいつもの平坦な口調で問いかけてきた。
「きみが望むことを叶えられるのは、私の至上の喜びでもある。だが、1つ確認させて欲しい」
「……なに?」
こんなお願いをしておいてなんだが、何か答えにくいことを聞かれるんじゃ無いかと、景行は緊張して少し身構えてしまう。
身体を硬くしている景行に、命が真剣な表情で口を開いた。
「きみは、私がおしっこをする姿を見て、興奮するんだな?」
「え!? あ、その……」
直球で聞かれた。
「私がおしっこをする姿を見て、性的に興奮するんだな?」
「えっと、なんというか、その……」
しどろもどろになっている景行に、命が更に問い詰める。
「きみは、私がおしっこをしている所を見て、性的に刺激を受けるんだな? 興奮するんだな?」
「……はい、すみません興奮しますごめんなさい」
勢いに負けて、思わず敬語で謝りながら答えた。
「もう謝らないでくれ。きみがどれくらい私のおしっこに期待しているのか、ソレを見れば分かる」
言いながら、命がソレに視線を下げる。
景行が釣られて視線を落とすと、制服の股間がこれでもかというほど盛り上がっていた。
「あっ! いや、これはっ」
「まだおしっこしていないのにそんなに大きくしてるなんて、どれだけ見たいんだ、きみは」
溜め息を付くような口調で命が続ける。
「念のために言っておくが、きみが私に性的な興味を抱いてくれているのは、物凄く嬉しいことなんだぞ? 正直なところ、私は背が低いし、胸もお尻も貧弱で、セクシャルな魅力に欠けているのは自覚している。だからきみが、男性器をズボンの上からでもはっきりくっきり分かるほど勃起させているのは、非常に嬉しいことなんだ」
「う……」
あまりにはっきり男の生理現象を口にされ、景行の方が赤面してしまう。
「きみのその男性器の反応は、非常に嬉しいことなんだが、ただ、その対象が“おしっこ”というのが少し、いや、かなり複雑ではある」
「う……」
盛り上がった股間を両手で抑えながら、景行は喉まで出かかった「ごめん」を飲み込んだ。
「そんな顔をしないでくれ。きみが私で興奮してくれるのは、本当に嬉しいことなんだ。……だから」
一旦切ると、覚悟を決めるかのように顎を引き、続ける。
「だから、私がおしっこをしてるところ、ちゃんと見せるから……。いいか? これはきみがすごく興奮してるからこそ、喜んでくれるからこそ、見せるんだぞ? 言っておくが、本当に、物凄く、恥ずかしいんだからな?」
「……はい。肝に命じます」
座を正し、背筋を伸ばして景行が答えた。
命の目には、心なしか、股間の膨らみがより大きくなったように見えた。
それを目にし、どくん、と命は心臓の鼓動が早まったような気がした。
彼が、興奮している。
今までどんなに誘ってもキス以上してくれなかった生真面目な彼が、自分に性的に興奮している。
そう考えると、思わず息が荒くなった。景行の興奮が伝染したかのように、胸がドキドキして腰が落ち着かなくなった。
逸る腰を浮かし、便器の蓋を上げてから、手を制服のスカートに差し入れる。
一瞬の躊躇の後、ショーツを太ももの中ほどまで下ろし、便座に腰を下ろした。
スカートの奥を隠すように、細い太ももを閉じ、スカートの前を両手で押さえる。
「じゃあ、するぞ……?」
確認するかのように顔を上げたところで、景行が口を挟んだ。
「あの、命ちゃん」
「ん、なんだ?」
「えっと、出しているところを直に見たいんだけど……」
「なっ……!」
さすがに絶句した。
「じ、直だとっ!?」
「うん。だから、パンツを下まで下ろして、スカートも捲って欲しいんだ」
今までのおどおどした態度は何処に行ったのか、景行が平然とした口調で指示出しをしてきた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! さすがにそれは……」
