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「舌出して……そう」
何のためらいも無く、葵は舌を出す。
あまり綺麗ではないその表情を、自分がさせたのだと思うと、
小蒔はうなじの毛が逆立つような興奮を覚えるのだった。
美しくぬめる桃色の舌に、自分のそれはまだ触れさせず、指を乗せる。
「あ……」
舌を通して伝わる震え。
縁をなぞってやると、もどかしげに逃れようとするが、小蒔はそれを許さない。
と言っても強引に舌を摘まむのではなく、ただ瞳に物言わせるだけだ。
別に、嫌ならイイよ──
「は……っ」
口を閉じさせてもらえない葵が、軽く息を呑んでもみっともない音にしかならない。
教師の訓告を聞き流す生徒達も、この声には黙って耳を傾けるという美しい声が、
知性の感じられない、腑抜けたものに変わっていた。
ざらざらした表面を往復させながら、小蒔の指は葵を玩ぶ。
時折呼気が喉の奥から流れてきて、指を熱する。
人差し指から少しずつ、葵そのものが染みこんでくるような感じがして、
小蒔はぞくぞくしてしまうのだった。
開かれた口。
その中の隅々までを、小蒔はまさぐる。
上顎も、頬の内側も、歯茎も、歯列も。
酷いことをしている、と思わないでもないが、雛鳥のように口を開け、
されるがままに従う葵を見ていると、欲望に歯止めが効かなくなってしまう。
それが、好き、ということなのかは解らない。
小蒔は自分では雪乃のことが好きだ、そう思っていたからだ。
しかし雛乃の家で葵に想いを告げられた時、
雪乃に対して抱いていた気持ちと、同じ気持ちが芽生えたのも確かだった。
これって、いわゆる二股ってヤツになるのかな。
エナメル質の感触を愉しみながら、小蒔はそんなことも考える。
「あぁ……」
葵がくぐもった声を出す。
そこに嫌悪の響きはなく、ただ息が続かなくなって出てしまったものなのだろう。
恥ずかしそうに、上目遣いで自分をみる葵に、小蒔は考えるのを止めた。
今は、葵と一緒にエッチなことをする──それだけで、良いはずだった。
指を舌に押し付け、唇と一緒にくすぐってやると、鼻息が漏れる。
葵は言いつけを守り、口を閉じていない。
いい加減辛いだろう、そう思った小蒔が、
「ボクの指……咥えたい?」
舌の上に乗せたまま小声で囁くと、返事が出来ない葵は代わりに頭を上下させた。
開けたままの唇の端から、薄く唾液が伝っているのを見つけた小蒔は、
顎にかかりそうになっているそれを舐め取ると、そのまま唇を押し当てて囁いた。
「いいよ……」
しかし、葵は瞳を向けるだけで、動かない。
小蒔が促すように指で舌腹を撫でると、ゆっくりと唇が閉じていった。
程なく指が、ねっとりと包みこまれる。
指の付け根から爪先までをねぶられ、思わず声を上げそうになった小蒔は、
その不利を知られまいと葵の耳朶に息を吹きかけた。
「ふっ……ん……」
葵は心地良さそうに肩をすくめながらも、指を吸うのを止めようとはしない。
微かに笑みを浮かべた小蒔は、豊かな黒髪を梳き分け、耳に口づけた。
舌先で輪郭をなぞり、孔の奥をくすぐる。
口と耳から、葵の身体の中に触っている──そう考えると、小蒔は身体が熱くなって、
下着が濡れてくるのを感じる。
脱がなきゃ──そう思っても、今の気持ち良さを手放したくなくて、動きを止められない。
薄紅の唇がすぼまり、その中心に咥えられている自分の指を引き抜くと、
葵の舌が懸命に追いかけてくる。
逆に口の中へ押しこむと、今度は離さないとばかりに巻きつかせ、きつく吸い上げてくるのだ。
