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「ぅ……」
微かな鼻息が上唇をくすぐる。
舌先を尖らせ、硬くして歯の隙間すら探るような小蒔のそれは、
もはやキスとは呼べないかも知れなかったが、葵の顎には砂山のように快感が積もっていった。
顔を傾け、口の中深くまで舐めようとする小蒔にその身を委ねる。
こんな風にみっともなく口を開け、唾を滴らせながら交わすキスを、葵は異常だとは思わない。
むしろ自分の、決して他人には見せることのない痴態を晒すことに、深い陶酔すら抱いていた。
そして小蒔がそんな自分に興奮し、
彼女の裡にある淫らな欲望を加速させていくことをしたたかに計算してもおり、
自らの振舞いが、彼女を絡め取る糸であることを承知の上で、それを周到に張り巡らせているのだ。
小蒔を手中に収めるためなら、どんな方法でも採る──それが、雛乃に焚きつけられた、葵の覚悟だった。
「んふぅ……あう……っ」
薄い小蒔の舌を、蔦のようにねぶっていく。
雛乃に教えられ、悔しいながらも恍惚としてしまったキスを、葵はする。
あくまでも主導権は彼女に与えながら、小蒔を自分に夢中にさせる為に。
肩を掴んでいる小蒔の手に、じんわりと力が篭るのが愉しい。
葵は身を乗り出してきた小蒔の背中に腕を回し、逃れえぬ穴の底へと彼女を引き込んでいく。
「ん……ッ」
甘く濡れた温もりが、口を塞ぐ。
ずっと求めていた快感。
小鼻を膨らませ、小蒔の香りを鼻腔一杯に吸いこみ、葵は舌を委ねた。
口内を探ってくる舌に、しっかりと絡みつかせる。
脳が痺れるほどの愉悦に、葵はもがこうともせず溺れていった。
「う……んむ……っ……」
ぴったりと張りついた小蒔の舌が、表面を擦っていく。
離れそうになって慌てて葵が舌を伸ばすと、
それを待っていたかのように先端だけを突ついて玩ばれる。
喉元を滑り落ちていく快感に、肩に篭っていた力を奪われると、葵の頬を不意に涙が伝った。
悲しいのか、それとも嬉しいのか──
もう考える力も薄れてきて、葵は伏せた睫毛をそっと持ち上げる。
間近にある親友の顔。
膝立ちになり、身を乗り出すようにして顔を被せ、愛してくれている小蒔。
彼女の短い髪が肌をくすぐると、葵は天にも昇るような気持ちになれるのだった。
「葵って……いつのまにこんなにエッチになったの? それとも昔から?」
伝う唾液を指先で掬い取り、小蒔が薄く笑う。
葵は親友の問いに答えようと頭を巡らせたが、
脳裏にはもやがかかっていて記憶を辿ることが出来なかった。
まだキスの余韻が残る口を開けたまま、瞳で解らない、と答える。
返ってきたのは、夢のようなキス。
額に、鼻の頭に、頬に、顎に、唇に。
軽く、短いキスはいつまでも続き、顔の全てに小蒔の感触が広がっていく。
抑えきれない悦びが、抑えきれずに弾けた。
「ん……っ!」
上唇をついばまれた瞬間、葵は不意に達した。
無意識に身体を支えていた力さえ失い、ぐったりと崩れ落ちる。
「葵……だいじょうぶ?」
「ええ……平気」
気だるげに答えた葵は、身体を離そうとする小蒔を抱きとめる。
生気に満ちた瞳を、今は潤ませている小蒔は、その目を細め、葵に口づけた。
「あ……ん……」
ためらわずに絡みあう舌。
身体を押しつける小蒔と、小蒔を抱き締める葵。
二人はほとんど身動きもせず、ただ舌だけを用いて快感を貪りあった。
舌が、溶けたチーズのように糸を引く。
長く、深いキスを終えた後も二人は見せつけるように舌を出し、
お互いの顔を濡らす唾液を掬いとっていた。
伸びてくる舌を捕らえ、先端を甘く食んだ小蒔は、
カーテンの隙間から射しこむ光に照らされた葵の顔に、新たな欲望を抱いた。
