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「いやぁ、止め、て……お願い、そんなところ……汚い……わ……」
身体の一点を凝視しようとする親友に、葵は懇願した。
半ばは本心だったが、同時にそら恐ろしい興奮も臍の下辺りに溜まっていく。
そして容量を超えた分が、小蒔の見ている穴から染み出していくのだ。
とめどなく溢れだす蜜をせき止めるように葵は両手で淫裂を隠す。
小蒔はそれをどかせようとはしてくれない。
「葵……見せて」
ただ、それだけ。
命令でも強制でもない、ただの依頼に、しっかりと覆われた門扉が開かれていく。
小蒔の見ていない足の指を折り曲げて恥ずかしさに耐え、葵は親友に全てを見せた。
「すご……い……」
下腹を豊かに覆う黒い草叢は、女性器だけでなく、
その後ろにある孔までも隠そうとするかのように茂っている。
美貌だけでなく、スタイルも理想的なものを有する葵にとって、
ほとんど唯一とも言って良い外見上のコンプレックスがここであった。
下着の上からでも盛り上がって見えてしまうのではというくらいの恥毛を、
葵は着替えの際に気付かれてしまわないよう苦心していたこともある。
それを親友だからとは言え、否、親友だからこそ、
曝け出すことは、恐ろしいまでの情動を葵の裡に波打たせた。
小蒔が、見ている。
目を閉じていてもはっきりと判る、熱い視線。
それを意識する時、葵は己の身体が喘ぐのを、はっきりと感じる。
「少しだけ……臭い……するね。葵の……におい」
鼻息すらかかる距離で、小蒔が見ているもの。
一糸まとわぬ姿でそこを見せている自分。
葵は様々な想いに耐えながら、足を一杯に開き、腰を気付かれないくらい小さく浮かせて、全てを見せた。
かすかに聞こえてきた小蒔が息を呑む音と共に、皮膚を何かが撫でていく。
小蒔の指ではないそれは、淫裂を伝い、尻の間へと垂れていった。
それに小蒔が気付いているか──いないはずがない、目の前で蜜を吹きこぼしたのだから──
その、新たに加わった想いは、葵の身体をおかしくさせていく。
もう冬も差し迫っているというのに肌を熱く燃え上がらせ、息苦しさを覚える。
身体の内側では何か途方もないエネルギーが暴れまわり、勝手に手足を動かそうとしていた。
「……はぁっ……」
風船のように膨らんでいくそれを抑えきれず、一度だけ口を開け、大きく吐き出す。
しかし声が出ないようにと気をつけたはずのそれは、部屋全てを満たすように響き渡った。
「あお……い……」
小蒔の掠れた声に羞恥を底知れず煽られて、どうしたら良いか判らなくなった葵が、
ただカーペットを握り締めていると、不意に呼吸を奪われた。
小蒔の指先が、陰唇にかかっていた。
反射的に出掛かった拒絶を、喉でせき止める。
彼女がそうしたいのなら、拒んではいけない──葵は自らに課した制約を思い出したのだ。
葵は唇を噛んで、羞恥と快楽の狭間に己をたゆたわせた。
そっと花弁に触れる蝶に、花は蜜を与える。
だがその目的は、己の写し身を彼方へと運んでもらう為ではなく、蝶を絡めとる為だ。
その為に花は、己の深くへと蝶を誘いこむ。
花自身の美しさと、芳しい香りを以って。
「葵……」
黒い覆いの狭間にひっそりと息づく桃色の園に、小蒔は思わずため息を漏らしていた。
現実離れした親友の美貌にあって、生々しい肉感を有する今見ている部分。
しかもそれは自分のものより遥かに濃い茂みを以って隠されているのだ。
開いている陰唇からその下のすぼまりまでをも覆う豊かな陰りは、
いやでもそれが隠しているものを意識させる。
両手で淫らな蜜を吐き出し続ける裂け目を押し広げた小蒔は、その果肉に舌先を伸ばした。
熱いうねりが口の中に流れこんでくる。
「しょっぱくて……なんか……」
葵の味がする──とは言えず、複雑な形を見せる襞に沿って舐めていく。
「んうっ、こ、ま……小蒔……ぃっ」
切羽詰った様子の葵の声が、頭上から聞こえた。
同時に柔肉が迫ってきて、きつい香りに鼻腔が侵食される。
葵が、腰を突き出してる──小蒔には、口の周りが蜜で濡れてしまったことより、
親友がこれほどまでに快楽を求めて媚態を晒すことの方が驚きだった。
