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「んっ……ん、はぁ……っ」
苦しげな吐息が龍麻の胸を叩く。
しかし小蒔の顔にあるのは苦悶などではなく、それとは正反対のものだ。
根元近くにまで感じる小蒔の熱に、龍麻が顔を持ち上げると、
感じたとおり屹立はその大部分が埋没していた。
長い息を吐き出した小蒔は、言った通り自分から動き始める。
薄い艶笑を浮かべながら、自分が感じるところを探るように、ゆっくりと腰を浮かせ、また落とす。
数回、単調な上下の動きを繰りかえした後、前後や左右への動きも加え、より大胆に快感を求めた。
寝ているだけで何もする必要のない龍麻は、髪を垂らして腰を動かす小蒔をじっくりと眺めた。
活力にあふれた小蒔が、こんな風に身を強張らせて快楽に耽っているのは、
たまらなく龍麻を興奮させる。
ほんのりと女らしさを見せている胸のふくらみから上気した肌を通って、
浮き上がった鎖骨へと視線を辿らせると、目が合った小蒔が淫蕩にはにかんだ。
「……エヘヘッ」
小蒔の目線は小刻みに揺れており、龍麻はその原因を探ろうと視線を下へと移す。
縦に小さく刻まれたへそから、控えめに生えている茂み。
そしてその中で淫靡に蠢いている、ぬらぬらと糸を引く、屹立を飲みこみ、
そして吐き出す小蒔の秘唇が、なにやらとても神秘的に思えて、龍麻は我知らず呟いた。
「なんか……凄ぇな」
それは魂の呟きだったのだが、たちまち両方の頬を引っ張られてしまう。
「そういうことはもう言いませんってさっき約束しなかった?」
「ほへん」
「さっき謝ったのはウソだったの?」
頬を引っ張られて上手く喋れないので横に二度首を振ると、どうにか解放してもらえる。
ひりひりする頬を擦ろうかどうか、実にどうでもいいことを迷う龍麻は、
姉のような口調の小蒔に可笑しみを感じてもいた。
きっと家では兄弟たちにこんな風に接しているのだろう。
どれだけ一緒に居たとしても、決して知りえない彼女の一面を知った気がして、
龍麻は単純に嬉しかったのだ。
「……なにさ」
しかし、小蒔の目がまた細くなりかけたので、考えるのはやめにして、
まだ近くにある小蒔の顔を、龍麻は不意を衝いて引き寄せた。
「ん……っ」
少し怒りかけていた頬は硬くなっている。
龍麻が親指の腹で撫でてやっても、まだしばらくは硬いままだったが、
しつこさに根負けしたのか、やがて柔らかくなった。
舌は絡めず、その代わりにべったりと唇を合わせるキスをする。
重ねるというよりも、くっつけ、剥がすといった感じの行為は、
小蒔も気に入ったらしく、止めようとはしない。
頬からうなじへと手を滑らせ、髪を梳いて戯れていた龍麻は、
息をするたびに流れこんでくる小蒔の匂いを胸郭の奥まで導いて恍惚に浸っていたが、
ふと性質の悪い悪戯っけに見舞われて、キスをしたまま腰を軽く突きあげた。
これには小蒔も驚いたようで、うっとりと閉じていた目を白黒させている。
「ふッ、んッ、んんんーっ」
口の中で暴れる舌に、やや健全とは言えない愛おしさを抱いた龍麻は、
逃れようとする小蒔の頭を抑えつけ、唇を貪った。
苦しげにうめく小蒔は、肩に爪を食い込ませて抗議するが、
その痛みすらも快いと感じてしまう今の龍麻には無意味だった。
もがく小蒔を無視して、再び腰を突きだすと、
屹立が埋もれている媚肉が激しく収縮し、倒錯的な快感をもたらした。
この快感をもっと味わっていたいと思う龍麻だったが、
もちろん長く続けるわけにはいかないので、小蒔を解放する。
すぐに小蒔は、水面から出た時のように勢い良く顔を上げた。
「はッ、はぁっ、はぁッ……もう……」
死の縁からの生還を果たした小蒔はまだ激しく喘いでいる。
もう少し胸が大きかったらこんな場面でも見応えあるのにな、
と龍麻は口には決してできないことを思っていた。
胸の大きさなど、女性の魅力の基準としては些細なものだという考えは変わらないが、
夏の海で弾む胸というのも決して否定はできない。
小蒔の悩みが解決できるよう、龍麻も手伝ってやってはいるのだが、
なかなか効果は現れず、本人はほとんど諦め気味だった。
「それ息できないんだからさ、ホントに止めてって言ってるでしょ」
ようやく呼吸を整えた小蒔が、半分以上本気で抗議してくる。
それを聞き流して相変わらず揺れない胸をずっと見ていると、ついに首を絞められてしまった。
「聞いてる?」
「き、聞いてる、効いてる」
手加減なしで頚動脈を絞める小蒔の手首を叩いて降伏した龍麻は、
まだ軽く頬を膨らませている小蒔を見て、二度ほどまばたきした。
こんな表情なら、幾度となく見ている。
服を着ている時も、着ていない時も。
だから特別なものなどではない──それなのに。
「よし、交代」