おしっこしている姿を見られるのだけでも恥ずかしいのに、おしっこを出しているところを直に見せろだなんて。いくら大好きな彼の望むことでも、恥ずかしすぎる。
「なんでもしてくれるって言ったよね?」
「それはそうだが、でも……」
「命ちゃん」
「う……」
真剣な表情で景行が見つめてくる。まるで今までと立場が逆転したかのように命が呻いた。
しばし見つめあい、やがて絞り出すように命が口を開いた。
「景行君は、直に見れたほうが、興奮するのか……?」
「うん」
即答だ。
「でも、直なんて、そんな……」
「でも見たい。命ちゃんがおしっこ出している所を直に見たい」
「う……」
真剣な表情で言ってくる景行に、命は言葉につまった。物凄く真剣だ。自分が一目惚れした、生徒会会長の立候補者演説の時よりも真剣なのではないだろうか。
「命ちゃん。俺、今すごく興奮してる。なんでか分かる? 命ちゃんのおしっこを直に見れると期待してこんなに興奮してるんだ。それくらい、俺は命ちゃんがおしっこをしてる所を直に見たい。命ちゃんが直におしっこしてる所を見れるなら、他に何もいらない。それくらい見たいし、興奮してる」
おそらく、極度の興奮で頭のネジが少しトンでいるのだろう。真剣な表情で景行が訴えてくる。内容はとんでもなく変態だが、口調は無駄に男らしい。
それが命には効果絶大だったようだ。
「……分かった。景行君が私で興奮するのは、私にとっても本望だ」
自分に言いきかせるように頷き、太ももの中ほどまで下ろしたショーツに手をかけ、膝下まで下ろして行く。景行の視線も、ショーツに合わせて下がって行く。やがて、純白のショーツが紐のようにくるまって足首まで落ちた。
続けて、スカートだ。プリーツスカートの前を両手で掴み、震える手で捲って行く。
捲くりながら、彼の様子を見ると、瞬きもせずに股間を凝視していた。
ぞくりと、背筋が震えた。それは不快な震えではなく、歓喜の震えだった。
彼が凝視している。スカートで隠れた暗がりを彼が凝視している。スカートが捲れて行き、徐々に明るくなっていくその場所を、彼が凝視している。
彼の様子とその視線に、命は背筋だけでなく腰までもぞくぞくと震えた。彼が興奮しているという事実が、命を興奮させ、羞恥心を徐々に薄れさせていった。
ほどなくして、スカートが完全に捲れ上がり、景行はその光景に息を飲んだ。
真っ白で華奢な腰とそこから伸びるほっそりとした太もも。細い太ももは、ぴったりと閉じているのにもかかわらず、股間との間に逆三角形の隙間が出来ている。
その隙間のせいで、普段は下着とスカートに隠れている所が丸見えになっていて、景行は思わず凝視してしまう。
羞恥心からか、命が片膝を少し上げ太ももを重ねるようにして隙間を無くし、丸見えになっている股間を視線から隠そうとしている。その仕草が、余計に景行の劣情を煽った。
捲り上げたスカートのウェスト部分から、ブラウスの裾が少しはみだしている格好も、恐ろしく卑猥に見え、思わず身を乗り出すようにして凝視してしまう。
その視線を感じ、命も自分の息が荒くなっていくのを自覚した。腰が自然にもじもじと揺れ、お腹の奥が落ち着かなくなってくる。
命のもじもじと揺れる細い腰は、景行の視線を更に釘付けにさせた。景行の目には、まるで誘っているかのように見えて、既に痛いくらい勃起している股間が更に大きくなったような気がした。
「……命ちゃん、脚、開いて」
「……ん」
景行はほとんど忘我状態のまま声を掛け、命もそれに従った。
閉じられた太ももが開かれ、命の股間が正面から目に飛び込んできた。
