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 足首が繋がれた時、葵は半ば達していた。
動けない――鎖に全身を絡めとられ、恥辱的な姿を晒す。
乳房も、身体の中心も、欲望にぎらついた男の眼前に、隠すべくもなく差しだされている。
それが、快い。
舐めるように見下ろす龍麻の、場違いな強さの眼光が、熱量を持っているかのように肌をあぶる。
真夏の陽射しとも異なるねっとりとした熱は、葵の身体の内側から感覚を鋭敏にし、
きめの細かい肌をほの朱く染めあげていた。
 その微熱を帯びた肌を、身体中に巻きついた金属が冷やす。
腕に、背中に、腹に絡みついた鎖は、じわじわと肉に食いこみ、葵に痛みをもたらしていた。
特にあおむけにされているために背中の鎖には体重がかかり、悲鳴をあげてしまいそうなくらいに苦痛をもたらしていた。
肩を使っていくらかでも痛みをやわらげようと試みるが、
そんな程度では柔肌に食いこむ痛みはどうにもならない。
逃れようのない痛みは、けれども逃げようとしなければ、一転して快美な感覚となる。
葵は浮かせようとしていた上体から力を抜き、床におろした。
「く、ぅ……っ」
 鎖の痛みが容赦なく襲いかかる。
限界まで息を止めても、まだおさまらない激痛。
少しずつ呼気を吐きながら、葵は身をよじった。
「あ……つっ……」
 自ら求めた痛みから逃げ回る滑稽な姿に、涙がにじむ。
しかし、それも身体中に張り巡らされた鎖が心地よい音をたて、いくらかだけ痛みが和らぐと、
歓喜の涙へと変わってしまうのだ。
伝う涙を拭うこともできず、床に落ちるに任せたまま、葵はふるえた。
これからもたらされる痛みに。
あるいは、悦びに。
 慄えは収まるのを待たずして、葵が待っていたものへと変じる。
一呼吸、大きく息を吸い、吐いた葵は、いきなり下腹に衝撃を受けた。
痛みに近い、しかしそれよりも快い衝撃。
頭上に、龍麻がのしかかっていた。
そして二人の下半身は密接に繋がっている。
愛撫らしい愛撫もされず、これでは強姦に近いくらいだったが、葵に嫌悪はなかった。
秘唇はすでに充分すぎるくらい濡れていたし、身体は快感をなお欲していた。
「あぁぁ……龍麻……」
 葵は熱せられた欲望を吐き、入ってきたものを受けいれる。
もう頭の中には、快楽のことしかなかった。
 下着の脇から、龍麻は強引に挿入した。
葵に同意も求めず、たぎった己を性急に突き刺す。
下着をつけたまま犯すというだけで、いつもよりも数倍興奮していた。
べとべとに濡れた、かつては純白だった下着の端から覗く秘裂は、やすやすと屹立を呑みこんでいく。
そして内側は龍麻の猛りを歓待するかのようにひくつき、奥へと龍麻を導いた。
「はぅぅ……っ」
 龍麻が自身を根元まで沈めると、感にたえないといった喘ぎが葵の唇から漏れる。
上唇を軽くめくらせ、極上の快感に酔いしれる葵に、龍麻はすぐさま抽送をはじめた。
「ひ、あ……! あんっ……あ……っ」
 いきなり強く動いても、葵は痛がらない。
顔は赤らみ、眉根は寄っているが、これは明らかに苦痛によるものではなかった。
その証拠に、葵の膣内は媚熱に火照り、粘ついた淫滴をあふれさせて屹立を歓待しているではないか。
女神と見紛うほどの肢体は醜く縛られ、白い肌はまだらに赤くなっている。
しかし、全身から放たれる毒にも似た牝の臭いは隠しようがなかった。
女体に張り巡らされた鈍色の戒めを、肌ごと掴む。
「い、た……ぁぁ……っ」
 葵の痛みは嘘ではない――そして、快感も。
水を含ませたスポンジのように、柔らかな肉を潰すと染みでる淫らな汗が、
この非の打ち所のない聖女が縛られ、苦痛に苛まれるという倒錯で悦びを得ているのだとはっきり示していた。
 根本まで沈んだ屹立を龍麻は見下ろした。
白く泡だった粘液がべたりと葵の恥毛を貼りつかせている。
深く繋がった葵の膣は、今までにないほど熱く、快かった。
細やかな蠕動ぜんどうを繰りかえし、肉壁を掻き回す屹立を締めあげてくる。
何もしていなくてもほとばしってしまいそうなほどの快感に、抗うように龍麻は力強い動きで葵の洞をえぐった。
葵への気遣いもなく、ただ突きたいように突き、媚肉を貪る。
