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「う、あ……せん、せ……」
「フフ、口を開けなさい……そう、いい子よ」
 だらしなく口を開けたアン子に、マリアは溜めた唾を与える。
受けとったアン子が飲みほすのを確かめると、再び口を開けさせ、
今度は舌を入れて唾液を捏ね、飲ませた。
「あう、っぷぁ……ん、んぅ……」
 幾度も唾液を注がれ、アン子の意識は朦朧としている。
はっきりしているのは唾液が喉を滑り、胃に落ちたときで、
まるで下腹を通じて抽出されたようにとろりと愛蜜がしたたった。
 身体を縦に貫く熱が、こんなにも快いものだなんて。
アン子はもっと気持ち良くなりたいと思い、夢中でマリアにしがみついた。
 マリアの肉体は人肌にしては少し冷たいような気がして、
こんな快楽の最中であっても、アン子は持ち前の好奇心を浮かびあがらせかけた。
ただ、それはやはり一瞬のことで、火照った身体にはかえって気持ちいいのと、
マリアが美しい蒼色の瞳で微笑みかけたので、すぐに疑念はどこかへ沈んでしまった。
「さあ……愉しみましょう、遠野サン」
 アン子は襲いくる快美な激流に、流される方を選んだ。
マリアにしがみついていれば、遭難することはないのだと信じて。
 マリアの合図を受けて、葵はアン子への愛撫を再開させた。
葵はマリアほど情熱的ではないにせよ、同級生の肉体に奉仕するのを厭わない。
龍麻とは最も深い関係にあり、その情欲を一身に受けるのみならず、
彼の周りに集う女性からも何らかの形で愛されてしまう彼女は、
しかし淫欲に塗れたようには一切見えない聖女の貌を絶やすことはなく、
新たな契りに自然に順応していた。
肌理の細かな白い肌と、理想的なプロポーションを備える彼女は
マリアのお気に入りでもあり、毎回彼女が選んだ下着を着させられている。
今日は赤の、彼女自身が選んだなら一生選ばないようなデザインの
ランジェリーを身にまとい、アン子と肌を重ね、
この部屋に居る者は例外なく淫らなのだと証明していた。
「アン子ちゃん……」
「う、あ、美里、ちゃん……!」
 優に掌に余るサイズの乳房を愛おしげに揉む。
先端の蕾にくちづけ、甘噛みし、優しく吸いたてる。
龍麻に命じられての奉仕であるのに、
葵がアン子に接する態度は恋人に対するそれと変わりない。
相手を感じさせることに主眼を置いた、うやうやしいまでの愛撫は、
口うるさいアン子でさえも黙らせた。
「あ、んっ……!」
 かすかな反応の違いも見逃さず、アン子が望む刺激を与える。
わき腹や腿の内側など、アン子自身も知らなかった性感帯を次々に探りあて、
同級生の理性を溶解させていった。
「だ、駄目ぇ、美里ちゃん待って……っ」
「うふふ、アン子ちゃんって感じやすいのね」
 マリアと葵に責められて感じない人間などこの世に存在しないと思われるが、
葵は無意識にアン子を言葉でなぶる。
そしてマリアによって秘密の扉を開けられてしまったアン子は、
初歩的な言葉責めでも如実に反応してしまうのだった。
「ちがっ、あたし、そんなんじゃ……!」
「フフ、そうかしら? 美里サンの言うとおり、
とっても感じやすいように見えるのだけれど」
「違うんですッ、これは……あぅ……!」
「まだ素直になれない悪い子には、おしおきが必要かしらね」
 アン子の下半身に陣取ったマリアは、
すでに力など全く入らない両足をたやすく開かせる。
色気のあるとは言いがたい、水色のパンティが包み隠す部分は、
マリアの指摘が正しいことを証明していた。
染みというのももはやおこがましいほどに濡れている下着を、
マリアは軽く押さえつける。
くっきりと浮かびあがった卑猥な縦裂に、蒼い瞳を好色に輝かせると、
口を大きく開けて呼気を浴びせた。
「ひゃう、っん……!」
 強烈な、けれど物足りない刺激に、アン子の腰が跳ねる。
この部屋に入ってからずっと、普通ではない興奮状態に置かれていたアン子は、
ようやく最も敏感な部分を愛撫されたことで、一気に肉体が反応した。
そのためマリアの息が吐息というには冷たかったのにも気づかず、
甘美すぎる愛撫をもう一度受けたいとそればかりを考えていた。
「さあ、足を開きなさい……アナタのいやらしい部分を、ワタシに全て見せるのよ」
 微妙にマリアの口調が変わったことに、アン子は気づかなかった。
鼠蹊部に添えられた手が意志に反して足を広げさせたのだと信じて疑わなかった。
「あ……うあ……せん、せ……」
 アン子の足が大きく開く。
大きなベッドはどこまで開いても足が落ちてしまうことはなく、
それがアン子に判断を誤らせた。
気がつけば蛙のような格好をしていて慌てて閉じようとするが、
