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「はい、次、髪の毛梳くから、座ってくれる?」
ときどき当たる深谷さんの手が気持ち良くて、実はもう全然嫌な気分じゃなかったけど、
嬉しそうな顔ももちろん出来ないから、下を向いてごまかす。
「ね、もう少し顔上げてくれる?」
「う、うん…」
でも、そう言われちゃうと下を向き続ける事なんて出来なくて、
しかたなく少しだけ顔を上げると、深谷さんの手が頭に乗せられて、くしが入ってくる。
深谷さんはまるで床屋さんみたいに丁寧に髪を梳かしてくれる。
お母さんが昔モデルって話を聞いた事あるけど、もしかしてそれと関係あるのかな?
「はい、出来たわ」
深谷さんが満足そうに言うと、槍溝さんが僕の正面に立って大きな瞳でじっと見つめてくる。
なんだか胸がどきどきしちゃって、下を向いて視線をそらそうとしたんだけど、
槍溝さんは僕の頬を掴んでぐいって持ち上げる。
「あ、あの…」
至近距離で僕を見たまま何も言わない槍溝さんに間が持たなくって何か言おうとすると、
人差し指で唇を塞がれてしまって、
たったそれだけで全身が金縛りにあったみたいに動けなくなってしまう。
身体は全然動いていないのに、心臓はどんどん動きが早くなっているみたいで、
耳鳴りのようにどくん、どくんって音を立てている。少し…苦しい。
「ね、鏡見にいこうよ」
深谷さんが僕の後ろから声をかけると、ようやく槍溝さんは僕を解放してくれた。
でもそれは一瞬の事で、二人は僕の両側に立つと、
わきを抱えるようにして洗面所の方へ引っ張るように連れていく。
されるがままだった僕は、突然腕に柔らかい物が当たっているのを感じて、
それが二人の…その、胸だって判ると、耳が急に熱くなって、頭がぼーっとしてくる。
どうしよう、二人とも気が付いていないのかな…?
でも振りほどくのも変だし、それに、今まで感じたどんな物とも違う感触がすごい気持ち良くて、
僕はそっと腕に力を込めて、少しでも強く感じようとしてしまう。
「…どうしたの?」
深谷さんが不思議そうに言うのを聞いて、我にかえる。
いつのまにか目の前にある鏡には槍溝さんと深谷さんと、……女の子が映っていた。
屈辱だけど、そう言うしかなかった。
きっと、化粧のせいだ。そう信じる事でむりやり自分を納得させたけど、
それでも、内心ひどくショックを受けていた。
なんで……なんでこんなにスカートが似合ってるんだろう。
おかしいよ、こんなの。
目の前がぐるぐると回り出す。
自分の物じゃ無くなったみたいな足でふらふらと部屋に戻ると、
もう我慢できなくなって服を脱ごうとした。
でもその前に槍溝さんが何かに気付いたようにかがみこむと、
僕の足元に落ちていた下着を拾い上げる。
「あら? …下着を替えてないじゃない」
しまった! 服着てる時にさっさと隠しておけば良かった。
でも今更気付いても後の祭りだ。
「だ、だって…」
「だめよ。約束なんだから」
「お願い、もう許してよ。こんな小さいの、履けるわけないよ」
二人はじりじりと近づいてくる。
思わず後ずさりしたけど、すぐに背中が壁に当たって逃げ場所が無くなってしまう。
「やだやだ、止めてよ!」
必死に暴れたけど、二人がかりで押さえつけられたらどうしようもなくて、
スカートを捲り上げられてしまう。
「判ったよ、自分で履くから放してよ!」
これを履くって事は、今履いてるパンツは脱がなきゃいけないわけで、
そんなの見られたら恥ずかしくて死んじゃうかも知れない。
そう思った僕は必死にパンツを押さえて叫んだ。
だけど、槍溝さんは普段のぼーっとした感じからは
想像も出来ない素早さでパンツに手をかけると、
あっという間にひきずり降ろしてしまう。
悔しくて涙が出そうになったけど、ここで泣いたらもっと恥ずかしい、って思って必死に我慢する。
槍溝さんは下から、深谷さんは僕の頭ごしに…その…おちんちんを眺めている。
なんとか見えないように足をよじったけど、ほとんど意味は無かった。
恥ずかしくて顔から火が出そうに熱いのに、
身体は深谷さんと槍溝さんが触れているところがひんやりと冷たい。
「竹中君も…足、きれいよね」
槍溝さんは太腿をすりすりと撫でまわす。
それがすごいくすぐったくて、声を上げないようにするのに精一杯だったから、
この時槍溝さんが実はものすごい事を言っていたのには気が付かなかった。
保健の授業で第二次性徴ってのが始まると声が低くなったり、
色んな所に毛が生えるって習ったけど、僕はまだそんな気配は全然無い。
毛が生えてきたらもう少し男っぽくなれるのかな。
それとも男っぽくなるから毛が生えるのかな。
他人事のように槍溝さんを見ながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。
