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ほんの少し空気が乱れただけでしな子が起きてしまうのではないかと恐れた拓也は、
まるで砂崩しの遊びをする時のように、腕に全神経を集中させてゆっくりと胸に近づけていった。
拓也にとっては永遠にも感じられる長い時間が過ぎた後、遂に中指が胸の頂きに触れる。
その瞬間、身体に電流が流れたかのような快感が走り抜けた。
最初の甘美な一撃でわずかに残っていた良心は軽々と弾け飛んでしまい、
荒々しい欲望がそれに取って代わる。
服の上から形を確かめるように掌全体を押し当てると、ゆっくりと手の縁に力を込めた。
しな子の乳房はまだ発育途上、というよりもようやく発育を始めた所、
と言った方が正しいくらいで柔らかさを感じる事は出来なかったが、
今の拓也にはほとんど関係なかった。
逸る心を抑えようともせず、片手から両手へ、両手から服の中へと手を突き動かす。
緊張して汗をかいた掌に、しな子の肌の温もりが伝わってきた。
(気持ち……いい……)
実のものとも違う、人肌の温もりに陶酔しながら、
拓也の手は這うように少しずつしな子の身体をまさぐっていく。
と、指先が、遂にしな子の胸のふくらみの麓にある下着を捉えた。
(これ……確か、ブラジャーって……)
愛に下着を買いに行かされた時に、恥ずかしがりつつも、
パンツとセットで売られているそれに少なからず興味を抱いていた記憶が甦る。
(こんなの……女の人は着けるんだ……)
生地の手触りを確かめるように撫でながら、改めて男女の身体の違いに思いを馳せた。
一通り下着を触り終わった拓也は、
手の動きを止めると生唾を飲んでしな子の胸元を凝視する。
自分の手の形がいびつに浮き上がった服が、拓也の欲望に続きを促した。
(おっ……ぱい……)
そう頭の中で発音してみると、新たな興奮をかきたてられてしまい、
しな子の胸を直に触れたくなった拓也は
親指をひねるように動かしてブラジャーのふちに引っ掛け、
そのまま一気に滑りこませる。
胸にそっと掌を押し当てると、緩やかな心音が波動となって身体に流れ込んできた。
無意識の内にしな子の鼓動に自分のそれを重ね合わせた拓也は、
心が安らな気持ちで満たされるのを感じる。
しかしそれも一時の事で、掌に当たる乳首の感触にすぐに拓也の雄の部分が目覚め、
再び愛撫をはじめた。
(ここから……おっぱいが出るんだ……)
以前史穂の胸から母乳を吸った時のことを思い出し、不思議そうに乳首を指先で転がす。
(硬くなってきた……)
刺激に反応してしこり始めた胸の先端を、好奇心剥き出しで触り続ける。
「………っ、ふ……」
微かにしな子の唇から声が漏れる。
それは感じている訳ではなく、身体を触られて反応しただけの、
どちらかというと寝息に近い物だったが、
驚いた拓也は慌ててしな子の胸から手を離すと、
ブラジャーを適当に元に戻して服のボタンを留めてやった。
おそるおそるしな子の顔を見ると、それ以上起きる気配が無いのを確認して安心する。
しな子の下半身に目をやると、止めていた熱い呼気を吐きだした。
普段の拓也なら決してこれ以上危ない橋は渡ろうとはしなかっただろうが、
今はすっかり身体を満たす背徳の快感の虜になっていた。
身体ごとしな子の下半身に向き直ると、
スカートの裾をつまんだまま小指の先を内腿に触れさせる。
たったそれだけで動悸は早まり、心は狂おしいほどの興奮に包まれる。
指先から小指の指腹へと触れる面積を広げ、薬指も添えるようにあてがった。
じんじんと脈動する指先で内腿をやわやわと揉みしだくと、
伝わってくるしな子の体温の心地よさにほとんど卒倒してしまいそうになる。
螺旋を描くようにしな子の太腿を滑る指先が、ついに下着に触れると、
そこで再び息を止めてしな子の反応を伺った。
(きっと……起きない、よね)
それは何の根拠もない単なる願望だったが、今の拓也にはそれを覆す理性は残っていなかった。
(柔らかくて……すごい、気持ち、いい……)
太腿の付け根の辺りを、お尻の方へ撫で下ろし、返す刀で再び撫で上げる。
拓也はしな子が目を覚ましたのにも気付かず夢中になって撫で続けていた。
(え……榎木君?)