もういかに小蒔でも制服の上にコートを羽織らないと寒い季節であるのに、
今、小蒔は下着すら必要としないほどの火照りを感じている。
何もかも脱ぎ捨て、葵の肌を感じたいという欲求が、小蒔の指先を葵の肩へと躍らせた。
「ブラ……外していい? 外すね」
ストラップに沿って背中に腕を回し、ホックを外す。
淡い紫の布地が包んでいた膨らみは、
その大きさにも関わらず、支えを失ってもほとんど形を変えていない。
見るからに柔らかく、そして母性を象徴するような隆起に、小蒔は手を添えた。
硬さなど微塵も感じられない、ただただ柔らかいだけの乳房を、
親指の腹でくまなく撫でていく。
焦る必要もなく、ただゆっくりと。
「ん……」
葵が声を漏らす。
穏やかな呼吸の中に混ざっているそれは、小蒔の指をそっと押し上げる。
その上下動でさえもが心地良い小蒔は、
目を閉じ、腕をだらりと下げて身を任せている葵の反応を覗いながら、
指腹を頂へと近づけていった。
「っ……」
葵の反応が少しずつ変わっていく。
より敏感な場所に触れられているからなのだろう、時折身体が小さく強張っている。
しかし、そうされたがっており、そうしたくても、小蒔はまだそこには触れない。
薄く色が変わっている部分の周りを、やんわりと撫でるだけだ。
弱すぎる愛撫に、葵が胸を突き出してくる。
はっきりと快感を求めているその仕種に、小蒔は薄い笑みを浮かべると、
胸の先端で膨らんでいる部分に、唇をすぼめてくちづけた。
「あ……」
葵が声を上げると、乳首が唇を柔らかくくすぐる。
柔らかな彼女の身体にあって、異質に硬く、そしてなお柔らかい膨らみ。
自分のそれとは異なり、唇の先で軽く押しただけでも愛らしく揺れる頂を、
小蒔は時間をかけて口に含んだ。
「葵はさ、どんな風にされるのが好き? こんな風?」
舌で乳輪をなぞり、乳首を転がす。
「それとも、こんな風?」
唇で胸の先を咥え、弱く吸いたてる。
わざと音を立て、口の中で溜めた唾を塗りまぶしながら、乳暈から乳首の窪みまでを、
余すところなく舐めてやると、葵は嬉しそうに喉を鳴らした。
「あぁっ! ん、ふ……」
硬く張り詰めた頂に、今度は軽く歯を当てる。
二度、三度と噛み、葵が刺激に慣れた頃に、強く吸ってやった。
「……っ!」
肢体が大きく仰け反り、甘い香りが広がる。
鼻腔一杯に吸いこんだ小蒔が、それが口に含んでいるものの味かと錯覚してしまうほどの良い匂い。
それを吸いこむことは、彼女とひとつになることのような気がして、小蒔はもう一度胸を吸った。
「あ……小蒔……」
揺らめく声。
それもまた、身体に染み入っていく。
耳を通り、喉を通り、身体のあらゆる管を通って腹の下に集まっていく、葵。
それは泣いてしまいそうなほどに心地良い感覚で、小蒔はまた胸を吸った。
「はぁ……っ」
同じ強さで吸うと、同じだけの香りが漂ってくる。
違ったのは、快感に抗うだけの力をなくしてしまった葵が、小蒔にもたれかかってきたことだった。
「葵……?」
「小蒔……小蒔っ」
三年間で何度呼ばれたか判らない名前。
でも今呼ばれた名前は、それまでのどれとも違う音で小蒔の胸に響いた。
温かな胸の谷間に顔を埋め、小蒔は想う。
三年間、葵が自分に抱いていた気持ちを。
三年間、自分が葵に抱いていた気持ちを。
ごめんね──滲んだ涙を肌に押しつけると、静かな鼓動が聞こえてくる。
葵の背中をかき抱いた小蒔は、ゆっくりと彼女を押し倒した。
葵の足から下着を抜き取る。
愛撫の間もずっと履いていたままのそれは、小蒔の手の中で卑猥な音を立てるだけの布地と化していた。
水分を含んでべっとりと濡れている下着からは、思考を奪うような匂いが漂ってきて、