その滑らかな下腹部から股間のラインに、景行は思わず息を飲んだ。
「……うん。よく見える。……出していいよ」
「……うん」
命は、羞恥心と興奮の入り混じった上ずった声で頷き、下腹部に力を込めた。
膀胱に意識を集中しているためか、ぺたんと痩せたお腹が呼吸に合わせてへこんだりふくらんだりしている。
その光景に、景行は喉が焼けるほどの興奮を覚えた。今まさにおしっこを出そうとしている様は、見ているだけで射精してしまいそうなほど、卑猥で、いやらしくて、扇情的だった。
「……んっ」
命がくぐもったような声を上げたのと同時、きれいに閉じられた割れ目から小水が噴き出した。
2度3度、断続的に控え目に噴き出した後、シャアアア……と音を立てて出始めた。
狭いトイレに排尿の音が響き、やがてアンモニアの匂いが立ち上ってきた。
命は、景行に真正面からおしっこを出している所を見られ、音まで聞かれ、挙げ句の果てに匂いまで嗅がれている現状に顔が沸騰するほどの羞恥心を覚えたが、同時に興奮もしていた。
なぜならば、彼がその様子を身を乗り出すようにして凝視しているからだ。
生真面目で、品性方向で、時には男らしい彼が、完全に欲情した目で自分の股間を凝視している。
彼のふうふうと荒い息が、敏感な下腹部にあたっているように感じてしまい、腰がぞくぞくと震えた。
「……ん、ふ……はあぁぁ……」
永遠に続くかと思われるほど長く感じた排尿が終わり、残滓が数滴、雫となって落ちた。
「はあ……はあ……」
ただおしっこをしただけなのに、命は荒い息をついてぐったりとしてしまう。
半ば放心状態のままトイレットペーパーに手を伸ばし、カラカラとロールから紙を取る。
そのまま後始末をしようとしたところで、景行に遮られた。
「あ、命ちゃん待って」
「……?」
ほとんど放心状態のまま、命が顔をあげた。
「俺に、拭かせて欲しい」
「……なに?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「俺に、命ちゃんのあそこを拭かせて欲しいんだ」
「…………」
放心状態だった頭が、一瞬で覚醒した。
「なっ、なっ、」
なにを言ってるんだ!? と言おうとした所で、景行が割り込んだ。
「なんでもしてくれるって、言ったよね?」
「うぐ……」
真面目な表情で真直ぐ見つめる景行に、命は言葉に詰まった。
……駄目だ、彼に真面目な表情で見つめられると、拒否出来なくなってしまう。
「……うん」
気がつけば、命は頷いていた。
手にとったトイレットペーパーを彼に差し出す。
しかし景行はそれを受け取らずに、更にとんでもないことを言ってきた。
「いや、トイレットペーパーじゃなくて、舌で拭き取らせて欲しいんだ」
「…………」
今度こそ、命は固まった。
大きく深呼吸をして、聞き間違いだった可能性に期待し、聞き直した。
「……景行君、すまないが、もう一度言ってくれないか?」
「俺の舌で、命ちゃんのおしっこを舐め取らせて欲しい」
残念、聞き間違いでは無かったようだ。
ああ……っ、と、命は思わず天を仰いだ。ほとんど泣きそうな状態で、彼を見つめる。
「……紙じゃ、駄目なのか?」
「うん、駄目。舐め取りたい」
「で、でも、汚いだろ? そんな……」
「汚く無いよ。舐め取りたい」
「駄目だ、そんな、おしっこなんだぞ? 汚いに決まってる」
「だから汚く無いよ。命ちゃんに汚い所なんてない。舐め取りたい」
「そ、そう言ってもらえるのは嬉しいが、おしっこを舐め取るなんて、身体に毒だ」
「毒じゃ無いよ。むしろ薬だよ。だから舐め取りたい」
「そんなわけあるか!」
無茶苦茶な言い分に、思わず叫んだ。景行は何が何でも舐め取りたいらしい。
「だって、命ちゃんのおしっこだもん。俺にとってはそれは薬だよ」