いつのまにか片足が葵の足に巧みに挟みこまれて固定されている。
そしてもう片方はマリアの、火照った肌にたまらない快美感をもたらす冷たい手に
押さえられていて、やはり動かせなくなっていた。
「ま……待ってっ……!」
 いくら恥じらいが薄いアン子といえども、
最も恥ずかしい部分をこうまで晒けだしてしまっては恥ずかしくないわけがなく、
しかもアン子の羞恥心は昨日のうちにマリアによってずいぶん育てられている。
「フフ……やはりワタシの見る目に間違いはなかったわ。
こんなにして……いけない子ね」
「そッ、それは、美里ちゃんが……」
 とっさに葵を犯人に仕立てあげようとするアン子だが、
真横にいる当人に哀しげな目をされてそれ以上続けられず進退窮まってしまった。
「遠野サン」
「はッ、はいッ」
「アナタにはまだ色々と教えなければいけないようね」
 字面だけ見れば指導に熱心な教育者の鑑である発言者は、
瞳の蒼を好色で異様に乱反射させ、色気のない下着に爪を立てる。
何気ない動作で切り裂かれた下着はたちどころに役目を失い、
布きれとも呼べない雑布に変わってしまった。
さらにマリアは容赦なくショーツを引き裂き、
彼女にとって何の興趣もそそらない布を取り去る。
「ここはこんなに素直なのに、どうしてかしらね」
 現れた秘裂をなぞる手つきはうってかわって優しい。
もちろんその優しさはアン子にとっての優しさとはならず、
すでに充分にほぐされたその部分は、ほんの触るていどの微弱な愛撫でも
脳髄にまで痺れを走らせてしまう。
「ん、うぅっ……!」
 昨日受けた鮮烈な洗礼を肉体が思いだし、過敏な反応を始める。
調べ尽くされた弱い場所を撫でられるたび、かけたままの眼鏡の内側に火花が瞬いた。
「アン子ちゃん、危ないから眼鏡を取るわね」
「だ、だめ……取っちゃ、だめぇ……」
「どうして?」
「眼鏡……取ると……顔……可愛くないから……」
 アン子は抱えていたコンプレックスを吐露したにすぎない。
眼鏡を常用しなければならないほど視力が悪い人間は、
眼鏡を外すと眼がきつく見えてしまうのだ。
ところがそばにいる二人には、アン子の意図は全く伝わらない。
「ううん、アン子ちゃんは可愛いわ。だから……ね?」
 葵はアン子の抵抗の意志をあっさり押し流す微笑で応じ、
マリアは瞳を興奮で乱反射させて、ヴァギナへの本格的な愛撫を始めた。
若い女性のかぐわしい芳香を存分に嗅ぎながら、
閉じている秘唇をじっくりとくつろげる。
にちゃり、という粘り気の強い液体が立てる音が室内に響き、
部屋にいる四者に四様の疼きを与えた。
「い、いや……ぁ、駄目……ぇ……」
 なかでも最も刺激を受けたのは他ならぬアン子で、
自らの身体からこんなにいやらしい音が出てしまったことに、
常の知的なふるまいも失って、暴れださんばかりだった。
「アン子ちゃん……」
 そしてその恐慌は、葵に眼鏡を奪われたことでさらに悪化してしまった。
「やっ、やぁっ……!」
 視界がぼやけた動揺で、アン子は赤ん坊のように首を振る。
見る方も動揺してしまいかねない、醜態といっても良い姿だったが、
葵は落ちついてアン子の頬を撫で、優しくあやした。
「大丈夫よ、アン子ちゃん」
「あぅ……」
 この異常な状況下にあっても、葵の笑顔は性別を問わず見る者を惹きつける。
調子が悪くてぜんまいが一瞬止まった人形のように固まったアン子に、
葵は当然の行為とばかりにくちづけを与えた。
「ん……ん、ぅ……ん……」
 唇どころか心までとろかすような熱く甘いキス。
マリアの生気を根こそぎ吸うような激しさはない、
けれどもベクトルは同じ口唇の触れあいに、昨日焚きつけられて、
まだ完全に消えてはいなかった熾火がじわりと熱を帯び始める。
「美……里、ちゃん……」
「アン子ちゃん……」
 アン子は自分からキスを求めた。
性急な舌は優しくあやされ、コントロールされる。
じんわりと長い時間続く快感はたちまちアン子を魅了し、
口腔深くに入ってくる葵の舌をあるがままに受けいれさせた。
学園一の美少女の舌は、その美貌からは想像もつかぬ淫らな動きで歯をくすぐり、
舌先を絡めとる。
あまりに快美なぬらりとした感触に、つられてアン子が舌を伸ばすと、
すかさず唇で咥えられ、輪転機に挟まれた紙のように引きこまれてしまうのだ。
「はッ、ひゃ……」
 他人の唇のなまめかしさにくらくらしながら、アン子は夢中で葵にしがみつく。
葵の口の中で舌先をくすぐられ、軽く歯を当てられると、
モラルやら羞恥やらといったものが粉々に砕け散った。
「み、みひゃほ、ひゃん……」
「フフ、素直になってきたわね、遠野サン」
「ひぇ、ひぇんへ……んぷッ……!」
