丹羽がかっ飛ばすバイクの後ろに乗せられ、あれよあれよと言う間に、七条のもとへと駆けつけた啓太。

一分一秒でも早く、七条のもとへと、サンダルを脱ぎ、素足で病室まで走って行った。

病室のドアをノックもせずに、焦る気持ちを命一杯胸に抱えて、ドアを開いた途端、
後ろから丹羽にドンと押されて、転がり込むようにベッドの前に躍り出た啓太が見たものは。

「伊藤くん?どうしたんですか?そんなに慌てて。あ、もしかして僕の退院が待ち遠しくて、前のりしちゃったんですか?
ふふふ♪イケナイ子ですねぇ伊藤くんは♪お泊りは明日の約束ですよ?」

なんて暢気に微笑む、いつも以上にテンションも高く、上機嫌で元気そうな七条の姿だった・・・・。

「・・・・・・七条さん?」

「ハイ?何ですか、伊藤くん。」

「具合が急に悪くなったって・・・・あっ!」

パッと浮かんだ丹羽の存在に、啓太はハッとした。

そして、王様!と心の中で叫んでドアの方を振り返る。

こつぜん!!

もしこの場面が漫画だったら、正にそんな言葉が大きく浮かんでいるであろう、場面だった。

さっきまでいた筈の丹羽の姿はそこになかったのだ。

何が何だかさっぱり分からない啓太が、病室入り口のドアを見て唖然としている時。

もう一人、同じようにポカンとしている男がいた。

啓太の後姿を見詰める、七条だ。

膝した5センチのダッフルの裾から、白いストッキングで覆われた生足を惜しげもなく晒す、
啓太の背中に貼り付けられた、一枚のB5サイズの紙。

筆跡のしっかりとした字体で、大きくはっきりと書かれてあるメッセージは、七条に向けられたものだった。



『この啓太を受け取れ!!これで、許してくれよなっ!』



たった一言、とても分かり易い、メッセージ。紛れもなく丹羽からのものだった。

まさか、自分のあの言葉を本気にしていたなんて。

心に響くプレゼント。

あの時自分が冗談で言った事が、まさかこんな形でプレゼントとして帰ってこようとは。

「伊藤くん。」

「・・・・・・・・??」

丹羽が去った後のドアを、眺める啓太の背中に、七条の呼ぶ声が落ちた。

その背中に人の気配がした途端、軽くなった肩から背中を撫でていくように走った感触が、
足元でバサッと音を立てて、床上に着地した。

「え?」

背中に感じた気配と衣擦れの感触に啓太が振り向く。

足元に輪を描くように滑り落ちたダッフルコート。

「・・あ!!ヤバっ!」

「・・・・・・伊藤くん?」

目が合った途端、啓太は慌てて床の上のコートに手を伸ばした。
が、それより早く動いた七条の手が啓太の身体を引き寄せる力の方が強かった。
抱き寄せられて、ふわりと浮かぶ体は、あっという間にお姫様抱っこされる。
そうすると七条の両手に委ねた身体を丸めて、条件反射で胸元にすがりつく啓太。
さっきも同じように、丹羽にも抱っこされたが、同じ抱えられ方でも、丹羽と七条とではまるで居心地も気持ちよさも違う。
七条が入院して以来、ずっとお預けだった恋人の抱擁。
久しぶりのお姫様抱っこは、啓太の心を円やかに溶かしていった。
七条さん大好き・・・と呟き、ウットリ瞳を閉じる・・・・・。

のも・・・・つかの間の夢心地。啓太は自分の女装と言う現実を、うっかり忘れかけていたのだった。

やけにスースーする足元、丸出しの足に履き心地の悪いストッキング。

「あっ!」

短い雄叫びと共に、啓太は自分のナース姿を思い出して、ハッと我に返ったのだった。

とっさに身体を縮めて隠そうと頑張るも、その頑張りは空しい抵抗に終わる。

当たり前だが、時既に遅し。

ジタバタと体を捩る啓太の姿に、上から視線を落とす七条は、嘗め回すように眺めて、楽しそうに微笑んでいたのだった。

「伊藤くんは、可愛い白衣の天使さんになったんですね・・・・・もしかして僕の看病のためですか?」

恥ずかしさで七条の顔を、まともに見る事なんて出来ない啓太は、
ただただその胸に、真っ赤になった顔を埋めて、違うんです・・・・・と小さく呟いた。

「伊藤くん、とっても可愛いですよ。こんなに可愛いナースさんは、初めてお目にかかりましたよ。
今日で入院生活が最後なんてなんだか残念ですねぇ。もっと早くこの姿で僕のお見舞いに来てくれたらよかったのにね。」

