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「んぁぁっ……! あっ、あ、あぁっ、うぁっ……!!」
男根が身体を貫くたび、脳髄がしびれるような快楽が襲う。
荒々しく下腹を掻きまわす猛りに、葵は短い叫びをあげることでしか反応できない。
じゃらりと鎖が鳴って、足が突っ張る。
両腕には冷たい金属の環が食い込む。
しかし、全身に巻かれた鎖は快楽をさえぎるものではなかった。
火照った肌には冷たい鎖が、そしてぬかるんだ胎には熱い肉塊が。
おのおのがもたらす快感は甲乙がつけがたいもので、不自由の果ての絶頂を、葵は全身で受けいれていた。
「あっ……あ……ッ!!」
腰を卑猥にけいれんさせ、悲鳴ともつかない嗚咽をたれながす。
ゆるやかな、けれどもの足りなかった恍惚ではない、何もかもを忘れてしまうような悦楽。
こんな愉しみがあってよいのかというほど、身体のすべてをなぶりつくす気持ちよさ。
男根に刺し貫かれながら、肌をなぶる痛みをも快楽の糧とする。
開いてはいけなかった門扉は解き放たれ、そこに隠されていた禁断の果実はもぎとられた。
もう知らなかった頃には戻れない――理性が忘れても、肉体が覚えてしまったから。
「うぁっ、あ、はっ、あ、ぁあっ」
葵は泣き叫んだ。
それが鎖で全身を縛られた葵にできる唯一の、そして最高の行動だったから。
鎖が鳴いている。
奇妙なリズムを取りつつ、決して止まない金属の伴奏に、葵の嗚咽が重なっていた。
下腹に植えつけられる熱さが、気道を灼いて外へと逃げだそうとする。
唇をかすめていくただれた焔の、なんと気持ちよいことか。
もっと強く感じとろうと、葵は乾いた唇を舐めまわす。
熱気はたえまなく送りこまれてくる――息もつかせぬほどに。
愛情すら失せてしまう、肉の悦び。
セックスよりもいやらしい、欲の交わり。
何がきっかけだったにせよ、それは葵の裡に眠っていたものだ。
きっかけはただ呼び起こしただけにすぎない。
それを葵は、充分すぎるほどに自覚していた。
「んあっ、あ、あ……っ、あはぁ……っ」
龍麻の屹立がこれ以上ないほど深くを抉る。
焼けた串、脈打つ塊。
葵が変貌したように、龍麻も変質している。
それを象徴するような昂ぶりが、体内をめちゃくちゃに暴れまわっていた。
気持ち、いい――
愛する男とひとつになるという以上の快楽が、下腹を満たしていた。
男根が深く入ってくるたび、鎖が当たる手首に激痛が走る。
しかしそれはすぐに下腹部から広がる気持ちよさと混ざり、同じものになっていくのだ。
「ひっ……うぁ、あぁぁ……んっ、うぅっ」
もっと欲しい。
もっと鎖を感じたい。
欲望に心身を満たされていく中、葵は際限なく淫悦を求める。
締めつける鎖に引き裂かれるような、けれども待ち望んでいた感覚に。
やみくもに下腹を抉る熱茎を、求めて腰を動かす。
上下に、左右に、娼婦も顔をそむけるほど卑猥に、五体を縛られたまま下半身だけを振り立てた。
「ああ……あ……ああああっっ……!!」
獣じみた、濁った叫びは誰のものなのか考えることもできず、体内に押し入ってくる塊に呼吸を合わせる。
すでに膨張しきっていた、塊めいた快楽を葵は全身で受けとめ、こらえていたが、
それもついに限界が訪れたようだった。
「ああ、あぁ……あ、う、あぁっ……」
激しい抽送に意識が溶ける、否、壊されていく。
胎を貫き、脳を直接揺さぶられるような屹立に追いつめられた葵は、瞼の裏に砂漠を幻視した。