うたたねから覚めたしな子がぼんやりと目を開けると、
今まさに自分の服の内側に手を滑りこませようとする拓也がいた。
ありえない光景にしな子は一瞬で目が覚め、
叫び声を上げそうになるのをすんでの所で堪えると、今の状況を素早く考え始める。
(……ど、どうしよう……起きちゃったら榎木君傷ついちゃうかしら……でも……)
しかし、最初の驚きから立ち直ると、しな子の心を興奮が満たしていく。
(榎木君があたしの事触りたいって思ってくれてるんだし、
それに、榎木君の手……気持ちいい……)
さっきまでの葛藤も忘れ、拓也が自分を求めているのに喜んだしな子は、
目を覚まさずしばらく様子を見ることにした。
気配を悟られないよう注意しながら、拓也の手が触れている所に意識を集中させる。
温かく、湿った掌が心地よく、しな子は拓也の身体を抱き締めたい衝動に駆られてしまい、
かなり努力して自制しなければならなかった。

しばらく太腿の柔らかさを楽しむ事で満足していた拓也だったが、
とうとう直接下着を見たいという欲望が抑えきれなくなる。
空いていた左手でスカートの裾をつまむと、もうほとんど迷いも見せず一気にめくりあげた。
生白い太腿の先から淡いオレンジ色の下着が顔を覗かせると、
なんとはなしに細く息を吐き出す。
(これが……女の、人、の……)
幾度か愛やしな子の下着は見たことがあるものの、
これほどじっくりと見るのは初めての拓也は食い入るように下着を見つめた。
(やだ、榎木君が、見てる……)
身動きが取れず、恥ずかしい所を好き放題見られるという状況に興奮するのか、
しな子は普段より身体が火照り、とめどなく蜜が溢れ出していくのを感じる。
(湿ってる……こんな風に、なるんだ……)
下着の中心部が湿ってきている事に気が付いた拓也は、
それを確認しようと染みの中心を中指で軽く触れた。
もう充分な量が溢れているのか、くちゅ、と淫猥な音が拓也の耳に響く。
(だめ、止まら、ない……)
しな子は必死でそれ以上下着を濡らしてしまわないようにしようとするが、
身体が動かせない状態では何が出来る訳でもなく、
むしろそう考えれば考えるほど拓也の指先が触れている所に神経が集中してしまい、
下着を濡らしてしまう。
(んっ……も、う、声……出ちゃいそう……)
すっかり敏感になっている秘所は
下着越しに軽く押されただけで声が漏れてしまいそうになり、
カーペットをかきむしるように掴んで必死で堪える。
(すごい……びしょびしょになってきた……)
どこからこんなにたくさんの液体が湧き出てくるのか、
不思議に思った拓也は確かめようと指の力を少し強めた。
と、わずかに指先が沈みこむ場所を見つけて、押し込んでいく。
(確か、ここに……僕のが、入って……)
そう思ったとき、ふと、自分の下腹部が硬くなっている事に気付いた。
それは実はしな子の胸に触れた時から既に勃起していたのだが、
夢中になっていた拓也は気が付いていなかったのだ。
今までは、ほとんど女性の側から直接的な刺激を受けて、いつのまにか硬くなっていたのが、
初めて何もしないのに勃起した事に、状況も忘れて感動してしまう。
(そうか……こういう、エッチなこと見たりすると、こうなるんだ……)
正座していた拓也は、窮屈そうに下着を押し上げてくるペニスが痛くて、足をくずす。
硬くなった自分の物を触ってみたいとも思ったが、今はしな子の身体を触る方が重要だった。
スリットの長さを確かめるように指を上下させると、下着からこぼれた愛液が絡みついてくる。
その熱さに驚いた拓也は、顔の前に指を持ってくるとしげしげと眺めた。
(なんだか……変な感じ……)
透明の液体を人差し指で触ると、微かに糸を引いて離れていく。
拓也は奇妙な手触りになんとも言えない気分になりながら、再び指を戻した。
もっと深く指を差し込んでみたいと思ったが、下着の上からでは無理な話だった。
しかし、まとわいつく蜜と柔らかい肉の感触が、拓也に最後の砦をも越えさせようとする。
(直接……見たいな……)
そう考えると喉は干上がり、胸の鼓動は痛いほどに全身を打つ。
それは今までのどれよりも甘美な誘惑だった。
大きく音を立てて生唾を飲み込むと、ゆっくりと両手を下着にかける。
(もう、これ以上はだめー!)