「おしっこだぞ!? 薬なわけないだろう!? 誰にとっても毒は毒だ!」
「違うよ。命ちゃんはこの前、病は気からって言ってたよね?」
「なんだ突然、確かに言ったが、それがどうした?」
「身体にとっては毒でも、俺の心にとってはこれ以上ない薬なんだよ。だから、俺にとっては薬なんだ」
「そ、そんな、無茶苦茶だ」
「無茶苦茶じゃないよ。だから、お願い、舐めさせて。ね、お願い!」
「う……」
真直ぐ命を見つめ、景行が真剣な表情でお願いしてきた。
普通に考えて、とんでもなく変態的なお願いだ。
おしっこしてるところを見せろと言うに留まらず、舐め取らさせてくれなんて、どれだけ変態なのか。
ただ、命は彼にここまで真剣にお願いされたことなど、一度も無かった。
だから、例え変態的な行為だとしても、心が揺れ動いた。
命は唾を飲み込み、彼を見据えた。
「きみは、私のおしっこを舐めると……」
「うん、興奮する」
命の言葉を景行が光の速さで引き継いだ。
真剣な表情ではっきりと頷く彼は、命の目にはとても男らしく見えた。
「……じゃあ、その証拠を見せてくれ」
「証拠?」
「うん、きみがどれくらい興奮してるのか、ちゃんと見せてくれ」
「……うん、わかった」
景行は命の言わんとしていることを理解し、行動に移した。
正座から膝立ちへ姿勢を変えて、ベルトを外し、制服のズボンをトランクスごと下ろした。
「わっ……」
弾かれたように飛び出した肉棒に、命が思わず声を上げた。
赤銅色の肉棒は、お腹にくっつくほどに雄々しくそそり立っている。
ビクビクと痙攣するように震えるソレに、命は息を飲んだ。
「こ、こんなに大きくなるのか……?」
「いつもより大きくなってるかも」
「そ、そうなのか?」
「うん。命ちゃんのおしっこを舐められるかもって期待してるから、こんなになってるんだ」
「わ、私のおしっこで……?」
「うん。これが、俺が興奮してる証拠だよ」
見せつけるように、景行が腰を突き出す。
初めて目にする勃起した男性器は、命の想像を遥かに超えたインパクトだった。
赤黒く、凶悪な形をしたソレに、命は目を奪われた。
一見するとグロテスクにも見えるが、目の前でビクビク震えているソレが愛しい彼のものだと思うと、不思議と不快感を感じなかった。
むしろ、一瞬たりとも目を離すことが出来ず、腰の奥がじんわりを熱を持ってきて、落ち着かなくなった。
「命ちゃん、俺がどれくらい興奮してるか、分かった?」
「あ、ああ。うん、分かった」
景行の声に、思わず見とれていた視線を上げた。
「じゃあ、舐めさせてもらえる?」
「うん……」
命は自分でも驚くほど、あっさりと頷いていた。
スカートを胸に抱えたまま、彼を見据える。
「正直、おしっこを舐め取るなんて、とんでもないことだと思った。でも、きみがそれで物凄く興奮しているのが分かって、私は凄く嬉しいんだ。きみが私の身体を求めてくれないのは、私の身体が貧弱なせいだと思っていたからな」
「……なんていうか、その、特殊でごめん」
「いや、いいんだ。景行君が興奮してくれるのが、私にとって最高に嬉しいことなんだ。……だから」
言いながら命は立ち上がる。
捲り上げたスカートを両手で胸に抱え、脚を少し開き、腰を突き出した。
「だから……、な、舐めて、いいぞ……?」
「命ちゃん!」
弾かれたように、景行がむしゃぶりついた。
「んんっ!」
熱い舌で割れ目を舐められ、命が腰を震わせた。
荒い息が下腹部をくすぐり、唇と舌で容赦無く秘所を舐め回される。
「あっ、や、景行く、うぅん!」
敏感な所を舐め回される刺激に、命の腰がガクガクと震えた。
景行は極度の興奮で頭のネジが完全に吹き飛び、もう命の股間を舐め回すことしか考えられなかった。
