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「榎木君の…熱いね」
腰に回した手をそっと下ろして猛々しい、と言うにはまだ迫力が足りないものの、
充分に硬く反りかえった拓也の若いペニスを撫で上げた。
敏感な所を触られて思わず身体を揺らす拓也に、しな子は優しく刺激を続ける。
「榎木君も……気持ちいいの?」
「うん…」
もうすっかり羞恥心もなくなったのか、拓也はしな子の問いにも素直に答える。
「あたしもね…キスしてもらった時からずっと………だから」
そう言うと、ペニスを握っている手の角度を変えて、自分の中心にあてがった。
先端にしな子から溢れている蜜がまとわりつくと、
その熱さで拓也は頭の中の全部が溶けてしまい、一気に全てを埋めてしまう。
まだ狭いしな子の中をかきわけるように入れていくと、
激しく締めつけてくる肉の感触が恐ろしいほどの気持ち良さをもたらした。
しかし、しな子は一気に挿入されてしまった事で強すぎる快感が身体を襲い、
思わず顎をのけぞらせながら拓也の腕に爪を立てる。
「痛っ……深谷さん?」
腕の痛みに理性を取り戻した拓也が顔を上げると、
しな子は痛みを堪えてたしなめるように笑ってみせた。
「もう…そんなに一気に入れちゃだめよ…びっくりしちゃった」
「あ、ご、ごめんね。その…」
「ううん、もう大丈夫。動いて…くれる?」
しな子に求められて、今度は慎重なくらいゆっくりと腰を動かし始めるが、
そこまで自覚していないものの、始めて自分から犯す、
という雄の意識が肉の感覚と交わって、すぐに抽送の速度が速まりだす。
しな子も今度は止めず、拓也の動きに身を任せた。
揺れ始めた布団を見て、愛は拓也がしな子の中に入った事を知る。
嫉妬が愛の胸を刺す。それはいつも口にする悔しい、という感情とは全く違うものだった。
哀しみと、憎しみ。
それは小さな物であったが、好きなはずの二人にそんな感情を抱いた事に驚く。
(…でも、好き)
その気持ちもまた嘘ではない、本心だった。
ただ、拓也に対するそれとしな子へのそれとは微妙に異なり始めている事も
悟らざるを得なかった。
(…ま、いいわ。今は考えるのよしましょ)
考えると袋小路にはまってしまいそうで怖くなった愛は
頭からそれを追い出すと、目の前の光景に集中する事にする。
一歩引いた場所から他人のセックスを見るのはもちろん初めてだった。
さっきまで心の中にあった複雑な思いとは裏腹に、
二人の行為を見ていた身体は反応して、
股間から溢れる蜜はもうすっかり下着を濡らしてしまっている。
ためらう事なく指を下着の中に潜り込ませると、わざと少し乱暴に動かす。
硬くなっている陰核を少しつねりあげると、
思わず声を上げてしまいそうになって慌てて布団の端を噛むが、
指はむしろ声を出させようとするかのように動きを強めていく。
形だけ二、三度膣口を指で撫でると、すぐに我慢できなくなって膣内へ沈める。
拓也のやり方を思い出して、一気に奥深くへと差し込むと、
そのまま軽くのぼりつめてしまった。
(拓也…君…)
しかし絶頂の波が引いても、拓也の事を考えただけで火照りは再び愛の身体を嬲りだす。
愛は想いを覆い隠すように昂ぶりに身を委ねて、埋めた指をそのまま中でくねらせる。
ほどなく次の波が愛をさらい、ゆっくりと押し流していくが、
波が引いた後に残ったのは切なさだけだった。
頬に一筋の涙をこぼしながら、愛は二人の声が聞こえないように布団の中に潜りこんだ。
拓也が、自分の中にいる。
そう考えただけで、しな子は達してしまいそうだった。
今までも拓也を迎え入れた事はあったが、
受け入れるのと挿入されるのとでは受ける快感は全く違うものだった。
舌技と同様、腰の動きも前後に動かすだけの単純な物だったが、
そんな事はささいな事だった。
組み敷かれて下から拓也の顔を見上げると、言いようのない幸福感がしな子を満たす。
拓也もまた、自分から腰を動かす事で生じた新鮮な快感の虜になっていた。
自分から動く事で、己の精を搾り取ろうと包み込む柔肉の動きがより感じられて、
本能的に腰を動かす。
ひと突きごとに増していく甘い痺れが腰のあたりに集まっていくのを感じ、
それは更にしな子の中にある若茎にたぎっていく。
「ふかや…さん…」
「榎木君、お願い、外…に…っ………!」
うわ言のようにしな子の名前を呼ぶと、
最後に残った理性のひとかけらでしな子が拓也に頼む。
ほとんど反射的に拓也は応じて、しな子の中からペニスを引きぬくと、
勢いよくほとばしった精がしな子の腹部を汚す。
しな子の横に崩れ落ちながら、拓也は快感の余韻に身を浸していった。
いつの間に帰ったのか、拓也が目覚めるとしな子の姿は無かった。
下半身裸のままで眠ってしまった事に気付くと、慌ててズボンを履く。
外の寒さに思わず身震いした拓也は、同時に身体の芯に温もりが残っている事を感じ取る。
「気持ち…良かったな…」
思わず口に出してしまって、慌てて誰も聞いていなかったか周りを見渡すと、
隣の布団が微妙に盛り上がっていた。
「…まさか」
そっと布団を持ち上げて見ると、そこには身体を丸めるように眠っている愛がいた。
冷えた空気が布団の中に入りこんで、愛を目覚めさせる。
「…あら、おはよう」
驚いて口が聞けない拓也に昨夜の事など何もなかったように挨拶をして、
目をこすりながら起き上がると、二人につられるように実も目を覚ました。
「…おはよーなの」
まだ半分眠っている実は兄の姿を探して首を回したが、
そこに見慣れない人影をみつけて視線を固定させる。
「おはよう、実くん」
「はよーごじゃーます……う? おねちゃ、めっしたの?」
「え?」
近寄ってきた愛に不思議そうに尋ねる実に二人が声をあげるが、
愛の方が質問の意味に早く気付いて、慌てて顔をパジャマの裾で拭いた。
「ううん、なんでもないの。ね、実くん、今日は私と一緒に雪遊びしようか」
「あい」
「じゃ、そういう事だから榎木君、またご飯の時ね」
「う、うん」
巧みに拓也に顔を見られないようにしながら、愛は部屋を出て行った。
本人に聞きそびれた拓也が、無駄だと思いつつ実を抱き上げて聞いてみる。
「槍溝さん…どうしたの?」
「う? うーんと、うーんと……うー」
「もっ、もういいよ実。ほら、顔洗いに行こう」
何かを言おうとしているのだが、言葉が見つからないらしく、
だんだん不機嫌になり始めた実を慌てて抱き上げると洗面所に向かう。
(槍溝さん…どうしたのかな)
愛が自分の為に涙を流していたなどと知る由もなく、
拓也は自分を不甲斐なく思いながらも、ただ漠然と愛の体調を気遣う事しか出来なかった。
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