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階下のトイレに着くと、拓也が待ちきれないように駆けてきた。
「あ、お姉さん、買ってきてくれた?」
「ええ。……でも、渡すのはちょっと待って。トイレ行きたくなっちゃった」
焦る拓也を軽くかわすと、明美は女性用のトイレに向かう。
「あ、そうだ」
「え?」
一瞬の隙を突いて拓也の腕を掴む。
思わず声を上げそうになる拓也の口を塞ぐと、強引に個室の中へ連れ込んだ。
「いい? ここで声出して見つかったら、恥ずかしいのはもう拓也君の方なのよ?」
小声で、しかしきつめの口調で脅迫して拓也をおとなしくさせると、塞いでいた口を離してやる。
少し苦しかったのか、肩で息をする拓也を背後から抱き締めると、ズボンのチャックに手をかけた。
「お、お姉さん……」
明美の意図にようやく気付いた拓也は小声で叫んで抵抗を試みるが、
女性とはいえ成人している明美を振りほどくことは出来ず、
ズボンはあっという間にボタンまで外されて、かろうじてお尻にひっかかっている状態になってしまった。
「大丈夫よ。ここは紳士服の階だからこっちを使う人はほとんどいないわ」
明美はさっきと矛盾することを言いながら強引に話を進めていき、
手早くズボンを脱がせると、隠そうとする拓也の手の上から股間を揉みしだく。
「やだ……! いやだよ、やめてよ……!」
しかし、刺激を加えられた若い性器は、
当人の意思とは関係無く明美の手の中で急速に大きく、硬くなってしまう。
明美は下着を履かせたまま右手で器用にペニスを取り出すと、優しく握り締めた。
まだかろうじて明美の手の中から飛び出す程度の大きさだが、
そりかえるように上を向き、熱く脈打っているそれを、ゆっくりとしごき始める。
拓也の肩越しに下を覗くと、ピンク色をしている亀頭が、
明美の手の動きに合わせてわずかに先端が露出した。
「可愛い……まだ、被ってるんだ」
被ってる、という言葉の意味が拓也には解らなかったが、
耳元で囁く明美の声がくすぐったくて、肩をすくませて耳を掻こうとする。
その動作が可愛らしくて、明美は思わず拓也の耳の裏に舌を這わせた。
舌先だけでつつくように耳たぶを舐めると、
そのまま唇で甘噛みしながら丹念に耳全体をついばんでいく。
「うぁ……ぁ……んっ、……っ……」
拓也は耳を舐められただけで頼りない声を上げる自分に驚いていた。
どこか遠くから聞こえてくるような、不思議な感覚。
明美の舌が耳の中まで入ってくるとその感覚は一層強まり、膝から力が抜けていく。
その場に崩れ落ちないように明美の手にしがみつきながら、ようやく身体を支えた。
(拓也君って、耳が弱いのね)
自分の腕の中でぐったりとしていく拓也に愛らしさを感じて、明美は更に耳を責め続ける。
もうほとんど置かれているだけになった拓也の手とは対照的に、
明美の手の中の拓也のペニスは、数回上下に擦ってやっただけで、
先端から透明な液を吐き出し始め、はちきれんばかりに膨れあがり、
痛々しいほどに存在を主張していた。
明美は思わずその場で迎え入れたい衝動に駆られたが、さすがに理性に歯止めをかけさせる。
(その分、もう少し遊んじゃおうっと)
しかしもちろんあっさりと解放してやる気もなく、
拓也の耳から舌を離すと、触れるか触れないかの位置で息を吹きかけた。
「んっ……!」
拓也はうなじの毛が総毛立ち、そこから身体中を走りぬけた快感に身を震わせる。
「拓也君、耳をこうされるのが好きなのね」
わざと拓也の被虐心をそそるような言い方をして、明美は反対側の耳にも愛撫を開始した。
「そんな、こと、ない……」
拓也は懸命に否定するが、明美の舌が自分の耳の中に入ってくると、
声を出すのも面倒になる位の快楽が襲ってきて、言葉を続ける事が出来ず、
首を振るのが精一杯なってしまう。
「そんな事言って……拓也君、こんなに気持ち良さそうにしてるじゃない」
「だっ、て……」
拓也が言葉を続けようとした時、突然遠くで扉の開く音がして、
こちらに近づいてくる足音が二人の耳に入ってきた。
二人は思わず息を止めて扉の外の気配に注意を向ける。
足音は拓也達の個室を通りすぎて止まると、すぐ近くで扉を開けて入っていった。
(どうしよう、隣だ……!)