啓太の旋毛に頬をスリスリと、七条は耳に甘い囁きを吹き込んだ。

「やっ・・・違うんです。コレは・・・えっと・・・・その・・・・和希が。」

「・・・遠藤君?遠藤君が、どうしたんですか?」

「いや、そのぉ・・・手芸部に頼まれたんです。サンプルで作ったナース服の撮影が今日とかで。
モデルさんが急病で来られなくなったから、代わりを頼まれて。断ったんですけど、どうしてもって和希に泣きつかれちゃって。」

「サンプル・・・ですか?」

「はい。なんでもこの病院の、看護師さん用の新ユニホームのサンプルらしいです。
今日中に写真を取って先方に送らないといけないからって。そしたら王様がイキナリ入ってきて、
七条さんが大変だって言うから、慌てて連れてきてもらったんですよ。
七条さんのことが心配で、着替えてる場合じゃなかったんです・・・。」

「・・・・・・・なるほどね。そういう事でしたか。」

自分が面白半分の冗談で言った事を間に受けた丹羽が、手芸部で啓太の親友を豪語する遠藤和希を巻き込み、
下らない一計を案じた結果が、このナース啓太と言うわけか・・・グルグルなった啓太の拙い説明で、事情を全て七条は悟った。

「ごめんなさい、七条さん。」

まさか自分のこの格好の発端は、七条だとは思ってもいない啓太。

「どうしてですか?」

「だって、いくら和希の頼みだからって、七条さんに無断でこんなおかしな格好をしちゃって・・・俺、恥ずかしいです。」

親友の切実な頼みとは言え、いくらなんでも女装・・・
しかもナース服だなんて、俺は本当にどうかしてたと、啓太は反省の気持ちでいっぱいになった。
七条さんもきっと呆れているに違いない。
それに、さっきから標準より短いスカート丈が、この体勢で益々短くずり上がり、ギリギリやっと下着を隠している丈になっていた。
しかもその下着は事もあろうことか、女性物。それもそういう方面の知識に乏しい啓太ですら、
コレはエッチな下着だと分かるような如何わしいデザインのシロモノだ。
コレを男の自分がつけているのである。どう言い訳したって、ヘンタイにしか思われない。

「恥ずかしい事なんて、これっぽっちもないですよ。むしろとても可愛い。
こんな女の子みたいな伊藤くんも、素敵だなと感心するぐらいです。だけどね・・・伊藤くん?」

「はっはいっ!!」

「遠藤君や丹羽会長に、この姿を見せるのは如何なものかと思いますよ。
僕だけが見ればいいんですから・・・そう言えばサンプルの写真と言っていましたけど、まさか写真なんて撮らせてないでしょうね?」

と、ニッコリ微笑む七条。

「デジカメが充電中とか言って、撮りませんでしたよ。」

「充電中ですか・・・・・デジカメは見せてもらいましたか?」

「はい。」

「・・・・・・・。」

「七条さん?・・・・・あのぉ・・怒ってますか?」

「いいえ、そんな事はないですよ。ただ、遠藤君のこういうお願い事を聞くのは、これが最初で最後です。分かりましたね?」

「はい、ごめんなさい。でも、七条さん。和希は悪気があってした訳じゃないですから。」

顔は・・・・笑っているけど怒ってる?直感で啓太はそう感じ取っていた。
確かにこんなお願い、頼む方も頼む方だが、引き受けるほうも引き受ける方だ。
だから自分も悪いんだ・・・・。和希ばかりが悪いわけではない。
純粋に啓太はそう思って、反省したが、元はといえば、大元は他でもない七条。
だが色んな意味で本当のことを知らない啓太に、七条がその時なにを考えていたかなんて、これっぽっちも分かるはずもなかった。
洞察力に長けた七条は、あの遠藤がこんな姿の啓太を目の前にして、本当に写真を撮っていなかったのかを懸念していたのである。

まさか丹羽に言った性質の悪い冗談が、こうなる事とは思ってもいなかった七条。
丹羽と遠藤のお蔭で、恋人という強い立場の自分でも、日頃決してお目にかかれないであろう、
白衣の天使啓太を頂く事が出来たものの、色々と腑に落ちない点も多々ある。
それらの決着は、後日あの2人につけさせる事にして、まずはこの啓太と自分の事が最優先。