しかし、秘唇からは新たな雫が次々とあふれだしており、
彼女の欲望に嘘偽りのないことを示している。
ならば、小蒔のすることはひとつだった。
「あッ……あぁぁ……」
鼻先を埋め、溢れる蜜を啜り上げ、舌に掬えるだけ掬い取った蜜を、
受粉させるように葵の、慎ましくも剥き出しになっている突起に塗りたくる。
「んっ、んぁぁ……ッ」
悲鳴と共に、身体が忙しく跳ねた。
その度にこぼれる淫らな熱気を、耳朶で吸収しながら、小蒔はしっかりと太腿を抱え、
なお葵の秘めやかな溝を探り続けた。
「葵……そんなに気持ちいいの?」
親友のあまりの感じ方に、からかうつもりで小蒔は尋ねる。
すると葵は、恍惚に染め抜いた、小蒔がどうしようもなく好きな色の瞳を向けて答えた。
「ええ……小蒔に触れられているだけで、私……おかしくなってしまいそうに気持ちいいわ」
手入れの行き届いた、紫色にも見えることがある長い黒髪を頬や額にほつれさせた、夢見心地の表情。
深い愛情と、それにも劣らない淫情が浮かんでいるその顔を見ていると、小蒔の背筋を震えが走る。
雛乃や雪乃に対してとはわずかに異なる、より危険な情動。
「あおい……そんなこと言うと……ボク……止まらなくなっちゃうかもしれないよ」
身を起こし、聞き間違いがないよう、耳元で囁く。
返ってきたのはやはり耳元への、しかし一字一句はっきりとした声だった。
「前に言ったでしょう? 私は、小蒔と一緒なら……何処にだって行けるって」
「あ……お、い……」
「小蒔……」
充足感に満たされて、二人は抱き合った。
強く、きつく、足の指先にまで神経を漲らせて。
その中で唯一二人が動かした、髪を梳き、背中を撫で、
お互いが手に入れたものを確かめるようにまさぐる掌は、
やがて葵の方が先に目指す場所へと辿り着いた。
「あッ……葵……っ」
先を越された小蒔が、掠れた声で訴える。
しかしあてがわれた細い指は、焦らすように秘裂の上をさ迷った。
「やだ……ボク……も……」
葵に触れられて初めて、もう自分に余裕が全くないことを知った小蒔は、
負けじと彼女の足の間に手を添える。
「あッ……んあぁっ……」
「小蒔……っ、はっ、んッ……!」
音もなく沈みこんだ指先は、それを不満とするかのように激しく水音を立て始めた。
そして二つの水音は共振して、更に大きな淫音へとなっていく。
「うぁ、き……もち……いいよ……葵ぃっ」
「私も……お願い、もっと……んくっっ」
小さな指先に、身体全体を掻き回されているようだった。
指がほんの少し深く入るだけで頭の先にまで気持ち良さが走り、
爪が媚肉を軽く引っ掻くだけで口から快感が呼気の塊となって弾ける。
「葵……んッ、んううッ」
濃密な匂いが鼻を塞ぎ、蕩けた舌が口腔を犯す。
快楽に打ち震え、二人は涙すら流しながら、
お互いがもたらす以上の愉悦を相手に与えようと激しく蜜壷をかき混ぜた。
「う、あ……ッ、あ、お……!!」
「はぁっ、んッ、あっ……!! あぁ……ッ!!」
身体中を巡る快感を、受けとめようともせず爆ぜさせる。
ひといきに扉を開けた二人は、全身を苛む狂悦に、声すら出せずに果てた。
「あ……あッ……!!」
「ぁ……っぅ……」
びくり、と大きく全身を震わせる葵と、腰の辺りだけを小刻みに揺らす小蒔。
まるで違う達し方ながら、二つの波は、
それがひとつから分かたれたものであるかのように彼女達を浚っていった。
その後も服を着ることもせずに横たわり、時折シーソーのように互いを求め合った二人も、
今は静かに抱き合っているだけだ。
全身を覆う気だるさに浸かり、時折肌を撫でる微弱な快感を愛でている葵に、
望んだ以上の恍惚を与えてくれた小蒔がそっと話しかけてきた。
「ね、葵」
「何、小蒔」
「んーん……なんでもない」
小さく首を振った小蒔は、満ち足りた笑顔で身を寄せてきた。
親愛の情も露な彼女の頬に、葵は想いを押し当てる。
しかし、小蒔を抱きとめ、茶色の短い髪を撫でる葵の口の端には、
本人ですら気付かないくらい小さな、小蒔とは別種の笑みが浮かんでいた。
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