「…な、なんかすごい内容のドラマだね……」
宅配しにきた女の人が、そのまま男と関係を結ぶという無茶苦茶な、というか、それなんてエロビデオ? というようなドラマの内容に、明俊が呆然と感想を述べた。
「そうですね。でも…」
明俊に寄り掛かるようにドラマを観賞している瑞希が、うっとりとした口調で続ける。
「大感動です。素晴らしいドラマですね」
「えぇぇ!?」
どこが!? と明俊は思わず大声を上げてしまう。
「分かりませんか? 一目惚れをした女性が男性に思いの丈をぶつけ、そして結ばれるのですから。とても素敵な内容です」
「そ、そぉかな…?」
そこだけ見ると確かに良く聞こえるが…。明俊は納得行かない顔で傍らの瑞希に視線を移す。
「そうですよ。それに、このドラマの女性は何故か他人のような気がしません」
確かにドラマの女性は瑞希と似てるかもしれない。強引な所とか無茶苦茶な所とか。そんな事を考えている明俊に、瑞希がいたずらっぽい微笑を向けてきた。
「今、失礼なこと考えてますね?」
「え!? そんなこと考えて無いよ!」
慌てて否定する明俊に、瑞希は身体をすり寄せるようにして問いつめる。
「嘘です。男の人を押し倒したり、自分から服を脱いだりする所がエロくて瑞希にそっくりだな。とか思ってますよね?」
「そんなこと思って無いからっ!」
「じゃあ、どんなことを考えていたんですか? あ・な・た」
「う、いや、その」
明俊は言葉に詰まりながら、非常に嫌な予感を感じる。妻のこういったプレッシャーには昔から弱い。
すり寄られ、ほとんど組み敷かれているような状態の明俊に、瑞希が囁く。
「そういえば、私だけじゃ無く、ドラマに出てきた男の人もあなたにそっくりですね」
「そ、そうかな? そんなことは無いと思うんだけれど…」
瑞希の瞳が情欲に濡れている。明俊はその瞳から逃れられず、乾いたような声しか出せない。
「そっくりですよ? ほら、こんな所が…」
「んぅっ!」
瑞希が唇を押し付ける。二人の体勢はほとんどソファに横になった状態になっている。高校の時から全然身体が成長していない瑞希が、その小さい身体を明俊に預け、唇を貪る。
「ちゅ、はぁ、んぅ…」
「んん! ぷぁっ! ちょ、瑞希、待って! 亜美(あみ)が起きちゃうよ!」
一人娘は現在、ベビーベッドですやすやと愛らしく眠っている。
「大丈夫ですよ。それよりも、そろそろ二人目の俊希(としき)君を作りませんか?」
学生の頃からすでに決めていた子供の名前を言いつつ、瑞希が迫る。
「いや、あのね? ここソファだし、あのね?」
「では、ベッドで、ですね。今日はゴム要りませんからね? 久しぶりに注いで下さい」
そう言いながらも、すでにこの場でする気満々の瑞希は、嬉しそうに微笑みながらパジャマを脱ぎ始めた。
終わり
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