目覚めてはいるとはいえ、寝たふりをしている状態で拓也に下着を脱がされてしまうのは嫌だった。
それに、ここで目覚めないと拓也を止める事は出来なくなってしまうかもしれない。
そう考えたしな子は、ほんの少しだけ惜しい気持ちもあったが、目を覚ます事にした。
今まさに下着をずり下ろそうとする拓也の手を慌てて掴む。
「!」
突然腕を掴まれて驚いた拓也の顔は、事態を理解すると一瞬で朱から蒼白へと変わり、
身体はそのまま硬直してしまう。
しな子は拓也の身体を一気に引き倒すと、自分の上に覆い被らせた。
「ふっ……深谷さん、起きてたの!?」
声を裏返して叫ぶ拓也の口を慌てて押さえる。
「実君、起きちゃうわよ」
その一言で動きを急停止させた拓也は、しかしまだ口をもごもごさせている。
「……えっち」
声にわずかに甘い響きを漂わせながらしな子が囁くと、拓也はしどろもどろになって弁明した。
「こっ、これは、その……あの……」
「どうだった? あたしの、か・ら・だ」
傷口をえぐられて拓也はこれ以上ないほど顔を赤くして、押し黙ってしまう。
「気持ち良かった?」
重ねて尋ねられると、拓也は観念したように頷き、捨てられた子犬のような表情で哀願した。
「あ、あのっ、今日のことは……」
「言いふらしちゃおうかな。榎木君が襲ってきたって」
拓也を手玉にとる快感を覚えながら、しな子は意地悪く言う。
「そっ、それは……その……」
「言うの止めて欲しい?」
必死に何度も頷く拓也に思わず笑ってしまいそうになりながら、しな子は拓也の両頬を挟みこんだ。
「じゃ、あたしと榎木君の秘密にしてあげるから、口止め、して」
「え……あの……口止め、って」
戸惑う拓也を尻目に、しな子はさっさと目を閉じて軽く唇を突き出し、拓也を待ちうける。
ようやく拓也はしな子が何を求めているか気が付いたが、
自分からキスをすることになかなか決心がつかず、しな子を苛立たせる。
「早く」
「う……うん……」
しびれを切らしたしな子が薄く目を開けると、ようやく覚悟を決めた拓也の顔が近づいてきた。
ぎこちなく触れた拓也の唇に、柔らかい感触が広がっていく。
それはこの上なく気持ちいいことだったが、それでもまだ羞恥の方が上回るのか、
すぐに顔を離そうとする。
しかし、しな子に後頭部を抱きかかえられてしまい、改めてしっかりと唇を奪われた。
(好き)
唇を重ねたまま、ほとんど声にならない言葉で、しな子は直接拓也の心に届けとばかりに囁く。
しな子は満足げに唇を離すと、至近距離で拓也を見つめた。
「今……何か言った?」
「ううん」
拓也の問いをさらりとかわすと、ふと、横から気配を感じて顔を向ける。
はぐらかされた拓也はなお何か言おうとしたが、しな子が向いた方向につられて振り向くと、
いつのまにか目覚めていた実が興味深そうに二人を眺めていた。
「みっ……みのる……?」
「みのも、ちゅーするの」
拓也は無言のままこちらに擦り寄ってくる実の顔を凝視していたが、
ふっと自分の頭が重くなるのを感じ、そのまま意識が遠のく。
「えっ、榎木君!?」
「にーちゃ?」
心配する二人の声を背に、拓也はゆっくりと石になっていった。



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