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深く、長い絶頂の最後の一瞬までを味わい尽くした雪乃は、
自分がどこにいたか思い出して慌ててどいた。
「気持ち……良かった……?」
どこか放心したように尋ねる小蒔に、恥ずかしさが甦った雪乃は小さく頷く。
「へへ、良かった。ボクもね、雪乃と雛乃に……乗っかられてるんだ、って思ったら……」
そこで言葉を切った小蒔は、
聞いていた雪乃が思わずぞくりとするほど色っぽい吐息をしてからうっとりと呟いた。
「それだけで、イっちゃった」
その小蒔の傍らに横たわった雛乃が、愛蜜で汚れた顔を舐めて綺麗にしている。
妹が舐めているのは自分の体液だと気付いて、雪乃も慌ててそれにならった。
「雪乃も……してくれるの?」
「だ、だって……オレが……汚しちまったんだしよ」
「……ありがと。でもね、ホントはちょっと……このままでもいいかな、って思ってるんだ。
あ、でも、雪乃が綺麗にしてくれるんなら、そっちがいいけど」
「小蒔様、わたくしでは嫌なのですか?」
「そ、そんな訳ないじゃない。もう、雛乃はすぐそういうこと言うんだから」
小蒔は目を閉じて、想いを寄せる少女達との会話を愉しんでいる。
時々身じろぎしているのは、くすぐったいからだけでなく、
手に体重がかかって苦しいからのようだった。
「なぁ、手」
「いいんだ……ボク、こうされてるとね、雛乃のものになってるんだって感じがして好きなの」
雛乃の、もの──小蒔の言葉は、鋭いいかづちとなって雪乃を撃った。
単に自由が効かない被虐というだけでない、身体を、そして心を捧げる悦びがあることを、
この時雪乃は理解したのだ。
自分を見つめる淫らに蕩けた顔に、自分を重ね合わせる。
オレも、こんな気持ち良くなれるのか──
「姉様も……縛ってさしあげましょうか?」
「! オ、オレは……」
口の中でどろどろに粘った唾を飲み干す。
自分が小蒔と同じようにされて悦ぶのか興味もあったし、
もしそうだとしても、この二人にならそれを知られても構わないと思った。
「……痛く、ないんだよな」
それは質問ですらなく、はっきりと縛って欲しいと言うのが恥ずかしかったから、
そう回りくどい言い方をしただけだった。
「大丈夫です。……それでは、手を後ろに回して頂けますか?」
雛乃の声がうわずっている。
それは、初めて耳にする妹の声だった。
起きあがった雪乃が手を後ろで組むと、随分と急いた様子の雛乃が手首に縄を通す。
こんな縄、いつのまに用意したんだろう──ぼんやりとそんなことを考えていると、
縄が締め上げられ、肩に小さな痛みが走った。
しかしそれは大きなものにはならず、すぐに慣れる。
代わりにやって来たのは、「雛乃が解かなければ解けない」という、
うぶ毛が総毛立つほどの甘い被虐だった。
「……出来ました」
軽く手首を動かしてみても、意外としっかりと縛られていて解ける気配はない。
そして、少し足を開いて座らないとバランスが取れない
元来雪乃は指図をされるのがあまり好きではなかったが、
自由を奪われるというのがこんなに甘美なものだと初めて知った。
──初めてではない。
数時間前にも同じように縛められた時、既に心のどこかで感じていた。
だから、今もさほど抵抗無く倒錯の淫戯を受け入れることが出来た。
自分と同じ領域に足を踏み入れた雪乃を、小蒔が歓迎する。
武道少女の面影を微塵も感じさせない、儚げなたたずまいは、
見ているだけでへその下を熱く火照らせるものだった。
「これで雪乃は……雛乃と、ボクのものだね」
「雛と……小蒔の……」
「うん。それでボクは、雛乃と雪乃のもの」
「小蒔が……オレの……」
「なんか……ドキドキしてきたね」
窮屈な姿勢のまま、子供っぽい微笑みを浮かべる小蒔を見た時、雪乃の中で何かが弾けた。
緩く開いていた膝を擦り合わせ、もどかしい刺激を自らに与え、
満たされないものを求めて妹を見る。
「オレ……オレ……ん……っ!」
「あれ雪乃、もしかしてイっちゃったの?」
「だって……」
まさか想像しただけで達してしまうとは思わず、雪乃は真っ赤になって下を向くしかなかった。
しかし、自分と小蒔が共に雛乃にかしずく光景は、
ぼんやりと思い浮かべただけで強烈な快感となり、新たな蜜をこぼさせる。
漂う性臭は、強烈な催淫剤となって小さな部屋の、小さな一角に集う少女達を蕩かした。
「雪乃って……本当は凄いエッチだったんだ」
「わたくしの姉様ですもの、ね」
「あ……ぅあ……雛乃……小蒔……」
とろんとした目で小蒔を見る雪乃は、金魚のように口をぱくぱくとさせるしか出来ない。
その唇に、雛乃がねっとりと舌を這わせる。
「姉様……」
「雛……オレ……」
「はい……姉様はもう、わたくしの……ものになられたのですよ」
「っ! う、ぁ……」
顎を掴まれ、涎がぽたぽたと落ちる。
痛みは、感じなかった。
「ボク……ボクにも……ちょうだい……」
起き上がれない小蒔の許に顔を寄せた雪乃は、不自由なまま舌だけを伸ばしてぺたぺたと絡める。
その上から、雛乃が舌をまぶしてくる。
淫らな縁に結びつけられた少女達の影が、やがてひとつになっていった。



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