それまでの、受身とは言え確実に高まっていた快感が一気に醒め、
見つかるかもしれない、という恐怖が拓也の心臓を鷲づかみにする。
と、音がした時から今まで動きを止めていた明美の手が、激しさを増して再び動き始めた。
「!!」
何考えてるの、と拓也は振り向くと明美を睨みつけて無言の抗議をするが、
明美は手を止めるどころか、拓也のうなじに口を寄せると激しく吸い上げる。
舌先に唾液を絡めて転がすように塗りつけると、
少しずつ唇を動かして吸い上げる動作と唾液を塗り広げる動作を交互に繰り返す。
首筋をむず痒いような、もどかしい感覚がじわじわと浸していくと、
一度高まっていた性感はすぐにぶり返して、拓也の身体全体に広がっていった。
(う、ぁ……声、出ちゃうよ……!)
拓也は歯型がついてしまうほど強く指を噛んで必死に耐えていたが、
明美の舌が首筋全体を這い回った頃には、それも限界に近づいていた。
しかし、拓也が堪えきれなくなって唇から指を離したその瞬間、
絶妙のタイミングで明美は手を離すと、それ以上の刺激を止めてしまう。
拓也はたまらず明美の方を向いて切なそうに目で訴えかけるが、
明美は意地悪そうに隣室の壁を指差すだけだ。
(そんな……)
いくら拓也でも、射精の寸前で止められて本能に抗えるはずもなく、
脳の全てが精を放たせようと身体に命令を下す。
激しい自己嫌悪に駆られながらも、拓也は自分の股間に伸びていく手を止めることは出来なかった。
それでも、つかむ寸前になって、わずかに残った理性が、手の動きを鈍らせる。
その時、隣の個室から水音がして、中に入っていた女性が出ていく音が伝わってきた。
明美はその機を逃さず、拓也の手首を掴むと、
一気に握らせて、拓也の手の上から再びしごき始める。
「もう声を出しても大丈夫よ……拓也君」
「うぁっ……!」
明美の声が待ちきれなかったかのように、拓也の喘ぎ声が重なって、
静寂が訪れた女子トイレに響き渡る。
刺激を失って柔らかくなり始めていたペニスは、
しごくまでもなく触れられただけですぐに硬さを取り戻し、
快感というよりも、痛みに近い刺激が拓也に襲いかかった。
「ん……ぁ……、っ、………ぅ」
「こら…ちょっと声が大きすぎるわよ」
明美は拓也の唇に爪を当てると、軽く爪先を立てる。
「口……開いて」
痛みに反応したのか、すぐに拓也は唇を開いて明美を受け入れた。
明美は半分ほど指を埋めると、ゆっくりと拓也の舌先を舐り始める。
「ん……」
歯茎から上あごの部分まで、丹念に、指全体で愛撫を開始する。
自分でも触れたことのない場所を弄られ、
拓也は激しい嫌悪感を感じて舌で抵抗しようとするが、
それは明美の指を喜ばせるだけになってしまう。
やがて口腔内を隅々まで這い回った指が、満足そうに唇を離れた。
まとわりついた唾液のせいで艶かしく光る自分の指を、明美は愛しそうに口に含む。
拓也と自分の唾液を口の中で混ぜ合わせると、それだけで下半身が熱くなり、
新たな蜜が下着から染み出してくるのがわかる。
「拓也君……」
興奮した明美は、そのまま拓也を達しさせようと、手の動きを早めていった。
(ぅあ、何か……来る……!)