しょっぱいおしっこの味とアンモニアの匂いが、景行の理性を完全に奪い去り、はあはあと荒い息をつきながら、しゃむににむしゃぶりつく。
「あっ、あっ、そんな、ダメ、はげしっ……ふああ!」
激しい口撃に、命は腰を逃げるように引くが、景行に腰を抱きかかえるようにしっかりホールドされ、逃れることが出来ない。
景行は舐めるだけでは飽き足らず、割れ目に舌を差し入れ、襞の隙間まで舐め取りだした。
「やっ、だめ! そんな、あっ、ひ、ひあっ」
初めての感覚に、命は細い腰をしゃっくりするようにガクつかせる。
崩れ落ちそうになる膝になんとか力を込め、命が懇願する。
「も、もう十分だろう? 綺麗になったから、だから、それ以上は……っ」
「駄目だよ。まだおしっこの味がする。ほら、ここ」
「ひッ! ああああッ!」
針の穴のように小さく開いた尿道を、舌先でこじ開けるように舐められ、命は身体中に電流が走ったような感覚に襲われた。
膝から力が抜け、へたり込んでしまいそうになるが、景行に腰を掴まれているため、それも出来ない。慣れない刺激に身体に力が入らず、抵抗出来ないのをいいことに、景行が更に攻め立てる。
こじ開けた割れ目に沿って、膣口から尿道、その上のクリトリスまで舌を這わせ、唇を窄めて吸い、また舐める。
「ふあっ! ああっ! そこ、だめだ! や、やあっ」
「ひッ! やッ! だめッ! 吸っちゃ……ああーーッ!」
「だめっ、だめっ、だめっ、も、もう、これ以上は……ッ」
その度に命は、甲高い嬌声を上げた。膝をガクガク言わせ、髪を振り乱し、股間に顔を埋めている景行の頭にしがみつくようにして乱れる。
景行は、頭の上から聞こえる命の嬌声に、より一層劣情をそそられ、舌の動きを激しくして行った。
もはや、景行の行為はおしっこを舐め取ることから完全にクンニリングスに変化していた。
目の前に透き通るような白い下腹部があり、唇と舌で、同じく白く綺麗な秘所の、ぷにぷにとした感触を味わう。
おしっこの味や匂いはとうに消え去り、代わりにしょっぱいような苦いような味と、薄く甘酸っぱい匂いが舌に乗り始めた。
それは初めて味わうものだったが、景行はその正体が分かっていた。
愛液だ。これは、命の愛液の味と匂いだ。その証拠に、舌を割れ目に差し込むと、とろとろした温かい液体が溢れ出てきた。
豊富な蜜は、景行の舌を伝って唇から顎先まで滴り落ちようとしている。
景行は1滴もこぼしてなるものかと、割れ目を恥丘ごと口で覆い、舌で舐め取った。
「か、かげゆきく、だめ、だめ、それ、あッ、あッ、あぁッ!」
途端に命が反応した。不馴れな快感に、戸惑ったような嬌声を上げ、ビクビクとしゃっくりするかのように背を丸める。
自分もろくに触れたことのない、新雪のようにまっさらな秘所を、彼の舌と唇が蹂躙していく。感触に不馴れな襞や膣口を熱くてぬるぬるした舌で刺激される度に、快感が腰から背筋を通って全身に波紋のように広がり、命の意識を快楽色に染めていった。
「あぁ、やぁン……。あ、んっ! ふあぁッ!」
戸惑ったような嬌声は、徐々に甘えるようなとろんとした響きに変わっていき、激しい性感に抵抗するようにしかめていた表情も、蕩けたそれに変化していった。
「ああっ! ああっ! かげゆきくん、それ、それぇ……ッ! ………きもちぃ」
命はたまらず、愉悦の声を漏らした。
気持ちいい、と口にした直後、自分はなんてはしたないことを口走ってしまったのかと、瞬間的に顔が沸騰しそうになったが、その直後に腰がゾクリと震えて羞恥心が吹き飛んだ。
気持ちいい、と言葉に出して、その甘美な性感を自らに認識させた命は、堰を切ったように喘ぎ始めた。
「きもちいいっ! きもちいいっ! きもちいいっ! それ、それ、いいよぅ!」
