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「良かった。安心したわ」
「安心?」
「ええ。今こうやって聞くまで、もしかしてもう深谷さんに決めた、
とか言われたらどうしようってずっと怖かったのよ」
愛はうっかり口を滑らせてしまった事が最悪の結果を招かずに済んで、
心底ほっとしたように笑う。
拓也はその笑顔に思わず見とれてしまい、
自分でも良くわからない気持ちが湧き起こってなんとか慰めようとした。
「……あのね」
「何?」
「あの、だいぶ……深谷さんと槍溝さんのこと、その……
好き、って言うのとはまだ違うかもしれないけど」
口を開いたのは良いものの、そこまで言うのが精一杯で、
それ以上自分の想いを正確に伝える自信が無くなった拓也は口を閉ざしてしまい、
気持ちが伝わったかどうか、図工の作品を先生に見てもらう時のような気持ちで愛の顔色を伺う。
「ありがとう……優しいのね」
愛はさっきとは微妙に異なる笑顔を浮かべながら小さく頷くと、
拓也からわずかに視線を外した。
その言葉に含まれた複雑な気持ちなど判る筈もない拓也は
どんな表情をして良いか判らず固まってしまう。
「……ごめんね」
「いいのよ、私こそ変なこと聞いてごめんなさい」
結局謝るしか出来ない拓也に、愛も頭を軽く下げるが、なぜか中々顔を上げようとしない。
心配しつつも声をかけようか迷っていた拓也の声が喉まで出かかった時、
愛が意を決したように顔を上げた。
「ね……拓也君」
「何?」
「……して欲しいことがあるんだけど。だめ?」
「……いい、よ」
いつもと違い、消え入りそうな声で頼む愛に驚きつつ、拓也はかすれた声で答える。
「ありがとう」
愛は小さく礼を言うと拓也の腕を取って立ちあがらせると、
ベッドの横にもたれるように座らせた。
「そこに足広げて座ってくれる?」
「……こう?」
「そう」
自分が入れるだけのスペースを拓也の足の間に作らせると、
そこに後ろ向きになって座り、
うっとりとした表情で拓也の胸に頭を預けながら、腕を取って自分の腹部に重ねる。
「一度……こういうのやって欲しかったのよね」
今までの経験から、ついもっと直接的なことをすると思ってしまっていた拓也は、
想像が先走ってしまっていた自分に赤面してしまい、
背中を向けているために顔を見られなかった事に胸を撫で下ろすと、
お詫びのように愛のほっそりとした身体に回した手に少しだけ力を込めた。
愛は淡い香りが漂う髪の毛をかすかに揺らすと、
身体の中心を護る様に置かれた拓也の手に自分の手を重ねてきゅっと握り締める。
「しばらくこうしててくれる?」
「うん」
目を閉じて身を任せている愛の幸福そうな表情に拓也の胸は静かに高鳴っていく。
それは今まで感じたどの想いとも違う、不思議な、暖かい気持ちだった。
「ん……なあに?」
「な、なんでもないよ」
「そう」
拓也が少し動いてしまったのか、愛は目を閉じたまま尋ねたが、
拓也の答えにそれきり愛は口を閉ざして、再び身を委ねる。
拓也も穏やかに心が満たされていくような今の雰囲気が心地よくて、
そのまま時間を忘れて静かに息をする愛に、
やがて拓也の呼吸が重なり、ひとつになっていった。

まどろみから覚めた拓也は、身体を動かさないよう注意しながら時計を見る。
それほど経ったようには思っていなかったが、
もう時計の針は小一時間ほども進んでいた。
傍らの愛の様子を伺うと、規則正しい息使いが聞こえてくる。
愛のこれほど無防備な姿を見るのは始めての拓也は、
良くないと思いつつも自分の腕の中にある身体を観察してしまった。
胸のふくらみはかすかに、ゆっくりと上下していて健康的な色気を感じさせる。
(きれい……だな……)
そんな事をぼんやりと考えながら自分の足の内側にある白い、
ほっそりとした足を見ていた拓也だったが、
若い肉体はたったそれだけの事で反応してしまう。
(ど、どうしよう……)
拓也は動揺したが、かといって動く訳にもいかず、
愛が目覚める前に収まってくれるよう必死に静めようと関係ない事を考える事にした。
さっきまで緩やかな満足感に身を浸していたのに、
目が覚めた途端にいやらしい事を考えてしまう自分に嫌悪感を感じながら
実の事や夕食の支度の事を考えようとするが、
そうすればするほど割り込むように愛の太腿の白さが脳裏をよぎり、
股間の物はますます大きくなってしまう。
「……ん」
その時、動揺が伝わったのか、拓也の願いも空しく愛が目を覚ましてしまった。
拓也の腕の中がよほど気持ち良かったのか、満足げに息を吐き出すとゆっくりと目を開く。
「あら?」
背伸びをしようとした愛は拓也の腕の中にいる事を思い出すと
動作を止めて拓也に身体を押しつけるようにするが、
尻の辺りに硬い物が当たるのを感じて、わざとらしく驚いてみせた。
「これは……その……」
「ふふ」
「あの……ごめんね」
「どうして?」
赤面しながら情けない声で謝る拓也に、嬉しそうに顔を擦りつけると不思議そうに尋ねる。
「だって……」
「だって、私で気持ちよくなってるってことなんでしょ? 嬉しいわよ」
そう言いながらそっと拓也の手に自分の手を重ねると、服の中に導く。
「私もね……そろそろ触って欲しいな、って思ってたの」
胸の少し下辺りまで来ると、そこから先は拓也に自分で動かさせようと手を放した。
拓也の手は少しの間どうすれば良いのか迷うようにその場に留まっていたが、
やがて指先だけをじりじりと動かして愛の小さな丘を目指し始める。
その動きを誉めるように愛は拓也の太腿にそっと手を置いてやんわりと掴むと、
独り言のように呟いた。
「後ろから触られるのって、結構ドキドキするわね」
「そ……そうなの?」
思わず手の動きを止めてしまう拓也に、愛は笑いだす。
「でもね……すごい……気持ちがいいの。だから、続けてくれる?」
「……うん」



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