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「ちょ、ちょっと」
「取らないと、キスできねぇぞ」
「……」
至近距離で二人の瞳が交錯する。
それは喧嘩腰と言っても良いくらい苛烈なものだったが、折れたのはやはり杏子の方だった。
無言で眼鏡を外し、反射的にどこかに置こうとする。
その暇を与えず、龍麻は彼女の身体を倒し、斜めに支えながらキスをした。
「……!!」
ダンスのような姿勢で交わすくちづけは、自然と情熱的なものになる。
強引な龍麻の首に腕を回し、引き寄せようとする杏子と、
それに逆らわず身を被せるようにして唇を重ねる龍麻。
部屋の中で全裸で行っているというのがなんとなく喜劇っぽくはあったが、
少なくとも役者達は真剣だった。
二人はポーズを取るだけでは飽き足らず、口の中でも舞踏を交わす。
杏子の鼻息がリズムを取り、龍麻はそれにステップを合わせ、淫楽をテーマにして踊る。
それは次第に激しさを増しながらも、中々終わろうとはしなかった。
「……ふぁ……」
声になっていない、快楽にまみれた息を杏子が吐き出したのは、
龍麻が三度ほど唇を離し、二度ほど小さく杏子の身体が震えてからだった。
閉じなくなってしまった唇の端には透明な筋が出来ており、瞳の焦点もどこか定まっていない。
少し呆けている様子の彼女に、もう一度唇を触れさせた龍麻は、
頃合いを見て取り、再び彼女に後ろを向かせた。
頼りなげに立っている彼女に自分も急いで服を脱ぎ、昂ぶっている己を彼女の尻にあてがうと、
欲望に任せた焼印を彼女の肌に刻むべく、足の間に挿し入れた。
その熱が正気を呼び覚ましたのか、杏子が声を上げる。
「あ……ッ」
「わかる? 俺の当たってるの」
「わ、わかる……に決まってるじゃない……そんな、の……」
「どうして」
杏子が息を呑む。
何を彼女が言おうとしたか、確信した龍麻は背後から乳房を揉みながら促した。
「あ、熱く……て、硬い……から、よ……」
俯き、聞き取れないくらい小さな声で言う杏子だが、
同時に太腿の間に挟まれている屹立に滴が降り注いでいる。
もともとなめらかな太腿が、潤滑液によって一層滑るようになり、
新たな境地を発見した龍麻は腰を動かしてその感触を存分に愉しんだ。
「あ……ああ……ッ」
充血した唇を熱杭が擦るが、それは求める方向にではない。
もうすっかり準備も整い焦がれきっている女の、
とば口だけを優しく撫でられ、杏子は切なげに身悶えした。
「おね……お願い、もう……ッ」
「もう、何?」
「も、う……我慢、出来ないの……挿れて、お願い」
よほど追い詰められているのか、杏子は卑猥な言葉を進んで口にする。
濃密な牝の匂いを背後から存分に嗅ぎながら、龍麻は杏子の足を開かせ、
身体を折らせると、彼女の望むものを足の間にあてがった。
「あぁッ……」
期待に杏子の尻が震える。
立ったままの後背位という刺激的な体位に、龍麻も興奮を抑えられず、ひと息に挿入してしまった。
いつもよりも明らかに狭い膣に、屹立が悲鳴を上げる。
左手で彼女の腕を引き、身を反らせると更に狭くなり、極上の快楽をもたらしてきた。
包みこむ粘膜を振り払うようにして、楔を引き抜き、また撃ちこむ。
より強い快感を求めての抽送は、しかし不安定な姿勢を強いられている杏子には辛過ぎたようで、
「……立って……られ、な……」
膝を震わせたかと思うと、下半身からくずおれてしまった。
腰を支えた龍麻は、たぎる欲望を抑えられず、彼女の腰を持ち上げ、再び挿入する。
杏子はどうやら一息ついたようだったが、
その後背からいきなり強く突き上げられてベッドに身を投げ出した。
