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新宿にあるホテルの一室。
小気味の良いシャワーの音を聞きながら、奇妙な展開になった、と龍麻は思わずにいられなかった。
まだまともに話して二時間とは経ってはいない相手と肌を交わすというのは、
さすがの龍麻にとっても初めての経験だった。
藤咲亜里沙。
初めは敵として現れた彼女は、どういう気まぐれか、闘いが終わった後、
非を認めて和解したのみならず、自分達と共に闘いたいとまで言い出したのだ。
非日常に対する無責任な憧れがそう言わせているだけで、
危険を味わえばすぐに逃げ出すだろうと思った龍麻は、
渋る醍醐や葵を説き伏せてひとまずは彼女の申し出を了解した。
何しろ彼女は制服の上からでもはっきりとわかるほど大きな胸に、
清純な葵と成熟したマリアのちょうど中間の妖艶さを持ち合わせているのだ。
なにもせず手放してしまうのはいささか惜しいと言うものだった。
だが、あいにく彼女を呼び出すような口実になる事件も、そうそうタイミング良く起こってはくれない。
ではどうやって極上の身体を味わうか、龍麻が算段を巡らせていたところ、
亜里沙の方から誘いかけてきたのだ。
街で偶然──今にして思えば、偶然かどうかも怪しいが、とにかく、出会った龍麻に、
亜里沙は挨拶するなり年来の恋人のように腕を組んできた。
それだけなら驚くことでもないが、ひとまず入ったコーヒースタンドで、
龍麻が何を訊ねる前に、意味ありげな視線と共に彼女は今から暇か、と訊いてきたのだ。
さほどコクがあるわけでもないコーヒーを、喉の奥で味わうようにゆっくりと飲みこみながら、
視線の意味を吟味する龍麻に、亜里沙は言ったものだった。
「あんた、随分モテるらしいじゃない」
「……」
コーヒーを飲み干した後も、しばらく龍麻は何も言えなかった。
彼女は龍麻が葵やマリア、絵莉をもかどわかしていると知っても、
軽蔑するどころか喜色さえ浮かべていたのだ。
「オンナが群がるってことは、それだけあんたに魅力があるってことでしょ。
そういう男を墜とすのが腕の見せ所ってもんじゃない」
紫色の、ともすれば品が悪くなってしまいそうなルージュを巧みに引いた唇を
艶めかしく動かし、亜里沙は疑問に答えた。
感心し、かつ呆れる龍麻だったが、話が早いのはありがたい。
本当にヤル気なのか、と初対面に近い女性との会話としては身も蓋もなさすぎることを、
さすがに冗談めかして言ってみると、更に呆れたことに即答が返ってきたのだった。
「どうせいつかはヤルんだから、それが多少早くなるってだけでしょ。
まさかあんた、変な貞操観念持ってるんじゃないでしょうね。他の女と散々ヤッといて」
ごもっとも、と黙りこくる腕を掴まれた龍麻は、コーヒーを飲み干すことさえなく
彼女に導かれるままここに来た、というわけだった。

先にシャワーを浴びた龍麻は、タオルを巻いただけの格好でベッドの端に座っていた。
セックスに関しては同年代の男より遥かに経験を有する龍麻だったが、今日は妙に落ちつかなかった。
多分、主導権を握られ気味になっているからだろう、と推察はできる。
年上のマリアや絵莉さえ手玉に取る龍麻も、亜里沙のようなタイプは初めてで、
それが緊張に結びついているのだろう。
それにしても、落とすまでも愉しみなのに、今回はそれがなく、その点が残念といえば残念だった。
だが亜里沙はきっと、それを補ってあまりあるセックスを愉しませてくれるだろう。
期待に早くも充血を始めようとする股間を、龍麻は抑えつけた。
あまりがっついていると思われるのも嫌だったからだ。
気を紛らわそうとして龍麻は、