「伊藤くん、大丈夫。なにも心配要りませんよ。」

ね・・・・と安心させるように、おでこをコツンとくっ付け、七条は甘く微笑んだ。

「和希を怒らないで下さいね。ちゃんと断れなかった俺も悪いんですから。」

「ふふふ。伊藤くんは優しいですね。安心してください、大丈夫ですから。
ところで伊藤くん、このナース服は、スカートが少し短すぎる気がしますね・・・・・
これ、本当に正規のユニホームのサンプルでしょうか?エプロンまでしちゃって。
おや?ストッキングにガーターベルトも・・・・。」

そう言って微笑む七条の視線の先には、剥き出しになった太もも。

「似合ってなんかいませんよぉ〜〜〜。見ないで下さい。俺、恥ずかしいです。」

スカートが短い・・・啓太が最も気にしていた事を指摘され、啓太は慌ててスカートの裾を下へ向けて引っ張った。
そしてもじもじと両足を動かし、露になっていた太ももが少しでも目立たないように、精一杯の抵抗を試みる。
だけど啓太があわわと、そうこうしている内に、七条は啓太をせっせっと自分が使っている病院用ベッドの上へと運んだのであった。

「こんなに可愛い君を、見ないなんて僕にはできませんよ。」

「七条さん?・・ちょ、ちょっとっ!」

あれよあれよと言う間に、寝かせられて、組み敷かれる。
そしてベッドの上に無防備に投げ出す啓太の手に、七条は自分の手を重ねた。

「・・・・・ココはどうなっているんでしょうか?」

指と指との間を割って滑り込む七条の指が、ギュッと啓太の指と絡まる。
と同時にスカートへと伸びるもう片方の手。その手が裾を掴んで一気にそこを捲り上げると、モロ出しになる下半身。

「わっ!やっ!ダメっ!見ちゃダメですっ!!」

こんなのおかしいと思いながらも、巧く丸め込まれて啓太が着けた下着は、女性物の下着。
しかもただの下着じゃない。薄っぺらな苺柄のショーツ。しかも紐付きだ。

「これは・・・。」

貼り付けたようにジッと注がれる視線に焦がされる。
喜悦に満ちた七条の表情に、啓太の顔はみるみる赤く染まっていった。

「もう、そんなに見ないで下さいよぉ・・・。」

女の子ならまだしも、男の子の自分。いくらなんでもこれは恥ずかしい以外何もない。
MAXに振り切った羞恥心で、啓太は見ないでと繰り返しながら、裾を掴む七条の手を払いのけ、足を閉じて腰から下を捩って抵抗した。
だけど力勝負で七条に啓太が敵うわけもなく、啓太が払いのけた手が、余計に七条のしたいようにさせる結果となってしまったのである。

「そんなイジワルを、言っちゃダメですよ。啓太くん。」

甘く囁いた口が、チュウと啓太の頬に吸い付き、舌がホッペをひと舐めする。
啓太に払われた手は、これ幸いとスカートの中へと滑り込んでいた。
既に膨らみ、湿り始めていた下着ごと、デリケートなソコをギュッと握りこむ。

「ひゃぁっあんっ!・・・・や・・いやぁっ!」

愛らしい嬌声と共に、ビクンと波打つ腰。

「シッ!・・・・・啓太くん、ココは病室ですよ?」

頬に唇が触れたまま、七条はそんな現実を囁きながら、啓太のソコを握ったまま捏ねる様に手を動かし続けた。

「あ・・・・もう・・・七条さぁん・・・やめて・・。」

漏れ出る声を必死に抑える啓太は、股間に渦巻く桃色の感触に腰を捩り、口を紡ぐ。
だけど先端からジワリと染み出る、キモチイイ証拠の体液は量が増える一方で、
それを絡め取るように擦る七条の指の動きは、啓太にとっては甘い甘い媚薬。
硬軟な弾力を持つソコを捏ねるように手先が上下するたび、可愛いサイズのソコは、あっという間にパンパンに膨れ上がった。

