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「脱がせる……わね」
愛はわずかにかすれた声で言うと、抑えようとする拓也の手を逆に掴んで、一気に引き降ろした。
圧迫から解放されたペニスは、その存在を誇示するようにそそり立つ。
「もう……待ちきれないって感じかしら」
愛がそっと握りこむと、言葉通り、待ちきれないかのように熱く脈動した。
「あの、その……」
「私も……ほら……」
恥ずかしさに焦る拓也をなだめるように、愛が自分の秘所を触らせると、
拓也の指先に熱い物がまとわりついて粘着質の音を立てた。
「ね……」
「う……うん……」
「だから、もう……入れる、わね……」
「そうだ……あ、あのっ」
拓也は突然思い出すと、足元のズボンから財布を取り出して中からコンドームを取り出した。
「こ、これ……着けるね」
「拓也君、それ」
「あ、あの、赤ちゃんは、出来たらまずいと思って……」
「……どこで覚えたの? そんなこと」
前回あれほど受身で、しな子からの情報と合わせても、
拓也がこの手のことに詳しくも、興味があるとも思えない。
愛はすっと顔を近づけると、鼻が触れる程の距離まで寄せる。
「!」
拓也は顔をそむけて目線を外そうとするが、愛にぐっと顔を挟まれてしまった。
「ど・こ・で?」
「あ、その、あの……」
しかし、返答に詰まる拓也を、愛はそれ以上追及しなかった。
「まぁいいわ。競争率高いのは解ってたし」
本心か否か、妙にさばけた事を言うと、愛は拓也の手からコンドームを取り、
包みを破いて中身を取り出すと再び拓也の手に収める。
「それじゃ、着けて」
「う、うん」
多少時間がかかったが、ようやく着け終わると、採点を求めるように愛の顔を見た。
しかし、拓也が見上げた愛の顔は、さっきまでとは別人のように緊張していた。
初めて見る愛の表情に驚く拓也。
良く見ると、身体全体も小刻みに震えている。
「槍溝さん……?」
呼ばれた愛は、我にかえって拓也を見返すと、意を決して笑いかけ、
改めて拓也のペニスを掴むと、恐怖を振り払うように一気に腰を沈めた。
「それじゃ……入れるわね、拓也君」
「う……あ……やり、みぞ、さん……」
拓也の下半身を熱い物が包み込む。
しかし愛は、初めての挿入の、想像以上の痛みに全身を貫かれ、返事どころではなかった。
拓也の肩に載せた手に激しく力が入り、爪を立てる。
声を漏らすまいと必死に歯を食いしばるが、こらえるのはそれが限界で、
目からは一気に涙が溢れ出す。
肩に食い込む爪の痛みを、拓也は愛に訴えようとするが、
腹にこぼれた熱い物が愛の目から流れた物である事を知って、言葉を失ってしまう。
愛はそのまましばらく微動だにしなかったが、やがて、肩に食い込む力が抜け、うっすらと目を開けた。
「槍溝さん……」
ようやくそれだけ言うと、拓也は愛の涙を指先で掬ってやる。
それをきっかけに、再び愛の目から涙が流れた。
「拓也……君……」
「あ、あの……」
口を開くが、結局、しな子の時と同様に、何も言えない拓也。
「ありがとう」
短い一言に膨大な想いをこめて言うと、愛は拓也の首に腕を回した。
拓也も自然に愛の身体に腕を回すと、繋がったままキスをする。
唇が離れると、いつもの調子を取り戻したのか、少しひきつりながらも、いつもの笑顔を見せる。
しかし、拓也の肩の赤い爪痕に気がつくと、一瞬でその笑顔も消え、気遣う表情になった。
「ごめんねぇ拓也君、肩、痛い?」
「え、あ、ううん、平気……槍溝さんこそ、大丈夫?」
拓也は処女喪失の痛みなど知る由も無かったが、自らの肩に食いこんだ爪とこぼれた涙から、
槍溝が感じた痛みがどれほどの物か、あるていど想像がつく。
「ええ、大丈夫……それじゃ、動くわね」
本当はまだ痛くて泣きそうだったが、これ以上拓也を心配させまいとして気丈に振舞う愛。
それでも、わずかに腰を浮かせただけで新たな痛みが走り、思わず眉をしかめる。
「つっ……っ」
もう爪こそ立てていなかったが、拓也の肩を力いっぱい掴みながら、
慎重に、少しずつ腰を動かし始めた。
それでも、ほんの少し動かすだけで、焼けるような痛みが愛を襲う。
再び動きを止めてしまった愛に、拓也はいたたまれなくなってそっと背中に手を回した。
「拓也……君?」
その感触に愛は驚いて拓也の顔を見る。
「あの、そんなに無理しなくても……また、今度とかでもいいよ?」
それは女の子にとっての初体験、と言う物の重みを知らない発言ではあったが、
気遣わしげな拓也の顔が急ににじんでいった。
「槍溝さん……? 僕、変な事言った?」
「ううん……これは……違うの」
ようやくそれだけを口にすると、愛は拓也の両頬を挟んで、そっと口づける。
愛の涙が拓也の唇の端に触れて、口の中に滑りこんできた。
(涙なのに、甘いや……なんでだろう?)