良く考えてみればホテルに来るのもまだ数えるほどであることに気付き、
設備がどんなものかと見渡してみる。
ベッドはどこかで噂に聞いた回転ベッドとやらではなく、
一度どんなものか実物を見てみたかった龍麻は落胆し、次いで落胆した自分に苦笑いした。
すると浴室の扉が開く音がして、龍麻は慌てて部屋の観察を止め、元の位置に座りなおした。
「お・待・た・せ」
バスタオルを巻いたのみの格好で、亜里沙が出てきた。
場慣れしているのだろう、臆することもなく平然と近づいてくる。
彼女の肢体はやはり、想像していた通りのもので、
龍麻の目線は自然とほぼ正面にある豊かな胸に注がれた。
亜里沙は心得たように両腕で胸を寄せ、たわわな膨らみを存分に見せつけながら、
モデルの撮影のようにゆっくりと腰を落とした。
手が入ってしまいそうなほど深い谷間は、絵莉を遥かに凌駕し、
葵どころかマリアにも匹敵するかもしれない。
思いきり顔を埋めたい欲望に駆られた龍麻が、
それを実行に移すかしばし悩んでいると、額を指先で押された。
「鼻の下が伸びきってるわよ」
亜里沙はそのままもう片方の手も添え、額にかかっている髪を上げる。
程よく熱を帯びた手が快く、眼前で今にもこぼれそうな乳房も良い目の保養となったので、
龍麻は動かなかった。
「ふーん……あんた、上げた方がいいんじゃない?」
「そうかな」
「そうよ」
頷いたものの、龍麻は髪型にはあまり興味がなかった。
世の男が聞いたら激怒するだろうが、特に見た目に気を使わなくても女に不自由はしなかったのだ。
中途半端にまとめられた髪をわずらわしげに一振りすると、亜里沙は目許に苦笑を湛える。
「思ってたより子供っぽいのかしらね」
首を振っただけでそう決めつけられてはたまらない、と龍麻は少しむきになって反論した。
「そういう奴は嫌いか?」
「当たり前でしょ。中には年食ってるのに子供っぽいところが好き、なんて女もいるけど、
あたしは願い下げよ、そんなヤツ
その態度こそが子供っぽいのだと言わんばかりに亜里沙は断言した。
肉体的な経験においては同年代の男よりも遥かにあると自信がある龍麻だが、精神面となると心もとない。
特に亜里沙のような、あらゆる意味で男を知っている女に言われては、
そうなのかもしれない、と弱気にもなってしまうというものだった。
どうやらまだ試合の開始早々に失点しまったようで、なんとか挽回しなければならない。
龍麻は男らしいところを見せようと、亜里沙を強引に引き寄せようとしたが、
それは早計だったらしく、簡単に押し留められてしまった。
優しいほどの所作で男をあしらった亜里沙は、
龍麻の膝を開かせ、その間にひざまずくと、バスタオルを解く。
「へぇ、大きいじゃない」
威容を見ても顔色一つ変えず評すると更に身体を近づける。
その位置では近すぎてやりづらいだろうと思った龍麻に、亜里沙は軽い上目遣いで微笑んだ。
「こういうのはさせたことある?」
囁くなり、乳房で屹立を挟む。
一瞬で深い谷間の中に屹立はほとんど消えてしまっていた。
人肌の温かさと、絶妙な肉の弾力が興奮をそそる。
ローションを取りだし、胸の間にたらした亜里沙は焦らすようなことをせず、
すぐに肉棒をしごきだした。
「フフッ……まだ硬くなるのね」
悩ましげに呟いた亜里沙は自分の乳房を横から支え、柔らかく挟みつける。
舌や口腔、それに膣とはまた異なる包みこみ感は、快い痺れを龍麻にもたらした。
「なんか……上手いな」
「下手だったら承知しないわよ」
またも失点。
亜里沙は公言した通り男にかしずくのではなく墜としたいと考える性格のようで、
確かに葵などとは比べ物にならない、マリアや絵莉とも比肩する強敵だった。