葵を意のままに操っているという、小さな快感が走る。
そしてそれを妨げることにも、快感が。
小蒔は指を吸いたてることに没頭している葵の、耳の裏側を舐める。
そこから首筋へ、肩口へ、葵の感じる場所を探して、小蒔は軟体動物のように舌を這わせていった。
「んっ……ぅぅ……」
それでも、葵は指を離さない。
離してしまったら罰を受けるとでも思っているのだろうか、
頑なに、ひたすらに細い指を口に含み続けていた。
そうなると小蒔も意地になり、右手も使って葵の身体のあちこちを愛撫する。
肩甲骨に触れ、背中から柔肌を下りていく。
少し悪戯っ気を込めて下着に指を引っかけ、尻を撫でると、葵が身を強張らせた。
「ん……んぅっ……」
喘ぎ声が指を震わせる。
増幅されて腕を伝った細やかな振動は、小蒔の身体全体をも震わせた。
「あ、おい……」
腕を葵に預けたまま、小蒔は彼女の背後に回る。
控えめな、けれどとても安らぐ髪の香りを嗅ぎながら、腹部に手を添えた。
ゆるやかに掌を押し上げ、そして戻っていく腹部。
そこから、下へと手を下ろす。
一度太腿を過ぎ、膝頭まで滑らせた手を、
そこでスカートの内側に忍ばせ、内腿を伝って戻らせていく。
指先がどこを目指しているのか判った葵の肌から緊張が伝わってきたが、
小蒔はまだそこには触れない。
動きを止め、上から下へとさすりあげる。
「……んん、っ……」
くぐもった声が、激しさを増していく。
短く切ってある爪の先で線を引いてやると、柔らかな腿が物欲しげに震えた。
吐息を葵の首筋に吐きかけながら、小蒔はじりじりと指を熱の源へ近づける。
「……っ!」
ごく弱く、触れるか触れないかという弱さで下着に指腹を押し当てた瞬間、葵の全身が大きく悶えた。
官能の熱が一度に噴き出し、背後の小蒔を包みこむ。
自分の裡にもくすぶっていた同じものが、葵の熱によって炙られて、
小蒔は背中の辺りに狂おしい情動が芽生えるのを感じていた。
葵に咥えさせていた指を引き抜き、腹部へと押し当てる。
先に右手で触れた臍から、今度は上へと。
「っあ、こ、小蒔……」
右の胸を掴む。
この時小蒔は、昂ぶる情欲に任せ、いささか乱暴な手つきで張り詰めた乳房を握った。
「あ……っん……」
少し痛いのか、葵が弱々しく手首を掴んできたが、構わずに手を動かす。
葵が身をよじると、彼女の足の間に添えた指先に、しっとりとした熱が伝わってきた。
「葵……濡れてる……ね」
確かめるまでもなく、今指が触れている秘溝は快感に潤っている。
軽く押してやると、ひどく耳に残る音が鼓膜を愛撫した。
「はぁ……っ……」
力の抜けきった吐息が快い。
指を少し動かすだけで漏れるその吐息を、小蒔は絶え間なく葵に紡がせる。
濡れそぼった密やかな裂け目を、下着の上からでも硬くなっているのがはっきりと判る乳首を撫でて。
「あ……っ、んっ……」
葵の声が不安定さを増していく。
これまでの三年近くで耳に馴染んでいた、控えめながらも芯のあるものではなく、
居場所を求めてさまようような、頼りない声。
それは小蒔の愛撫の強弱に合わせ、複雑な音色を奏でる。
背後からぴったりと身体を密着させ、首筋にくちづけて、小蒔はより艶やかな音を聞くべく葵を弄(った。
「あぁ……あっ……」
葵は時折小刻みに身を震わせながら、淫らな指をただ受け入れている。
もちろん嫌なはずはないのだろうが、一方的に責めるというのは気分が良く、
小蒔は更に積極的に葵を辱めることにした。
もうおびただしく濡れてしまっている下着の、染みに沿って撫でる。
「はぁ……っ」