整った顔をとろんと蕩けさせ、瞳を情欲に濡らし、唇の端から涎をたらしながら命が乱れる。
「ああ、かげゆきくぅん、きもちいいよぅ、ああッ、ああああッ!」
景行の頭を抱えるようにしながら、命が小柄な身体を震わせる。小さな身体をビクビクと可愛らしく痙攣させ、白い肌は紅く色付き、ハートマークがついているような、甘い嬌声を上げて悦ぶ。
はしたなく乱れる命の様子に、景行はとっくに限界まで高まっている興奮が、より一層昂って行くのを感じた。
次々溢れる愛液は、舐めても舐めても切りが無く、景行の顎先から喉のあたりまで垂れてしまっている。
景行は秘裂に唇を押し付け、音を立てて吸い始めた。
「ひッ! あああああーーーッ!」
途端に命が仰け反った。
膣内に溜まった愛液を全て吸いつくすような景行の愛撫に、命は意識が飛びそうになるほどの快感に襲われた。
命の小さな身体の中を、強烈な快感が瞬く間に駆け巡る。弾かれたように、ピンと背伸び。
つま先から頭の先まで性感の電気信号が行き渡り、逆流し、逃げ場をなくしているかのように身体の中を駆け巡っている。
「ああーーッ! ああーーッ! ああーーッ!」
身体中の神経が快楽一色に強制的に塗りつぶされていくような感覚に、命は我を忘れて乱れた。
そうしている間にも景行は吸い続け、命をさらに追い詰める。
「だめだめだめだめえッ! もう、もう、わたし、ああーッ! ああああッ!」
景行は膣口を吸うだけでなく、充血して膨らんだクリトリスを鼻の頭で刺激したり、吸い付く対象を尿道に切り替えたりしてがむしゃらに愛撫する。
膣内を吸われる時の重く響くような快感と、クリトリスを刺激される時の電気が走るような快感と、尿道を吸われる時のむずがゆいような快感が同時に命を襲った。
「やッ! やあ! だめだめイク、イク、イッちゃう! あッ、ああーッ!」
髪を振り乱し、命が激しく乱れる。小さな身体一杯に溜め込んだ快感が、天井知らずに上昇して行き、命はもう、気が狂いそうだ。
「イク、イク、イク、やあ、だめ、でる、でちゃう、ああ、イク、でちゃうぅうぅ!」
尿道を刺激されているためか、絶頂の波に混じって尿意も迫ってきた。
「か、かげゆきくん、だめだ、お、おしっこ、でちゃうから、だから……ッ!」
堪えようがない快感と尿意に苛まれ、命はうわ言のように「でちゃう、でちゃう」と繰り返す。
しかし景行は一向に愛撫を止めなかった。それどころかとんでもないことを言ってくる。
「いいよ、命ちゃん。このまま出して」
「な、なにを言ってるんだ。だ、だめだ、そんな、お願いだから、トイレに……!」
「トイレはここだよ。だから、ほら、出しちゃって」
言いながら、舌で尿道をくすぐるように刺激する。途端に命が背を仰け反らせた。
「ひっ! や、やぁッ! だめ、だめ、だめえ! このまま出したら、景行君に……」
「いいよ。いいから、このまま出して」
「よくないっ。そんなことしたらぁ……」
「いいから。ほら、命ちゃん、ほら、ほら、出して、かけて。俺に、かけて!」
景行はもう止まらなかった。より一層激しく命を攻めていく。
「あーーッ! あーーッ! だ、だめ! か、かげゆきく、お願い、やあ! お願いだからぁあ……ッ」
かぶりを振って懇願する命を黙らせるように、景行が一際強く尿道を吸った。
「ひああああッ! だめだめだめでちゃう、イッちゃう、ああ、もう、もう……ッ!」
せめておしっこだけは漏らすまいと耐える命を、景行は容赦なく攻め抜いた。一際大きく吸いながら下から敏感な箇所を一気に舐めあげる。
「ーーーーーーッ!」
たまらず命が絶頂に達した。
「イ……ッ! ああああーーーッ!!!」
弾かれたように仰け反り、すっかりとろけた割れ目から蜜と共に小水を噴き出した。