「交代って……うわ」
急に自分を抑え難くなった龍麻は、跨っている小蒔ごと、自分をちょうど九十度回転させた。
寝かされてしまった小蒔が新たな抗議を始める前に覆い被さる。
「な、何、どうしたの? ……ね、ちょっと」
急変と言ってもよい変貌に小蒔はやや怯えているようで、目線がどこかさ迷っている。
龍麻はその口唇に、自分がされたのと同じように、思いきりくちづけた。
「っ……ん……」
力任せに唇を吸い上げる。
技巧も何もない、ただそうしたいからそうするだけだというキス。
小蒔が重みを感じないぎりぎりまで身体を近づけ、龍麻は息の続く限り原始的なキスを続けた。
「……ふぁ……」
肉体的な限界と共に、龍麻は身体を離す。
二度続けて呼吸困難に陥らされた小蒔は既に虫の息で、
生々しく開かれた口もそのままに、ぼんやりと龍麻を見上げているだけだ。
自らも荒い呼吸を吐きだしながら、龍麻は無防備な小蒔の肢体を征服した。
「ぁうっ、ん……っ」
まとわりつく粘液を掻きわけ、猛りを沈めていく。
己がひそやかな溝を押し広げ、こじ開けていく様を眺めていた龍麻は、
再び繋がった部分にひとつ頷くと、すぐに抽送を始めた。
「あっ……ん、ぁ……」
小蒔の膣はまだ泥濘のぬかるみを保っており、なんの妨げも受けずに屹立は入っていく。
穏やかな動きは最初の数度で、しっとりとまとわりつく肉に急かされるように龍麻は腰を速めた。
小柄な身体を覆い尽くそうとのしかかり、身体の中心まで貫こうかという勢いで自身を撃ちこんだ。
軽い酸欠状態に陥っているらしい小蒔は、焦点の定まらない瞳で龍麻を見上げる。
「ひー……ちゃ……」
壊れた人形のように頭を振りながらも、視線を外すまいとする小蒔に、龍麻の熱情は一気に高まった。
背筋から腰へと爆発的に溜まる想いと劣情。
今は分ける必要のない二者を、龍麻は一時だけこらえる。
痺れ、すぐにも爆ぜそうな屹立を、ねじこむように小蒔の膣へ挿れると、がくんと小蒔の身体が揺れた。
「……ッあ、だめッ……ボク、イッ……!!」
甘い、感極まった叫びと同時に、心地良い収縮が彼女の中で始まると、
屹立を絞りあげようとする動きに逆らわず、龍麻も欲望を弾けさせた。
「あっっ……!! っ……!!」
精を放つと、小蒔の肢体が大きく、もう一度だけ跳ねる。
屹立の根元まで小蒔の痙攣を浴びていた龍麻は、小蒔がぐったりと弛緩すると、
まだ痺れている己を抜き、自身もぐったりと横たわった。
「なんか、凄かったねぇ」
龍麻の左腕を枕にして、火照った肌もそのままにべたべたくっついている小蒔は、
質も甘さも蜂蜜のような声で語りかけてきた。
「そうか?」
それに対しての龍麻の返事がそっけないのは、事後だからという他に、
こいつがこういう声を出す時は何かあるという、
経験が導いた警戒が頭の奥でアラームを鳴らし始めたからだった。
そもそも、制止を二回も無視してあれほど激しくやってしまったのに、
何も怒っていないというのがとてつもなく怪しい。
いつもなら蹴りかパンチか関節技か、あるいは全部が飛んできても良い頃合いだった。
「うん。……ねぇ、お腹すかない?」
ほらきた。
何を食べたいと言い出すか、
この小柄な身体の八割くらいは胃袋が占めているのではないのかという大食漢に眉をひそめながらも、
まあ少しくらいならいいかと、龍麻は鷹揚に構えることにした。
何しろ自分が酷いことをしたという自覚がちょっとはあるので、
食べ物で機嫌が直ってくれるのならそれが良い、とも思っているのだ。
「それじゃ何か食いに行くか」
「エヘヘ、そうこなくちゃ。じゃシャワー借りるね」
満面の笑みを浮かべた小蒔はそう言いながらも、なぜか立ち上がろうとしない。
まだくっついたままの小蒔を龍麻が見ると、小蒔はいかにも恥ずかしそうに目を逸らした。
「……立てなくなっちゃった」
「……」
意味を理解するまでに二秒、頭から下半身に命令が行くまで一秒の半分。
合わせて二秒半で準備を終えた龍麻は、ひょこひょこと元気を取り戻した物体を小蒔の太腿に当てた。
「俺は勃つよ」
「そんなコト言ってる場合じゃないでしょッ。どうしよ、時間経てば直るかな」
おろおろと心配している小蒔の、龍麻は腰を抱く。
時間が経てば直るということは、時間が経つまですることがないということだ。
ここは是非とも、小蒔の時間つぶしに付き合ってやらなければならなかった。
「バ、バカッ、卑怯だぞッ、動けないのにッ」
「いいよ、俺が動いてやるから」
「ダメだって!! せめて何か食べてから……やッ……あ……」
組み敷かれた小蒔の悲鳴は、やがて小さくなっていく。
それが別の音色に変わるまで、一分とはかからなかった。
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