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ところが何を考えているのか、生徒との情事が明るみに出たら生徒以上に危ういはずの瑞麗は、
唾を飲み、息を押し殺す九龍の屹立に再び舌を這わせはじめた。
「……っ!!」
不意を衝かれた九龍は小さなうめき声をあげてしまい、慌てて口を押さえる。
すると目を細め、危険な笑みを浮かべた瑞麗は、おもむろに亀頭の先端を口に含んできた。
「……っ、お、い……止め……っ」
快感が爆発的に広がる。
熱く、とろけそうな瑞麗の口の中で、舌が絡みついてきた。
すでに九龍の弱い部分を知っている舌は、容赦せずにそこを弄る。
ほどなく屹立全体が快感に満たされ、九龍はシーツを掴んでこらえた。
耐える九龍に、瑞麗は一層激しく吸引をはじめる。
唇をきゅっとすぼめ、口内ではねっとりと舌を絡める瑞麗の技巧に九龍は敵わない。
敵わないが、声を出してしまった時の破滅を考えると、死ぬ気で耐えるしかなかった。
九龍の願いはただひとつ、さっさと皆守が常宿をあきらめてどこか別の午睡ポイントに移動してくれることだけだった。
『宝探し屋』を始めて以来の危機に九龍は全力で立ち向かう。
罠を解除する時よりも緊張する、永劫に等しいほど長く感じられた忍耐は、正しく報われたようだった。。
「なんだよ、いないのかよ。せっかく眠りに来てやったってのに」
勝手なことを言い、クラスメートは去っていく。
一安心したその時、今日最も強い刺激が亀頭を苛んだ。
完全に虚を衝かれた九龍は、たまらずこらえていたものを解放してしまった。
「……っ……!」
あたたかな口の中で射精するのは、めくるめく快感だった。
抑えようもない白濁をはじけさせ、年上の、異国の女性の口腔に注ぎこむ。
理性とは裏腹に欲望はより多くの刺激を求め、ひとりでに腰が浮いてしまった。
声こそ出なかったが、ベッドが激しく揺れる。
しかしどうやら皆守には聞こえなかったらしく、揺れが収まると保健室には静寂が訪れた。
息を殺し、誰も、何も反応がないのを確かめて九龍は大きくため息をつく。
一方、男性器を深く咥え、迸りを受けとめた瑞麗は、それを怒るでもなく平然と笑った。
快感に虚脱する九龍の眼前で口元をぬぐい、喉を鳴らす余裕さえみせて精液を嚥下する。
紫に近い、濃い赤の口紅からしたたる白褐色の粘滴は、おそろしいほど淫靡な印象を添えた。
「朝から濃いな」
「あ……朝からこんなことしてていいのかよ」
中国人心理療法士にして妖魔を覆滅する『M+M機関』のエージェントは、年下の男の怨嗟にもまるで動じなかった。
九龍が思わず注視してしまうほど艶かしく舌を動かし、唇を舐めてうそぶく。
「朝から保健室になど来る生徒はいないさ」
「今居たじゃねぇか」
「何か言ったか?」
満足げに笑いつつも目を細める瑞麗に、九龍は悔しいが気圧されていた。
『宝探し屋』として世界を股にかけ、形而の下も上も、あらゆる脅威を経験してきた九龍だったが、
たった一人の、それも女性にこれほどまでに威圧されるとは思ってもいなかった。
最初にぐうの音もでないほど叩きのめされたのが尾を引いているのかもしれなかったが、後の祭りだった。
瑞麗の細く、睫毛の長い眼に睨まれると、精神はともかく肉体がいうことを聞かなくなってしまうのだ。
いつか、強くなって見返してやる──そう九龍は誓っているが、それがいつの日になるのかは皆目見当がつかなかった。
そんな九龍の葛藤にはおかまいなしで、瑞麗は再び九龍に跨った。
「さ、続きをするぞ」
口で精液を搾りとっただけでは満足でないらしく、瑞麗は白衣を脱いで九龍に迫る。
逃れようにも完全に上に乗られていては逃げる術もなく、九龍は頭の中で鎮魂歌を二小節ほど奏でた。
天使が伴奏のラッパを吹いたあたりで死神が迫ってくる。