「ああーーーッ! ああーーーッ! ああーーーッ!」
小さな身体をガクガクと絶頂に震わせながら、おしっこと愛液をまき散らす。
「み、命ちゃ……ッ! うぅッ!」
命のはしたない嬌声と、温かい蜜とおしっこを顔面から浴びながら、景行も果てた。
* * * * *
「…………」
「…………」
沈黙の中、少女と少年が向き合っていた。
少女は腰を掛けて座った姿勢で、少年はその目の前で正座、いや、土下座している。
額を床にこすりつけるような格好で、景行が頭を下げている。これ以上ないくらいの土下座だ。
おしっこまみれになってしまった二人はジャージに着替えていた。
命はベッドに腰を掛け、その眼前で景行が土下座している。
「…………」
「…………」
重力が100倍になったかのような重苦しい空気が部屋中を支配している。
沈黙を破ったのは、今度も命だった。
「景行君」
「ごめんなさい! ほんっ……とーーに、ごめんなさい!」
途端に景行が額を床に擦り付けた。
「ごめんなさい! 調子に乗り過ぎました! このとおり! ごめんなさい!」
「……景行君」
「全面的に俺が悪かったです! ごめん! ごめんなさい!」
「……景行君」
「命ちゃんの気持ちを無視して突っ走ってごめんなさい! 本当にごめん!」
「か、げ、ゆ、き、くんっ!」
「はいぃっ!」
雷に打たれたかのように、景行が姿勢を正した。
「景行君」
「はい!」
可哀想になるくらいビクビクしながら景行が返事をする。土下座から正座に姿勢を戻しているが、恐ろしさのあまり顔は伏せたままだ。
「景行君、顔を上げなさい」
「はい……」
恐る恐る伺うように顔をあげ、命を見上げる。
命はいつもの無表情に戻っていた。
先ほどの、絶頂の余韻から覚めた命の烈火のごとく炸裂した怒りは、少しは収まったようだ。景行は少しだけ緊張が和らいだ。
「景行君、本当に反省しているんだな?」
「はい! 反省してます! ごめんなさい!」
「もう謝らないでくれ。それに、もとはといえば、何でも言うことを聞くと言ったのは私だからな」
冷静に言いつつ、「もちろん、私の制止を聞かずに暴走したきみの非が消えたわけじゃないぞ」と釘を刺す。
「はい、それはもう。……命ちゃん、ごめんね。本当に。それに、お願いを聞いてくれてありがとう」
「うん」
改めて謝る景行に、命はやっと表情を和らげて頷いてくれた。
ほっとした景行は、つい言ってしまった。
「命ちゃん、俺のお願いを聞いてくれた代わりに、命ちゃんのお願いを俺に叶えさせてくれないかな?」
その言葉に、命がぴくっと身体を震わせた。
「……いいのか?」
その不審な命の震えには気付かず、景行が頷いた。
「うん。もちろん」
「そうか、じゃあ……」
言いながら、命が瞳を潤ませる。
「じゃあ、私と、ちゃんと、セックスしてくれ」
「……え?」
「さっきのは、おしっこはイヤだったけど、凄く気持ち良かったんだ。だから、な? ちゃんと二人でセックスすれば、もっと気持ち良くなれるだろう?」
「え? え? いや……、ええ!?」
予想外の展開に、仰け反る景行。
命は表情も蕩けさせながら更に迫る。
「な? セックス、しよ? もっと、気持ち良く、なろ? な? セックス、な?」
完全に欲情した様子で、命がのしかかる。不意をつかれた格好になった景行は、気がつけば命に組み伏せられていた。
「ちょちょちょ! 命ちゃん! 落ち着いて!」
「私は落ち着いている。ただ、激しく、狂おしく、欲情しているだけだ」
「そ、それは落ち着いてないと思……んぅ!?」
彼の口を塞ぎ、命が先ほどの仕返しとばかりに押し倒した。
終わり
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