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龍麻はあらゆる意味で、他人を掌握する術に長けていた。
容姿、言動、眼光。
それらに加え、龍麻はタイミングを計るのが実に巧みだった。
わずかな心の隙を見つけ、あるいは作りだし、そこにするりと忍びこむ。
今も、言葉を求めて自らの思考の中をさ迷うマリアに、力強い感触を与え、
考える必要など無いのだと彼女に教えたのだった。
事実、マリアは強引な牡性に惹かれ、抗うことを忘れつつある。
こうなることは充分に予想していたのに、逞しい腕に抱かれ、
下腹部から漂う鼻をつく臭いを吸った途端、どう対処したら良いか解らなくなっていた。
それをマリアは、形良く尖った鼻を膨らませ、肺の奥まで導きいれる。
眉をしかめつつも、吸いこむことを止めはしなかった。
この腕の中にいることが正しいのだ、と考え始めたマリアの頭に、龍麻の囁きがこだまする。
「結構遅かったですね。三日くらいで来ると思ってたんですけど」
自分が男を、彼を求めてここに来ることを予想していたという龍麻に、マリアは俯くしかなかった。
事実そうだとしても、そのような態度は龍麻には一切見せていなかったはずなのに。
それをマリアが口にすると、龍麻の喉の奥から小さな笑いがこぼれた。
「判りますよ、そりゃ。前よりもずっと歩き方がセクシーになって。
新しい恋人でも出来たんじゃないかって、学校中で噂になってますよ」
「う、そ……」
そんなに自分はだらしなかっただろうかと、マリアは涙が出そうになった。
すると龍麻は、そんなマリアを慰めるように髪を撫でる。
「ええ、嘘です。でも……マリア先生が来るのは、俺には判ってましたよ」
甘美な声で告げる龍麻の手が、腰から尻へと移っていく。
マリアは咄嗟に彼の手首を掴んだが、それ以上動きを妨げることはなかった。
「こんな所でするのも……興奮しませんか」
耳朶に触れた龍麻の唇が、力を奪う。
そこから伸びた舌が与える、生温いぬめりを耳の裏に感じた時、マリアは遂に全身を彼に委ねた。
急に体重を預けられて龍麻は驚いたが、よろめきもせず支える。
真意を確かめようと首筋を弱くついばむと、彼女の口から漏れたのは恍惚に満ちた吐息だった。
肉の詰まった尻を揉みしだいても、もうマリアは悦びに腰をくねらせるだけだ。
一週間待った甲斐があったとほくそ笑んだ龍麻は、
無遠慮にスカートの上から尻を撫で回していた手を動かし、邪魔な布を捲くりあげた。
「あれ?」
あるべきものを見出せず、龍麻は戸惑う。
極上の質感を持つ臀部から、その谷間へと指を落とした。
そこにはごくわずかな、ほとんど紐のようであったが、一応あるべきものはあった。
「これって……Tバックってやつですか」
高校生離れした肢体を持つ葵でも、さすがに履いているのを見たことは無い下着に、
さすが大人の女性だと龍麻は感心した。
同時にこんな形で欲望を紛らわせていたのだと知ると、彼女が可愛らしく思えてくる。
「この前のも凄かったけど、これはもっと凄いですね」
心底感心したように呟く龍麻に、ほのかな朱が指していたマリアの顔が、
引いている口紅と同じくらい深い紅に染まった。
龍麻に女を目覚めさせられたあの日以来、過激さを増していった下着。
もちろん誰かに見せることなど無かったものの、こうして龍麻に知られると、
彼に見せる為にずっと履き続けていたのではないかとすら思うマリアだった。
スカートを完全に捲くりあげた龍麻は右手でしっかりと尻を押さえ、
紐の内側に左手の指を入れると、縦になぞっていく。
「ん……っ」
二人のセックスを見て昂ぶっている身体は、わずかな刺激で簡単に濡れ始めた。
膝が折れ、龍麻にしがみつかないと立っていられなくなってしまう。
陰唇を開いていく彼の指に無上の悦びを感じながらも、既にマリアはそれだけでは足りなくなっていた。
「あ、ん……ねぇ……」
