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指を浅く瑞麗の、淫靡に開いた洞に沈め、
咲き誇った花びらや、その先にある秘めた珠を、幾度となく舌で刺激する。
ことに甘く桃色に濡れる尖りを口に含むと、粘り気を増した蜜がとめどなくあふれ、
瑞麗が感じているのがはっきりと伝わってきた。
「上手く……なったじゃないか」
 腰の痺れが失せる。
媚熱に包まれていた屹立が冷たさを感じてはじめて、九龍は没入していたことに気づいた。
チャイナドレスを翻して、瑞麗が向きを変える。
「もう、いいだろう?」
 たしなめる響きに九龍は赤面したが、瑞麗もそれ以上からかうつもりはないようだった。
朝の光の加減だけでなく赤く染めた頬をそむけ、瑞麗は屹立を掴む。
仙術のおかげで動けない九龍の眼前で、痛みさえ感じるほど膨れた性器は、ゆっくりと瑞麗の中に入っていった。
「あ、ぅ……っ」
 熱洞の快さに、九龍は喘がずにいられなかった。
口淫がもたらしたのとはまた異なる、深い陶酔。
瑞麗の身体の中で無尽に動き、屹立を苛む媚肉は、未だ九龍にとって強すぎる快感だった。
苦痛には耐性があっても、この全身を灼くような愉悦に対してはなすすべを知らない。
背筋をめぐる、永遠に味わっていたくなるような悦びに、ただ翻弄されるばかりだった。
「そんなに……私のなかは気持ちいいか?」
 瑞麗の恥辱を煽るような問いにも、うなずくしかない。
彼女が特別なのか、それとも女は皆こんなに気持ちよいのか、瑞麗以外に経験のない九龍には知る由もない。
ただ、こうしてひとつになった直後の彼女の表情は、嫌いではなかった。
「んっ……あ……」
 瑞麗が動きはじめる。
はじめは深さを試すようにゆっくりと腰を沈め、引き抜いていく。
数度往復を繰り返すと、動きは滑らかになり、それにつれて速度もあがった。
瑞麗はチャイナドレスを着たままなので、九龍から結合部は見えない。
しかし二人の体液が混じりあう粘質の音ははっきりと聞こえ、
むろん屹立にはたまらない肉の恍惚も伝わってきて、九龍を弄んだ。
「あぁ……あ……っ」
 ベッドがきしきしと音を立てる。
瑞麗は身体を前に倒し、巧みに腰を振って快楽を享受していた。
九龍は腰を支えてそれを手助けしていたが、不意に視線が合った。
意図的に避けていたわけではないにせよ、こんな最中に思いがけず目が合ってしまうと、
頬が燃えるような羞恥に取りつかれる。
ところが九龍が恥ずかしさから視線を逸らそうとすると、瑞麗の方が顔を近づけてきた。
今や艶やかに色づき、普段とは別種の美しさを見せている瑞麗に、九龍の呼吸が止まる。
「死ぬなよ、九龍」
 動くのをやめた瑞麗は、唇が触れんばかりの距離で囁いた。
端正な唇から紡がれた言葉は、九龍の五感の全てを通して伝わってきた。
「怪我なら構わんが、私が愛している限り、勝手に死んだりするんじゃないぞ」
 九龍がうなずくと、褒めるように唇が触れる。
二度、三度目は少しずつ長く、四度目は離れなかった。
九龍は絹の手触りの頭をかき抱き、激しく舌を交わす。
彼女の想いは胸に沁み、九龍は、力が入らない腕で瑞麗を抱き寄せた。
「どうした?」
 急に九龍の方から求めたので、瑞麗は少し驚いているようだ。
深い黒の瞳に説明を要求された九龍だったが、答えることはできなかった。
それを答えるには、まだ少し人生経験が不足していて、代わりにこう口にするのが精一杯だった。
「あんたも……死ぬなよな」
 九龍なりに虚勢を張った、格好をつけたつもりの台詞だった。
しかし瑞麗は唇をむず痒そうにさせて、明らかに笑いをこらえていた。
「死なないさ。……お前が護ってくれるんだろう?」
「あ、ああ」
 挙句鮮やかに返されて、九龍は格の違いを思い知らされるばかりだった。
 瑞麗の腰が再び動きだす。
深くはらに九龍を収めたまま、前後に、あるいは円を描くように。
落ちかかる細い髪が異なる方へ揺れるたび、屹立が甘美に締めあげられる。
複雑にくねり、収縮する媚肉に、九龍の限界は近づいていた。
「もう……出そうなのか?」
 取りつくろう余裕もなく九龍がうなずくと、瑞麗はさらに激しく腰を振った。
緩急がついていた刺激が、ひたすらに強くなっていく。
身動きのできない九龍は良く耐えたが、それもついに終わりを迎えた。
「う、あ……っっ!!」
 ひときわ根元にまで媚熱を感じた瞬間、意識がはじけた。
こらえていたものを一度に開放した快さに、腰が跳ねあがる。
溶けるような熱気の中で、九龍は、瑞麗の一番奥に思いきり精を吐きだした。
「ん、うぁ……っっ!」
 九龍が射精した数瞬あと、瑞麗も身体を震わせた。
しなやかな身体が強張り、さらに屹立がしごかれる。
身をかがめた体勢で数度、痙攣した瑞麗は、そこからぐったりと崩れおちた。
その身体をしっかりと支えた九龍も、快い疲労の中で意識を眠りに委ねていった。

 奇妙に柔らかな感触が、九龍の目覚めだった。
なぜか頭だけに感じる、ベッドの硬さとは違う柔らかさと温かさを、手で確かめてみる。
抜群の弾力と、ずっとこうしていたいと思わせるぬくもりはどこか記憶にあるものだった。
「なんだ、まだしたいのか?」
 真上から聞こえてくる声に、九龍は跳ね起きた。
身体は軽く、痛みはどこにもない。
生まれ変わったといえば大げさにしても、怪我の名残はどこにもなかった。
時計を見れば一時限目は始まっているが、これなら少し具合が悪かったと言えば二時限目からは授業に出られるだろう。
信じられないほどの急速な回復に九龍がまばたきすると、部屋の主が軽く目を細めて見ていた。
「気持ちはわかるがな、さすがに今日はもう無しだ」
 瑞麗はどうやら煙管も吸わず、ずっと膝枕をしてくれていたようだった。
強制される膝枕を、九龍はあまり好きではなかったが、その効果を認めないほど頑固でもない。
軽くのびをしている瑞麗に、意を決して口を開いた。
「あ……ありがとう、助かったよ」
 すると瑞麗は、これまで九龍が見たことのない顔をした。
表情の選択に困っているようで、どこかに嬉しさを覗かせている。
 九龍はそっと息を呑み、そして止めた。
早くなっていく鼓動は、それだけでは抑えられない。
せっかく治ったばかりなのに、もう身体が変調をきたしてしまったようだった。
「礼なんていらん。……と言いたいところだが、恩義を感じているのなら少し返してもらおうかな」
 意味ありげに微笑んだ瑞麗は、小さなあくびをすると頭を九龍の肩に乗せた。
「次の授業には間に合わせてやるから、それまでは支えていろよ、我愛弥」
 歌うように呟く瑞麗に、ためらった後、九龍は言われたとおりに腰に手を回した。
彼女から力が抜け、肩の重みが増す。
 それは、心地よい重みだった。



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