<<話数選択へ
次のページへ>>
(1/2ページ)
「ね、さっき話したやつ、見せて?」
夕食が終わって愛の部屋に入ったしな子は、早速さっき話題にのぼった下着の件を切り出した。
「ちょっと待って……はい、これ」
そう言って愛が差し出した物を見て、しな子は思わず絶句してしまう。
「…………これを、榎木君が選んだの?」
目の前にあるそれは、しな子の想像を遥かに超えたデザインだった。
思わず手にとって引っ張ってみると、
圧倒的に面積の少ないそれは生地の薄さと相まって、
ほんの少し左右に広げただけで向こう側にある愛の顔がはっきりと見えてしまう。
「透けてる……」
愛は自分と全く同じ反応をしているしな子に思わず笑ってしまった。
「何?」
「ううん、私もね、最初見た時深谷さんと同じことしたから」
「だって……これ、ほとんど何も履いてないのと同じじゃない!」
しな子はそう言いながら、まだ下着を離そうとせず、
いろんな方向から眺めたり透かしたりしている。
「気に入った?」
「え? う、ううん、その……ね、槍溝さんはもう履いてみたの?」
「まだよ。さすがに学校にはちょっと……ね」
少し照れたようにはにかんで笑う愛の顔が可愛くて、しな子はなんとなく照れてしまう。
気恥ずかしくなって視線をそらせた先に、写真立てを見つけたしな子は立ちあがってそれを手に取った。
「これ……いつ撮ったの?」
「修学旅行の時」
そこには、恐らくバスの中だろうか、口を少し開いて眠っている拓也の寝顔が写っていた。
「え、だって……槍溝さん、クラス違う……」
「後藤君に撮ってもらったの」
「そうなんだ……いいなぁ……」
しな子は心底羨ましそうにため息をこぼす。
確かにそれは、大抵の女性なら胸をときめかせるに違いない、天使のような寝顔だった。
「欲しい? フィルムごと貰ったから、焼き増しも出来るけど」
「うん!」
即答するしな子に、愛はやや気圧されたように頷いていた。
しな子はその後も本棚などを物色していたが、やがて寒そうに軽く身震いする。
「寒いの?」
「……少し」
「湯冷めするといけないから、もう布団の中に入っちゃいましょう」
そう言うと愛は自分からベッドに潜りこんでしな子の場所を空けてやった。
「う、うん……」
しな子はわずかに興奮を覚えつつも、愛の招きに応じてベッドに横たわる。
いくら二人が小学生といっても、シングルベッドに横に並んで寝るのは少し無理があって、
かなり身体を密着させないと落ちそうになってしまう。
しかし、愛もしな子もむしろそれを楽しむように無言で身体を押しつけてしばらくの間じゃれあっていた。
「あ、これ」
ひとしきり遊んだ後、しな子はふと枕元に目をやるとそこに一冊の本を見つける。
それはしな子が買うようになった雑誌の増刊号で、「過激な体験特集号」と派手な字で銘打ってあった。
「槍溝さん、こういうの買うのって……、その、恥ずかしくないの?」
中を開きたい欲求に駆られたものの、愛に笑われてしまわないかと不安なしな子は、
気持ちをごまかすように表紙を指でなぞりながら愛に尋ねる。
「恥ずかしかったわよ。顔から火が出るかと思ったくらい」
(……でも、槍溝さんって表情あんまり出さないからなぁ)
しな子は軽く眉を寄せて愛が買う所を想像しようとしたが、
どうしても思い浮かばないので諦める事にした。
あまり興味を持っていないように装いながら、さりげなく表紙をめくると、
その瞬間を待ち構えていたかのようなタイミングで愛が口を挟んだ。
「それ、まだ私も買ったばっかりであんまり読んで無いから、一緒に読みましょうか」
「え……うん」
二人は肩を寄せて、気になる文章を見つけてはあれやこれやと騒ぎながらページをめくっていく。
「拓也くんのって……どの位の大きさだったかしらね」
愛が記事を指差しながらしな子の方を見る。
「え……えっと……」
反射的にしな子が思い浮かべようとすると、愛が頬を突ついた。
「あ、今想像したでしょ」
「もぅ!」
まんまと引っかかったしな子は耳まで赤くして愛を軽く押す。
「照れない照れない」
「う〜〜」
枕を抱えるように突っ伏せるしな子が可愛らしくて、
愛はそっと肩に腕を回すと、指先にわずかに意思を込めてこちらを向かせた。
しな子は、ほんの少しだけ怒っていたが、
頬に指先を通して気遣う気持ちが伝わってくるのを感じると、すぐに機嫌を直して向きなおる。
無言のまま愛がしな子の手を握り締めると、それをきっかけにどちらからともなく目を閉じて、
ゆっくりとキスを始めた。
「ん……」
愛が舌を伸ばしてくると、しな子も愛の腰に手を回して迎え入れる。
しな子の口の中に甘い感触が広がっていき、うっとりと身を任せかける。
(いけない、今度こそ)
頭の片隅に風呂場で自らに誓った事を思い出すと、機先を制するように愛の方にのしかかった。
そのまま愛の上になると、愛が驚いたように目を丸くする。
「どうしたの? 今日は随分積極的じゃない」
しな子は答えようと口を開きかけたが、愛の前髪が少し乱れて額に張りついているのを見ると、
たまらなくなって再び愛の唇を吸い上げた。
愛の口腔に入ってきたしな子の舌はまだまだぎこちない動き方しか出来なかったが、
情感に溢れていて、かえって自分の思うとおりにならないもどかしさに愛は興奮を覚え、
自分から舌を絡めていきたい誘惑に耐えながら、しな子の舌に身を委ねる。
次第に背筋をぞくぞくとした物が走り始めて、わずかに背を浮かせながらその快感を味わう。
(してもらうのも……結構、気持ちいいのね)
そんなことを考えながら、愛は下から手を伸ばしてしな子のパジャマのボタンを外そうとするが、
意図に気付いたしな子に両手を掴まれて頭の上に押しつけられてしまった。
身動きが取れなくなってしまった愛は、軽く目を細めてしな子の顔を見るが、
しな子はその視線を軽くかわすと首筋に吸いついた。
「んっ……」
唇の先だけで挟みこんで、やわやわと口を動かす。
強弱をつけながら少しずつ耳の方へ唇を寄せていくと、それにつられるように次第に愛の顎が上がりはじめる。
ほつれたように首筋に残る髪の毛ごと口に含むと、
シャンプーしたばかりの甘い香りがしな子の鼻腔をくすぐった。
「槍溝さん……髪、きれい……」
顔を起こしたしな子は、そっと愛の髪を梳きあげながら呟く。
その途端、愛は突然腕で顔を覆ってしまった。
「な……なに? あたし、何か変なこと言った?」
「ううん、その……」
いつもの愛らしくなく、そこで口篭もってしまう。
「なんだか、嬉しいっていうか……」
「……」
「そうやって褒められると……恥ずかしいのよ」
目元をほんのりと赤く染めながら、消えいるような声で告白する愛。
その告白を聞いた途端、しな子はたまらなくなって愛の頬に顔をすりつけた。
「な……なに?」
「槍溝さんが、すごく……可愛いから」
愛はその言葉にまたくすぐったそうに首をすくめるが、
しな子は構わず頬に軽く口付けると、そのまま顔中にキスを浴びせる。
「ちょっと、深谷さん……んんっ」
抗議しようと開いた口も塞がれて、奥深く舌を差し込まれてしまう。
愛はわずかにためらったものの、すぐに舌を伸ばしてしな子に答えた。
<<話数選択へ
次のページへ>>