快い冷たさを感じさせる普段の声はとうになく、媚をねっとりと含んだ音色で求める。
それは声だけで背筋に快感を生じさせるほどのもので、龍麻はたまらずマリアに後ろを向かせた。
白く豊かな尻が、眼前に晒される。
形に少しの崩れもない美しい双臀の間に、申し訳程度に走っている細い紐を引っ張ると、
蜜をたっぷり吸った下着が粘り気のある水音を奏でた。
その音にすら感じてしまうのか、切なげにマリアが尻を振る。
欲望を露にすることにためらいを感じなくなっている彼女は、
ただ外見だけを見ているだけでは絶対に知り得ない美を放っていた。
教師にさっきまでの葵と同じ格好をさせた龍麻は、
張り詰めた、完全な調和の取れた肉付きの足に感嘆しながら、その内側を撫でる。
ひくりと震えた淫口を、下着をずらして露出させると、屹立をその入り口にあてがった。
「あ……」
熱く潤ったマリアの膣は、吸いこむような蠕動で屹立に絡みついてくる。
龍麻は腰の辺りに満ちる、思うがままに彼女を犯したいという願望を抑えて少しずつ己を沈めていった。
マリアの期待に満ちた喘ぎが、屹立が沈むにつれ甲高いものに変わっていく。
そして彼女の背中は、体内へと押し入って来る異物の圧力に耐えかねたようにしなっていった。
「ぁ……っはぁ……」
時間をかけた挿入が終わると、マリアはそれだけで感極まった嗚咽を漏らした。
体内に埋まる牡の器官は、腹に重ささえ感じさせる。
身体の中心から生まれる鈍い衝動が、脳を麻痺させていく。
以前に同じ体位で犯された時の背徳感はもう無く、純粋な快感のみがマリアを支配していた。
そこにまた一つ、新たな快感が加わる。
龍麻が、葵のそれよりも更に大きな乳房を掴んだのだ。
汗ばんだ掌はやや強く握り、わずかな痛みをマリアは覚えたが、
それ以上に男の欲望を満たさせているという充足感の方が勝った。
それは彼の指が細やかな動きで乳首を刺激し始めた時に一層強まり、
マリアは身体と精神の両方からの愉悦にむせび泣いた。
「あ……ン……ッ」
ペニスが動き始める。
粘膜をこそぎ取られ、またたくような火花がまぶたの裏で散った。
入り口近くまで戻っていった屹立が、勢いをつけて戻って来る。
「んあぁッ」
心が求めるままに淫声を紡いだマリアは、その予想外の大きさに慌てて口を塞いだ。
しかし龍麻は、そんなマリアを見て緩急をつけた抽送を行う。
「あッ、んん……っ……ッあぁッ」
声を出してはならない、という理性と、もっと快感を貪りたい、という葛藤にマリアは悶える。
しかしそれも、粘液が糸を引くような抽送から一転、
腰ごと叩きつけるような抽送を受けると、すぐにどうでも良いと思えてしまうのだ。
淫らな穴を掻き回す肉棒に、いつしかマリアはすっかり溺れていた。
「あ……?」
柔らかなウェーブのかかった髪を乱して喘いでいたマリアだったが、突然愉悦が止んだ。
気だるい理性が戻ると共に、膣の疼きが襲ってくる。
「どうしました?」
屹立を引き抜いた龍麻は、熱く火照ったそれを、マリアの尻の谷間にあてがい前後させた。
自分で選んだ下着のせいとはいえ、ほとんど素肌に触れる肉塊は、
余すところ無くその昂ぶりを伝えてくる。
中断された快感と、滑った塊が与える刺激に、もうマリアは耐えられなかった。
「お願……い……止めない、で……」
腰を動かし、自分から導き入れようとする。
龍麻はそんなマリアの上半身を起こし、壁に押しつけた。
片足が高々と持ち上げられ、だらしなく口を開けている、粘液で濁った淫唇がさらけ出される。
牡を求めてひくついているそこは、龍麻の眼前で新たな蜜を物欲しそうに垂らした。
白く泡立った滴はひどく淫靡に滑らかな腿を伝う。
屹立でそれを掬った龍麻は、身体を寄せ、彼女の求める場所へと己を近づけていった。
「あッ……あ……っ」
淫らに開いた陰唇にあてがわれたペニスは、しかし中には入ってこず、
入り口をぬらぬらと滑るだけだ。
「い、や……」
