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生憎と今日の月は櫛名田を照らすにはやや明るさが足りなかったが、
それがかえって身体のラインを浮かび上がらせて淫靡さを際立たせていた。
呼吸さえ忘れて見入る俺の膝の上に跨ると、細い、銀細工のような指が顎に触れる。
次の瞬間、俺の前から光が消えた。
柔らかな感触が、俺の口を塞ぐ。
求めていた物を手に入れた喜びに頭の中が白く弾けて、思わず目を閉じてしまった。
しかし櫛名田はそれ以上動こうとせず、数拍の刻が流れた。
しびれを切らした俺は舌を伸ばして探ってみると、うっすらと唇が開いていた。
そんな小さなかけひきさえ楽しむ余裕も無い俺は、
櫛名田の後頭部を抱きかかえるようにして女神の中に舌をねじこんだ。
控えめに絡めてこようとする櫛名田の舌を強引に吸い上げ、ねぶりあげる。
彼女の暖かな口内を知り尽くそうと奥まで舌を伸ばすと、
俺の乱暴な舌技に耐えきれなくなった身体が崩れ落ちてしまった。
慌てて腕を伸ばして支えると、その軽さに驚く。
たったそれだけの事で愛おしさがこみ上げてきて、俺は思わず彼女の身体を胸元に引き寄せた。
櫛名田はそのまま顏を埋め、俺達は彫像のようにその場に固まった。