だがその腰は龍麻に掴まれたままで、全身が砕けてしまうような快感から逃れることは出来ない。
「ひっ、や……あ……」
背中側の膣壁をこすり上げるように突くと、杏子が大きく跳ねる。
それを無視し、もう一度。
いつもよりも滑らかに感じられる媚道からは、
激しい抽送によって掻き出された愛滴があふれ、床に水溜りを作っていた。
そして結合部からはその水滴の量にふさわしい、ただれた粘音が幾重にも重なって響いている。
音が糸を引くようにゆっくりと腰を引き、沈める。
ねっとりと絡みつく膣肉は、堪えがたい快感を龍麻にもたらしたが、
杏子にはそれ以上のものを与えたようだ。
「はぁ……っあっっ」
杏子の背中がたわむ。
顔を見られていないせいか、よりはっきりと快楽を表に出す彼女に、龍麻の興奮も膨らむ一方だ。
奥深くへねじ込むように腰を動かしつつ、山なりになっている背中に、
ほっそりと浮き出ている背骨を撫でる。
「っ、やだ、そこ……は、ぁっ」
我を忘れているのに触れられているのは判るようで、それも龍麻には愛おしい。
動きを緩めた龍麻は彼女に覆い被さり、腋の下から手を挿し入れて乳房を握ると、
背骨にもくちづけ、更に背後から突き上げた。
「んあぁっ、ああ……龍麻ぁっ……」
身体の各処を同時に責められ、杏子の声に遠慮がなくなってくる。
彼女自身はまだ気付いていないのか、
安アパートの薄壁など簡単に通過してしまいそうな淫声を、
だからと言って龍麻は止めさせるつもりなど毛頭なく、
それどころか杏子がすっかりお気に入りになったらしいこの体位で、そのまま追い詰めていった。
「あっ、あっ、それ……それぇっ」
特に浅い部分の背中側が杏子は好きなようで、
そこを雁首で引っ掻いてやると杏子は髪を振り乱して悦ぶ。
意識的に続けてそこを刺激してやると、全身が痙攣を始めた。
「このまま……出してもいいか?」
もう声も届いていないようだったが、頭が小さく縦に動いた。
とは言えこのままだと多分杏子が先に達してしまうので、龍麻は奥の手を繰り出すことにする。
身体を起こし、激しく出入りしている屹立の上で物欲しそうに蠢いているもうひとつの孔に
指をあてがい、少しだけ沈めたのだ。
「やぁ、龍麻、いやァッ……!!」
効果は凄まじく、屹立が収まっている秘洞が瞬時にその門を閉じようとする。
急激に締まった媚肉は最後の一押しとなる快感を与え、龍麻は、
一際深く抉った奥で溜めていた欲望を一気に解き放った。
「あッ、あ……! んあぁっっ……!!」
屹立が精を幾度かに分けて吐き出すと、それに呼応するように杏子の肢体もひくつく。
ただし屹立が脈打つのを止めても杏子の痙攣は収まらず、
彼女が深い絶頂に達しているのは明らかだった。
彼女の膣を満たしたであろう己の精に満足しつつ、
龍麻は屹立を抜いた後も開いたままの淫口を眺めていた。

全身の力を失ってしまった杏子が、ずるずるとベッドから崩れ落ちる。
尻からぺたりと座った姿勢が可愛く、背後から腕を回した龍麻は、突然大声を張り上げた。
「あッ!!」
「な、何よ、大声出して」
「忘れた」
「え?」
「お前の眼鏡取った時のイキ顔、見るの忘れた。もう一回な」
「ば、何バカ言ってんのよ、そんなもん見る必要なんてないでしょ、やっ、ん……」
逃げようにも腰が砕けてしまっているらしい杏子を、ベッドではなく床に押し倒す。
もがく杏子の手もすぐに静かになり、代わりに淫らな声が部屋の空気を震わせる。

もつれあう二人の傍らで、何の弾みかタイマーが入ったカメラにエロ写真を撮られ、
二人が新たな境地に目覚めるのはもう数分ほど後の話だった。



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