 感覚がなくなりかけたところでようやく解放されたアン子の舌は、
息を継ぐ暇もなくマリアに奪われる。
喉の奥まで掻きまわされるような錯覚を覚える長くて厚い舌に、
アン子はなすすべがない。
昨夜の暴力的なまでの快楽を細胞が思いだしてしまえば、
あとは堕ちるだけだった。
「あぅ、あ、あんッ、やら、あッ……!」
「可愛いわ、本当に。いいのよ、もっと感じなさい……ほら」
 強い香水の匂いに包まれて、アン子は酩酊する。
マリアの指先が巧みに包皮を剥きあげ、ピンク色の肉芽を転がすと、
彼女の身体は哀れなくらいに痙攣した。
「気持ちいいでしょう? でも、まだこんなものではないのよ……
これからじっくりと教えてあげる」
 その言葉に含まれる意味もわからぬまま、アン子は溺れる。
マリアに、そして葵に、二人の美女に優しく、あるいは激しく責めたてられて、
小刻みに腰をくねらせ、大きな水たまりをシーツに作った。
「ひんッ、だめ、そこ、せんせ……やめてぇっ……!」
「イキなさい……何度も、何度でも、ワタシがイカせてあげる……!」
「あッ、あ、うぅッ……! らめ、ほんとに……ほんとにあたし……!」
「そういう時は何と言えばいいか、昨日教えたでしょう?」
 鞭のようにしなやかな鋭さを持った声がアン子を撃つ。
それは緋勇龍麻に対しては絶対無敵ともいえる強さを誇るアン子を、
屈服させてしまう魔力を秘めているのだ。
「さあ、言いなさい……!」
 圧力を強めた命令と同時に、マリアはピンク色の柔突起を掻く。
精神と肉体の双方からの責めに、アン子の頭の中で何かが弾けた。
「んゥッ……! イク、イ、ク――ッッ!!」
 けたたましい絶叫を放ってアン子は絶頂を迎える。
その痴態は女のこういった場面を見慣れている龍麻でさえ驚き、
生唾を飲んでしまったほどだった。
 成熟ぶりはわずかに葵に及ばない、しかし充分すぎるほどに発育した肉体が、
わがままに振り乱れる。
腰が浮き、沈み、また浮いて、四肢でマリアを跳ねのけるようにして、
身体を襲った快楽の波濤に身もだえした。
たった一日で女の性を教えこまれてしまった秘裂が意志を持っているかのように
襞をうねらせ、飛沫をあげる。
「うッ……は……ふゥ……ッ……」
 強烈な絶頂は時間にすれば長くはなかったが、
身体を満たした快感は容易には去らないらしく、
アン子は大きく開いた足もそのままに、腰をひくつかせていた。
そしてマリアはまだアン子を解放するつもりはないようで、
頬や首筋に繊細なタッチのキスを落としている。
「凄えな……」
 同級生の痴態と、彼女をここまで変えた教師の手腕に感心した龍麻は、
もう一人の同級生が熱っぽい瞳で見上げているのに気がついた。
「なんだ、葵もあんな風にして欲しいのか?」
「……」
 葵は答えず、代わりにやみくもに抱きついてくる。
彼女の体熱に欲情を感じた龍麻は、アン子の隣に葵を押し倒した。

 数十分後、ベッドの上の様相は凄まじいものがあった。
マリアに容赦なく責められ続けたアン子は、
身体中をあらゆる体液にまみれさせて半ば気を失っている。
その隣では葵が、龍麻にやはり容赦なく犯され、
これも幾度となく絶頂を迎えさせられて糸の切れた人形のように
龍麻にしがみつくばかりだった。
「うッ……あぁっ――!!」
 絞りだすような悲鳴を放った葵は、そのまま気を失ってしまう。
 彼女を横たえた龍麻は、まだアン子に覆い被さっているマリアに苦笑した。
「そんなに気に入ったんですか? アン子のこと」
 正直アン子が苦手である龍麻には、マリアがそこまで執着する理由がわからない。
だが、とどめとばかりに濃厚なキスを放ち、アン子が力尽きたのを見届けたマリアは、
龍麻を見ると大きな口を妖艶に開く。
深紅に彩られた三日月の端には、白く尖った歯が覗いていた。
「ええ、気に入ったわ。彼女の血はとても美味しいし、
何より処女というのが申し分ないわ」
 マリアの正体を思いだした龍麻は、納得すると同時にアン子に少しだけ同情した。
吸血鬼に目をつけられた人間は、まず逃れられない。
もう少し早く出会っていれば、彼女の人生を軌道修正してやれたかもしれない。
 だが吸血鬼と共に歩む人生が悪いと決まったわけでもなし、
血を吸われることによって暴力的な性格に変化が及べば、
あるいは良き出会いとなるかもしれないのだ。
 そうなればめでたしめでたしというわけで、
満を持してアン子の首筋に牙を突きたてるマリアと、
その下で悩ましげにうめくアン子の将来に幸あれと一秒だけ祈った龍麻は、
悪い影響から遠ざけるように葵を抱きよせたのだった。



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