「っあ・・・・ん・・・・だめ・・そんなにいっぱい、触っちゃダメ・・・。」

「だーめ。いくら啓太くんのお願いでも、聞いてあげられません。だって、こんなに大きくなっているんですよ?
啓太くんの気持ちイイ姿、僕は大好きなんです。」

手加減なしの手淫に、内側から盛り上がる質量を覆っていた下着の薄布が、はち切れんばかりに突っぱねた。
幅の狭い下着の両脇から零れ出る陰袋にも、忘れず食指を伸ばす。

「啓太くん、ほら、もっと足を開いて、腰を突き出して下さい。」

先走りの体液で濡れた七条の両手が、啓太の内腿を割る。
抵抗も空しく左右に開いた両足の谷間で、グショグショに濡れた苺柄のショーツが、
膨れ上がった啓太の屹立と陰袋に張り付くように覆っていた。

「やぁ・・・恥ずかしいです・・・・。」

「恥ずかしい事なんてちっともありません。可愛いですよ、啓太くん。
苺のショーツがよく似合っていますね。脱がしちゃうのは勿体ないので、このまま出しちゃいましょうか?」

ガーターベルトを取り外し、腰に絡まるショーツの紐を緩める。
熱を持った皮膚に直に張り付くショーツの感触に、啓太の腰が浮きながらモゾモゾと揺れた。
ソコに再び伸びた七条の手の中で、弾ける粘液が薄布ごと泡立ち、ちゃぷん・ちゃぷんと淫らな水音を立てる。
薄布が固い皮膚に擦れながら上下する七条の手は、緩むことなく啓太の硬い膨らみを、何度も扱いた。

「っっあああんっ・・・・もう、ダメ・・・おみさん・・・出ちゃうっ・・・」

「出ちゃうって、何がですが?」

耳朶を這う舌が、耳の窪みをチュっと吸いながら、甘い息を七条はそこに吹き込んだ。

弾けそうに膨らみきった屹立を何度も扱かれ、啓太は吐息混じりに漏れ出る声も、射精感も我慢なんて出来ずにいた。
ココは病室。個室でも公共の場、鍵だって付いていないのだ。
いつ誰が来るとも知れないと、分かっていても、トロトロに溶かされた理性は、我慢する気持ちを手放しかけていた。
やめてと訴える口とは裏腹に、屹立に指先が這うたびに、もっと強く擦れるように啓太の腰は激しく上下に振れていた。

「はぁぁんっ・・・んっ・・がまんできないよぉ・・・でちゃう・・やめて・・」

「何が出ちゃうか僕に教えて、啓太くん。教えてくれたら、可愛い鳴き声が漏れないようにチュウで塞いであげますよ。ほら。」

浅い呼吸とともに、喉の奥から漏れ出る上ずった嬌声を、こらえる啓太の唇を、七条はチュッと軽く啄ばんだ。
こんなに気持ち良い所を擦られている啓太に、色々我慢なんて出来るはずもない。
快感の波に飲み込まれてしまいそうな状況の中、追い討ちを掛けるように、七条の片手が啓太の白衣へと伸びた。
白衣の下で硬く実を結ぶ乳首を、濡れた指先が布越しに摘んで、擦り、捻って、潰す。

「ぁ・・あん・・・だめ・・・・漏れちゃう・・・・アレが、アソコから出ちゃう・・・。」

「啓太くんのいやらしいアレ、いっぱい出しましょうね。」

ソコにまとわり着いていたショーツを横にずらして、屹立を根元の膨らみごと取り出した。
そして啓太の気持ちイイ所全体を揉み込む手で、膨張しきった先端の窪みをグリッと解すように、七条は指で亀頭を弾いた。
途端にビクッと震える啓太を抱き寄せて、赤くヒクつく啓太の唇をキスで覆う。

舌を捻じ込み、漏れそうになる喘ぎを唾液ごとかき混ぜ、宥めるようにしっとりと深く口付けた。

「――――――っん・・・・・」

啓太の背中が弓なりに反り、持ち上がった腰が、七条の腹部に擦れる。
汗ばむ七条の寝衣に触れ、弾ける精が多量の白濁液を撒き散らして、ピクンと震えた。

「んっ・・んっ・・・・。」

果てた反動で甘く痺れる啓太の背中を、七条の手が優しい仕草でゆっくりと上下する。
重なったままの口から、送り込まれる唾液やそれをかき回す舌先は、甘露のように甘く啓太の全身を溶かす。