しかしそれについて考えようとする前に、愛の唇は離れてしまう。
「拓也君……手を、握ってくれる?」
拓也が頷いて差し出した手を、愛はしっかりと指を絡めて握った。
愛の手はじっとりと汗ばんでいて、緊張と、痛みが伝わってくる。
不安そうに見つめる拓也に軽く笑って見せると、愛は再び腰を動かし始めた。
痛みに耐えて数回腰を動かすと、最初の激痛は引いて、鈍い、断続的な痛みに変わっていく。
それに加えて、痛みの中心部から、少しずつ、寄せては返すように、
別の、痺れるような感覚が下腹部から広がり始めた。
「あ……ん……っふ、あ……」
漏れる声に甘いものが混じり始めると、その感覚は爆発的に広がり始めて、
身体中から力を奪っていく。
「拓也君、ん、だめ、もう、何も……考えられない……」
愛の声が途切れがちになり、拓也の手を握る力が一層強くなる。
「………っっ!」
愛は声にならない叫び声を上げると、大きく背を伸ばして絶頂を迎えた。
拓也のペニスを包み込んでいる柔肉が、一緒に絶頂を迎えさせようと激しく収縮を繰り返す。
「や、槍溝さん、僕、もう……!」
それは未だ経験の少ない拓也にとって抗えるはずもなく、
腰が砕けるような快感と共に、愛の中に己の精を放った。
「拓也……君……」
愛は夢心地で呟くと、拓也の胸に倒れこむ。
拓也は射精に伴う開放感に包まれながら、愛を強く抱き締めていた。
二人はなんとなく無言のまま服を着始めたが、突然愛が思い出したように口を開いた。
「そういえば」
「な……なに?」
どうも苦手意識が植え込まれてしまったのか、拓也は普通に話をするだけでも身構えてしまう。
「途中から、また槍溝さん、に戻ったでしょ」
「あ……」
また何か無茶な事を言われるのだろうか。拓也は半ばあきらめつつ謝った。
「うん……なんか慣れなくって……ごめんね」
しかし、怒られると思っていた拓也の想像とは裏腹に、愛は笑いだす。
「私も……拓也君に愛さんって呼ばれると、恥ずかしくて笑いそうになるの。
だから、今まで通り槍溝さん、でいいわ」
「うん」
拓也は安堵のため息を押し殺して頷くが、次の一言でたちまち顔が引きつった。
「あ、でも、罰ゲームの方はちゃんとやってもらうわよ」
「!」
「何にしようかしら。うーん…………」
唇に指を当てて、真剣に考え始める愛。
拓也は慌てて身支度を整えると、愛の背中を押すように音楽室を後にする。
その時、よほど焦っていたのか、拓也の手が愛のお尻に触れてしまった。
「! ……セクハラね」
「こっ、これは、その……違うんだってば」
「セクハラの罪も罰ゲームに加えないと」
愛は何やら考えながら歩き始め、後にはひとり立ちつくす拓也が残されていた。



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