誰もいない、見渡す限りなにもない、黄土色の世界。
そこで快楽の源たる鎖に絡めとられ、ただ磔にされているだけで濡れてしまう。
夢においてさえ現実と相違ない快感をもたらした鎖は、五感にじかに感じた時、
痴れ狂うほどの恍惚をもたらしてくれた。
「……っっぁあ……!!」
葵の口の端にはうっすらと涎がにじんでいる。
呼吸と混じった、途切れることのない濁った嗚咽はひときわ高まりを見せていた。
「――ッ、あ、あ……ッッ!!」
灼熱を感じながら、葵は階梯をのぼっていった。
絶頂は深く、長く――かつて経験したことのないほどの恍惚を葵にもたらした。
「あっっ……か……っ」
意味をなさない悲鳴を、葵は聞いていない。
身体の中を荒れ狂う快楽の暴力に翻弄され、鎮めることもできず悶えるばかりだった。
涙を流し、涎を垂らし、鼻水さえこぼし、ただ獣の悦びに耽り――果てていった。
柔らかな肢体が瞬間、鋼のように強張る。
根本を、亀頭を、全てを絞めあげる媚肉に、龍麻は促されるまま欲望を注いだ。
「……っ!!」
内と外とが爛れた熱に満たされ、快楽にまみれた屹立が精液を膣に叩きつける。
性器が爆ぜるのではないかというほどの快感を、龍麻は存分に味わった。
これまでのセックスとは比べものにならない、獣めいた充足。
雄叫びをあげたくなるほどの激しい快楽が、全身を巡った。
『黄龍の器』として膨大な氣を体内に溜めた時にも似た、しかしそれ以上の恍惚が、龍麻を包んでいた。
ほとんど同時に達した葵は、焦点の定まらない瞳であらぬ方を見ていた。
龍麻の視線にも気づかず、唇を薄く開いて浅い呼吸を繰りかえしている。
赤と白のまだらになった肢体を、龍麻は見下ろした。
柔らかな部分全てに巻きついた鎖とその上にぶち撒けた精液が、清純だった葵を醜く汚している。
本能が去り、理性が戻ってくるにつれて、龍麻は理解していた。
世の中には、汚れてこそ美しいものがあるのだということを。
目の前にいる、両腕を縛られ、淫口をぽっかりと開けて絶頂に浸る葵の美しさときたら、
これまでの彼女の美はあくまで表層的なものであったと何よりも雄弁に告げていた。
弛緩した柔肉や、下腹部に淫らがましく塗りたくられた体液。
龍麻の存在も眼中になく快楽の余韻に小刻みに震える葵は、
どこまでも汚らしく、この世ならぬほど美しかった。
あらゆる美しさと醜さを備えた女体のなかでももっともそれが際立つ、
たった今まで結合していた穴に龍麻は触れる。
まだ熱いとば口に指を浅く埋めると、それだけで腰が新たな快楽を期待してひくついた。
その拍子に、開かれた股の間から樹液がどろりと垂れる。
その、樹液を吐きだした己のものは、
狂おしいほど激しく欲望を吐きだしたにも関わらず、萎えることなくそそり立っていた。
すばやく呼吸を整えた龍麻は、ぐったりとしている葵にのしかかると、
まだ薄暗く口を開けたままの淫洞に屹立をねじこんだ。
「ひぁっ……!!」
恍惚の後の、菩薩めいた満ち足りた表情をしていた顔が、激しい苦悶に歪む。
しかしそれは偽りなのだ。
葵は本当はこうされることを望み、鎖で縛られることに恍惚を覚える女なのだ。
龍麻は彼女の望みどおりに鎖で乳房を巻き、美しく張っていた丘陵をくびりあげ、
その先端で恥ずかしげもなく勃起している乳首を乱暴に押しつぶした。
「っ……! 痛、い……」
白い喉が苦しげに蠢く。
その喉を絞めたい欲求にさえ駆られながら、龍麻は腰を叩きつけた。
「ひっ、か、はぁ……っ……あ……」