腰をぶつけるたびに激しく鳴りひびく鎖の音も、もはや結合部から奏でられる水音にかき消され、
龍麻の耳には届かなくなっていた。
何も考えず、ただ犯す。
屹立を絞めあげ、精を吐きださせようとする秘肉に耐え、抗い、屈服させることだけが今の龍麻のすべてだった。
「あぁっ、あんっ、あっ、あっっ」
 矢つぎばやな喘ぎに、葵は苦しそうだ。
しかし龍麻は勢いを緩めず、それどころかいっそう激しく葵の膣を抉った。
「あぅぅ……っ!」
 淫声が弾ける。
これまで、どこか控えめだった声と異なり、快感に勝手に反応してしまったような喘ぎ。
腹の中の熱がそのまま塊となって出たような、凍土をも溶かす爛れたむせびに、
龍麻は心臓を直接揉まれたような動悸に見舞われた。
敵にさえ慈愛をもって接しようとする葵の、牝の鳴き声。
下腹を突き、膣をかき回すことで奏でられる、ただれた歌。
奏者としてこれ以上の楽器はなく、龍麻は夢中でかき鳴らした。
 体内を荒れ狂う暴力じみた快感に、葵は眉根を寄せて悶えるほかなかった。
熱い塊が身体の中を暴れまわるたび、鎖がじゃらじゃらと音を立てる。
熱さと冷たさがまだらに身体中を駆け巡り、快感となって細胞を犯していく。
「龍、麻……もう、駄目……っ」
 快楽に歯止めが効かない。
いつもよりも遥かに強い快感は、内に向かうのではなく、外へ広がろうとしていた。
ほとんど無意識に腰を持ちあげ、快楽の源となっている部分を押しだす。
深く、貫くほど深く、抉ってもらうために。
入ってくる熱い塊を感じようと腰を振り、力をこめる。
それがどれほど卑猥な動きであるか、想像さえする余裕もなく。
 葵の腰がぐいと浮きあがるのを、龍麻は信じられない思いで見ていた。
あの葵が、一切の汚れを拒むかのような清楚さを持った聖女が、あさましく股を開き、
ぽっかりと開いた淫口を見せつけている。
白い肌を艶かしく輝かせる蜜をしたたらせて、
欲望に熟れきった果肉をもぎとって食べよとさしだしているのだ。
男としてこれほど劣情をかき立てられる光景はなかった。
 憑かれたように葵の腰を掴んだ龍麻は、全体重を乗せて屹立を撃ちこむ。
肉がぶつかる音が卑猥に弾け、絡みあった粘液は恥毛を濡らし、
男女の性器が与えられた役割を果たすのを、存分に手助けした。
「ああっ、あっ、あぁ……んっ、うっ、うぅん……っ」
 鎖をかき鳴らして葵が悶える。
深い艶のある髪を振り乱し、生白い肌を淫らな桃色に染めて喘ぐ姿は、聖女などではなく、ただの雌でしかなかった。
足は枷のせいでかえって開けず、ぶざまなひし形になっている。
その中に陣取った龍麻は、うねる腰を掴み、雄の器官で何度も葵を打ちすえた。
快楽を求めているならば、与えてやればいい。
愛情の末の行為ではなく、欲望をむさぼるために性器をねじこむ。
それは龍麻にもはじめての、新鮮な悦びだった。
「あくっ、ひぁぁっ……あっ、あ……」
 濁った嗚咽がほとばしる。
だらしなく開いたままの口には涎が泡立ち、振り乱れて見る影もなくなった絹髪を貼りつかせていた。
龍麻は蕩けた表情で快楽をねだる葵の、鎖にくびりだされた乳房を掴む。
果実を潰すように、力任せに握り、思うがままに捏ねた。
「あくぅっ……! く、ぁぁ……ひっ、あ……!」
 白い肌に手の跡が残るほど握っても、葵は逃れなかった。
手を縛られ、足を拘束されても拒絶することはできる。
しかし葵は、目許に深い情欲の赤をたたえ、めくれた唇を舐めただけだった。
その舌の動きに誘われるまま唇を奪った龍麻は、貪るように舌を絡める。
「んんぅっ……んふぅ、あうんっ……」
 深く、唾液が垂れるのも構わずただれた舌を吸い、その最中に腰をぶつける。
歯があたり、苦しそうな息が鼻腔から漏れてきたが、龍麻は抽送を止めなかった。
淫穴に埋めた肉柱を、壊れよとばかりに撃ちつける。
「あ、あ……! あぁっ、はあぁあっっ……!!」
 くちゃくちゃと結合部が立てる濁った音を、かき消すように葵が叫ぶ。
白い顔を熟れすぎた林檎のように赤くし、苦しげに喉をひくつかせて、
それでもなお快楽を貪るのをやめようとしない。
完全に変貌を遂げた聖女に、龍麻の興奮もまた最高潮を迎えていた。



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