瞬間、小蒔はぼうっとしてしまう。
葵が潤んだ瞳でこちらを見ているのに気付かなければ、下着を口に押し当ててしまっていたかもしれない。
愛想笑いを浮かべて下着を彼女の脱いだ服のそばに置いた小蒔は、
やや性急に待っている彼女の傍らに横たわろうとした。
しかし、葵はキスをしようとする小蒔を優しく押し留める。
「小蒔も……脱いで」
「あ、う……うん」
葵がじっと見ている中で服を脱ぐのは相当に恥ずかしかったが、
葵も既に裸になっているのだから、と小蒔は一思いに下着まで脱いだ。
葵と同じくらい湿ってしまっていた下着にも驚きはしなかったが、
それを知られるのはさすがに抵抗があり、さりげなく畳んだ制服の下に入れると、
親友とは違いがあり過ぎる身体を、隠すように密着させた。
「っ……はっ……こま、き……」
「うん……葵……」
葵の身体はとても昂ぶっていて、温かかった。
熱気に眩む小蒔の太腿に、湿った感触が伝わってくる。
しかも、葵は足を絡め、腰を動かしてしきりにその部分をさすってくるのだ。
「……」
積極的な葵の行為に、小蒔は声も出ない。
しかし、やがて悪戯っぽい笑みを浮かべた小蒔は、自らも足を巻きつかせた。
「エヘヘ……気持ち、いいね」
ぎゅっと腿で挟みこみ、刺激を与えると、
葵もすぐに応じて、程よい強さで下腹部に快感が満ちていく。
蕩けた笑みを浮かべながら、小蒔は葵に唇を寄せていった。
「あ……ん……」
裸でするキスは、そうでないキスよりもずっと気持ちが良かった。
胸の先や、とろとろに濡れた足の間を太腿に擦りつけると、特に。
「ん……」
満足気な呼気を、唇の間から静かに漂わせた葵に、小蒔はもう一度キスを放ってから身体をずらす。
顎の裏に、首筋に、鎖骨に、目に付くところ全てにくちづけながら、下に。
自身の重みでわずかに潰れていながらも、なお綺麗に上向いている乳房は、特に念入りに舌を這わせた。
「小蒔……」
「美味しそうだよね、葵のおっぱいって」
「いや……んっ」
葵はどう答えても、ちょっと吸ってやっただけで簡単に息を詰まらせる。
それが面白くて、小蒔は麓から頂に至るまでを、いつまでも玩んだ。
「はっ、はぁ……ぅ、んぁ……っ」
今にも破裂しそうに膨らんでいる乳首を指腹でくすぐると、葵の呼吸が不規則なものになっていく。
もしかしたらこのまま胸だけでも達してしまうかも知れなかったが、
小蒔はひとまず愛撫を止め、更に下を目指すことにした。
身体の中心にある、縦長の割れ目の周辺をなぞる。
葵はここも弱いのか、小さく身動きしたが、しかしすぐに、無理やり動きが止まる。
いかにも快感を堪えているような仕種に、小蒔はいじらしさを覚えるのだった。
臍を過ぎると、すぐに顎に繊毛が触れる。
多分唯一彼女の身体の中で、彼女らしくない部分。
そこを葵が気にしていると知っているから、小蒔はじっくりと眼を凝らした。
視線が注がれていることに気付いた葵は今更のように叢を隠そうとするが、
小蒔は太腿にキスを落とし、叢をさすって足を開かせる。
「いや……い、やぁ……」
現出した光景に、小蒔はため息さえ出なかった。
膝を折り、これ以上なく卑猥に晒された陰部は黒々とした叢が覆っているが、
彼女の身体から湧き出した雫によってそこここが煌いている。
そしてその雫を生み出す源である秘裂は、今や薄くとば口を開け、切なげにひくついていたのだ。
黒い繊毛の隙間から覗く、生々しいピンク色の肉は、直截的な興奮となって小蒔の脳を犯す。
親友の媚態に愛液を太腿に伝わせて、小蒔はのそりと葵の股に顔を近づけた。
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