最初に伸ばされた手は、あまりにもあたたかかった。
大きな手、包む腕、それに縋りたかったわけじゃない。

『刹那』

呼ばれる名、耳に響くその声音が、心地いいと知ってしまった。
黒の革手袋が外される時が、身体をつなげる時。伸ばされた手を払いのける事が出来ずに首筋に触れ、快楽も痛みも、何もかも受け入れていた。
ただそれだけだった。

思えば、そんなささいな事から、身体をつなげる関係が始まり、感情もないままに繋げたセックスが、どうしてこんなにも苦しいものへと変わっていってしまったのか。
判らずに、刹那は、胸を押さえた。
苦しい。…なんで、こんなにも苦しい。

この胸に宿るは空虚。
この痛みは、罪。
この想いは、手に入れるべきではなかった。気付くべきではなかった。

ただ苦しむためにあるものなら、いっそ全てをなくして、壊して、そうして元に戻して。




冷たい花
I'm feeling my self again





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