気が付くと、深谷さんは僕の胸を抱きかかえるようにしている。
心臓が凄い音を立ててるのを気付かれちゃいそうで、怖い。
だけど、実はそんな事気にしてる場合じゃなかった。
槍溝さんは女の子用のパンツを僕の膝の辺りまで履かせると、
少しだけ足を開かせて、僕の…おちんちんに触ってきたからだ。
「な、何?」
触られた瞬間、背中がぞわぞわして、身体が勝手にびくん、って跳ねる。
槍溝さんが何をしようとしているか解らなくて怖くなってきたけど、
でも、すごく…気持ち良かった。
「どうしたの?」
槍溝さんは顔を上げて僕の方を見る。その目はまるでこれから起こる事を知っているみたいだ。
「う、ううん…なんでもないよ」
そう言うしか無かったんだけど、槍溝さんは触っている手を離そうとしない。
「じゃあ、これは?」
僕から目を離さずに言うと、手をゆっくりと動かし始める。
揉むような、こするような、なんとも言えない動き。
汚い、って槍溝さんを止める事も忘れてしまうほど、凄く…気もちいい。
「あ…大きくなってきた」
槍溝さんが言うと、深谷さんが身を乗り出すように覗きこむ。
少し怖かったけど、僕も目だけ下の方に動かしてみる。
そこには槍溝さんが言った通りの、大きくなった…僕のおちんちんがあった。
「これ…って…なんで?」
最近、朝起きると硬くなってる事はあったけど、
どうしてか解らなかったし、誰かに聞くわけにもいかなかったから、
槍溝さんが何か知ってるなら教えてほしくて聞いてみる。
「そっか…男の子は、まだ授業でやってないものね」
槍溝さんと深谷さんは顔を見合わせて頷くと、
少しおかしそうに教えてくれた。
「男の子のここをね、女の子の中に入れると、赤ちゃんが出来るのよ」
女の子の中…って、想像も出来ないんだけど、こんなのを入れる場所があるんだろうか。
「でね、その事をセックス…って言うんだけど、好きな人とすると凄い気持ちいいのよ」
セ、セックスって! 僕ははっきりとその言葉の意味を知らないけど、
とてもいやらしい言葉だって事だけは知ってる。
それを槍溝さんがすごい普通に口にしたのもびっくりしたけど、
まるでその気持ち良さを知ってるみたいな言い方をした事が
僕の頭の中を真っ白にしてしまっていた。
「でもごめんね。あたし達、もう好きな人いるんだ」
「そうなのよ。だから」
あたし「達」って言った事に気が付くべきだったのかも知れなかったんだけど、
とてもそんな余裕はなかった。
槍溝さんが僕の、棒みたいになったおちんちんを握ると、
手をゆっくりと上下に動かし始めたからだ。
それは今日感じたどれよりも気持ち良くって、
しかも深谷さんが後ろから首筋にキスをしてくるから、
もう何がなんだかわからなくなって、
腰の辺りから何かが出てくるような感じがしたのが覚えている最後だった。

「気持ちよかった?」
いつのまにか前に回り込んでいる深谷さんが僕の顔を覗き込んでいる。
「…うん」
恥ずかしかったけど、本当の事だった。
こんなに気持ちいい事があるなんて、全然知らなかった。
「へへ。竹中君も早く好きな人見つかるといいね」
照れたように笑う深谷さんの向こうで、槍溝さんが手を拭いている。
それが僕の出した物だって気付くまでに少し時間がかかった。
「あ、あの、それって…」
「精液よ。見るの初めて?」
槍溝さんは指の一本一本まで丁寧に拭き取りながら教えてくれる。
「ううん…前に、1回だけ見た事ある」
「そう…これ、乾くとすごい気持ち悪いのよね」
「え? そ、そうなんだ」
男の僕より男の事を良く知っている槍溝さんって、凄いと思う。
どうやってそんな事勉強したのか、聞いてみたいけど、きっと教えてはくれないだろう。
そう思ったけど、でも気になって仕方が無かったから、
勇気を出して聞いて見る事にした。
「あの」
「本当はね、榎木君を引っ掛けるつもりだったのよ」
「え…?」
口を開いた僕を遮るように、深谷さんが突然とんでもない事を言い出す。
「そう。だから、写真返してあげるわね。ちょっともったいないけど」
思わず身を乗り出してしまった僕に、
槍溝さんは深谷さんの言葉を続けるように言うと、
なんでもない事のようにカメラを放る。
…それじゃ、僕がこんな恥ずかしい思いをしたのはどうでも良かったって事?
頭に血が上っていくのが判る。
けれど、なぜか次の瞬間ぺたん、としりもちをついていた。
あまりの事に力が抜けちゃったみたいだ。
「でも、今日の事は3人の秘密にしてね」
もうどうでも良くなって、投げやりに首を縦にふる。
「あと、気持ち良いからってあんまりやりすぎない方がいいわよ」
「し、しないよ!」
つい大声でどなってしまったけど、でも、本当は
…あの気持ち良さは当分忘れられそうにない。
僕は…すごくいけない事を覚えてしまったみたいだ。



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