チュウっと大きく吸われて、離れる唇に甘い糸が後を引いていた。

「久しぶりだったから、いっぱい出ちゃいましたね。気持ちよかったでしょう?」

「もう、七条さんのイジワル。病室でこんな事・・・・誰か入ってきたら大変じゃないですか・・・。」

「大丈夫。僕は平気ですから。」

「七条さんのバカバカっ!」

「おやおや、そんなに暴れてはダメですよ。
ね、大丈夫ですから落ち着いて。誰かが入ってくる時は必ずノックがありますから。」

呼吸の荒い啓太の背中を宥めて抱き寄せ、汗ばむ額にチュッとキスを落として落ち着かせる。

「・・・・・・・・・・もう。」

クタッと身体を預ける啓太が、七条の胸の中で拗ねるように呟いた。

そんな啓太の小さな身体を優しく包み込む七条が、ひらりと手を伸ばし、ベット周りの目隠し用のカーテンを引いた。
その途端、あっという間にカーテンに四方を囲まれ、ベッド周りは密室へと変わる。

「今更カーテンを引いたって、意味ないです。誰も来なかったからよかったものの。」

「それより、啓太くんの白衣姿は、本当に天使のようですねぇ・・・・。」

「・・・・・・・・・・?」

キョトンと上目遣いで見上げる啓太の鼻っ頭を、七条の指がチョンっと掠める。

「すみませんが、僕は、さっきから体調が優れない所為か、身体に違和感がありまして・・・・。」

「え?!」

「とても痛くて、実はずっと我慢しているんです。」

啓太をしっとりと見つめながら動く指先が、頬をゆったりと撫で、七条はポツリと呟いた。
そして眇めた微笑を浮かべて、啓太のあご先を摘む。
その姿は痛みに耐えているように啓太の瞳には映った。
明日退院とはいえ、七条は病み上がりの身には変わりない。
これは大変だと啓太の表情に焦りの色が浮かんだ。

甘いムードが一転。
どういうつもりなのか、イキナリそんな事を言い出した七条が苦しそうに背中を曲げて、啓太に身体をグッタリと預ける。
七条さんの一大事!そんな七条の身体を全身で受け止めた啓太は、
自分の白衣姿なんて頭の中から飛んでしまい、助けを呼ぼうとナースコールに手を伸ばした。

「七条さんっ!大丈夫ですか?しっかりして下さいっ、大変だよ、看護婦さん呼ばなくちゃっ!」

「待って。啓太くん。」

ナースコールを握った啓太の手の上に、七条の手が重なる。
そして啓太の手からそれを奪い取った七条は、「呼ばなくても、君がいるでしょう?」と微笑んだのだった。

「何言ってるんですか!ふざけてる場合じゃないです。返してください!」

狭いベッドの上で、啓太がナースコールのボタンを取り返そうと、七条を制して手を伸ばす。
だけどそれは例のごとぐ、あっさりとかわされて、手を掴まれてしまう。

「君しか、僕の痛みを取ることは出来ないんです。」

ほら・・・と掴まれた手を引っ張られて、誘われるように行き着いた所に、その手をギュッと押しつけられた啓太が触れたモノ。

「・・・・・・・!」

「ね、啓太君しか触っちゃダメな所が、硬く腫れて我慢できないくらい痛いんですよ。」

茶色いクセっ毛を掻き分け、耳元にフウッと吹き込まれる甘い囁き。

「僕だけの可愛い白衣の啓太くんに、ご奉仕して治して欲しいんです。」

啓太の手の上に七条の手が重なって、ソコの状態を確認させるように啓太に触らせながら、七条は啓太の耳たぶに舌を這わせた。

「し・・・しちじょうさん・・・・」

「啓太くん、そうじゃないでしょう?エッチの時のお約束は何でしたっけ?」

腰周りが肌蹴た寝衣の裾の合わせ目の間に、滑り込んだ啓太の手がたどたどしく動く。
腰を浅く包むボクサーパンツの内側から反り上がるモノは、啓太の手にシットリと豊満に熱く触れ、
その熱の硬さが七条の興奮を、啓太に十分すぎるほど伝えていた。

「・・・おみさん・・・・。」

「ナース啓太くん、僕の熱を、君のお口で癒してくれませんか?」

耳元で囁かれ、上から重ねられた手を動かされる。
熱の篭った大きさと硬さを、ジックリと感じさせるように、肉塊を撫で回す手の動き。
布越しに伝わるソレの先っぽは、溢れた先走りでしっとりとシミを滲ませていた。
久しぶりに触れる恋人の感触は、啓太の理性を身体ごと溶かしていく。