これまでに落とした女のいずれとも異なるタイプの亜里沙に、新鮮な興奮をそそられ、
改めて彼女をモノにしたいと思った龍麻は、奉仕とは言いがたい奉仕を受けながら、
好機を待つことにした。
豊満な乳房で屹立を挟みこんだ亜里沙は、柔肉の狭間でしごいて弄ぶ。
ローションが淫靡にてらてらと輝く巨大な質感は、
その潤滑によって予期せぬ動きを肉茎に伝え、龍麻をのけぞらせた。
「……っ」
これ以上弱みは見せまいと堪える龍麻だが、亜里沙は敏感にそれを見抜き、より強く刺激を加える。
亜里沙の緩急は悪魔的ですらあって、肉を擦りつけるようにしてしごき、
龍麻を追い詰め、堪えきったと思い龍麻が気を抜いた直後、亀頭を集中して刺激してきた。
「……」
そのまま射精してしまうかというくらいの快感を、どうにか抑えた龍麻だが、
びくびくと脈打つ屹立はどうしようもない。
わずかに朱が射し始めた頬を上げ、亜里沙はすっかり余裕の表情で笑った。
「まさかもうイクんじゃないでしょうね」
そこまで言われては龍麻にも意地がある。
彼女の攻撃を乗り切って、そこから反撃に転じるのだ。
龍麻は少し虚勢を張って、彼女よりも更に余裕の表情で笑った。
強気の作り笑いを浮かべる二人は、威嚇しあう獣さながらだったが、
先に動いたのはやはり亜里沙の方で、肉の圧力から屹立を一旦解放した彼女は、
より深く龍麻の足の間にひざまずいた。
唇をすぼめて先端に細い息を吹きかける。
円錐状になっている部分の裏側に的を絞り、舌先でこそぐように刺激を与えた。
「く……っ」
腰が浮いてしまいそうになる。
今、龍麻の周りにいる女性でもっともフェラチオが上手いのは絵莉だが、
彼女の舌技は巧みながらもどこかマニュアル的なのに対して、
亜里沙は恐らく実地で会得した、極めて実戦的なものだった。
彼女の技量を軽んじていた龍麻は、遅まきながら危険に気付いたが、
亜里沙は亀頭を咥え、本格的に責めはじめる。
「ふッ……ン……っ」
円筒状にすぼめた唇で屹立をしごきながら、喉の奥まで呑みこんでいく。
長さも太さも優に平均以上はある肉茎をえずくこともなく含んだ亜里沙は、すぐに舌を操りはじめた。
じんわりと包みこむかと思えば、千切りそうなほど舌を巻きつけ、
汲々と吸いたてたかと思うと繊細な動きでなぞりあげる。
激しい音を立てて屹立を啜る亜里沙に、龍麻はなす術なく快楽を植えつけられていった。
「んふッ、んっ、ふッ、んぅッ」
亜里沙は軽いひねりさえ加えて肉茎を頬張る。
長大な器官が彼女の口内に消え、再び現れる様は、まるで手品のようだった。
一方的に奉仕を受ける龍麻は、あまりの快楽に我を忘れ、早くも射精しそうになってしまう。
するとそれを見透かしたように、亜里沙が笑った。
「まだイッたらダメよ」
そう言いながら、亜里沙は口淫を激しいものにする。
長い舌で亀頭を捕らえ、ねぶりつく。
獲物に巻きつく蛇のような動きに、龍麻はたまらずのけぞった。
器官が欲望を放とうと脈打つ。
このまま彼女の口に出したら、さぞ気持ちが良いだろう。
半ばはそう考えかけた龍麻だったが、このまま射精してしまったら今後彼女にいいようにあしらわれる。
別にそれでも構いはしないが、やはり龍麻にも意地というものがあった。
明らかに追い詰めようとする亜里沙の口淫を、龍麻は耐える。
柔らかな円環を幹に吸いつかせ、爆ぜてしまえと優しく、そして強く促す亜里沙に、
彼女の頭を掴み、思う存分ぶち撒けたいという欲望を堪えるのは並大抵のことではなかったが、
歯を食いしばって龍麻は耐え抜いた。



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