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「もう……いいか?」
 瑞麗の問いの意味を完全には理解しないまま、九龍は頷いた。
 横たえられた九龍の身体の上に、瑞麗が跨る。
二つの隆起、そして、肩幅に開かれた足の間にある蔭りをどうしても注視してしまう九龍をよそに、
瑞麗はそそり立っている屹立の上へと静かに腰を落としていった。
「っ……!」
 熱く、ただひたすらに熱い質感が屹立を覆う。
どちらかというと硬質な印象を与える彼女とは思えないほど、
柔らかくうねる膣内は、声も出せないほどの気持ちよさだった。
根元まで熱が染みると、瑞麗が深く息を吐く。
少し強気で、少し弱気の顔は、九龍と目が合うとわずかに色彩を強めた。
それは彼女の体内に埋没した器官に酔いしれたようであり、
いささか屈折していながらもこうして想いを結びつけたことを喜んでいるようでもあって、
九龍には到底瑞麗の真意など判りはしない。
判るのは、初めて経験した女の中は、これまでのどんな気持ちよさをも上回る愉悦に満ちているということだけだった。
 膝立ちから、九龍の上に座る格好になった瑞麗が、上体を前に倒す。
たったそれだけで屹立を包み込む肉のうねりは新たな快楽をもたらし、九龍は小さくのけぞってしまった。
「ああ……九龍……」
 深い吐息をついた瑞麗と目が合う。
何かと理由をつけては保健室にたむろしようとする生徒達を追い出す時のような冷たいものでも、
渋る九龍を無理に従わせ、膝枕をさせた時の心底幸福そうなものでもない、どこか不安定な感じのする瞳。
それはこれまでに見たどれよりも美しい瑞麗で、九龍は手を伸ばし、彼女の頬に触れた。
「ん……」
 瑞麗もいつものように茶化したりせず、嬉しそうに頬を寄せる。
そのまま手首にくちづけると、ゆるやかに動きはじめた。
 熱く濡れた秘肉が去り、再び戻ってくる。
凄まじい快楽が九龍を押し流し、浚い、呑みこんでいった。
「瑞……麗……っ」
 絡めた手をやみくもに握り、自分を組み敷く女の名を呼ぶ。
脊髄が溶けそうな快感は、そうすることで一層強くなり、九龍はその快感を幾度も反芻した。
 瑞麗は返事こそしなかったものの、沈めた腰を縦横に振って応える。
女らしくくびれた腰が艶かしく蠢き、そのたびに濁った水音がもたらされる。
屹立をわずかに覗かせたかと思うと、またすぐに根元まで咥えこむ瑞麗の秘唇。
交じりあう二つの身体の淫靡さから、九龍は目を離せなかった。
「あまりじろじろ見るな、マナーがなってないぞ」
「わ……悪い」
 こんなものにマナーがあると思っていなかった九龍は素直に謝る。
すると、動くのをやめた瑞麗がおかしそうに肩を揺らした。
「随分素直じゃないか。さすがの宝探し屋も勝手がわからない、といったところかな?」
「からかったのかよ」
「そうでもないさ。品がないのは確かだからな、他の女の前では気をつけるんだな。もっとも」
 顔を近づけた瑞麗は、九龍の鼻先を弾いて言った。
「もう他の女、という可能性はお前にはないがな」
 たぶんそうなのだろう、と思いつつ九龍は抗ってみせた。
「……俺があんたの期待どおりに成長しなかったら」
「つまらないことを心配するんだな。成長させてやるから安心しろ」
 戯言を一蹴した瑞麗は、さっそく成長の機会を与えることにしたらしく、
跨っていた九龍から降り、今度は自分が下になった。
「今度はお前が動いてみろ」
 相変わらず身も蓋もない言い方をする瑞麗だったが、九龍にはそれを気にする余裕もなかった。
引き離された屹立は快楽を求めて震えており、言われるがままに瑞麗の足の間を探る。
つい今しがたまで繋がっていた部分は、淫らな形に開いたまま卑猥にひくついていた。
鮮やかなピンク色の隧道はてらてらと輝き、見るも劣情を呼び起こす。
見るなとたしなめられたところで到底守ることなどできない、男を惹きつける強烈な猥雑さに満ちた秘溝。
おびただしい熱と粘液、それに淫肉が形作る洞に、九龍はほとんど無我夢中で己をあてがった。
「……く……っ」
 ひとつであろうとするかのように、屹立が沈んでいく。
熱い沼のような瑞麗の膣がもたらす快感に、九龍は背中を大きく震わせた。
命がけの探索の果てに秘宝を見つけた時の、あるいはそれを上回るほどの恍惚。
全身を駆け巡る痺れにたまらず息を吐き出すと、瑞麗が下から手を差し伸べた。
わずかに輪郭が崩れた目元が、九龍を優しく包む。
「我愛弥、九龍」
 繰り返す瑞麗をさえぎるように唇を奪い、激しく舌を絡ませる。
ずっと昔からこうしていたような錯覚に見舞われて、欲望のままに唇を吸い、口腔をまさぐりあった。
やがて愛情に欲望がとってかわり、九龍はぎこちなく腰を動かし始める。
瑞麗の奥へ、中心へと己を沈め、引き抜く。
単調な動きは満ち干きに伴う快感に支えられ、幾度も繰り返される。
