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「いじ……わ、る……」
葵はいやいやをするように頭を振り、額を肩に押し付けてくる。
かつてない仕種に、龍麻は生唾を呑みこまずにいられなかった。
葵に漂っている色香は危険なほどで、このまま教室に戻りでもしたら大変なことになってしまうだろう。
龍麻は葵と自分の安全のために、彼女をここに留めることにした。
「たつ……ま……」
唇を震わせた葵は、そのまま唇をおしつけてくる。
濡れた唇が貼りついて、龍麻の唇もしっとりと温かくなっていった。
思い切って龍麻が身体を抱えると、待っていたかのように膝の上に乗ってくる。
そして頭をしっかりとかき抱いて、息が続く限りの長いくちづけを求めてきた。
葵はこれまで弄ばれた恨みを晴らすかのように舌を絡めてくる。
唾液が立てる水音は龍麻でさえ恥ずかしくなるような卑猥なものだったが、
葵はたががはずれてしまったのか、むしろ自分から音が出るようにキスを続けてきた。
舌を絡めるのを止めた後も、口唇を触れ合わせる軽いキスを続ける葵が、不意に訊ねる。
「ねえ」
「ん」
「さっきの人……女の人は、あんな風に……その……言うものなの?」
「あんな風にって」
「だから、えっと……さ、最後……に……」
「あぁ」
葵以外の女性を知らない龍麻は、知らない、と言おうとしてとっさに止めた。
熱くなっている耳朶を撫で、軽く息を吹きかけながら囁く。
「ああやって言った方が気持ちいいんだって」
「そ、そうなの?」
「さっきの子、すげぇ気持ち良さそうだったろ?」
何しろ目の前に見本があったのだ、葵も半信半疑ながらも信じた様子だ。
頷いたりはしないものの、どこまで赤くなるのか、また顔を赤くして俯いてしまう。
そんな葵に情欲をそそられた龍麻は、さっそくさっきまでそこにいたカップルに自分達も倣うことにした。
「葵、立てる?」
葵はどう見ても辛そうだったが、無理やり立たせて金網にもたれさせる。
足元をふらつかせている葵の、龍麻はスカートを捲り上げた。
大きくありながらたるみはない、完成された美しさを持つ臀部を包む、
露になった黒いストッキングと、その下に透ける白いパンティ。
特にパンティの中心にできている染みは、龍麻を痛いほど勃起させ、
思わず顔を埋めたくなってしまうほどだったが、それはさすがに控え、パンストを脱がせることにする。
両手をかけ、少しずつ下ろしていくと、白と黒のコントラストが鮮やかに浮かび上がった。
黒い繊維に包まれていた白く大きな丘は、
パンストを太腿の付け根までしか脱がせていないために、より大きさが強調されている。
冷たい風のせいで鳥肌が浮き上がっている尻肉を、龍麻は温めるように撫でまわした。
「ぁ……っ」
刺激を受けて尻肉がきゅっと締まり、また緩んでいく。
その間にある薄く開いた淫裂も物欲しげに蜜を滴らせており、
葵はもうすっかり準備が整っているようだった。
「あぁ……」
葵が漏らした声には、ひそやかな期待が含まれている。
それを感じ取った龍麻だが、まだ彼女の望む挿入はせず、秘裂に沿って熱塊をなぞらせた。
「う……ん……」
薄く口を開けている溝の入り口にある肉唇が、
添えられた屹立を入ってくるものと勘違いし、甘く吸い付いてくる。
龍麻が数度腰を前後させると、たちまち屹立は透明な粘液にまぶされた。
「おね……が、い……もう……我慢……焦らさ、ない……で……」
うわ言のように葵は呟き、腰を揺する。
ねだられた龍麻は、丸い双つの丘を両手で押し開き、
その狭間にある、ピンク色に妖しく濡れ光る肉穴に屹立を添えた。
糸を引くほどぬめっている分泌液のおかげで、ほとんど抵抗もなく屹立は入っていった。
「くっ……う……」
感極まった嗚咽と共に、蜜が噴きこぼれる。
熱い膣はすぐさま侵入物を食い締めてきて、龍麻は恍惚に打ち震えた。
肉の壁を押し分けて沈ませていった肉茎を、半ばで一度止める。
するとすぐに葵が、物足りないとばかりに腰を突き出してきた。
葵はたぶん無意識にそうしたのだろう。
しかしそれがかえって、一点の隙もない葵も欲望には抗えないのだと証明しているかのようで、
たまらなくなった龍麻は金網を掴む葵の手を上から握り締めて、ことさら強く腰を打ちつけた。
「んあっ、やっ……!」
葵が背中を仰け反らせる。
すらりと伸びた足が崩れおち、屹立を包む媚肉が締まり、龍麻を快感に苛ませた。
腹部を抱えてやった龍麻は、葵の奥の方で小刻みに動く。
突くたびに金網が派手な音を立て、自分達の存在を誰かに教えてしまうのではないかと危惧するが、
葵はそんなことに気を払う余裕もないようだ。
龍麻もだからといってこの、これまでにない興奮を手放す気など全くない。
片手で器用にブラのホックを外し、乳房を直に掴む。
乳首だけを集中して責めていたさっきとは違い、大きく、掌全体で握り潰すように果実を弄んだ。