欲情した七条の興奮を、目の前にする。
それがどんなに啓太を甘く蕩けさせ、夢中にさせる事か。

「・・・・・・・・おみさん。」

甘美を焦がすような溜息混じりの呟きを漏らして、吸い込まれるように啓太は、顔を股座に埋めた。

「ね、こんなに大きく腫れてしまっては、窮屈で痛いんです。分かるでしょう?」

丘斜を描くソコに、啓太が唇を寄せる。
すると、一緒に弄っていた手が離れて、啓太の旋毛にその手が触れた。
優しく撫でるように髪の毛を梳かれ始めたのと同時に、啓太は両手を下着の間に滑り込ませて、一気に下ろした。
威勢を奮って覗く七条の先端にチュウと口付け、先走りを誘い出して舌先で擽るように、先っぽの窪みをかき回す。
途端に、七条の腰が浮き、髪を梳く手が、啓太の頭を押さえつけた。上下からの圧力で、啓太の口いっぱいに侵入する先端。
咥内の粘膜全部を使って、溢れる唾液を絡ませながら、ネットリとしゃぶり、口からこぼれた竿の部分に指を這わせる。
たわわに鎮座する根元の膨らみまで指を滑らせ、たどり着いたソコを、指先で揉み解した。
上下する啓太の濡れた口から、吐息混じりの喘ぎが洩れ出る。

「・・・ぁ・・・んっ、んっ、・・・ちゅぱ・・・くちゅっ・・んっ」

「・・・・・っん・・・・・啓太くん。」

頭を押さえつける手が、啓太の耳たぶに触れる。

指先が耳朶の窪みや穴を弄りながら、牡の色気たっぷりに名前を呼ばれて、
啓太は口にモノを咥えたまま、潤んだ眼差しを上目向けた。

「お上手ですよ。気持ちよすぎて、おかしくなりそうです。」

そう呟く声に、荒い吐息が重なる。
肌蹴た寝衣から覗く白い肌に汗が滲んで、ほんのり赤く色付いていた。
その胸全体が、ゆっくりと大きく波打つように深呼吸し、肩が上下する。
目尻に泣きボクロ、おっとりとした甘い目元を苦しそうに顰めて、頬を染めて感じている七条の姿が啓太の瞳に映る。
その声にならない深い喘ぎが、啓太をより淫らで嬉しい気持ちにさせた。

もっと、もっと欲しいと、無言の圧力を掛けるように、七条の手が啓太の頭を押さえつける。

その証拠に、啓太の舌が、硬くなった先端に、深く絡みながら吸い付くたびに、ソコは膨張し、先走る液を吐き出した。
自分を感じてくれる最愛の人からこぼれる体液。
それを嘗め尽くすように、チュウっと吸い上げて、啓太は咥える口元をいったん離した。
そして根元の膨らみを指先で揉みながら、十分に育った竿の胴に舌を押し付けた。
シットリと滴る体液をこそぐように、下から上へ舐め上げる。

夢中になって七条を愛する啓太の口元に、七条の手が伸びた。
そして、肉肌を滑る啓太の舌を指先で止めて、ソコから啓太の顔を遠ざけるように、手が動いた。

「ありがとう、啓太くん。これ以上、愛されると出してしまいますから。」

啓太の汗ばむ額に翳した手が、宥めすかすようにゆっくりと動いて、啓太は顔をあげた。
熱で潤んだ目と目が合う。そして七条は荒い呼吸を整えながら、凄艶に顔を綻ばせた。

「僕が欲しいですか?」

「おみさんのが、ほしい・・・もっとさせてください。」

「続きは、こちらにあげます。」

啓太の腋の下に両手を挿し込み、身体を起こさせる。
七条の腰を跨ぐ様に跪かせると、啓太は両手を七条の肩の上に乗せた。

「ここは、僕を待っていてくれているかな?」

啓太の細腰を掴んでいた手が、後ろに回って、お尻の割れ目をなぞる。

「ん・・あぁんっ!」

七条の指の動きに合わせて背中が反り、啓太のお尻がプリンと震え、高く持ち上がった。
誘い込まれるように双丘の窪みの奥に埋まった中指を、根元まで一気に差込み、抉るように左右に揺らすと、
融けかけていた蕾はあっという間にほぐれて、七条の指を、二本、三本と、飲み込んでいった。