 初めての快楽に九龍は、ほとんど我を忘れて腰を振った。
「っ……ぅ……」
 卑猥な水音に混じって小さな、呻きのような声が聞こえる。
自分の発したものではないと知った九龍は、驚いて組み敷いている女性を見た。
見られていることに気づいた瑞麗は、慌てて顔をそむける。
その仕種はこれまで知っている余裕ある女性のものではなく、九龍は新鮮な興奮に囚われて瑞麗を凝視した。
「見……見るなっ」
「あ、ああ、悪い」
 そう言ったものの、茹であがっていくかのように赤くなっていく瑞麗から目を離せない。
目の前で変貌する女性の姿に九龍の、身体の一部はごく自然に反応を始めた。
「! あっ、馬、馬鹿……ッ!」
 体内で大きさを増した屹立に、ますます動揺する瑞麗は、
ついにはいつもの低い、落ちついた声ではなく、うわずった悲鳴めいたものを発した。
醜態を見せてしまったことを恥じたのか、鋭く睨みつけるが、怜悧さが失われている分迫力に欠けており、
九龍は真っ向から見つめ返すことができた。
「な……っ、なんだ、その顔は」
「別に」
 初めて優位に立った九龍だが、それを誇るつもりなどなかった。
むしろ笑ってしまうほどパニックに陥っている瑞麗に、さらなる想いがこみ上げてくる。
ついには腕で顔を覆ってしまった瑞麗を見ながら、ゆっくりと動き始めた。
「っ……あ……あっ」
 瑞麗は唇を噛み、声を漏らすまいとしているが、九龍が奥まで突きいれるとたまらず唇が歪む。
抽送に正確に呼応して紡がれる嗚咽に、自ずと九龍のペースは上がった。
「うっ、あ……ん、う……っ」
 熱い泥濘をかき分け、根元まで屹立を沈める。
うねる媚肉をとらえ、幾度も瑞麗の深奥を貫いた。
「あ……っ、あぁ……九龍……っ」
 うわずっていく声は、九龍の鼻先でたゆたい、溶けていく。
まとわりつく熱気にかすんでいく意識の中、九龍は瑞麗の中にある自分自身がたぎっていくのを感じた。
痺れ、もはや自分で動かしているのかどうかさえわからなくなっている腰をひたすらに打ちつける。
急速にこみあげる射精感に抗うように激しい抽送を繰り返した九龍だったが、ついにそれも限界が訪れた。
「……っ!」
 間断なく締めあげる媚肉をかき分け、瑞麗とひとつになる。
一突きごとに理性を失わせる快楽を、九龍は求め、手中に収めた。
瑞麗の深奥まで貫き、彼女の全てとひとつになったと思った瞬間、意識がはじけた。
耐えていたものが決壊し、灼熱の塊が噴きだす。
抑える術も知らず、九龍は瑞麗の胎に全ての快楽を弾けさせた。
「あ、あぁぁ……っ!!」
 ほぼ同時に、苦悶の叫びを瑞麗があげる。
一杯に張り詰めた肢体を、九龍から逃れるようにくねらせ、訪れたものを全身で受けとめ、のぼりつめた。
「っ、っ……!!」
 体内に注がれる熱い液体に二度、三度と跳ね、糸が切れたように弛緩する。
ぐったりとベッドに落ちた瑞麗は、我が身に訪れた狂悦に戸惑っているような九龍に手を伸ばした。
熱の篭った身体がゆっくりとおちかかってくる。
男の身体が放つ熱さに満足したように目を細めた瑞麗は、九龍を抱き寄せ、くちづけた。

 激しい快楽のあとの快いまどろみに身を浸すことは、九龍には許されなかった。
瑞麗の傍らに倒れこむと、息つく暇もなく腕を取られてしまったのだ。
「腕を貸せ。少しの間でいいから」
 あれほど乱れたのが嘘のように冷静な声に、あっけにとられる九龍が拒む暇もなく、
瑞麗は頭を乗せ、目を閉じてしまった。
「お、おい、寝るのかよ」
「膝枕をしてやっただろうが」
 服も着ず、教師と生徒が保健室で寝ていたら大問題になる。
そんな九龍の危惧などどこ吹く風で、片目だけを開けて気だるげに答えた瑞麗は、
それ以上は聞く耳をもたないとばかりに目を閉じてしまった。
「少ししたら起こしてくれ」
 シーツを被りなおしてさっさと寝息を立て始めた瑞麗に憮然としつつ、九龍は天井を見上げた。
 頭の片隅に遺跡が浮かぶ。
古代のロマンとスリルに満ちた世界。
傍らで穏やかな寝顔を見せている女性と、人生そのものとも言ってよい『宝探し』とを、九龍は天秤に乗せてみた。
秤は静かに傾き、やがて均衡を保つ。
予想通りの結果に吐き出されたため息はどのような意味を持っているのか、九龍にも判然としなかった。
わかっていたのは瑞麗が目を覚ますまでは遺跡の探索には行けず、
穏やかな、そして無防備な寝顔を見せる瑞麗を起こすことなど、到底自分にはできないということだった。
 今日の探索を諦めた九龍は天井を仰ぎ、目を閉じる。 今日向かうつもりだった遺跡の構造を思い浮かべようとして、
横で寝息を立てている女性の顔に邪魔されると、
もう何もかも考えるのを止め、急速にやってきた睡魔に身を任せることにしたのだった。



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