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「あっ、ひ、な……」
声を漏らさないよう人差し指を咥えながら、姉が自分の名を呼ぶ。
これまでの一八年間では決して聞けなかった、か弱い声。
無防備で、自分にすがっているその声を聞いただけで、下腹が熱い疼きに満たされる。
ようやく取り戻した己が半身を、雛乃はもうどんな手段を用いても離すつもりは無かった。
肩甲骨の辺りに吸いつかせている唇と、小指の先ほどに膨らんだ乳首と、
両方に同じだけの愛情を注ぎながら、丹念な愛撫を施す。
「ん、ふっ…………ぅ……」
ぬるく、鈍い快感の背中と、熱く、鋭い快感の胸先。
霞む意識の中で、妹の白い指だけが軌跡を描いていた。
幼い頃はずっと握っていた手を繋がなくなったのは、いつの頃からだろう。
大人になれば当たり前のことだと思っていたけれど、
今、身体をまさぐっている手は、たまらなく懐かしく、愛おしかった。
じわじわと身体を浸していく快楽に耐えかねた雪乃の足が、開く。
きちんと揃えられていた膝が力尽きたように離れ、
閉ざされていた淫らな門への道が開いた。
それにいち早く気付いた雛乃は、しかしすぐにはそこを目指さず、
まず半身を乗りだし、姉の左足を封じこめる。
そこから足を使って少しずつ下半身を開かせ、完全に足を絡めとってしまった。
いやしいくらいの動きを、洗練された所作でこなした雛乃は、
姉の太腿に自らの火照りを押しつけながら、手を姉の下腹へと添える。
「うぁ、雛……」
姉の手を払いのけ、遠慮無くさすり上げる。
ほのかな熱気が指先に伝わってきて、劣情をそそった。
自由になる手がひとつしかない事を残念がりつつ、姉の細い首筋に舌を這わせる。
「姉様は……どのようになさるのですか?」
答えが無いことを知っていた雛乃は、少しずつ身体をずらして姉の自由を奪いながら、
全神経を指先に集めて姉の淫裂を感じ取ろうとしていた。
「このように……ですか?」
「ふっ……ん……」
白く、穢れ無き手に相応しいしっとりとした動き。
しかしそれだけにもたらされる刺激はごく弱く、
雪乃は自分の指でした時よりも切なさに悶えてしまう。
しかも、雛乃は何回かなぞっただけで、ぴたりと動きを止めてしまった。
じれったいながらも高まりかけていたところを中断されて、雪乃は思わず不満を漏らす。
「ど……して……」
「姉様が、教えてくださらないから」
「……ぅ……だって……」
言葉に出さずとも、いや、考えさえしなくても、伝わる。
それが自分達ではなかったか。
雪乃はこれまでの絆にすがるように無言を保ったが、自慢の妹はそこにはいなかった。
「教えてください……姉様」
甘えているような、苛めているような、不思議な響きをその声は持っていた。
水飴のような粘りで心にまとわりついたそれは、硬かったはずの殻をとろとろに溶かしてしまう。
「……い、今触ってるところよりも……もう少し……上、の方……」
「ここが……気持ち良いのですか?」
「う、うん……そこ……あっ、雛……雛っ……」
親よりも強い縁に結ばれている妹は、ほんの少し囁いただけで、
最も気持ち良くなる場所を的確に探し当ててきた。
それは場所だけでない、触り方まで、自分の求めていたものと寸分違わぬ触れ方で。
指が通る度に、反応してしまう。
指が離れる度に、求めてしまう。
恥ずかしいと思っても、ひくつく腰を止めることは出来なかった。
すると。
「わたくしと、同じですね」
「ひな……と……?」
「はい……嬉しゅうございます。……お願いです姉様、わたくしにも……姉様の、指、で……」
自分の指で、雛乃に、触れる──心が、狂おしい歓喜の悲鳴を上げる。
雪乃は羞恥心も罪悪感もかなぐり捨てて、妹の秘められた場所へと手を伸ばした。
パジャマをくぐり抜けて、聖なる隙間へ。
手探りで捕らえた妹の秘所は、驚くほど濡れていた。
それは下着越しにでも肉を感じ取れてしまうほどで、
しかも雪乃が触れたことで一層激しさを増してきている。
「あふっ……! 姉様、そう……気持ち……いいです……」
腰を浮かせ、自ら押し付けてくる雛乃に、雪乃は精一杯応える。
「ああ……んっ、姉様……姉様っ……」
耳許にかかる妹の濡れた吐息に、指を止めることが出来ない。
「ねえ……さま……直に……触って……」
感極まったような雛乃のその願いを、雪乃は半ば待っていた。
不自由な姿勢で、自分のものを触る時には決して出来なかったことを、妹にする。
腕がつりそうになるのも構わず、下着の上端を探り当て、手を入れた。
下腹に広がる茂みは、指三本ほどの幅を持ち、自分のそれよりも随分と発育している。
しかしそれに羨ましさを感じる前に、指が秘裂に辿りついた。
指に当たる感触が、自分のそれとはどこか違うような気がして、確かめてみる。
雪乃にはそのつもりは無いにせよ、形として焦らされることになった雛乃は、
両の腿をきつくすぼめてもどかしさに耐えねばならなかった。
「姉様……指を……挿れて……くだ、さい……」
「でっ、でも……! うあっ」
ためらいを見せる雪乃は、いきなり異物が入ってくる感覚に貫かれた。
我慢出来なくなった雛乃が、一足先に姉の襞をこじ開けたのだ。
「雛……待って……ん……っ、あ……」
この一週間、妹によって躾られてきた濡唇が、ぬるりと蜜を吐き出す。
門をくぐる為の洗礼を受けた指は、半分ほど進んだ所でその旅を終えた。
「ひんっ……ひ、ひな……ぁ……」
刺激に敏感な入り口近くの内壁を、ぐるりとなぞられる。
体内に触れられる。
自分では出来なかった淫戯は、これまでしなかったことを後悔するほどの快楽だった。
雛乃の指は頬についたソフトクリームを掬うような、そんな動きで媚粘膜をかき回す。
そこから進もうとしない妹に、雪乃は自分も同じことを求められていると気付いた。
迷うには、切なすぎた。
妹を、というよりも自分が気持ち良くなりたくて、雪乃は指を動かす。
自分のなかに入っているのと同じところまで埋めると、導くように雛乃も動いた。
「ねえ、さま……うごかして……くだ、さい……」
消え入りそうな妹の声に、窮屈な体勢のまま頭を振って横を向く。
雛乃最初の余裕も失い、姉にしがみついて甘い嗚咽を漏らしていた。
乱れた前髪が額に貼りついて、えも言われぬ淫靡な表情を醸し出している。
雪乃が思わず息を呑むと、目を閉じて淫楽に浸っていた雛乃の目蓋が、うっすらと開いた。
「……」
「……」
瞳以外の物は映せない間合で、じっとお互いを見つめ合ていた二人が、同時に動く。
「んっ……! 雛、そ、こ……!」
「あぁ……っ、姉様、それ……っ!」
喘いでいるのはオレか、雛か──
悶えているのはわたくしか、姉様か──
ひとつに溶け合った嬌声が、姉妹を果てに押しやる。
「んっ、あっ、雛……! 雛……、ん……あぁっっ……!!」
「はぁっ、いや……姉様、わたくし……も、ぅ……ん……っ!」
雪乃は、腰を浮かせながら。
雛乃は、身を沈めながら。
指を咥えた襞を痙攣させ、歓喜の涙をあふれさせながら、
二人は軽い失神のただ中へと落ちていった。



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