「なんだ、怯えているのか? 可愛いじゃないか」
怯えてなどいない──そう抗議しようと動かしかけた頬が、ひやりとした感触に包まれた。
数百年の永きにわたって人跡未踏だった遺跡の石壁にも似た冷たさだが、柔らかさはまるで違う。
首筋の毛が逆立ち、中指の先端にまで瑞麗の体温が染みていくに至って、九龍は抵抗をあきらめた。
頬を撫でまわす手を押さえ、意を決して視線を合わせた。
年上の女性の笑顔を見せた瑞麗の、睫毛が下りる。
九龍は束の間ためらい、そしてくちづけた。
瑞麗は先ほどとは違い、主導権を委ねている。
ぎこちないながらも九龍はくちづけを交わし、顔を離したあとの瑞麗の表情からすると、どうやら及第点は取れたようだった。
「今度は……私にもしてくれないか」
耳元での囁きに、九龍はややぼんやりとうなずく。
何をするのか、という答えはほどなく示された。
「お、おい」
瑞麗が跨っている──上下さかさまで。
瑞麗の顔は股間にあり、そして、瑞麗の股間が目の前にあった。
右足はチャイナドレスが包んでいるが、瑞麗は足を開いているために、左足はほとんどが露出している。
しかも、垂れてくる裾を払うと、そこにあるべき下着はなく、剥きだしの下腹部が現れた。
程よく盛りあがった尻肉や太腿、さらには複雑によりあわさって入り口を閉ざす亀裂や、
それを覆い隠す黒々とした恥毛を一望できる眺めに、九龍は絶句するほかなかった。
気だるさはたちまち失せ、新たな欲望が下半身に集まっていく。
「なんで……なんにも穿いてないんだよ」
見とれていたことを棚にあげて九龍がなじると、返答は股間から返ってきた。
「チャイナドレスの下は下着を穿かないのが正式なんだぞ。知らないのか」
絶対嘘だと思ったし、保健室で正式も何も、そもそも校医がチャイナドレスを着るのが間違っている。
しかし、そう指摘する前に腰を押しつけられてしまい、瑞麗を糺すことはできなかった。
濃厚な女の香りが鼻腔を犯す。
煙管の匂いとは異なる、けれど意識を捕らえて離さない点は同じ臭いを、九龍はうっかり胸の深くまで導きいれてしまった。
とたんにいくらか残っていた理性が消え、熱い欲望が全身を燃やす。
それを待っていたかのように、再び屹立が包みこまれた。
「んっ……ふっ……」
今度は最初から口に含んだ瑞麗は、唇で肉茎をしごき、口腔の亀頭には舌を巻きつかせる。
さらには頭をひねって吸引し、九龍を追いつめた。
「う……っ」
ともすれば果ててしまいそうになるのを、必死にこらえる九龍の、歯を食いしばる口元に雫が当たった。
秘唇が息づいている。
瑞麗の口が激しい音を立てているのとは対照的に、ひっそりとたたずむ花弁。
そこからこぼれた雫を追って、九龍はそっと秘唇を押し広げた。
「ん……」
瑞麗の腰が揺れ、新たな雫が口元を濡らす。
秘唇の向こうには、艶かしいピンク色に輝く肉襞が続いていた。
生々しい極彩色のぬめりは、男の本能に訴えかけてくる。
そこから漂う香りを、深く吸いこんだ九龍は、瑞麗がそうしているように舌で触れた。
刺激を加えられた淫花は、すぐに蜜を吐きだしはじめる。
誘うようにひくりと蠢く洞に舌を差しこんだ九龍は、慎重に肉壁を探った。
「……っ……」
屹立への刺激が止む。
間違えたかと九龍も愛撫を中断すると、すかさず臀部が左右に揺れて続きを促してきた。
「っ、ぷ……」
とろりと垂れた愛蜜を浴びた九龍は、再び顔を寄せる。
熱気のこもる淫穴に鼻先を埋め、より深くをかき回した。
慎重だった動きは徐々に大胆になり、瑞麗の内側をまさぐっていく。
その都度ささやかながら確実に反応する女体に、
いつしか九龍は今が朝でここが保健室であることも忘れ、行為に没頭していった。
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