胎内の粘膜を解きほぐすように、指がバラバラに這い回る。
その動きに合わせて、啓太は自分の肉壁で一番敏感な場所に、指が強く擦れるように腰を夢中で回した。

「あ・・・あ・・・・っ、ジンジンする、きもちいい、そこ、もっともっとぉ。」

啓太が腰を振るたびに、そそり勃つ啓太の屹立の先っぽから溢れた液が、涎のように滴り落ちて、七条の胸元を濡らした。

「啓太くん、そろそろ一緒に蕩けましょうか?僕はもう、これ以上は我慢できそうにありません。」

深部を引っ掻き回す指が、ちゃぷんと音を立てて、引き抜かれる。
再び啓太の腰に手を添えた七条は、ゆっくりと吐息を漏らして、啓太の頬にキスを落とした。頬に触れた唇がシットリと囁く。

「啓太くん、僕のモノを触って。」

言われるままに、啓太の手が股座に伸びて、そそり勃つ七条のモノをそっと握った。
甘い仕草の指先が、ソコを愛撫するようにゆっくりと撫で回す。

「・・・・っん・・・・・熱いでしょう?」

「あつくて、おおきいよぉ・・・はやく、いれてください。」

「じゃぁ・・・・そのまま腰をゆっくり落として、自分でお尻に入れてごらん。」

「え・・・やだぁ・・・おおきいから・・・・なんかこわい。」

「大丈夫ですよ、ゆっくり腰を落として、ゆっくり。」

啓太の腰に添えた手が、促すように啓太の腰を導く。
お尻の割れ目に濡れた先端が触れて、啓太は腰を震わせた。

「・・・・っ、ひゃぁ・・・ん・・。」

「お尻を上下に振ってごらん、怖くないから。」

七条の声に啓太は喘ぎながら頷くと、言われたとおりに、握った先端を撫で付けるように、お尻の割れ目を往復させた。

「そう、上手ですよ。ゆっくり下のお口に含ませて。」

すっかり緩く出来上がった蕾の泥濘に、啓太は自分で七条の硬い先端を宛がう。
そして恐る恐る腰を落として、深く息を吐いた。グチュっと粘液が肉肌の上で弾ける音がして、亀頭を括れまでヌルリと飲み込む。
下から七条がそれを助けるように、腰を揺すると、啓太は一気に半分まで腰を落として嬌声を上げた。
ガクガクと戦慄く膝を必死で踏ん張って、七条の肩にすがりつく。
挿れてもらう時は、そう感じなかった圧迫感が、自分で挿れようとすると、その大きさと深さに啓太は身体を甘く震わせた。
半分まで飲み込んだ時点での質量の大きさに、その奥へが中々踏み出せない。

「うわぁん!・・・・あ・・・ぁ・・・っ・・・・おしりのなかが、いっぱいでギュウギュウするよぉ・・・」

「ほら、もっと奥まで含んで。怖くないようにしてあげますから。」

浅い呼吸を繰り返す啓太の唇を啄ばんで、七条は啓太の屹立を握り揉んだ。
そして膨らんでピクピクと震えるソコを、中身が出るように強く上下に扱く。
不意打ちに急追され、あまりの刺激に啓太の先端から、多量の先走りが糸を引いて滴り落ちた。

「あぁんっ!でちゃうっ!でちゃうよぉ・・・・ああんあんあん・・やっ・・おしり・・・こわれちゃう・・・っ」

ビクッと大きく震えた啓太の身体から力が抜けて、崩れるように腰が落ちる。
一気に深部まで挿入してきた圧力が、啓太の胎内を擦りながら抉っていった。

「気持ち良いいいでしょう?たくさん腰を振って、自分でイイ所が擦れるように動いて。」

濡れそぼった啓太の屹立を、七条が手で扱くと、その動きに合わせるように啓太の腰が上下に揺れる。

内側から押し広げられるように、七条の熱の肉塊が啓太の粘膜に擦れた。

「あぁぁ・・・んっんっ・・・きもちいいよぉ・・・いいよぉ・・・・・あっあぁ・・・っ」

「・・・っん、啓太くん、良いですよ、もっと一緒に気持ちよくなりましょうね。」

「あぁんっ・・・おみさぁん、すき・・・だいすき。」

「僕もですよ、啓太くん。もっと僕を好きだと言ってください。」

「すき、おみさん、だいすき・・・・。」

「愛してますよ、啓太くん。」

揺れる啓太の身体を見上げる七条が、下から腰を深く打ちつけた。
ズンっと鈍い痺れが啓太の深部に劈き、啓太は身を捩じって甘い痺れに溺れた。
その啓太の動きに合わせるように、七条が左右に腰を揺すりながら屹立を扱く。
ガクガクに擦れながら震える身体は、限界に昇り詰めて、先に白濁を溢したのは啓太の方だった。
簡素なベッドが軋む音が病室内に響いて、2人分の喘ぎがその音に重なる。
果ててグッタリとなる啓太の体を揺すり続けながら、低い喘ぎを漏らし息を詰めた七条は、
蕩ける啓太の胎内へ、濃厚な白い迸りを多量に放ち、果てたのだった。
白濁が漏れ出る下半身を繋げたまま、揃ってグッタリと横になる身体を抱き締めあって、シットリと唇が重なり合う。
上と下で繋がる部分から蕩けて1つになるように、七条と啓太は長い間、そのまま抱き合っていた。