一度射精を止められている拓也は、明美の手の中にある己自身から、
今までに感じた事の無い強烈な快感が立ち上るのを感じ取る。
「っ……!」
拓也の口から小さく叫び声が漏れて、明美の手の中で拓也のペニスが大きく震え、精を吐き出す。
身体をくの字に折り曲げて射精の快楽に打ち震える拓也の身体を抱きとめながら、
明美もまた軽い絶頂に身を任せていた。
(それにしても、寝顔といい泣き顔といい、拓也君って本当にこういうの似合うわよね)
(あたし……、やっぱり、ちょっとSっぽいの、好きなのかな……
拓也君の顔見てるだけで、気持ち良くなっちゃった……)
(ううん、きっと、拓也君だからよね。沢田君との時はそんなSとかなんて考えたことないし)
ぼんやりとそんなことを思ってしまい、慌てて首を振る。
(ごめんなさい沢田君! あたしは不実なことをしてしまいました)
心の中で恋人に謝りながらも、拓也を抱く手は中々離そうとしない明美だった。
「ひどいよ、お姉さん……」
後始末を終えた明美がズボンを履かせてやると、恨めしそうに拓也は明美の顔を見る。
「ごめんね」
拓也君があんまり可愛かったからつい、と口にしそうになって、
前にも同じことを言いそうになって弟に止められたのを思い出して、かろうじて喉元で止めた。
「でも、気持ち良かったでしょう?」
露骨にその場をごまかす為に言った明美の言葉にも、拓也は生真面目に反応してしまう。
「それは……その………」
拓也が無言になったのをいいことに、明美は一気にたたみかける。
「ね? だから、今日のことは二人の秘密ってことにして…」
秘密、と明美が口にした途端、拓也は弾かれたように身体を離して真剣な表情で明美を見た。
「藤井君には……藤井君には言わないでね。絶対だよ」
それが自分の立場を逆転させてしまったのにも気付かず、必死に拓也はすがりつく。
内心の安堵を押し殺しながら、明美は拓也を安心させようと笑いかけた。
「大丈夫よ。絶対言わないから。さ、相手の子だいぶ待ってるかも知れないわ。行きましょう」
明美は先に外に出て人がいないのを確認すると、拓也を外に呼びよせる。
「はい、これ」
買ってきた下着を渡してやると、拓也は律儀に礼を言って受け取り、愛のいる場所へと走っていった。
(さて…と)
明美も遅れて階上に向かおうとして、下着が濡れているのに気が付いた明美は、
少しの間考えた後、今いたトイレに再び入っていった。
「随分遅かったじゃない」
拓也を見つけた愛の一声は随分とトゲのあるものだった。
「え? そ、そうかな?」
とっさに簡単な嘘さえつけない拓也は口篭もってしまう。
「それに、気がついたら見失ってるし。どこか他の所行ってたんじゃない?」
鋭い愛の指摘に、拓也は背中に冷たい汗がにじみ出るのを感じる。
「そ、そんなことないよ。はいこれ」
愛は拓也が下着の包みを差し出してもすぐには受け取らず、
じっと拓也の顔を見ていたが、やがてきらめくような笑顔を見せると、
包みを受け取って拓也の手を取った。
「ありがとう。ね、お腹すいちゃった。お昼、食べに行きましょう?
私、このデパートのお子様ランチ好きなのよ」
その笑顔を見た時、拓也の胸にチクリと刺すような痛みが走る。
それがどうして起こった痛みなのか解らないまま、拓也は愛の背中に謝り続けていた。
「拓也君、どんなの選んでくれたのかしら」
家に帰ってきた愛は、部屋に戻ると、早速拓也に買ってきてもらった包みを開ける。
「…………これを、あたしに履け、と」
そこに入っていたのは、ほとんど男の欲望をそそる為だけにデザインされたような、
赤い、扇情的な下着だった。
目の高さまで持ち上げて引っ張ってみる。
「向こうが透けて見えてるじゃない」
軽く目を細めると、何やら思案する。
「……これを履いた私が見たいってことかしら……?」
しかし、これまでの拓也の言動からするとそれは考えられない。
愛は浮かんだ考えを打ち消すと、頭をひとつ振ってそれ以上考えるのを止める。
「ま、いいわ。これでもう少し拓也君いじめられそうだし」
思わず緩んでくる頬を引き締めると、下着をたたんで大事そうにしまい、部屋を後にした。
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