<<話選択へ
<<前のページへ
(3/3ページ)
位置を入れ替えた小蒔が、スカートの中に手を差し入れてくる。
「凄いね……ホントにびしょびしょだよ。これ、トイレからずっと?」
束の間ためらい、葵は頷いた。
本当は違う──授業中に小蒔を意識してからだ。
しかしトイレでの行為がきっかけになったのに変わりはなく、その差は大きなものではない。
そしてもうひとつ、葵が訂正しなかったのは、
その方が小蒔の興奮をそそるのではないかという思惑があったからだった。
「そう、なんだ。葵ってホントはすっごいエッチだったんだね」
その考えは当たり、小蒔はパンスト越しに淫裂をなぞる。
求めていた快感に、葵は腰をゆすって応えた。
「お願い……直接、触って……」
到底他人には見せられない痴態を晒しているという興奮。
小蒔になら、全てを見て欲しいという欲求。
それらが、信じられないほど卑猥なことを葵に口走らせていた。
「うん……いいよ」
驚いたのだろうか、小蒔の声が掠れている。
それは葵にとって情欲をそそり、身体を芯から熱くさせる淫らな音色だった。
身体を起こした親友の手が腰に触れ、ストッキングを下ろしていく。
もうそこにまで染みだしているその部分を見たら、小蒔はなんと思うだろうか。
そう考えただけで、新たな滴がとろりと垂れた。
下着が下ろされ、濃い──自分では濃いと思い、
コンプレックスのひとつになっている恥毛が小蒔の注視を浴びる。
だらしない。
性欲を否定するほど愚かでは、葵はないつもりだったが、人にとって秘すべき場所を晒し、
あまつさえそれに興奮を感じてしまうというのは常軌を逸しているだろう。
しかし、抑えがたい淫欲も、紛れもなく自分の裡にある、美里葵を構成する成分のひとつなのだ。
そしてその部分をも、葵は知って欲しいと願う。
醜い部分も汚らしい部分も全て、小蒔に知って欲しかった。
膝までストッキングを下ろした小蒔の手が、そこから内腿を遡ってくる。
肌が粟立つくすぐったさは、間を置いて快感へと変わっていった。
それは小蒔が、身体の中心に触れることで一層鮮明になる。
「ぁ……小蒔……」
葵は横向きになって、声が出てしまうほどの気持ち良さに震えた。
足で小蒔の手を挟みこむと、彼女も身を横たえる。
間近に感じる淡い匂いを、葵は鼻腔いっぱいに導き入れた。
「声……出したらダメだよ」
葵が頷き、手で口を塞ぐと、すぐに異物感が訪れた。
入り口の浅いところを、指がゆっくりと掻きまわす。
自分では決してすることのないもどかしい愛撫は、かえって葵を感じさせた。
「ん……っ、ふぅっ」
掌に快感を吐き出す。
肩を震わせ、どうにか喘ぎを抑えようとする葵だったが、小蒔はそれを許してくれなかった。
ぴちゃぴちゃとわざと音を立て、授業中から濡らしていた花唇を弄ぶ。
葵の本性は優等生などではない、
こうして朝から淫らなことを考える女なのだと、高らかに宣告するように。
「ふっ、んふぅっ」
その通りだ。
葵が小蒔のことを考えない時間はない。
家でも、学校でも、いつも彼女のことを考え、自らを慰めていた。
指の細さを想い、口唇の柔らかさに耽(り、退廃と、尽きることのない欲望を求めて、
葵はひとり戯れることを止めなかった。
その報いなのか、今、狂おしいほどの快感が葵を襲う。
わずかな指の動きにも声が抑えられず、
ほんの少し触れられる場所を変えられただけで身体の奥がかっと熱くなってしまう。
片手で喘ぎを抑えきれなくなって、葵は両手で口を塞いだが、既にそれですら心もとなかった。
「んっ、ぅんっ……!」
粘液を掻き混ぜるように動いていた小蒔の指が、秘裂の端に触れる。
そこに息づく小さな芽から、鈍い痺れが疾った。
止まらない快感を葵は享受する。
今与えられているのは、深い悦び──藍色の意識の底にある、小蒔によってしか満たされない悦びなのだ。
拒む理由など、あるはずがなかった。
顔を赤らめ、眉間に皺を寄せて声を堪えている葵を、小蒔は静かに見つめていた。
男女問わず全校生徒の憧れである葵の、淫蕩に喘ぐ姿。
可愛らしく、そして、そんな表情をもっと見たいと思ってしまう。
朝に抱いた気持ちを、小蒔は再び抱いていた。
しかし、今度は怖れを伴っていない。
葵をもっと、感じさせてあげたい。
葵にエッチなことを、もっといっぱいしてあげたい。
長い呼気を吐き出しつつ、小蒔は葵の小さな尖りを優しく撫でまわした。
「っぁ……っふ」
肩がぴくりと震え、咳にも似た、およそ葵らしくない声が、蓋をした手の隙間からこぼれてくる。
もう声は、外に出てきてしまっているのに、足をもぞもぞさせ、
より強い刺激を求める葵に、小蒔は薄い笑みを浮かべずにいられない。
いいよ、これからずっと、いろんなことしてあげる──
切なげに見つめる葵に、小さく頷いた小蒔は、泉から水を汲み上げ、敏感な芽を擦りあげた。
「──っ、ぁ──っ!」
顎が跳ね上がる。
気持ち良い──葵は自分が学校にいることも、まだ一時限目の最中であることも忘れ、
小蒔のもたらす快感に浸った。
絶妙の加減で秘芽を責めてくれる細い指を、逃すまいと足で挟みこむ。
口を塞いでいたのは小蒔に言われたからで、
許されるのならば大声ではしたない啜り泣きをしていたに違いない。
葵は心中で小蒔の名を叫びながら、程なく訪れるであろう波を待ち焦がれた。
親友の身体から濃密な匂いが弾け、小蒔を刹那、狂わせる。
まだ健気に口を抑えている手の甲にくちづけた小蒔は、嗜虐的に囁いた。
「葵……いいよ、イッて」
もう一度、今度は少しだけ強く擦りあげる。
葵の全身がきゅっと縮まり、弛緩した瞬間に、小蒔は最後の刺激を与えた。
「──!!」
強い、求めていた波が浚う。
息が詰まるほどのどうしようもない愉悦に、涙を零して葵は咽(んだ。
他のどんなことでも、決して得られない恍惚。
ただひとり、世界でこれを与えてくれるのは、小蒔だけだった。
だから彼女が望むなら、どんな闇にも墜ちてみせる。
白む意識の中で残る、小蒔への想いを抱いて、葵は達した。
恍惚の時は口惜しいほどの短さで過ぎ、替わりに疎ましい気だるさが身体を支配していく。
しかし、残りの授業にはさすがに出ないといけない。
葵が下着を直そうとすると、小蒔の唇が頬を掠めた。
「ね、このまま調子悪いって言って……帰っちゃわない?」
熱っぽい囁きが耳の奥で反響する。
葵に断る理由はなかった。
あったかもしれないが、それはもう、捨てても良い物だった。
葵はこれから二人で歩むことになるだろう道の昏さに目を細め、そして頷いた。
<<話選択へ
<<前のページへ