「・・・さーん、七条さーん?」

遠くで名前を呼ぶ声が聞こえた。

女性の声。

うつらうつらと夢心地の意識がハッと覚める。

「・・・・ん?。」

目を擦る啓太が、モゾモゾと起き上がろうとすると、
隣にいた七条が、啓太の肩をやんわり押さえて、口元に人さし指を宛がった。

「しっ!」

「・・・・?。」

キョトンと首を傾げる啓太を寝かしつけ、掛け布団を捲くった七条は、パフンと啓太にそれを被せた。
掛け布団の上から七条がゆっくりと、啓太の背中を宥めるように、擦る。
そして、身体を起こして、カーテンの向こう側にむかって、返事を返した。

「はい、なんでしょうか?」

「あぁ、いたのね。消灯前のお伺いです。」

カーテン越しに感じる人の気配。

夜勤の看護師による、消灯前の病室見回りだった。

「すみません、気がつきませんで。」

「七条さんは、明日、退院だったわね・・・・お変わりない?開けてもいいかしら?」

カチャ・・・と小さな金属音が鳴った。カーテンレールにクリップが擦れた音だ。

「すみません、遠慮してください。いま、着替えの最中で裸なんです。」

「まぁ、ごめんなさいね。じゃぁ、何かあったらナースコールを押してくださいね。」

「はい。体調に変わりはないですので、コールを押さない限り、僕の部屋への見回りは結構です。」

「分かりました。じゃ、おやすみなさい。」

「はい、おやすみなさい。」

布団の中で息を潜める啓太の胸は、飛び出してしまいそうなほどドクンドクンと鳴っていた。

自分がココにいる事がバレてしまわないか、啓太は両手で口を覆ってひたすらジッとしていた。

ペタペタと靴音が遠ざかり、バタンとドアの閉まる音が、室内に響き渡る。

「伊藤くん、もう出てきても大丈夫ですよ。」

「・・・・ぷはぁ〜・・・・・緊張したぁ・・・・。」

捲れた布団の中から、啓太が勢いよく起き上がった。
顔を真っ赤にして、胸を撫で下ろしながら肩で息をする。
そんな啓太の姿を見た七条は、思わず吹き出してしまった。

「っぷ・・・伊藤くん、息まで止めなくてもいいのに。」

「だって、すごく緊張したんですよ!俺、こんな格好だし・・・それに、床の上・・・。」

「床の上・・・?」

啓太がおずおずと指差す先・・・・・カーテンに仕切られたベッド周りはとんでもない事になっていた。
シーツが捲れ、寝乱れたベッドの脇には、七条によって外されたガーターベルトに、
丸まったままカピカピに乾いた苺柄のショーツが、無残な姿を晒して落ちていた。
そして啓太は、シミだらけのしわくちゃになったナース服を身に付けている。
傍から見れば、とんでもない破廉恥コスプレ男だ。
それに七条だって、情事の後の乳繰り合いで、啓太がつけたキスマークの赤い痕跡が、首筋や胸元に付いている。
こんな状態を見られてしまったら、なんと言って言い訳しても、弁解の余地なんて少しもない。
エッチの最中によく人が来なかったものだと、啓太の胸の奥には、しょっぱい安心感が複雑に広がっていた。

やく一ヶ月ぶりに愛し合って、抱きあって乳繰り合ったまま、温かい夢心地にそのまま眠ってしまった二人。
気がついたら院内時間は、消灯前の21時。面会時間はとっくに過ぎ、看護師による見回りも終わって。
おまけに、病院への出入り口は救急用を除いて、全て閉鎖されていた。
寮へ帰る伝を失ってしまった啓太は、そのまま七条の病室に、看護師には内緒でお泊りする事となった。
狭いベッドの中で身体を寄せ合って、七条の腕枕でウトウト夢心地の啓太は、明日帰るときの洋服の心配をするのであった。























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