焦らされ、気が狂いそうになったマリアは、たまらず龍麻を見た。
怜悧な美貌が呆けたように崩れ、肉欲を求めるさまに、龍麻は思わずぞくりとした。
もう少し焦らそうかという考えも吹き飛び、我慢できなくなった屹立を彼女にねじ込む。
「うぁ……ッ、あぁ……ぁ」
挿入したマリアの口から零れた、腹の底からの熱い呼気が龍麻を灼いた。
興奮を誘われた龍麻は、壁に押しつけるようにして更に彼女の奥を抉った。
「あッ、んぅ……」
柔らかな肉の壁は、ただ締め上げるだけでなく、絶妙の加減で搾るようにまとわりついてくる。
葵のそれともまた一味違った蜜壷の感触に、
ともすれば果ててしまいそうになるのを堪えて龍麻は抽送を始めた。
「はぁ……ッ、あ……ぁぁ……」
奥まで屹立を沈める度顔にかかる、情欲に染まりきった呼気は、むろん龍麻にとって不快なものではない。
艶めかしく動く、濃い赤の口紅を引いた唇に誘われるまま、龍麻はマリアの口を吸い上げた。
「んッ、ううん……う……ふ……」
前回と違い、マリアの舌は積極的に応じてくる。
巻きこみ、絡め、ねぶってくる動きは、別の生き物のようでさえあった。
劣勢を感じた龍麻は、もう片方の足も持ち上げ、マリアの身体を磔にしてしまった。
「あッ、うぅッ……」
更に屹立が沈みこんでくる。
自重を支えることも叶わず、ただ龍麻にしがみつき、
貫くペニスの勢いを和らげるのがせめてもの彼女に出来ることだった。
しかしそんな努力も、ただ一度突き上げられただけであえなく潰えてしまい、
腹の中を満たす感触に心を捧げてしまう。
「あぁッ、い、い……ッ、龍麻、もっと……ッ」
生徒を名で呼んだことにも気付かず、はらを犯す愛しい屹立を受け入れることに全神経を注いだ。
身体が、子宮が揺らされ、快感が高みへと駆け上っていく。
体を二つに裂かれるような感覚の中、以前味わった、強烈な愉悦が再び訪れた。
龍麻の腕の中で仰け反ったマリアは、息も付けぬほどの陶酔に見舞われる。
「うあぁぁッ……!!」
口元を抑えることも忘れ、身体の悦びをそのまま声に変える。
龍麻でさえ少し危惧を覚えたほどの大きな声は、途切れることなく屋上に響いていた。
「そんなに……気持ちいいんですか?」
「ええ……いいわッ、だから、龍麻、もっと……ッ」
勢い良く揺らされるマリアの足先からハイヒールが脱げ落ちる。
解放された指先を折り曲げ、マリアは全身で快楽を享受していた。
「先生……そろそろ、俺」
「いいわ、ワタシも……もう……ッ」
龍麻が限界を告げると、マリアも腕に力を込めて応える。
腰を包む甘い痺れを抑えきれなくなった時、龍麻は思いきり彼女の中に屹立を撃ちこんだ。
「あァッ……! はぁぁァ……ッ!!
ペニスが膨れ上がり、膣を満たす。
その感覚にマリアが酔いしれた瞬間、熱い体液が身体の奥に向かって吐き出された。
子宮に直接注がれたような錯覚すら抱くおびただしい量の精液が、幾度かに分けて注ぎ込まれる。
その度に拡げられる隘路は悦びにさざめき、歓喜の涙が結合部から流れた。
マリアは教え子に抱えられ、気の遠くなるようなエクスタシーを迎えたのだった。
波のように起こる絶頂の余韻に小刻みに身体を震わせ、
朦朧としているマリアの脳裏に龍麻の声が入ってくる。
「マリア先生……今日、先生の家に行ってもいいですか? 明日休みだし」
悪魔の囁きを断る術は、彼に抱えられたままのマリアにはなかった。
奥まで貫いている猛りが、ただひたすらに愛しかった。
龍麻は尋ねておきながら、答えを待たず葵に話しかける。
「葵も来るだろ?」
葵はまだぐったりとしていたが、緩んだ顔を上げてぼんやりと頷いた。
マリアを降ろし、葵を立ちあがらせてやりながら、
二人を見た龍麻は、尽きることのない欲望が早くも下腹に集まっていくのを感じていた。



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