俺はまだまだ抱き締めていたかったが、先に動いたのは櫛名田の方だった。
手だけをそっと滑らせて、収まる気配も見せない俺の怒張に触れてくる。
「こんなに逞しい……本当にわたくしを好いてくれているのですね」
嬉しそうにそう言うと、触れるか触れないかの繊細な感触で撫で上げる。
数回その動きを繰り返した後、櫛名田は俺の物をそっと握り締めた。
「御奉仕、させて頂きます」
そう言って自分から咥えこんだ割には、櫛名田の舌使いはそれほど上手ではなかった。
顔もほとんど動かさず、苦しそうに声を上げながら舌だけを懸命にまとわりつかせる。
それは、もしかしたら俺の為に慣れないことをしてくれているのではないか。
そう考えた時、内側から爆発的な欲望が立ち上っていた。
こんなに早く、しかも女神の口の中に出すなど罰当たりにも程がある。
そう考えた俺は慌てて櫛名田の髪に触れて意思を伝えた。
しかし櫛名田は軽い上目使いで俺を見上げると、舌を目いっぱい伸ばして
俺の物を吸い上げる。
最後の舌技に、たまらず俺は櫛名田の口の中に欲望を吐き出してしまった。
腰が砕けるような快楽と共に、自分でも呆れるほど多くの白濁液が注ぎ込まれる。
彼女はそれを目を閉じて受け止めてくれたが、
驚く事に小さく喉を鳴らすとそのまま飲みこんでしまった。
「主様の……頂きました」
軽くせきこみながら、照れたようにはにかむ櫛名田の口の端に
受け止めきれなかった樹液がついているのを見た時、
俺はたまらなくなってその華奢な身体を抱き締めていた。
目の前の、それ程大きくは無いが柔らかく、形の整った乳房に吸いつく。
「主様……痛うございます」
櫛名田は思いきり吸い上げられてたまらず悲鳴を上げたが、
俺が力を弱めようとしないのを知ると諦めたように身体の力を抜いた。
浮き出た背骨に掌を這わせながら、甘く桃色に染まった双丘を存分に弄ぶ。
「ぁ……いや、いや……」
噛み、咥え、吸い、ねぶる度に櫛名田はすすり泣くような喘ぎで喉を震わせる。
その声に俺の中の雄が目覚め、雌を腕力で己の支配化に置いた喜びの咆哮をあげる。
それは欲望のたぎりとなって下半身に集まり、櫛名田の身体を貫けと俺に命令した。
彼女を抱き締めている手を背後から下に回し、尻の谷間を通って秘唇に触れる。
瞬く間にべとべとになってしまった指先に驚くと、
櫛名田は恥ずかしそうに俺の肩に顔を押し付けた。
「神様でも……こんなになるんだね」
羞恥を煽るつもりではなく、本心からそう口にしたのだが、
いや、かえってそれが良くなかったのか、櫛名田は拗ねたように俺の肩を噛んできた。
俺は負けじと彼女の膣口にごく浅く指を埋めると、ゆっくりと掻き回す。
「ぁ……っ、駄目…です……」
溜まっていた蜜が彼女の身体から朝露のように零れ、俺の太腿を熱く濡らす。
しがみついてくる彼女が嬉しくて、俺は何度も焦らすように刺激を続けた。
弱く、しかし途切れない刺激にたまらず逃げようとした彼女の腰を抱いて、
いきなり半分程指を入れる。
急に来た快感に彼女の身体が一瞬浮き、強い力で俺の顔に乳房が押しつけられる。
「ひぁっ! ……意地悪……しないで、くださいまし……」
「それじゃ、どうして欲しいの?」
櫛名田の喘ぎを交えた弱々しい懇願に、
今度は、はっきりと羞恥を煽るつもりでそう尋ねた。
「……」
櫛名田は荒い息を吐きながら、困ったように俺を見下ろす。
俺は無言のまま愛撫を止めると、内腿を優しくさすり始めた。
「あ……ふ……」
うぶ毛だけを撫でるようにそっと、しかし執拗に往復させる。
心地よいが、既にその程度の刺激では我慢できない彼女は、
すぐに物欲しそうに腰をくねらせて求めてくる。
時折俺の先端がくねる彼女の下腹部に触れて、
思わずそのまま突き入れたくなってしまうのを懸命に耐えていると、
櫛名田は遂に観念したのか、ほとんど泣きそうな顔で哀願してきた。
「主様の……わたくしに、ください……まし……」
その言葉だけで背中に凄まじい快感が走る。
もう俺も限界だった。
「……いくよ」
彼女の腰を両手で掴むと、熱い塊を少しずつ撃ちこんでいく。
とうとう蜜壷に根元まで収まった瞬間、どちらからともなく唇を貪っていた。
座ったままで繋がれた俺達を、お互いがほとんど一つになるくらいの結合感が満たす。
今度は櫛名田も積極的に舌を絡めてきて、俺達は飽きる事無くキスを続けていた。
どれほど経ったのか、突然息苦しさを感じた俺はようやく舌を抜き取る。
彼女の舌が名残惜しそうに追いかけてきて、唾液の淫らな橋が月の光に照らされて銀色に輝く。
細くなっていく橋が壊れるのが惜しくなった俺は彼女の伸びた舌先を突ついた。
櫛名田もすぐに応えてきて、俺達は舌先だけをじゃれ合う子猫のように絡ませていたが、
俺が少しずつ腰を揺すりはじめると、彼女も舌を離して下半身をくねらせ始めた。
彼女は腰の動きもさる事ながら、膣内の柔肉が、
その美貌からは信じられないようなうねりで俺を締め上げる。
内と外と、両方から責められてもともとそんなに、いや、ほとんど経験の無い俺は、
あっという間に限界が来てしまった。
情けない、とは思ったものの堪えることも出来ず、
それどころか彼女の膣から引き抜きさえ出来ずに果ててしまう。
救いだったのは、櫛名田も俺とほとんど同時に絶頂を迎えてくれた事だ。
俺が彼女の膣内に精を放つと、櫛名田の柔肉のうねりが激しくなり、
引き千切られそうな錯覚さえ覚える。
「主様……主様……!」
一際強く締めつけた後、二度、俺を呼ぶと、櫛名田は小さく痙攣して果てた。
女神が腕の中にいることにたまらない幸福感を感じながら、
俺もけだるい余韻に身を任せた。

「主様のやや子……身篭りとうございます」
俺の腕にもたれかかりながらまどろんでいた櫛名田が、軽く身を起こすとそう囁いた。
「可能性は、あるのかい?」
人と神の間に子が産まれるのか俺は知らなかったが、
もし産まれるのなら、櫛名田に俺の子を産んで欲しかった。
「……何事も、試してみなければ解りませぬゆえ」
そう言いながら櫛名田は力を失った俺の一物を優しく撫で上げる。
思わず俺がその顏を見返すと、櫛名田は照れを隠すように手に力を込めた。
途端に硬くなり始めた神と人との絆に、俺と櫛名田は軽く笑い合うと
いつまでも覗こうとする不粋な月から隠れるように闇の中に倒れこんだ。



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