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「ごめんね。でも、わたしももう……我慢、出来なくなっちゃった」
史穂は立ちあがると、手早く衣服を脱いでいく。
上着とスカートを脱いだ所で、何かに気がついたのか、
「ちょっと……待っててね」
そう言い置いて隣の部屋に姿を消した。
肩で息をしながら拓也はその後姿をぼんやりと見送る。
下着姿の史穂の尻が、歩く度に軽く揺れて、妙に惹きつけられてしまい、
それに反応して、下半身の物がビクン、と跳ね、思わず握り締めてしまった。
(これが、僕の……)
今まで、時々朝起きた時などに勃起していることはあったが、まだ意識はしていなかった。
しな子と初めてセックスした時も、愛にフェラチオをされた時も、
拓也は自分では全く触れていなかったのだ。
(こんな風に、なるんだ……)
それが今初めて握ってみて、自分の身体の中の、知らなかった新しい事実に戸惑い、
史穂が感じたように、拓也も手の中に握っている物の感触を不思議そうに確かめる。
(こんな感じ……だったかな?)
ゆっくりと自分の手を上下に動かしてみる。
「うあっ……んっ」
途端に激しい快楽が襲ってきた。
まだ性の快楽に慣れていない拓也は、本能に抗うことが出来ず、手が勝手に動いてしまう。
「拓也君……だめよ、まだ」
隣の部屋から戻ってきた史穂が、自慰を始めている拓也を見つけて慌てて止めた。
「それは、ひとりの時にするのよ。今は……」
「あっあの、これは……その……」
自慰の最中を見られた拓也は、自分がどうしようも無くいやらしい人間なのではないかと錯覚して、
自己嫌悪に陥ってしまったようだったが、史穂はうつむいてしまった拓也の頬をそっと撫でながら、
優しく諭した。
「大丈夫よ……男の子は、皆そうなんだから」
その言葉に少しだけ慰められた気がして、拓也は顔をあげる。
「パパも……、パパも、そうだったのかな?」
「拓也君のパパは、ママのこと好きだったと思う?」
強く、大きく頷く拓也。
「だったら……パパも、ママにはいやらしかったと思うわ。それが、愛するってことだから」
「そう……なの?」
「そうよ。だから、拓也君も心配しないで。……はい、拓也君、これ、つけてくれる?」
史穂はそう言うと、拓也にコンドームを差し出した。
「え、何……これ?」
「あ、そうか、まだ知らないわよね。これをね、拓也君のここに被せると、
赤ちゃんが出来にくくなるの」
「なんで? みんな、赤ちゃんが欲しいから、こういう事するんじゃないの?」
「そうね……本当はそうよ。でも、人は、愛しあいたいだけ、って言う時もあるの。
そう言う時は、こういうのを使うのよ」
史穂は一袋破くと、ぎこちない手つきで拓也の物に被せる。
「これで……出来たわ。あとは……」
拓也の目の前で、史穂はゆっくりと下着を脱いで行くと、後向きになって机に手をついた。
「お願い、拓也君」
「う、うん……」
拓也は立ちあがって史穂の腰を掴むと、勘で史穂の中に挿入しようとするが、
一度しか経験していない拓也が後ろからの挿入など出来るはずも無く、
ぬるぬると、史穂の膣口を滑るだけで上手く挿入することが出来ない。
「っん、拓也君……ちゃんと、入れて……」
焦らされている、と感じた史穂が切なそうに腰をくねらせて誘う。
「だ、だって、……良くわからないよ」
助けを求める拓也に、史穂は手を取って自分の物を掴ませると、入り口にあてがわせた。
「ここ……よ」
つぷ、と音がして拓也の物がわずかに史穂の中に入った。
と、まだ加減の解らない拓也は一気に奥まで突き入れてしまう。
「うぁっ!」
快感と言うよりも痛みに近い物が走り、史穂は背中をのけぞらせて悶えた。
「お、お姉さん……?」
驚いた拓也は声をかけるが、史穂は返事も出来ずに身体を硬直させている。
もしかしたら、軽く達してしまったのかもしれない。
拓也はそれ以上どうしようもなく、史穂の腰を抱いたまま立ち尽くしていた。
と、目の前の生白い史穂の背中がゆっくりと元の姿勢に戻っていき、背骨が浮き上がってくる。
思わず指でたどってみると、再び史穂の背中が跳ねた。
さっきほどでは無かったが、同質の反応に、拓也は慌てて指を引っ込める。
「もう」
顔をこちらに向けないまま、史穂が息を切らせながら拓也を軽くなじった。
「そんなに一気に入れたらダメよ。
女の子はね、キスする時と入れてもらう瞬間が一番嬉しいんだから、もっとゆっくりお願い」
「ご、ごめんなさい」
「それにね、女の子はあんまり一度に気持ち良くなっちゃうと、
刺激が強すぎておかしくなっちゃうこともあるから気をつけてね」
「う、うん」
