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「うぁっ……! ああぁっっ!」
とても菊理姫の口から出た声とは思えない叫びが、喪失の痛みを俺に訴えかける。
俺はせめて最初の痛みが落ちつくまで待とうとしたが、
イシュタルが信じられない言葉を口にした。
「菊理姫の身体を起こしてあげて」
今貫いたばかりでいきなり身体を起こすなど菊理姫の痛みが増すだけだ。
俺はそう思ったが、慈愛の女神が何の考えも無しにそんなことを口にするはずが無いと考え直し、
言われた通りに菊理姫の背中を抱えて起こす。
「あっ……! っ…………ぅ、ぁ……」
菊理姫の口からこぼれた悲鳴は小さな物だったが、
それはあまりの痛みに叫ぶことさえ出来ないからのようだった。
俺の背中に菊理姫の爪が食い込む。
すると、菊理姫の背中にあてがわれたイシュタルの手が青白く光った。
恐らく破瓜の痛みを紛らわせたのだろう、菊理姫の顏に浮かんでいた苦痛の表情が和らぐ。
それでも体内に打ちこまれている異物が生じさせる新しい痛みまで消せる訳ではなく、
すぐに形の良い眉が軽く歪む。
その表情に保護欲めいたものを覚えた俺は菊理姫を更に抱き寄せた。
苦痛に歪む頬に跡を残す一本の筋を見つけて、そっと指先で拭ってやる。
「主……様……」
痛みを堪えながらも懸命に微笑もうとする菊理姫に、
俺は一秒でも早く彼女の痛みを取り去ってやりたくてイシュタルを仰ぎ見た。
「ゆっくり揺すってあげて。ゆっくりよ」
落ちついたイシュタルの声に、
俺は言われた通り菊理姫の背中に腕を回して大きく動かないようにしてから
彼女の身体をそっと揺する。
何度かその動きを続けた所で、再び菊理姫の背中が青白く染まった。
「あ……ふ……」
それでもう痛みはほとんど失せたのか、光が消えた直後に漏れた彼女の声は吐息だけだった。
「大丈夫? もう痛くない?」
「は、はい……大丈夫、です……」
イシュタルの問いかけにもなんとか答えるくらいは出来るようになったようだ。
俺はその言葉を確かめるように、菊理姫の腰を軽く持ち上げて離す。
「つっ……ぁ……」
「あ……痛かったか?」
途端に顔を仰け反らせる菊理姫に、俺は少し早まったかと焦ったが、どうやら違ったようだ。
「いえ……その、お腹が、熱くて……気持ち……良くて……」
「もう、あとは……気持ち良くなっていくだけよ」
イシュタルは菊理姫を挟みこむように俺の膝の上に跨る。
絞るように菊理姫の双乳を掴むと、俺の胸に乳首だけを触れさせて軽く回した。
「ふぁぁああっ……!」
身体に触れた菊理姫の胸の先端から、全身を麻痺させるような快感が俺に流れ込んでくる。
俺は矜持を振り絞って声を出すのを堪えると、がむしゃらに菊理姫にしがみついた。
菊理姫も俺に抱き着いて、豊かな胸が俺達の間で押しつぶされる。
「あらあら、あなたももう限界なの? しょうがないわね、これからだったのに」
俺と菊理姫の限界を敏感に悟ったイシュタルは残念そうに呟いて俺の上から離れた。
イシュタルに感謝しつつ、再び菊理姫の身体を押し倒す。
腰を動かし始めると、菊理姫の狭い肉路が蠢き、俺のペニスをあらゆる所から締め上げる。
「あっ、あ、んぁ、ぁ、んっ……あぁ……」
一回打ち込むごとに菊理姫の喘ぎはその間隔が短くなり、
熱くたぎっていく蜜壷は噴火寸前になっていった。
イシュタルは切なそうに草を掴む菊理姫の手を優しく取ると、両手で握り締めてやる。
俺ももう片方の手を同じように握ってやると、最後のスパートをかけた。
「主様……私、何か……来ます………やっ、やあぁっ!」
大きなうねりが俺を包みこむ。
その凄まじい愉悦の波にそのまま菊理姫の中で出してしまうところだった俺は、
菊理姫の絶頂の声に我に返ると慌てて彼女の中からペニスを引き抜く。
猛り狂った怒張が外気に触れた瞬間、俺にも限界が来た。
菊理姫の深奥に辿りつけなかった樹液が悔しそうにほとばしる。
ぐったりとした菊理姫の生白い身体を見下ろした俺は何故だか今までに無いほど疲れてしまい、
猛烈な眠気に抗いも出来ずに彼女の傍らに倒れこむとそのまま一気に眠りに落ちてしまった。
「もう…私のことすっかり忘れて。…ふふっ、ま、しょうがないわね。ま、今日は許してあげるわ」
最後にイシュタルが鼻の頭を弾いたような気がしたが、夢か現かもう俺には判らなかった。
「いつまで寝てるのよ。そろそろ起きなさい」
イシュタルに揺り起こされて俺が目を覚ますと、もう二人とも服を着終えていた。
一人だけ裸なのが急に恥ずかしくなって俺も慌てて服を着る。
適当に装備を整えると、菊理姫と目が合った。
生まれて初めて女性と夜を明かした時のように俺の体を羞恥が襲い、なんとなくうつむいてしまう。
しかし菊理姫の方は足取りも軽やかに俺に近づくと、下から覗き上げて軽くキスをした。
「私、契りの儀があんなに素敵なことだったなんて知りませんでした。
……今夜もお願いしますね」
昨日までよりやや明るい口調で菊理姫はそう言うと、恥ずかしそうに俺の傍を離れる。
「すっかり気に入られちゃったわね」
妙にさわやかなイシュタルの言葉に、俺は菊理姫が懐いてくれたことよりも、
これからは二人を相手しなければならないことに気が付いて愕然としていた。
「私は遠慮してあげようか?」
「……いいのか?」
俺の気持ちを見透かしたようなイシュタルの囁きについそう言ってしまった直後、
鼻に鋭い痛みが走る。
「だめに決まってるでしょ。二人分、ちゃんと頑張りなさいよ」
俺は鼻を押さえながら、魔界でマッスルドリンコを売っている所を必死に思い出していた。
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