葵が身体を揺するたび、左の掌にたわわな重みが加わる。
どこまでも柔らかく揺れるそれを掌で握り締め、
小蒔は下腹を刺激している指を下着の中へとくぐらせた。
「んっ……!」
葵のトーンが上がる。
指を噛んで声を抑えようとする彼女の仕種を可愛いと思いながら、
小蒔は叢をかきわけ、蜜にまみれた葵の中心を探った。
這わせただけで沈みこんでいく秘裂から、
とめどなく涌き出る雫を掬い、ひっそりと息づく尖りにまぶす。
それは、小蒔が雛乃に初めて教えられた時、
立てなくなるほどの快感に襲われてあっけなく達してしまったやり方だった。
「や、ぁ……あっ……んっ……!」
ぬるぬるとした自分の体液を最も敏感な芽に塗りたくられて、葵の反応がめざましくなる。
背中を覆っていた黒髪が前へと落ちかかり、小蒔の手の甲を撫でた。
「葵……」
その美しさを隠すために、髪を伸ばしているのではないか──
そう思えるほど白い背中が浮き上がっている。
自然に魅了された小蒔は、ほんのりと温かな肌に優しく唇を触れさせた。
「んあっ──」
大きな吐息が聞こえてきた。
どうやらここが葵の好みの場所らしく、息を吹きかけただけでも敏感に反応している。
今葵はどんな顔をしているのだろう、興奮を荒い呼気に込めて葵の背中に浴びせ、
小蒔は右手の内にある芯を軽く押した。
「あぁ……っ!」
押し当てた唇に肌がぶつかり、全身から放たれた熱気が、一瞬小蒔の顔を包みこんだ。
指先からは、弛緩していく彼女が伝わってくる。
自分と較べてもあっけなく達してしまった親友の上下動する背中を、
驚きと、満足の入り混じった表情で見つめていた小蒔は、
まだ陰核を触っていた指を下着から抜き、彼女の正面に回った。
ぐったりとしている葵の頬に触れ、顔を上向かせる。
涎が滲む口からは、快感の余韻が吐き出されていた。
朱に染まった貌を見ていると、小蒔は自分でも抑えの効かない、
妖しい情動が膨れていくのを感じる。
葵なら、それを受け入れてくれるはず──そう直感しながらも、
まだ残る理性がそうすることを許さない。
舐めまわした唇を一度噛み、ひとまず無理にその情動を封じこめた小蒔は、
まだぼんやりとしている葵にそっと呼びかけた。
「葵……イっちゃった……の?」
小蒔の呼びかけに、葵は小さく身体を震わせた。
しばらくは何も言わなかったが、やがてうっすらと開かれた瞳は、
ほとんど泣き出しそうに潤んでいた。
「お願……い……もっと……身体中に……小蒔の……あと……痕を……」
哀願する葵に、小蒔は唾を飲み下す。
押し倒し、思いきり哭(かせてみたい──そんな危うい感情を抱かずにはいられない葵の貌に、
震える声で心を告げた。
「うん……いい、よ……」
葵の目の端を涙が伝う。
しかし、それが顎まで流れるところを、小蒔は見ることが出来なかった。
汗ばんだ手が耳朶に触れ、顔を引き寄せる。
薄く開かれた紅から逃れる術を、小蒔は持っていなかった。
「……ん……」
舌が絡み合う。
一度達した葵と、何度でも彼女を達しさせたいと想う小蒔は、
遠慮を捨てて唇を貪り合っていた。
舌だけを卑猥に突き出し、深く交える。
味覚を得る為の器官に、快感を染みこませながら、ただひたすらに。
犬のように開けた口からは苦しげな呻きが漏れ、
小鼻も一杯に膨らませて息を吸っていて、タイプは異なるものの紛れもない美貌も、
見る影もなかったが、二人は構わず舌を吸い、唇を食んでいた。
小蒔の舌が葵の歯を滑っていく。
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