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葵が不意に感じた戸惑いめいたものの正体を探るのを邪魔するように、
足の隙間に落ちた手が、膝から内腿の付け根までをなぞっていく。
程よくついた脂肪は微弱な愛撫にさえ震え、葵は、じわりと下半身を包む愉悦に浸っていた。
もう雛乃の触れる場所全てが気持ち良く、身体の中心から染み出す疼きとに、内と外から苛まれる。
下着は、今更脱いでもどうしようもないほど濡れていた。
その事実を雛乃の指によって教えられた葵は、一度は開いた足を、また閉じる。
単純に湿った布地の気持ち悪さからであったが、
雛乃の小さな手は太腿の間をするりとくぐり抜けて下着の中心を捉えてきた。
「あっ……ぁ」
女性の溝をなぞる指に、いやでも形を認識させられる。
これ以上無い羞恥を煽られた葵だったが、触れられている部分ははしたなく熱を帯びていった。
「や、ゃぁ……っ」
「感じやすいお身体なのですね。小蒔様もお喜びになると思います」
「小蒔……が……?」
突然出された親友の名をぼんやりと口にした葵は、わずかに考えた後、恐る恐る口を開いた。
「嫌われ……ない、かしら……いやらしい、って」
背後で雛乃は笑ったようだった。
小さな空気の流れが、葵のうなじをくすぐる。
「小蒔様は、少し臭いがきついものがお好きなのですよ。例えば、汗ですとか」
「汗……?」
「はい。他にも、腋や、恥ずかしい所の臭いが」
初めて知る、親友の性癖。
この時葵の中では、雛乃に、自分の知らない小蒔を知っているという嫉妬よりも、
彼女に素直に相談したいという気持ちの方が勝っていた。
心持ち身体の力を抜き、彼女に預けるようにして更に尋ねる。
「わ、私……濃い、し、たくさん、濡れ……て……おかしく……ないの……かしら」
「大丈夫です。小蒔様はきっと、そちらの方がお喜びになりますから」
断言する雛乃に、葵はおとなしく頷いた。
来た時には考えられないことであったが、葵は今、雛乃に頼っていた。
小蒔を手中に収めるという目的のためだけでない、
自分の知らないことを数多く知っている彼女にすがりつきたいという、
ある種の依存めいた感情が芽生えいたのだ。
「雛乃……さん……」
呼びかけた声に応じるように、動きを止めていた雛乃の手が、下着の中へと忍びこんでくる。
それを止める力は、もう葵には無かった。
コンプレックスを抱く恥毛を通り過ぎた指先に、
淫らな蜜を吐き出す泉の水辺を軽く触れられただけで、どうしようもなく甘い痺れが疾ってしまう。
様子を窺うように周縁を幾度かなぞった指は、やがてゆっくりと泉の中へと身を沈めてきた。
「あっ……あぁ……」
小蒔の愛撫に較べて、雛乃のそれは、より大胆で、的確だった。
最も敏感な女芯が眠る秘裂を二本の指でくつろげられ、露になった部分を中指でゆっくりとなぞり回す。
敏感な粘膜のとば口だけを愛撫され、葵は思わず腰を揺すってしまっていた。
身体の芯から、淫らな蜜がこぼれ出るのを抑えられない。
小蒔のことを想う時にだけ濡れるはずだった自分の身体は、
いともたやすく快感に屈してしまっていた。
「だ、め……」
これ以上は、流される。
快楽を求める心が、止まらなくなってしまう。
だから葵の懇願は半ば以上本気だったが、もたらされる快感は止まらなかった。
わずかとは言え身体の中に入ってきた指は、敏感な粘膜を掻き回す。
それも、拒絶するには少しだけ足りない、絶妙な弱さで。
「う、んっ……ん……」
自分でも判るほど熱い呼気を吐き出しながら、葵は悶える。
既に胸や首筋で充分に高められていた官能は、性器への直接の愛撫で一気に彼女を覆いつくした。
加えて雛乃の指先は、自分や小蒔が触れた時よりも遥かに繊細なタッチで責めてきて、
直接炎で灼かれているかのような狂熱をもたらしていた。
その雛乃の指が、葵の秘められた場所を探る。
知り尽くした動きですぐに包まれた肉珠を見つけた指は、
厳重に隠す繊毛をより分け、もちろん葵自身以外は誰も触れたことのない
ひそやかなその部分を、すっと撫であげた。
「んくぅ……っ」
これまでとは違う、電気そのものを流されたような痺れに、葵の肩が震える。