自分の言うことをなんでも素直に聞く拓也に、史穂は支配欲めいた快感を覚える。
「それじゃ、ゆっくり、動いて……ゆっくりね」
史穂に言われたとおり、今度は極端にゆっくりと腰を引いていく。
すると、逃すまいとする史穂の肉壁の動きが鮮明に伝わってきて、拓也は思わず声を上げてしまった。
「う……あ……。何、これ……お姉さん……っ」
「き、気持ちいい……っ、でしょ? ゆっくり、動いた、方……んっ」
ほとんど抜けそうな所まで拓也が腰を引くと、史穂が再び拓也を促す。
「今度は、また、奥まで……ああっ、そう、そうやって、動かして……んあっ」
しな子の物とは違う、柔らかく、うねるように拓也の物を締め上げてくる史穂の膣内に、
拓也はあっという間に何も考えられなくなってしまった。
「お姉さん、気持ち、いい、よ……うぁ、こん、なの……すごい、よ」
ゆっくりと動けたのは最初の二、三回だけで、後は本能のままに腰を打ちつけ始めた。
「そう、……上手……よ、拓也君」
激しい動きにも、今度は史穂も止めず、むしろ、
より深い挿入感が得られるように拓也の動きに合わせて積極的に腰を振る。
「ん、拓也君……いいの、気持ち……いい、の……」
最初の衝撃の強さから、足を踏ん張って堪えていた史穂の身体から徐々に力が抜けていった。
「あん、……そこ、そこ……っ、ああん、もっ……と……」
腰を支える拓也の手に、史穂の重みが伝わってくる。
史穂は必死にテーブルにしがみつきながら、これ以上崩れ落ちてしまわないように堪える。
「拓也君……拓也君、もう、だ、め……わたし……い、く……うあぁぁぁぁっ!」
限界が来たのか、史穂は再び大きく背中を反らせて叫んだ。
と同時に、史穂の肉壁が、けいれんするように激しく拓也の物を締め上げる。
「う、あ……あ……!」
もうほとんど、史穂と繋がっているところしか感覚がないくらい快楽に囚われていた拓也は、
史穂の最後の締め付けに全く我慢できず、そのまま史穂の中に精を放った。
「あ……ぅ、ん……はぁ、はぁ……っふ……」
力尽きた史穂がテーブルに倒れこみ、その上にやはり力尽きた拓也が、折り重なるようにしがみつく。
二人は大きく息をしながら、しばらくそのまま余韻に浸っていた。
「あの、お姉さん」
「なに?」
「やっぱり、こんなこと、……良くないと思う」
拓也は拓也なりに真剣に考えて言ったのだが、
あまりにも形にはまった台詞に、思わず史穂は吹き出してしまうと、拓也のおでこを軽く小突いた。
「大丈夫よ。もうしないから」
「うん…その方がいいよ」
拓也はおでこを小突かれた理由は解らなかったが、
史穂がこれからもこういうことをする気が無いのを聞いて安心していた。
「そうね。もう、皆と一緒の時で無いと拓也君には家に来てもらわないことにするわ。それでいい?」
「うん。智子さんとかと一緒だったら僕も来るよ。実も、疾実君のこと気に入ったみたいだし」
にっこりと微笑む拓也だったが、史穂の次の言葉を聞いて笑顔がはりついてしまう。
「でも、またお姉さんのおっぱい欲しくなったら、こっそり来ていいのよ」
「〜〜っ」
色恋話をする度に照れてしまう拓也が面白くて、史穂はついついからかってしまうのだ。
「あ、あと」
史穂は拓也の手にそっと何かを握らせる。
拓也が手の中を覗きこむと、そこにはコンドームが数個収められていた。
「拓也君も、そろそろ要るんじゃない? これは、お姉さんからのプレゼント」
「ぼっぼくっ、こんなのまだ……」
「にーちゃぁ、どこにゃ〜」
「ほら、実君こっち来る前に、早くしまって」
慌ててつき返そうとする拓也の声を遮るように実の声がすると、
史穂は強引に拓也の手をポケットに押しこんだ。
「にーちゃぁ〜……う? にーちゃ、かおあかいのー。あっついのー?」
「っ……べ、別になんでもないよ。そ、それじゃ実、そろそろ帰ろうか」
「あい」
「拓也君、今日はありがとう。それじゃ、ね」
史穂は拓也達を玄関まで送ると、意味ありげにウィンクして扉を閉めた。
拓也は実と手を繋ぎながら、なんとはなしにポケット越しの感触を確かめてみる。
(そんなに、女の子が嫌じゃ無くなった……かな?)
なんとなくしな子、愛、史穂、そして由加子の顔を思いだして、
自分でもよく解らないまま、拓也はくすりと笑った。
「にーちゃ?」
突然笑った拓也を、実が不思議そうに見上げる。
「なんでもないよ。そうだ実、早く帰って餃子作ろう」
「ぎょーにゃー」
嬉しそうに飛び跳ねる実を見て、拓也もつられて笑うと、
もう陽が沈みかけている道を家路へと歩き始めた。
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