「あ……っ、や、っ……は、ぁん……っ」
葵の喘ぎは、明らかに大きかった。
いつもより感じてもいるのだろうが、きっと先のカップルの影響を受けているのだろう。
それはもちろん龍麻にとって喜ばしいことで、龍麻は意識して葵に声を上げさせようと試みた。
「くぅ、あ……ぁ、んっ、う、ぅん……あっ」
抽送に緩急をつけ、膣内でも抉る場所を変えてみる。
そのいずれもに葵は反応し、悩ましい声をあげた。
両手で金網にしがみついてようやく身体を支えている葵を、
龍麻は腰を落とし、下から突き上げるように打ちつける。
逃れようとする葵の腰を捕らえ、深い奥まで肉茎をねじりこむと、
隧道ずいどうに満ちた粘水が弾けた音を奏でた。
「音……音、聞こえ……」
自分が発している淫声は気にしていないのに、その水音は恥ずかしく聞こえるのか、葵は懇願する。
龍麻はそれに応え、動きを止めた。
「あっ……」
静寂が訪れ、葵は戸惑ったように首を振った。
金網を掴む手に力が篭るのが、龍麻にはわかる。
大きく弾む肢体から埋めていた肉茎を引き抜いていくと、華奢な手の甲に血管が浮かび上がった。
再び龍麻は挿入する。
だがその動きは遅々たるもので、葵の腰がもどかしげに動いた。
「いや……ぁ」
葵は長い髪を振り乱し、それだけを告げる。
「でも音がするの、嫌なんだろ?」
再び否定される。
しかし決して最後の壁を乗り越えようとはしない葵に、龍麻は最後通告を与えた。
葵にもどかしさだけを感じさせる、ゆっくりとした抽送を一度だけ行う。
「どっちがいい? 俺はこのままでもイケそうだけど」
荒い息遣いが屋上に響く。
葵は顔を伏せたまま、じっと固まっていたが、やがてか細い声が彼女の口を割った。
「動い……て……」
「音しちゃってもいいの?」
「いい……か、ら……」
避けがたい嗜虐欲に囚われた龍麻は、舞い散る甘い香りに酔いしれ、
葵の声が消え去る前に下から媚壷を貫いた。
「あう……ッ」
葵は伏せていた顔を跳ねあげて悶える。
今度は龍麻は止めず、激しい抽送を繰り返した。
「あっ、はっ、はぁっ、あぁっ」
葵の膝が崩れ落ち、甘く激しい嬌声が何度も口を衝く。
動きに合わせて身体を揺らすだけの葵は、もう絶頂が近いのだろう。
その声に合わせるように収縮を繰り返す膣に、龍麻も急速に昂ぶりが近づいてきていた。
「駄目……駄目……っ」
「イキそう?」
龍麻の囁きに葵は壊れたように頷く。
我を忘れている葵に、龍麻はふと葵に訊ねられたことを思い出し、彼女に教えてやった。
「ちゃんと最後はイクって言わないと駄目だよ」
葵に聞こえていたかは解らなかったが、龍麻は構わず抽送した。
もう屹立はいつ射精してもおかしくないくらいに脈動していたのだ。
どろどろにぬかるんだ肉路を、ほとんど闇雲に突き上げる。
すると不意に、肉路が急激に締めつけられた。
葵に絶頂が訪れたのだ。
「あっ、あッ……! イ、ク……っ!!」
最後の声は、いかにも恥ずかしげな、弱々しいものだった。
しかし葵がそのような声を発したこと自体が、龍麻を一気に限界に導いた。
葵の腰を掴んだ龍麻はひときわ強く突き入れ、堪えていた感覚を熱い洞の中で解き放つ。
腰を震わせ、溜めていたものが一気に爆ぜる快美感に酔いしれた。
「あぁ……ぁ……」
感極まった嗚咽は、いつまでも止まない。
長い余韻に、龍麻達は五時限目が終わるまで浸っていた。

翌日。
ひそやかなルールは破られ、龍麻は二日続けて屋上に呼び出された。
弁当自体は歓迎するが、友人達に気付かれるのは良くない。
特に葵の方こそ男と付き合っているのがバレたらいろいろまずいだろうに、と龍麻は思うものの、
昨日の記憶も生々しく残る屋上の陰に来てみれば、注意する気もなくなってしまった。
葵はそっちの方は全く気にしていないらしく、やっぱり女は凄い、と妙な感慨を抱く。
そんな龍麻に、葵は昨日と変わらぬ笑顔で包みを差し出した。
「はい、お弁当」
包みを開けると、入っていたのはシンプルなおむすびが三つだった。
「あれ、今日はシンプルだね」
いつも凝ったおかずを作ってくれる葵にしては手抜きとも言えるくらいで、
寝過ごしたのだろうか、と龍麻は邪推する。
しかし、それは大いなる勘違いだった。
葵も同じおむすびの包みを解く。
それと同時に身体を寄せてきて、妙にくっついてくるな、と思っていると、腕がするりと絡んできた。
この期に及んで、それじゃ食べにくいなどと考える龍麻に、葵が芯から甘えた声で言った。
「だって……毎日五時限目を休むわけにはいかないでしょう?」
「あ……そ、そうね」
この日から最初の大義名分だった龍麻の食生活のバランスは、脆くも崩れ去ることになる。
そして週に一度だった屋上の密会も二度になり、後にはさらに、
おむすび三つが二つになることを、龍麻はまだ知らなかった。



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