それは指先が通りすぎた後も残るほどの痺れだったのに、
それが消え去る前に、二度目の刺激がまだその姿を隠したままの肉珠に加えられた。
「ひっ、あッ」
たまらず腰を引くが、背後には雛乃がおり、いくらも動かすことは出来ない。
すぐに逃げ場を失ってしまった葵に、雛乃の容赦の無い責めが始まった。
ねっとりと擦るだけだった指が、硬く閉ざされた扉を上から叩く。
細やかな打鍵は、一打ごとに葵の理性を削りとっていった。
「っく……んっ」
腕をだらりと垂らし、快感に張った胸を切なげに震わせて感じている葵に、
普段の理知的な面影は無い。
ただ貪欲に、もたらされる快楽だけを貪る姿はそれでさえも美しかったが、
突然その表情が変化した。
より苦しげで、そして淫靡に濡れた瞳。
雛乃のたおやかな指先が、
その見た目からは想像など決して出来ない淫らな動きで女芯を表に晒したのだ。
もちろん雛乃はそれで済ませるはずもなく、
包皮の下で硬く膨らんでいた小さな芽をすぐに弄びはじめる。
上から触れたことはあっても、直接触れられるのは初めての葵にとって、
それは強すぎる刺激だった。
「ひんッ、い、やぁ……ッ」
葵の拒絶は、本心ではあった。
熱い血が流れ込んでいる、自分でも見た事の無い秘められた部分をとろとろと触られると、
目の前が滲み、何も考えられなくなってしまうのだ。
これ以上痴態を見せたくないというのは当然の思いではあったが、
同時に、小さな突起を撫で回す指の感触をも葵は追ってしまっていた。
呼吸に混じっていく快感の中で、雛乃の声が流れこんでくる。
「中と……ここと、どちらがお好きですか」
「そ、こ……そこの方が……いい……わ……」
「どこ、ですか」
言わせようとしている。
言ってはいけない。
言ってしまいたい。
いくつもの思考が、理性をかき乱す。
それでも葵はよく耐えていたが、言わされようとしているその部分を軽く指で潰された時、
自分ではもうどうにもならない奔流が口から流れ出てしまった。
「ク、リ……トリス……クリトリスが、気持ち……いい……ひっ、あ……っ!」
言えたことへの褒美のように、剥き出された陰核が転がされる。
その言葉を発することが気持ちいいと、刷り込まれる。
「んっ……ふ、うっ……!」
快感を押し殺すことが出来なくなり、大きく身体を震わせた葵を、一際強烈な刺激が襲った。
雛乃が、口にしたことで更に感度が増したようにさえ思えるクリトリスを、
微弱な力ではあるが押し潰したのだ。
「ひ、ん……っ!」
腰が歓喜に打ち震える。
何かで見た限りではごく小さな突起でしかないはずのそこは、
下腹を溶かし、更には全身をも支配していた。
「あぁ……あぁぁっ……!」
再び雛乃が上から力を加えた時、葵は全身から何かが噴き出るような快美感に見舞われた。
自慰の時とは較べ物にならない深い陶酔が、下腹部から脳へと駆けのぼる。
強張らせた身体を弛緩させるのさえが心地良く、葵は、二度目の他人の手による絶頂を迎えたのだった。

雛乃が離れても、まだ愛撫が続いているような微弱な疼きが消えない。
鼻からだけでは足りず、口を開けて酸素を吸いこんだ葵は、
流れこむ冷たい空気に助けられ、どうにか服を着ることが出来た。
「美里様なら、きっと小蒔様を虜にお出来になると思います」
雛乃の言葉に、葵はぼんやりと頷いていた。
ただ一方的に痴態を晒してしまっただけのような気がするが、
こんなことが何かの役に立つのだろうか。
しかし、静かな微笑を湛えている雛乃を見ていると、そうなのかもしれない、と思ってしまう葵だった。
「お願い、今日のことは」
「解っております。小蒔様には秘密にいたしますから。そのかわり」
「……ええ、雪乃さんにも言わないわ」
「よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げる雛乃に見送られて、葵は鳥居の外へ、穢れた俗界へと戻る。
最後に葵がもう一度振り向くと、雛乃はまだ立って見送っていた。
頭を下げるか迷い、結局何もしないで歩き出す葵の下腹に、濡れた下着がまとわりつく。
それは、不快な感触ではなかった。



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