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ザールブルグの夕刻、まだまだ人通りの多い街中を少女が駆けていた。
軽く息をはずませながら、巧みに人ごみをかき分けて町外れを目指す。
ほぼ一息にここまで走ってきた少女は、目指す建物の前でしばらく息を整えると、
控えめに、けれど中の人間にははっきり聞こえる大きさでドアを叩いた。
「は〜い、開いてます」
「エリー!」
ほとんど返事が聞こえた瞬間にドアを開けると、少女は部屋の中に居た少女に一直線に飛びついた。
部屋の中の、エリーと呼ばれた少女は、走ってきた少女-アイゼルを受け止めると、
待ちきれなかったかのようにそのまま唇を奪う。
いつもより丹念なキス。時に荒く、時に優しく、
舌先から歯の1本1本まで、ねぶるようにアイゼルの口腔を犯していく。
もともとキスに弱かったアイゼルは、初めこそエリーの舌を追いかけるようにしていたが、
すぐにエリーのなすがままにされる。
エリーはしっかりアイゼルの身体を抱き締めながらキスを続け、
彼女から力が抜けて自分に身を預けるのを確認すると、ゆっくりと舌を離した。
「ふ……ぁ……エリー……エリーぃ……」
しがみつくのもやっと、と言う風でアイゼルがエリーを見つめる。
けれど、その瞳は既に焦点があっておらず、
エリーが舌をさんざん弄んだからか、ろれつも回っていない。
「ね、アイゼル。ちょっと……いつもと違う事してみない?」
今がチャンス、とばかりにエリーは前から思っていた事を実行するべく、アイゼルに話しかけた。
「んぁ……?」
アイゼルは口の端に涎を垂らしながら、エサをねだる雛鳥のようにエリーの唇を求めていたが、
エリーの提案を聞くと、ほとんど意味を吟味しないままこっくりと頷く。
「いいんだね。それじゃ、あっち行こう」
エリーは思い通りに事が運んだ事に満足しながら、
呆けたように自分を見つめるアイゼルを抱きかかえるようにしてベッドのある部屋に連れていった。



ベッドの横に立つと、エリーは軽いキスを繰り返しながらアイゼルのワンピースを脱がせていく。
「ほら、横になって」
アイゼルをベッドに寝かせると、エリーは自分も素早く着ている物を脱いでアイゼルに跨った。
「ちょっとだけ、我慢してね」
エリーはそう言うと、手早く長布を取り出してアイゼルの両手首を縛る。
「え……何するの……?」
アイゼルは少し怯えながら尋ねるが、無言のままエリーはアイゼルの手を彼女の頭上に上げると、
ベッドの端に結び付けてしまう。
「ね……怖いわ、エリー……外してくれない?」
もちろん、エリーにそんな気は毛頭ない。
括りつけたアイゼルの手に跡がつきそうに無い事を確認すると、
もうひとつ長布を取り出して今度は眼を隠してしまった。
「いや、ちょっと、エリー……外してったら!」
今度ははっきりと恐怖感を込めてアイゼルが言う。
「だめ。今日は、だめ」
短くエリーはそう答えると、少しでもアイゼルの怯えを取り除こうと、
少し汗を掻いて額に張り付いているアイゼルの前髪を掬ってやり、
そのまま人差し指一本でアイゼルの顔の輪郭をなぞっていった。
怯えて少し歪んでいても、輪郭の整った眉。
少し小ぶりの、けれどなだらかな曲線を描いて小高くなっている鼻。
滑らかで、その色と言い一流の陶工でさえも産み出せないであろう白皙の頬。
「アイゼル……きれい……」
エリーは愛する度に、いや、会う度に異なった美しさを見せるアイゼルにため息を漏らす。
告白してきたのはアイゼルの方だったけれど、溺れたのはエリーの方だった。
口紅などひく必要の無い、薄桃色の唇に指を滑らせると、
アイゼルは何も言わなくても乳飲み子のように吸いつく。
エリーと初めてベッドを共にした時、アイゼルはその手の方面に関しては殆ど何も知らなかったが、
その時からキスや、舌を使った行為には何故か積極的だった。
爪の間にまで入りこもうとするアイゼルの舌の動きに、エリーの指先から快楽が広がる。
「ぅ……あぁ……」
思わず声を上げてしまったエリーは、形勢を逆転すべく反撃を開始した。
指を含ませたまま顔をアイゼルの腋に近づけていく。
少し汗ばんだ匂いがエリーの鼻につくが、
それは今のエリーには不快な匂いではなく、官能を高める匂いだ。
舐めてみると、塩の味がわずかにする。
「いや、エリー、そんな所だめよ、汚いから……お願い、止めて!」
いきなり腋を舐められたアイゼルは身をよじって抵抗したが、
けれど両手を括られて身動きがとれるはずも無く、エリーの良いようにされてしまう事になった。
「ぁ……やだ……止めてよ……っぁあ、止めてったらぁ……」
身体には汗を掻き、それでなくても普段から汚い、
と思っている場所を刺激されて嫌悪感が強いのだが、
エリーに執拗に舐められると次第に声に甘い物が混じってしまう。
「んっ……ぁう……っっふ、ぁあ……」
10分位も舐め続けた頃、ようやくエリーは舌を離して一旦身体を起こした。
「どう……アイゼル? こういうの、嫌いじゃないでしょう?」
「でも、やっぱり怖いわ……普通にするのじゃ、嫌なの?」
しかしアイゼルの言葉には、縛られて目隠しをされる事をはっきりと拒絶する台詞は無い。
「ううん、アイゼルが……アイゼルの事、好きだからこういう事もしてみたいの」
「わかった……わ。でも、あんまり酷い事、しないでね」
(ごめんね、それは約束出来ないや)
エリーは心の中でひとつ舌を出すと、再びアイゼルの身体を愛撫し始めた。
乳房から足へ、足から横腹へと、意図的に、場所を変えて断続的な愛撫。
いつものじっくりとした動きではなく、さらりとした、短い愛撫。
視覚に頼る事が出来ないアイゼルの身体は、どうしても触覚に敏感に反応してしまい、
刺激がいつも以上の快感となって反応してしまう。
「やだ、……あ、あぅ、……そ、こ、んん、もっ……と……」
もどかしさにアイゼルが懇願しても、エリーの手はすぐに違う場所に行ってしまい、
そのせいでアイゼルは、確実に少しずつ高ぶっては来るものの決して絶頂には到達できない、
拷問にも似た悦楽が続く。
「ぅう……ね、おねがい……っ、おねがい、ぁあ、やめない……で……」
(そろそろ、かな?)
悶え続けるアイゼルを見て、エリーはそろそろ今日の本題に入る事にした。



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