身動きできない葵の、さらに腰を掴まえて、屹立を根元まで埋没させる。
細い眉は助けを求めて歪み、張りつめた乳房は哀しく逃げ惑っていた。
固定された身体を振り乱して煩悶する葵だったが、龍麻に迷いはなかった。
これこそが葵が求めていたものだと、ようやく知ったのだから。
淡い桃色の唇を息もできないほど塞ぎ、濃密に舌を絡める。
熟した果実をもぎ取り、噛みちぎらんばかりに乳首をむさぼる。
そして逃げまどう身体を組み敷き、腰を叩きつける。
龍麻は愛しい女ではなく、欲望を消費するための牝として葵を使った。
それで良いのだ。
葵も龍麻を愛しい男ではなく、欲望を消費するための牡として使っているのだから。
繋がりながら龍麻はまだ使っていなかった枷を手探りで掴むと、葵の首と二の腕に嵌めた。
それぞれを鎖で繋いで、余った鎖の部分で乳首を弾いてやると、葵の瞳に浮かんだのはまぎれもない喜悦だった。
「まだ物足りないんだろう? 本当は、もっとがんじがらめにされたいんだろ?」
鎖が鳴るよう大きく腰を動かすと、ほとんど陵辱に近い責めを受けながら、葵ははっきりとうなずいた。
呆けた口に舌をねじこみ、龍麻は告げる。
「繋いでやるよ。いつも鎖を身体中に、解けないようにきつく。
肌に一生消えないくらい深く跡をつけてやるよ」
言い放つと同時に、葵の膣が急激に締まった。
口腔でも何かを言おうとするが、龍麻は口を塞いで言わせず、深く埋めた屹立も引き抜こうとはしなかった。
「んんっ……! うぁぁっ……!!」
肩を暴れさせて葵がもだえる。
屹立が挿さっている肉路は狂おしいほどに締まり、断続的な絶頂がとまらない状態だった。
たまらない快感に龍麻は無我夢中で腰を振り、淫口を蹂躙する。
牝を征服する悦びは、尽きることなくあふれ出てきた。
腰を打ちつけ、えぐり、引き抜く。
単純な動作を飽きることなく繰りかえす。
二度目の射精はほどなく訪れようとしていたが、龍麻は加減する気配さえ見せなかった。
加減する必要などない。
何度でも放ち、何度でも犯せばよいのだから。
龍麻は痺れる腰に体重を乗せ、荒ぶる屹立をたたきつけた。
頭の中が焼きついていく――セックスのことしか考えられなくなっていく。
仲間のことも、護るべきものも果たすべき使命も忘れ、
とろける媚肉と腰を突くたびにたまらない嗚咽を奏でる牝になり果てていく。
それが、快かった。
全霊をこめた抽送に身を任せ、だらしなく足を開いて牡を求める。
全身には、いまやほとばしる熱気が伝わって不快な温かさをもたらす鎖。
四肢を突っ張らせるたびに肌に食いこみ、悲鳴をあげずにはいられないほどの痛みをもたらす。
だから葵は叫んだ。
口を一杯に開き、涎が垂れても構わずに。
「ひぅっ、あ、ひ、あ、あーっ、あぁーっ!!」
痛みと快感はひとつになり、より大きく膨れていく。
それが全身を破裂させる瞬間は、まもなく訪れようとしていた。
「はっ……あ、あぁ、うぁっ、あ、あっ……!!」
絶叫が全てを放逐する。
淫らな波にその身を浚われる寸前、葵は目許に熱いものを感じた。
得られたはずの何か、掴んでいたはずの何かが失われようとしている。
それを葵は思考によらず悟ったが、もうそれを繋ぎとめることはできなかった。
滴が頬を落ちていく。
その熱さが皮膚から消え失せたとき、葵は胎(に別の熱を感じ、そして、白熱の中に意識を失っていった。
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